異世界でも馬とともに

ひろうま

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第5章 新たな従魔探し

49-結界強化

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リーソンまで来たついでに、そのまま、ファー・ドラゴンの所に行ってみた。
「ドラゴンさん、お久しぶりです!」
「ユウマさんなのです?どうしたなのです?」
相変わらず、語尾に違和感がある。翻訳しなかったら、どんな感じなのかすごく気になるんだけど……。
「ちょっと、ステータス見せてもらって良い?」
「え?別に構わないなのです。」
「ありがとう。」
許可をもらったので、早速見せてもらおう。

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種族:レインボー・ファー・ドラゴン
年齢:824歳
性別:♀
HP:14,000/14,000
MP:9,000/9,000
能力値:
 力:S
 体力:S
 知力:A
 精神力:B
 素早さ:A
スキル:結界魔法、結界解析、ブレス(無)
================

え?結界魔法?
昨日、タルトで結界の話をしたばかりだったため、タイムリー過ぎてちょっと驚いた。
「どうしたなのです?」
「あ、ドラゴンさん、結界魔法が使えるんだね。」
「使えるなのです。」
どの程度の結界が張れるのかわからないが、タルトの訓練施設の結界と併せて使えば有効なんではないだろうか。
「ちょっと、結界について手伝って欲しいことがあるんだけど、協力してもらえる?」
「また魔力をもらえるなら、良いなのです。」
「助かるよ!」
改めてお願いしに来るということにしたが、前金的な感じで魔力をくれと言われたので、しばらく彼女の側にいた。今回は、彼女の毛皮に少し触らせてもらったが、見た目以上にモフモフだった。
あまり触っているのも失礼なので、やめようとしたら、彼女が触っていてもらう方が魔力を感じやすいということで、側にいる間モフモフを堪能させてもらえた。

~~~
「すみません。遅くなりました。」
ファー・ドラゴンの所に結構いたので、乗馬施設に行くのが遅くなってしまった。
「構いませんよ。ルナさんは、昨日と同じ馬でお願いします。」
「わかりました。」
「エルミナさんは休みですね。ユウマさんには、例の馬っ気が強い奴に乗ってみてもらえますか?」
「はい。」
エルミナが発情したので、3日間くらい位休むということは、昨日帰る前にベルタスさんに伝えた。
「彼は、基本素直なのですが、牝馬が見えるとそっちに注意が行ってしまうんです。下手な人が乗ると、それこそ運動にならない感じで……。」
「牝馬と一緒に出さなければ、良いのではないですか?」
「なるべくそうしているのですけど、うちは牝馬も多いので、なかなか難しいんですよ。」
「そうなんですね。ですが、それは僕が乗っても変わらないのではないですか?」
「ユウマさんなら馬を集中させられるでしょうし、もしかしたら解決策を見つけてくれるかも知れないと思いまして。」
「あまり期待しないでくださいね。」

今日僕が乗せてもらう馬が準備できたらしいので、その馬の所に行った。
「僕は今日乗せてもらうユウマ。君の名前は?」
「プーラだよ。」
「プーラ君、よろしくね。」
「よろしく。」
プーラって、牡馬の名前にしては微妙な気がする。
少なくとも、その名前から馬っ気が強いイメージは感じないな。

プーラは、馬場に出るとキョロキョロしていた。
馬場を見渡すと、牝馬が何頭か出ている。
ルナも既にレッスンをはじめている様だ。
この施設の馬場はかなり広く、同時に出せる頭数も多いので、牝馬を出さない時間を作るのは大変だろう。
今は、恐らく少ない方だと思う。
最初にこの施設に来たとき、牝馬たちが人を乗せたまま集まって来たことを思い出す。
さすがに、僕が他の馬に乗っている時にまで、寄って来る様な馬はいないみたいだが。
そういえば、この世界でセン馬は見たことがないな。
去勢をするという考えがないのか、費用の関係等で簡単に行えないのかはわからないが……。
話しが逸れたが、考えるべきはプーラの運動だ。
無難に牝馬からなるべく離れて、トレーニングに集中するのも手だが、それだと芸がないというか……。
後々ルナに見てもらう可能性を考えると、ルナを見せてみるのも良いかな。
その前に、他の牝馬に近付いたらどんな反応をするか確認しておこう。
そう思って、一番近くで運動していた牝馬にそ少し近付いてみいた。
すると、まだ大分距離がある所から、プーラはブヒブヒ言い出した。
勝手に更に近付いて行こうとするので、慌てて止めた。
確かに、かなり馬っ気は強そうだ。
今度はルナの方に近付いてみた。
ルナがこちらに気付いたらしく、ちらっとこっちを見るが、すぐにレッスンしている馬の方に向き直った。
プーラは立ち止まって、ルナをずっと見ている様だった。
ルナを見続けていても、欲情する様子はないので、声を掛けてみた。
「あそこに居る牝馬は、僕の相棒なんだけど、好みでないかな?」
妻とは言い難かったので、あえて『相棒』と言ってみた。
馬相手なので、翻訳されたら同じになるかも知れないが、気持ちの問題だ。
「好みとかそういう問題ではなく、彼女は僕とは格が違うというか……。」
「そういうものなの?」
これまでルナに会った馬たちと、同じ様な反応だ。
馬から見ると、ルナは雲の上の存在みたいな感じなのだろう。
上位種だからなのか、ルナ特有の何かなのかはわからない。
あ、でも、上位種だからというのが理由なら、僕も人間から見て同じ様に感じるはずだが、そういう節はない。
ということは、やっぱりルナ特有の……何というか、オーラみたいなものがあるのだろうか。
このまま止まっていても仕方ないので、ルナから離れて運動することにした。
まあ、ルナを襲おうとしたりしないことがわかったから、良しとしよう。

運動していて、プーラが素直なのがよくわかった。
あまり調教が進んでいない感じなのは、普段牝馬に気を取られてなかなか運動に集中できないせいだろう。
だとすると、ルナに見てもらえば格段に良くなる可能性がある。
現に、ルナを見せてから、最初のキョロキョロする様子が無くなったしね。
乗り終わって、ベルタスさんに「この馬を集中させるとはすごい」と言われたたが、すごいのは僕ではなくて、ルナだと思う。

~~~
今日は訓練施設へファー・ドラゴンを連れて行く必要があるため、まずはステラに魔鳥の林にテレポートしてもらった。
「ステラ、ありがとう。ステラは、家に戻っておく?」
「着いて行くわ。というか、ユウマはアタシに乗って!」
「そう?じゃあ、遠慮無く。」
たまには自分で歩いた方が良い気もするが、乗せてくれるというのを断るのも悪い。
ということで、ステラに乗って、ファー・ドラゴンの所へ向かった。

ステラとファー・ドラゴンと共にタルトに入ろうとすると、ちょうどクラルさんが門から出て来るところだった。
「クラルさん、こんにちは。」
「やっぱり、ユウマさんでしたか。」
「何のことですか?」
「はぁ。相変わらず無自覚ですか。」
なぜか、ため息を吐いている……と思ったら、門番がイリディに警戒して、クラルさんに伝えたらしい。
しまった、またやらかした!
「いつもご迷惑をお掛けして、すみません。」
「ユウマさんだから、仕方ないですね。」
なんか棘がある言い方だな。
「それはどういう意味でしょうか。」
「それはそうと、そちらのドラゴンも従魔なんですよね。」
流された!?
「従魔ではないんですが、今回協力してもらうことになった、レインボー・ファー・ドラゴンです。」
そい言えば、元々従魔候補ということで会いにいったんだったな。
「レインボー・ファー・ドラゴンとは珍しいですね。」
「そのようですね。それで、彼女を連れて来たのは、結界魔法が使えるからです。」
「そうなんですか!?実は、結界強化の目処が立たずに困ってたのです。」
「それならば、彼女を連れてきて正解だったかも知れませんべ。まずは、実際にやってみましょうか。」
「お願いします。」

訓練施設に行くと、カイトさんも驚いていた。
「ファー・ドラゴンなんて、初めて見ました。」
「ファー・ドラゴンって、そんなに少ないんですか?」
「ドラゴン自体少ないんですよ。ドラゴンが現れただけでも大騒ぎになります。」
「申し訳ありません。」
騒がせた本人がここにいます。
「いえ、ユウマさんを責めた訳ではないです。ファー・ドラゴンはドラゴンの10%もいないと言われています。統計とか取っているあるわけではないので、実際のところはどうかわかりませんが、相当稀少であることは間違いありません。」
「そうですか。彼女に出会えたのは、幸運だったんですね。」
「そうですね。それに、結界魔法を使えるドラゴンがいるというのも驚きです。」
「カイトさん、驚いてばかりいますね。」
「誰のせいだと思ってるんですか?」
「じゃあ、早速結界強化をやってみましょう。」
「誤魔化しましたね!?」

「ご存じの通り、この訓練施設は、フィールドを周りから見ることができるように、物理的な壁を設けていません。」
「そうですね。」
それは、セルリアとクレアの戦闘訓練を見たのでわかっている。
「しかし、訓練で魔法等が場外に飛んで行くこともあるため、この装置で結界を張っています。」
そう言って、カイトさんは目の前にある箱を指す。
「この箱ですか?」
「ただの箱に見えますが、この中に対魔法結界と対物理結界を張るそれぞれの魔導石が入っていて、それらを制御できるようにしてあります。」
「……。」
全く付いて行けてないが、かなり高度な技術なことが推測される。
「これが、フィールドを囲う様に6個設置されています。早速、起動してみますので、内側に入りましょう。」
フィールドの中に入ると、カイトさんは上にいる人に合図を送った。
少し待ってみたが、特に変化は見られない。
「何も起こった様に見えませんが……。」
「目には見えませんが、既に結界が張られています。どなたか、外に向かって魔法をうってみて下さい。」
「ステラ、やってみてもらえる?」
「わかったわ。『ダークアロー』。」
黒い矢が外に向かって行く。が、途中で周りの空間が歪んだ様に見えたと思ったら、矢が消えた。
「ありがとう、ステラ。なるほど。これが結界の効果ですか。」
僕は、ステラを撫でながらそう言った。
「そうです。今のステラさんの魔法も強力ですが、何とかなります。しかし、上位ドラゴンに本気を出されたら、さすがに破られると思います。強度を上げることもできるんですが、そうすると魔導石の魔力が直ぐ無くなってしまうんです。」
忘れがちだが、ステラも上位の魔物であるバイコーンだ。
今のは全力の魔法ではないが、恐らく並の冒険者では耐えられないのではないだろうか。
「強化できそう?」
僕は、ドラゴンさんに聞いた。
「やってみるなのです。」
「あ、ちょっと待ってください。強度がわかる様に色を付けます。」
また、カイトさんが合図をすると、フィールドが薄い紫色で覆われた感じになった。
「これは?」
「赤色が物理結界、青色が魔法結界です。効果が高くなると、色が濃くなります。普段は、邪魔なので色を着けてませんが、状態を見るために色を付けられるようになっているのです。ということで、お願いします。」
はるほど。重なって紫色に見えているのか。
「ドラゴンさん、お願い。」
彼女が結界に触れた途端、周りの色が赤くなった。
「えっ?何をしたんですか?」
カイトさんが驚いている。
「ちょっと待つなのです。」
今度は、周りの色が青くなった。
「これは……。」
「ドラゴンさん、説明してくれる?」
「2つの結界を解析して、試しに1つずつ結界を打ち消してみたなのです。」
僕は、カイトさんにそれを伝えた。
「凄い……。」
カイトさんが呟いたが、僕はよくわかってない。
「あのー、すみません。これって凄い事なんですか?」
「当たり前じゃないですか。」
『何を言ってるんだ、お前は……』みたいな感じで言われた。
すみません。この世界の常識がま、だ身に付いてないんです。
「結界を解析できる者は、結界を張れる者よりずっと少ないんですよ!」
「そ、そうなんですか。」
カイトさん、興奮し過ぎではないだろうか。
昨日から、突然キャラ変わった感じがするが、元々こうなんだろうか。
「ドラゴンさんって、凄かったんだね。」
「今頃気付いたなのです?もっと誉めて良いのなのです!」
彼女が嬉しそうに言う。可愛い!
「本当に凄いね!でも、解析してどうするの?」
「解析できたら、強化することもできるなのです。別の結界を張るより、効率良くかつ強力になるなのです。早速、やってみるなのです。」
イリディは、結界に触れて集中し始めた。
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