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第4章 大侵略の前兆
閑話11~神獣の封印を解いた者~(アラン視点)
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俺が勇者候補だった時、神獣の話を聞いた。
この大陸には、四体の神獣が封印されているらしい。
昔何人かの者が封印を解こうとしたが、いかなる手段を使っても解けず、いずれ挑戦する者はいなくなったということだった。
神獣のうち一体の封印地とされる場所が、俺が勇者候補として召喚されたエラスにある。
正しくは、元々エラスの西に有った封印地をエラスに取り込んだということだ。
もし今後封印が解ける者が現れた時に、一体でも確保しておくことが狙いらしい。
その狙いは当たったのかも知れない。
遂に、神獣の封印を解く者が現れたらしい。
エラスの連中は自分たちが最強だと思っているため、他の街には興味を示さない。
だから、恐らくそのことに気付いていないだろう。
俺は勇者として認められた後、勇者を囲うエラスのやり方に疑問を持ち、直ぐに勇者を辞めてエラスを出た。
エラスが外部との交流を制限したのは今の為政者になってからで、人間以外をエラスから締め出すようになったのもそれからのようだ。
テイマーの俺が活動し難いというのも、エラスを出た要因だ。
話が逸れたが、何者かが封印を解いたことを俺が知ったのは、従魔を通してだ。
俺は鳥系の魔物と相性が良いらしく、三羽の鳥系魔物をテイムしており、各地を監視させている。
これは、俺がこの大陸を制覇するための準備とかではない。そもそも、俺はそんな器ではないと思っている。
勇者として保護される立場を捨てた俺にとって、情報収集は生き残るために重要だからだ。
三羽は優秀だが大陸すべてを監視できるはずもなく、神獣の封印を解いた者を特定できたのは、彼の者がフェニックスの封印を解いて少し経ってからだった。
最も気になったのは、その者の目的である。
俺にとって、敵となる者なのか味方となる者なのかを見極めなければならない。
俺はその者の情報を集めるべく、三羽をその者の監視に集中させた。
しかし、その者はテレポートを使う(これは、彼の者の従魔であるバイコーンのスキルらしい)ため、なかなか常時監視は難しく、遂に三体目の神獣――アース・ヴィクセン――の封印を解いてしまった。
また、不思議なことに、三羽の従魔は彼の者に好意的な報告ばかり寄越して来た。
三羽が虚偽の報告をしているとは思わないが、別の監視手段も考えなければならない。
俺は、ある女性に依頼することを思い付いた。
「お呼びですか?」
「ああ。神獣の封印を解いた者が、間もなくこの街を訪れるという情報を入手した。お前は、彼の者に取り入って、側で監視して欲しい。」
「私で良いのですか?」
「これは、お前にしか出来ないことだ。」
彼女と出会ったのは、勇者を降り、冒険者として活動を始めて少しした頃だった。
まだ大した依頼は受けておらず、あの時も低位魔物の討伐依頼を受けていた。
しかし、対象の魔物を討伐した直後、虎の様な魔物の群れに囲まれてしまった。
どうやら、俺が彼らの獲物を横取りした形になったらしい。
ステータスを見る限り俺の脅威とはならなそうだが、対魔物の戦闘に慣れてないため、囲まれてしまったのは少々厄介だった。
ちょうどその時、少し離れた所を鹿の群れが通過しようとしていた。
虎がそれに気付き、ターゲットをそちらに変えて向かって行った。
放っておいても良かったが、鹿たちが俺の代わりに襲われるのも後味が悪いので、虎の群れがある程度俺から離れたタイミングで、魔法で一掃した。
その時の鹿の群れのリーダーが、彼女である。
「群れを助けていただき、ありがとうございました。」
「えっ?」
鹿が話し掛けて来て驚いたが、言葉がわかるのは翻訳スキルのお陰だと気付いた。
「何かお礼がしたいのですが……。」
「別に気にしなくて良いから。」
助けた形になったのはたまたまだし、鹿にお礼してもらうというのもおかしな話だと思った。
「私は、人化もできますし、お役に立てることもあるかと思います。」
確かに、ステータスを見ると人化スキルが有った。
「なるほど。じゃあ、しばらく俺の手伝いをしてくれるか。」
「わかりました。ただ、今は居住地変更のための移動中なので、移動が終わるまで待ってもらえますか?」
「だったら、俺も付いて行ってやろうか?」
「良いのですか?」
「ああ。特に急ぎの用事があるわけでもないからな。」
その後、鹿のリーダーにはドゥフディという仮の名前を付けてやり、冒険者登録もさせた。
依頼をこなす上で、彼女の気配探知スキルは役に立った。
不意打ちされなければ、魔物は恐れることはないからだ。
そのため、もう十分お礼はしてもらったのではないかと思いつつも、彼女に甘えてしまっていた。
ユウマの件は、彼女には適任だと思ったが、彼女は気が進まなかったみたいだ。
彼を騙す様なことは、気が引けたのだろう。
だが、彼女は結局受けてくれた。
俺としては、これを最後に彼女とは離れようと思っている。
もし、彼女がユウマを気に入り、ずっと側に居たいと言うなら、それも良いだろう。
この大陸には、四体の神獣が封印されているらしい。
昔何人かの者が封印を解こうとしたが、いかなる手段を使っても解けず、いずれ挑戦する者はいなくなったということだった。
神獣のうち一体の封印地とされる場所が、俺が勇者候補として召喚されたエラスにある。
正しくは、元々エラスの西に有った封印地をエラスに取り込んだということだ。
もし今後封印が解ける者が現れた時に、一体でも確保しておくことが狙いらしい。
その狙いは当たったのかも知れない。
遂に、神獣の封印を解く者が現れたらしい。
エラスの連中は自分たちが最強だと思っているため、他の街には興味を示さない。
だから、恐らくそのことに気付いていないだろう。
俺は勇者として認められた後、勇者を囲うエラスのやり方に疑問を持ち、直ぐに勇者を辞めてエラスを出た。
エラスが外部との交流を制限したのは今の為政者になってからで、人間以外をエラスから締め出すようになったのもそれからのようだ。
テイマーの俺が活動し難いというのも、エラスを出た要因だ。
話が逸れたが、何者かが封印を解いたことを俺が知ったのは、従魔を通してだ。
俺は鳥系の魔物と相性が良いらしく、三羽の鳥系魔物をテイムしており、各地を監視させている。
これは、俺がこの大陸を制覇するための準備とかではない。そもそも、俺はそんな器ではないと思っている。
勇者として保護される立場を捨てた俺にとって、情報収集は生き残るために重要だからだ。
三羽は優秀だが大陸すべてを監視できるはずもなく、神獣の封印を解いた者を特定できたのは、彼の者がフェニックスの封印を解いて少し経ってからだった。
最も気になったのは、その者の目的である。
俺にとって、敵となる者なのか味方となる者なのかを見極めなければならない。
俺はその者の情報を集めるべく、三羽をその者の監視に集中させた。
しかし、その者はテレポートを使う(これは、彼の者の従魔であるバイコーンのスキルらしい)ため、なかなか常時監視は難しく、遂に三体目の神獣――アース・ヴィクセン――の封印を解いてしまった。
また、不思議なことに、三羽の従魔は彼の者に好意的な報告ばかり寄越して来た。
三羽が虚偽の報告をしているとは思わないが、別の監視手段も考えなければならない。
俺は、ある女性に依頼することを思い付いた。
「お呼びですか?」
「ああ。神獣の封印を解いた者が、間もなくこの街を訪れるという情報を入手した。お前は、彼の者に取り入って、側で監視して欲しい。」
「私で良いのですか?」
「これは、お前にしか出来ないことだ。」
彼女と出会ったのは、勇者を降り、冒険者として活動を始めて少しした頃だった。
まだ大した依頼は受けておらず、あの時も低位魔物の討伐依頼を受けていた。
しかし、対象の魔物を討伐した直後、虎の様な魔物の群れに囲まれてしまった。
どうやら、俺が彼らの獲物を横取りした形になったらしい。
ステータスを見る限り俺の脅威とはならなそうだが、対魔物の戦闘に慣れてないため、囲まれてしまったのは少々厄介だった。
ちょうどその時、少し離れた所を鹿の群れが通過しようとしていた。
虎がそれに気付き、ターゲットをそちらに変えて向かって行った。
放っておいても良かったが、鹿たちが俺の代わりに襲われるのも後味が悪いので、虎の群れがある程度俺から離れたタイミングで、魔法で一掃した。
その時の鹿の群れのリーダーが、彼女である。
「群れを助けていただき、ありがとうございました。」
「えっ?」
鹿が話し掛けて来て驚いたが、言葉がわかるのは翻訳スキルのお陰だと気付いた。
「何かお礼がしたいのですが……。」
「別に気にしなくて良いから。」
助けた形になったのはたまたまだし、鹿にお礼してもらうというのもおかしな話だと思った。
「私は、人化もできますし、お役に立てることもあるかと思います。」
確かに、ステータスを見ると人化スキルが有った。
「なるほど。じゃあ、しばらく俺の手伝いをしてくれるか。」
「わかりました。ただ、今は居住地変更のための移動中なので、移動が終わるまで待ってもらえますか?」
「だったら、俺も付いて行ってやろうか?」
「良いのですか?」
「ああ。特に急ぎの用事があるわけでもないからな。」
その後、鹿のリーダーにはドゥフディという仮の名前を付けてやり、冒険者登録もさせた。
依頼をこなす上で、彼女の気配探知スキルは役に立った。
不意打ちされなければ、魔物は恐れることはないからだ。
そのため、もう十分お礼はしてもらったのではないかと思いつつも、彼女に甘えてしまっていた。
ユウマの件は、彼女には適任だと思ったが、彼女は気が進まなかったみたいだ。
彼を騙す様なことは、気が引けたのだろう。
だが、彼女は結局受けてくれた。
俺としては、これを最後に彼女とは離れようと思っている。
もし、彼女がユウマを気に入り、ずっと側に居たいと言うなら、それも良いだろう。
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