異世界でも馬とともに

ひろうま

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第4章 大侵略の前兆

41-ハイド・イーグレット

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気を取り直して、鳥に尋ねた。
「それで、何かアピールできることある?」
「この羽毛ですね。」
「確かに綺麗だし、胸の毛とかふわふわして温かそうだけど。」
「でしょう?触ってみてください!」
「では、失礼して……。」
胸の毛を触らせてもらう。
会って間もない女性の胸を触るのはどうかと思うけど、鳥だからセーフだよね。
『アウトだと思うわよ。』
確かに、これはこれからの季節良さそうだけど……。
『心の中でもスルーなの?』
レモンからの念話には意識がいかないように、必死で無視した。
「羽毛が良いのはわかったけど、できることとかないの?」
「そうですね……隠蔽スキルとかありますけど。」
「えっ?」
確認させてもらおう。

================
種族:ハイド・イーグレット
年齢:5歳
性別:♀
能力値:
HP:3,000/3,000
MP:7,960/8,000
 力:D
 体力:B
 知力:C
 精神力:C
 素早さ:B
スキル:飛行、隠蔽
================

================
【ハイド・イーグレット】
隠蔽スキルを持つ、鷺に似た魔物。
鳥系の魔物としては大きい方で、力も強い。
美しい蓑毛と胸の柔らかい羽毛が特徴。

【隠蔽】(アクティブ)
自身または他者1体の気配を消し、感知されないようにする。
気配感知系スキルでも感知は不能。
================

種族名わかりやす過ぎるだろう。あと、羽毛はやっぱり特徴的なんだな。
まあ、それは置いておいて、さっき気配を感じなかったのは、このスキルを使っていたせいか。
少しMPが減っているし……。
これ使えば、エラスの神獣の所に行けるんじゃないか?
まあ、そんなに甘くないだろうけど、役に立つことは間違いない。
「結構良いスキルだから、自慢して良いんじゃない?」
「いえ。私の種族は皆持ってますので……。」
「それはそうだけど……まあ、良いか。それで、従魔になってくれるということで良いの?」
「はい!お願いします!」
「わかった。ステラ、説明お願いね。」
「やっぱり、私なのね……。」

嘴とのキスはやはり無理があったが、無事従魔契約できた様だ。
名前付けないとな……。
白いから、ホワイトとかスノウとか……は、あまりに単純過ぎるな。
蓑毛だから……あ、英語がわからない。
「名前はミノンで良いかな?」
「はい!ありがとうございます!」
強引だったが、喜んでもらえたようなので、良しとしよう。

「これから、リーソンに向かうんだけど、ミノンはどうしよう。」
従魔登録してないから、街に入る時揉める可能性がある。
セラネスだったら、新しい従魔を連れていっても、また増えたのか程度に見てもらえるけど……。
隠蔽スキル使ってもらうのもありだけど、そこまですることもないだろう。
「私は待っておきますよ。」
「ごめんね。そうしてもらえるとありがたいよ。夕方迎えに来るからね。」
「わかりました、ユウマ様。」
「あのー……様はやめてくれるかな。」
「すみません。では、ユウマさんで良いですか?」
「まあ、それなら良いかな。」

~~~
街の入り口ではステラたちを見て警戒されたが、ギルドカードを見せたらすんなり通してもらえた。
街の中ではステラに乗せてもらって歩いたが、セラネスやワーテンと違って、物珍しげに見られた。
最近気にしてなかったけど、やっぱりバイコーンが人を乗せているのは異様なんだろう。
ギルドへ行くと、ギルドマスターの部屋に案内された。
ギルドには、僕のことについて連絡が入っていたようだ。
「はじめまして。ユウマです。こっちはステラ、肩にとまっているのはヴァミリオです。」
「ようこそ、リーソンへ!ギルドマスターをしている、やよいです。」
ギルドマスターは、狐の獣人で女性だった。コリーさんと違って、人間の顔に狐耳という感じだ。
女性のギルドマスターは、初めてだな。
「ちょっと私は?」
「ごめんごめん。腕の中に居るのは、レモンです。」
「もしかして、地狐様?」
やよいさんは、レモンを見て、慌てて頭を下げていた。
話を聞くと、やよいさんは、あの巫女の村出身らしい。
名前が和風なのも、そのせいだろう。
冒険者がしたくてこのリーソンに来たのだが、なぜかギルドマスターをやらされる羽目になったということだった。

「ボルムさんからは、ユウマさんがエラスについての情報を欲しがっていると聞いてますが。」
「はい。正確には、エラスに封印されている神獣についてですけど。」
「神獣については、正直良くわからないんですよ。確かに封印されている場所はあるらしいんですが……。」
「そうなんですか。」
あまり期待してなかったけど、やっぱり残念だな。
取り敢えず、エラスのことについて教えてもらおう。

やよいさんから聞いたエラスの話は、アリスさんに聞いたのとほぼ同じだった。
人間至上主義で、魔物だけでなく動物や獣人なども入るのはかなり制限されるらしい。
まあ、元の世界でも、公の施設は介助犬とかを除くと動物は入れなかったから、それと同じとも言える。
元の世界に獣人が存在した場合、その扱いはどうなっていただろうか……。
もっとも、このようになったのは今の君主になった約20年前かららしい。
神獣についての情報は、『確かにエラス内に封印された場所が有り、厳重に警備されているらしい』という程度だった。
「ところで、ユウマさんに受けて欲しい依頼があるのですが……。」
エラスの話が終わって、やよいさんが遠慮がちに言ってきた。
「どんな依頼ですか?」
「薬草採取の依頼です。」
「またですか?」
いけない、つい声に出てしまった。ここでは初めてなのに……。
「すみません……。そんなに急を要するものではないのですが、なかなか受け手がいないんです。」
「どうして受け手がいないんですか?」
何となく想像が着くけど……。
「場所が問題なんですよね。」
「やっぱり!」
竜香草りゅうこうそうという薬草で、万病に効くと言われているものなんですが、ある森の奥深くに生えているらしいです。ここの冒険者が、他の薬草採取をしていた時たまたま見付けたのですが、何か大きな魔物の気配を感じて慌てて帰って来たようです。」
「変わった名前の草ですね。」
「名前の由来としては、竜が好む香りがするためという説と、形が竜に似ていて香りも強いためという説が有りますね。依頼の詳細は掲示板に書かれているので、それを見てください。」
「わかりました。まずは、見てみます。」

掲示板に貼られている依頼票を見ていくと、やよいさんが言っていた依頼があった。

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件名:竜香草の採取
推奨ランク:A
報酬:10,000G以上
ポイント:1,000以上
内容:南の森で発見された、竜香草を採取する。場所は、最深部と思われる。少量でも依頼達成とするが、量に応じて報酬を決定する。なお、その近くにいると思われる魔物の情報も、買い取り対象とする。
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僕たちであれば問題ないだろうから、受けることにした。
ただ、魔物というのは気になる……竜香草の香りを竜が好むのが本当なら、ドラゴンの可能性もあるな。

「あのー、すみません。」
「僕ですか?」
掲示板から依頼票を取って受付に行こうとしたところで、女の人に声を掛けられた。
「はい。私はドゥフディといいます。」
話を聞くと、その依頼の薬草を採取したいのだが、自分だけではランク不足で危険なので、依頼に同行させてもらえないかということだった
「ずっと、この依頼を受ける人を待ってたんです。私はその場所の近くまでは案内できますし、もちろんお礼もします。」
『この人、嘘いてるわね。』
レモンが念話を送ってきた。
『嘘?』
『ユウマに同行するのが目的みたいね。だけど、本人は気が進まない感じだから、誰かに頼まれたのかもね。』
うーん。どうするかなー。
「お願いします!何でもしますから!」
今、何でもするって……いや、変なこと考えてないよ?そもそも、人間の女性に惹かれたりしないし。
「取り敢えず、ギルドガード見せてもらえる?」
「は、はい。」

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名前:ドゥフディ
種族:ハイ・ディープ・フォレスト・ディア
性別:♀
年齢:12歳
ランク:D
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あ、人間じゃなかった。
人間の姿なのはスキルなのだろうか。
あと、もう一つ気になることがある。
さっき彼女が名乗った時もそうだったが、名前に不自然さを感じてしまう。
失礼かも知れないが、相手も嘘を吐いているということだし、ちょっとステータスを見せてもらおう。

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種族:ハイ・ディープ・フォレスト・ディア(ハイブリッド)
年齢:12歳
性別:♀
HP:1,800/1,800
MP:22,000/22,000
能力値:▼
スキル:気配感知、身体強化、人化
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【ディープ・フォレスト・ディア】
森の深部に群れを作って暮らす鹿系の魔物。
雄には角が有り。雌には角がない。
雄は力と体力が高め、雌は知力と精神力が高めである。

【ハイ・ディープ・フォレスト・ディア】
ディープ・フォレスト・ディアの上位種。
雄はHPが高く、雌はMPが高い。
寿命は平均500年位。
種族スキルとして、気配感知スキルを保持。
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矢張り、人化スキルだったようだ。
あと、正式な名前はない……ということは、ギルドガードの名前は仮の名前ということだ。
なんとなくであるが、名前を付けたのは監視していた鳥の契約主のような気がする。
ソニック・クロー(Sonic Crow)からSC(エスシー)、ディープ・フォレスト・ディア(Deep Forest Deer)からDFD(ドゥフディ)ということではないだろうか。
「まずは、話を聞かせてもらおうかな……うちに来てもらえる?」
「わかりました。」

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