異世界でも馬とともに

ひろうま

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第4章 大侵略の前兆

閑話10~神竜様と模擬戦~(アリス視点)

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久しぶりにセラネスのギルドに来たが、驚くことばかりだ。
可愛いものに目がない私は、ギルドに入ってすぐに可愛いドラゴンを見付けたので、近寄った。
ところが、何とそれは神竜様だった。確か封印されてたはずだけど……。

神竜様によると、側にいたユウマという人間が封印を解いてくれて、今は彼に従っているということだった。
しかし、彼は、どう見ても普通の人間だった。
悪い人ではなさそうだし、どちらかと言えば好感が持てるものの、とても神竜様を従えるようには見えなかったのだ。
しかし、実際神竜様が従っているのだから、きっと何か秘密があるのだろう。

エレンは納得できなかった様で、模擬戦を行うことが決まった。
模擬戦と言っても、彼女が一方的に攻撃して、それに耐えればユウマさんの勝ちということだった。
エレンは、耐えきれば一度だけ何でも言うことを聞くなんて言っていたけど、神竜様の言葉を信じると彼女が勝てる可能性は低いだろう。
ただ、そんな中、彼女がどの様な攻撃を行うのかということには、ちょっと興味があった。

ボルムさんへの報告の後、ユウマさんとエレンの模擬戦が始まった。
初手は、小手調べのつもりだろう、通常の攻撃だった。
2手目は、エレンの必殺技とも言える攻撃だ。
正直、大勢の人が見ている前で使うのはどうかと思うが、ユウマさんを含めてほとんどの人が何をしたのかわからなったと思うので、まあ良しとしよう。
しかし、その後エレンが鎧を脱ぎ始めたので、私はかなり焦った。
まさか、あれを使うのだろうか……。

その『まさか』だった。
ブレスあれは実戦で使い勝手が悪いとは言え奥の手であり、そうそう見せて良いものではない。
恐らくダメージを諦めて、麻痺狙いにしたと思われるが、暴挙と言わざるを得ない。
それに、人前で竜化して、後どうするつもりだろうか……。
エレンは、ブレスを放ちユウマは狙い通り麻痺したみたいだが、キュアで直されてしまった。
彼女は膝を着いているので、落ち込んでいるのだろうが、私も頭を抱えたい。

ユウマさんがエレンに近付いたと思ったら、彼女の頚を撫で始めた。
セクハラか!?
いや、エレンは大人しくしているし、これがユウマさんの要求なのだろう。
ふと嫌な感じがして隣を見ると、神竜様から黒いオーラが!
「主め、あの雌竜も落とす気か?」
「落とす?」
何のことだろう。
エレンの方に視線を戻したその時、彼女がユウマさんに抱き付いた。
えっ?何してるの!?
ヤバい、神竜様の黒いオーラが増大している。
ユウマさんが、神竜様に助けを求めるような目を向けたが、神龍様は無視していている。
そっと離れようとしたのだが……。
「お主、あやつの仲間だろう!何とかしろ!」
「は、はい!」
慌てて、エレンを引き剥がしに向かいながら思った。
『落とす』って、こういうことか……。
でも、神竜様も嫉妬するんだな。
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