異世界でも馬とともに

ひろうま

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第3章 平和な日常

35-アース・ヴィクセン

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島に降りたことで、僕に埋め込まれた記憶が蘇った。
この記憶、かなり狭い範囲のみだから、微妙だな。
ヴァミリオを肩に乗せ、セルリアと並んで目的の場所に歩いて行った。
少し歩くと例のドーム状の物が有り、中には繭らしき物があった。
獣神様はヒントをくれなかったが、封印が解けることは確信しているらしい。謎過ぎる。

透けて見えるのは黄色い狐っぽい。妖狐という感じではなく普通の狐の感じだ。
しかし、北だから玄武に近い何かかと思ったら違ったな。
勝手に四神のイメージをしていた上、最初のブルードラゴンとフェニックスが青龍と朱雀に近かったから、そう思い込んでしまっていた。
黄色ということは土、つまり四体の神獣は四大元素と対応していると思われる。
一応、ステータスを見ておこう。

================
種族:アース・ヴィクセン
性別:―
年齢:―
状態異常:封印
能力値:(封印されているため、閲覧できません。)
スキル:(封印されているため、閲覧できません。)
================

================
【アース・ヴィクセン】
神獣の一体。土属性。
直接攻撃より精神的に支配することを得意とする。
神獣の中では、最も多くの世代交代を行っている種族である。
================

何か、種族名無理して横文字にしてるような気がする。
閲覧スキルのこだわりか?それとも、翻訳スキルのせい?
「こいつは、幻術を中心に使ってくるから、嫌らしいのだ。」
「ボクもちょっと苦手。」
ヴァミリオに苦手な相手がいたとは!
でも、幻術とか使うんだな……やっぱり妖狐みたいな感じかな?見掛けに寄らないな。

しばらく見ていたが、何も起きない。このまま見ていて何とかなるのかな?
「セルリア、ヴァミリオ、何で封印解けたかわからないんだよね。」
「うむ。申し訳ない。」
「謝ることないよ。」
「ボクもわからないけど、確実に言えることがあるよ!」
「何?」
「ユウマに付いて来て良かったということだよ!」
「ヴァミリオ……。ありがとう。」
不意討ちは、狡いと思う。
「それは我も同じだ。付いて行く相手は、主以外はあり得ん。」
「セルリア、ありがとう。」
嬉しいこと言ってくれるな。
「何イチャついてるの?」
「ん?」
見ると、繭が薄らいでいた。
「あなたたち、ブルードラゴンとフェニックスよね。その人間は誰なの?」
あ、勝手に「のじゃ」系のイメージだったけど、意外と普通だな。
「我の主だ。」
「ユウマはボクの夫だよ!」
ヴァミリオは、今それ言うの?空気読んで欲しい。
「我も、主の妻だぞ!」
セルリアも、何対抗してるの!?
「面白そうな人間ね。」
すっかり繭が消えたことで、その姿がはっきり見えるようになった。。
可愛い!あと、モフモフだ!
「か、可愛い……?」
あれ、僕声に出てたかな?
取り敢えず、もう一度ステータスを確認しよう。

================
種族:アース・ヴィクセン
性別:♀
年齢:983歳
HP 2,000/380,000
MP 2,000/460,000
能力値:
 力:B
 体力:B
 知力:SSS
 精神力:SSS
 素早さ:B
スキル:土魔法、幻術、読心術、魅了、飛行、小型化、念話、翻訳
加護:獣神の加護
================

随分と偏ったステータスだな。あと、スキルが多い。
さっき僕の心が読まれたのは、読心術のせいか。

「ちょっと、遊ばせてもらうわ。」
「主、気を付けろ!」
ん?今何かされたのか?
恐らく、幻術を使われたのだろうが、僕には効果がなかったようだ。
「効いてない?なら、これはどうかしら。」
たぶん魅了を使ったのだろう。魅了耐性があるから、これも大丈夫だが……。
「あなたは、私のしもべになるのよ!」
これは、魅了された振りをして、モフモフするチャンスではないだろうか?
エルミナに魅了掛けられたことを思いだしながら、彼女に近付く。
『ユウマ、大丈夫?』
ヴァミリオが気にして、念話を送ってきた。
『大丈夫だよ。セルリアの所に行ってて。』
『うん。気を付けてね。』
ヴァミリオが飛んで行ったのを感じたが、見送らずに歩き続けた。
アース・ヴィクセンは魅了が効いたと思ったのだろう、少し安心した様子になった。
「フフフ……跪いて!」
僕がもう少しで手が届きそうな位置まで来たとき、彼女が命令した。
僕は命令にあながえないような雰囲気を醸しだしながら膝を付いた。
そこへ、彼女が勝ち誇ったように寄って来た。今だ!
「えっ?」
僕は彼女の後ろに回り込み、大きな尻尾のモフモフを堪能させてもらった。
ちなみに尻尾は一つだけだ。千年生きていないからか、そもそも尻尾が増えないのかはわからないが……。
「何するの!やめてよ!」
「モフモフ。」
モフモフを堪能しながらふと上を見ると、背中に小さい翼が有った。
飾りみたいで、飛ぶのに役立つ訳ではないと思う。
「くぅん……。」
彼女は小さくなり仰向けになったので、お腹を撫でた。気持ち良さそうだ。
「主、恐るべし……。」
セルリアが呟いているが、取り敢えずスルーしておこう。
お乳に触らないように注意しないとな。
ん……?僕はあることに気付いた。
複乳じゃない!
通常狐の乳は複数の対になっているはずだが、後ろの方に一対しかない。神獣だし、複数の子供を産むことがないためだろう。
僕が撫でるのを止めたら、彼女は僕に飛び付いて僕の口をなめ始めた。
もう、子狐にしか見えないな。可愛い!
≪従魔契約が成立しました。≫
え?何で?

「え!?私なんてことを!もうお嫁に行けないっ!」
彼女は僕から慌てて離れた。正気に戻ったみたいだ。
「ごめんね。」
「うう……。油断していた私が悪いのよ。」
「従魔になっちゃったみたいだけど、どうする?」
「こうなったら、あなたに責任取ってもらうしかないわね。」
彼女は、そう言うと僕の腕に収まった。
ヴァミリオみたいなこと言ってるんだけど……。
「あ、僕はユウマ。君にも名前付けないとね。えっと、狐だからフォッ……。」
危ない!NGな名前を口にするところだった。
いつものように、色からの連想で付けるか。
彼女の色は黄色。いわゆるきつね色ではなく、かなり明るい黄色だ。なので……。
「レモンでどうかな。」
「それで良いわ。よろしくね、ユウマ。」
「よろしくね。レモン。」

「おい、雌狐。主にくっつき過ぎじゃないか?」
「そうだそうだ!」
「あら、ドラゴンさん、フェニックスさん、嫉妬?あと、私は雌狐じゃなく、レモンよ。」
「我はセルリアだ。」
「僕はヴァミリオだよ!」
怒りながらも自己紹介する、セルリアとヴァミリオ。
見ると、セルリアの頭にヴァミリオが乗っている。レアな構図だな。
「そう。セルリア、ヴァミリオ、よろしくね。あなたたちが、ユウマと一緒にいる理由が良くわかったわ。だって、こんなに心地よいんだもん。」
セルリア、殺気を出すのはやめて!
「僕の側って、心地良いの?」
「そうよ。えーと……私たち神獣は食事するようにできていないの、知ってる?」
「知ってるよ。」
「私たちの体はほとんど魔素でできているの、だから体を小さくできるんだけど……。」
なるほど……って、魔素って何だ?何となくはわかる気がするけど。
「私たちの体を維持するためには、普通の魔物より多くの魔力を取り込む必要が有るの。もちろん、魔力が弱い場所でも取り込めるようにはできているんだけど、当然魔力が強い場所の方が過ごし易いのよ。」
「それはわかるけど、MP上限無しになったら、僕でなくても同じじゃないの?」
「昔、魔力に詳しい魔物に聞いたんだけど、MP上限無しと言っても体内の魔力保有量が無限な訳じゃないらしいわ。」
詳しい魔物って何?魔力の研究している魔物とかいるのかな?そっちも気になるけど、今は置いておこう。
「そうなの?まあ、言われてみれば、確かにそうだろうけど。」
「MP上限無しというのは、体外から必要な魔力を引き出せるということらしいわ。だから、同じMP上限無しでも、魔力保有量は皆違うみたい。」
「と言うことは?」
「ユウマの魔力保有量は膨大だから、こうしてると魔力が流れて来るのよ。しかも、質も良いわ。」
「あ、ありがとう。でも、質って?」
「私もよくわからないんだけど、個体によって魔力の純度に差が有るらしいわ。気持ち良いから、きっと質が良いんだろうって思ったのよ。」
ヴァミリオが今でも僕の肩に留まりたがるのは、そういうことが有ったのか。

従魔になったみたいなので、改めて、レモンと僕のステータスを確認しておこう。

================
名前:レモン
種族:アース・ヴィクセン
性別:♀
年齢:983歳
HP 2,200/380,000
MP 2,000/460,000
能力値:▼
スキル:土魔法、幻術、読心術、魅了、飛行、小型化、念話、翻訳、MP消費防御、魅了耐性
加護:獣神の加護
契約主:ユウマ
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名前:ユウマ
種族:ハイ・ヒューマン
性別:♂
年齢:35歳
能力値:▼
スキル:閲覧、MP消費防御、翻訳、念話(遠隔可)、MP共有、スキル共有、魅了耐性
寵愛・加護:調停者の加護、馬女神の寵愛、神竜の寵愛、不死鳥の寵愛、地狐の加護
妻:ルナ、ステラ、クレア、ヴァミリオ 、セルリア、エルミナ、ルミネア
従魔:クレア(ユニコーン)、ステラ(バイコーン)、セルリア(ブルードラゴン) 、エルミナ(フォールン・ペガサス)、ヴァミリオ(フェニックス)、レモン(アース・ヴィクセン)
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================
【地狐の加護】
・哺乳類系の魔物から好意を寄せられやすくなる。
・念話スキルが使用可能となる。
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え?哺乳類系って広くない?
つまり、残り一体の神獣は哺乳類ではないことが確定したと思って良いのかな?
だとすると、爬虫類とかかな?ドラゴンは爬虫類とは違うっぽいし(ドラゴンを爬虫類と同一視すると怒りに触れるのは、ラノベでありがちなパターンだ)。
「そうよ。よくわかったわね。」
「心の中読まないでよ……。あれ?さっき、魅了された振りしている時は、僕の心読めなかったの?」
「やっぱり、振りしてたのね。他のスキル使っている時は、同時に読心術使えないのよ。」
危ない。あまり考えてなかった。

「そろそろ、家に戻ろうか。先ずは、カラドリウスの山に……。」
もう、「カラドリウスの山」と呼ぶことにした。本当は別の名前が有るんだろうけど。
「あ、ちょっと村に寄って良い?」
「村?」
「カラドリウスと会ったのなら、その近くに村が無かった?」
「直接山に行ったんで、気付かなかったよ。でも、山の麓に門番がいたから、その人が住んでいる所はあるだろうね。で、その村に何か用が有るの?」
「巫女がいるなら挨拶しとこうかなと思うんだけど。昔、良くお話ししてたの。」
「巫女はいるみたいなこと言っていたけど、もう代替わりしてると思うよ。」
「えっ?私、そんなに長く封印されていたの?」
「300年位らしいよ。」
「……。」
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