異世界でも馬とともに

ひろうま

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第4章 大侵略の前兆

閑話13~監視を終えて~(エスシー視点)

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ユウマさんの監視はもういいということで、アランさんの所に帰る途中、アランさんから念話が入った。
『エスシー、今どの辺だ?』
『明日にはそちらに着けると思います。』
私は高速で飛べるので、普通なら帰るのに2日も有れば十分だ。
しかし、今回はドラゴンの気配を感じて大回りをしてしまったため、既に3日目も終わろうとしている。
『大変申し訳ないんだが、ユウマの所に戻ってもらえるか?』
正直、ここまで来てそれはないだろうという思いも出て来たが、一方で嬉しい気持ちもあった。
またユウマさんの近くに行けるからだ。
ユウマさんを見ていると、なぜか気持ちが落ち着く。
ユウマさんの従魔たちが、ちょっと羨ましいとさえ思うこともあった。
『それは構いませんが、また監視するのですか?』
『いや。ユウマと話がしたいから、こちらに来るよう頼んで欲しい。』
『わかりました!』
つまり、私がユウマさんに直接頼むということだ。
ユウマさんと話ができると思うと、ちょっとドキドキする。
『嬉しそうだな。』
『そ、そんなことないですよ。』
感情が念話にも表れてしまったみたいだ。
その事はごまかしつつ、ユウマさんに伝える内容を確認した。

それから、3日後の朝、ユウマさんの家に到着した。
いつも監視していた場所に留まって、ユウマさんが朝いるはずの部屋を見ると、まだカーテンが閉まっていた。
少し待っておこうと思ったら、隣の部屋にユニコーンがいるのが見えた。
私はその部屋の窓枠に留まり、窓をつついた。
「あら?あなた、いつもこっちを見ていた鳥ね。」
ユニコーンが、窓の側迄来てそう言った。言葉がわかることに、ちょっと驚いた。
「そ、そうです。今日は、ユウマさんに用事が有りまして……。」
「そう。私じゃ開けられないから、ちょっと待っててね。」
仕方無く、その体勢で待つことにした。
私はホバリングはできないので、ここで待つためには、こうやって掴まっておくしかない。

少ししたら、ユウマさんがやって来て、開けてくれた。
「おはようございます。」
ユウマさんが、こんな近くに!ドキドキだ!
「おはよう。エスシーさん、どうしたの?」
え!?なぜ私の名前を知ってるの?
でも、名前を呼ばれるのは嬉しいし、まあ良いか。
「実は、私の主人がユウマさんに会いたがっています。」
「そうなの?」
「はい。私の主人は、私たちにユウマさんを監視させたことを謝りたいと言っています。その上で、腹を割って話したいと。」
「そう。」
「マスター、やめておいた方が良いんじゃない?」
ユニコーンが、そう忠告する。確かに、警戒されて当然だ。
「クレアの心配ももっともだけど、僕は会ってみたい。」
「大丈夫?」
「アランさんは、元勇者だから色々知ってるだろう。あと、同じ世界の出身というのもあるしね。」
「え?ありがとうございます!」
アランさんの名前も知っている!?
それに、同じ世界の出身とは、どういうことだろうか?
「エスシーさん、アランさんにこれから行っても良いか聞いてもらえる?」
「これからですか!?わ、わかりました!」
これからというのにびっくりしたが、ユウマさんはテレポートできるんだった。
『アランさん、今良いですか?』
ちなみに、私はご主人を名前で呼ぶのも抵抗が有ったんだけど、アランさんに頼まれてそうしている。
『エスシーか?良いよ。どうした?』
『ユウマさんがこれからアランさんに会いたいと言っているんですが、大丈夫ですか?』
『問題ない。よろしく頼む。』
『わかりました!』
「アランさんからオーケーが出ました。」
「了解。ステラ、お願いね。」
「任せて!」
「あと、ヴァミリオ一緒にに行く?」
「ホント?やったー!」
げっ!不死鳥様も一緒なのか……アランさんは、喜びそうだけど。
それにしても、やっぱりユウマさんと従魔たちは仲が良い。
単に仲が良いだけじゃなくて、ほとんどの従魔は、ユウマさんと結婚してるらしいし……。
アランさんは優しいけど、恐らく私たちをそういう目で見ていないと思う。
テレポートする間、さりげなくユウマさんにくっついたら、ユウマさんは私を撫でてくれた。恐らく、無意識だろうけど……。
この気持ち良さは、ちょっとクセになってしまいそうだ。
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