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第3章 平和な日常
27-クレア母の昔話
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「マスター、おはよう。」
「クレア、おはよう。どうしたの?」
翌朝、起きると既にクレアがいた。
「夕べは、何もなかったみたいね。」
「それをわざわざチェックしに来たの?」
「エルミナ、残念だったわね。」
「何がですか?私はユウマさんと一緒に寝ることができて嬉しかったです。」
エルミナは、特に期待していた訳ではないようで、ほっとした。もし誘われていたら、危なかった気がする。
「ところで、マスター。お母さんの所には今日行く?」
「そうだね。行くなら早い方が良いよね。」
「そうね。」
お義母さんの所には、午前中に行くことになった。
午後からだとセルリアが文句を言いそうなので、朝ギルド寄った後、乗馬を休みにして行くことにしたのだ。
行くのはクレアと、テレポートするためステラが一緒だが、他のメンバーは留守番してもらっている。
ステラ、いつも申し訳ないな。
「お義母さん、おはようございます。」
「ユウマ、おはよう。早速子作りに来たのか?」
「違います。」
お義母さん、相変わらずだな。
「今日はお母さんにお願いが有って来たの。」
「そうか。ところで、ユウマがお前に乗ってるのは見たことないけど、乗せたこと有るのか?」
「ないわ。ユニコーンは処女以外乗せてはいけないんでしょ?」
「そんなことはない。確かに種族の特性で、処女かどうかはわかるが、乗せるのは処女である必要はない。」
「そうなの?」
クレア、どこから間違った情報仕入れたんだろう。まあ、多分前の主からだろうけど。
「お前が乗せないなら、私がユウマを乗せよう。」
「えっ?」
お義母さんは、僕にお尻を向けたと思ったら、腰を落として尻尾を上げた。これって……。
「さあ、乗ってくれ。」
「それ、乗るの意味が違いますよね?」
「お母さん、それがやりたかったのね……。」
クレアも呆れている。
お義母さんは、体勢を戻して、こちらを向いた。
「ダメか……。それで、お願いとはなんだ?」
「私の角を少し売るということになったんだけど……あ、もちろん、私から言い出したことよ。お母さんの角の方が高く売れるだろうから、できれば少しもらえないかなと思ったの。」
「失礼なことをお願いしてすみません。」
「成る程……。」
お義母さんは目を瞑り、何か考えているようだった。
しばらくして、お義母さんは目を開けて、クレアに向かって言った。
「私はユウマと二人で話がしたいから、お前は少し外してくれないか?」
「えっ!?マスターに変なことしないでよ!」
「大丈夫だ。心配するな。」
「信用できないんだけど……。」
クレアは、そう言いつつも、お義母さんの結界から出ていった。
「これから言うことは、娘には言っていない。娘に伝えるかどうかは、ユウマの判断に任せる。」
「わかりました。」
「こっちに来てくれ。」
「はい。」
お義母さんに着いて行くと、二つの石が置いてあり、お義母さんはその前で止まった。
「これは、両親の墓だ。」
「……。」
「私の母ももちろんユニコーンだが、父は勇者だったらしい。」
「ええっ!」
お義母さんはかなり高齢なはずだ。
そんな前から、勇者がいたのか!
「これは母から聞いた話だが……。母は、父に負けて従魔になった。最初は単なる主と従魔の関係だったが、そのうちお互い異性として意識し始め、遂には結婚するに至った。」
「……。」
「母が妊娠したとわかった父は、勇者を引退して穏やかに暮らそうと考えていたらしい。しかし、タイミング悪く、異世界からの侵略が始まり、父と母は戦闘に駆り出された。」
「……。」
やはり、そのときの勇者も、異世界からの侵略に対抗するための存在なんだな。
「侵略は防ぐことができたが、父は魔法では回復できないほど負傷し、ここで力尽きたということだ。」
「そんなことが……。」
「母はここに父の墓を作り、ずっとここを守ってきた。母も消耗が激しかったようで、まだ若かったにも関わらず、父を追うように亡くなってしまった。
母は亡くなる前に、この話を私にしてくれた。私は、その意志を引き継いで、この場を守っている。」
「そうだったんですね。」
僕は、お墓に向い、目を瞑って手を合わせた。
「ユウマと娘の関係を見て、父と母も似たような関係だったのだろうと思ったのだ。」
「……。」
「私は娘に、私の跡を継いでここを守って欲しいと思っていた。娘は、それに反発したのだと思う。」
「……。」
「もう、私のわがままを娘に押し付けるのはやめようと思う。ユウマ、改めて娘のことを頼む。」
「もちろん、クレアのことは大事にします!」
お義母さんは頷いて、言葉を続けた。
「角の件は問題ない。要るときに来ると良い。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「私ももう長くないからな。私が死ぬまで待っていても良いが、生きているうちの方が、角よ質が良いだろう。」
「そんな……。クレアのためにも、まだまだ長生きしてください。」
「それは……。いや、そうだな。」
お義母さんは、言い掛けた言葉を飲み込んで、そう言った。
待てよ……。もう長くないということは、ユニコーンの平均寿命である3000年位生きているということだ。
つまり、何度も異世界からの侵略を経験しているのではないだろうか?
「お義母さん、ちょっと聞きたいんですが。」
「ん?何だ?」
「お義母さん自身は、先程言われたような異世界からの侵略は何度も経験したのですか?」
「ここに侵略者が現れたのは、この前話した娘が生まれる前の1回だけだ。」
それまでも、恐らく異世界からの侵略があったはずだ。
だとすると、ここまで影響が及んだその時は、何かがいつもと違っていたということになる。
「その時は、大丈夫だったんですか?」
「そんなに多くはなかったし、奴らは結界の中には入って来れなかったから、問題なかった。」
「さすが、お義母さん!」
「ふん!我を誰だと思っているのだ。」
うーん……、表情が読めない。
犬系と違って嬉しさが尻尾に現れたりもしないからな。
「ところで、お義母さん。折角来たので、甘えさせてもらって良いですか?」
「もちろん。乳も吸っても構わないが。」
「それは遠慮しときます。」
その後、しばらくお義母さんに抱き付かせてもらった。
お義母さんと別れて、外に出ると、クレアが話し掛けてきた。
「マスター何かされなかった?」
「何もされなかったよ。話をしただけ。あと、角もくれるって。」
抱き付かせてもらったことは、わざわざ言わなくても良いだろう。
「それは良かったわ。」
~~~
「今日は暑いね。」
「そうだな。」
午前中はそうでもなかったが、午後から暑くなった。
8月は1年で一番暑い月らしいが、日本の夏に比べると大した暑さではないと思っていた。
しかし、今日はそこそこ暑くなった。もちろん、猛暑日には程遠いが。
セルリアに、ついついそのことを話したら、彼女も同意してくれた。
彼女は暑さに弱そうだしな。
「あ、そうだ。セルリア、タルト迄氷を売りに行かない?」
「良いぞ。往復するのに十分時間があるからな。主の訓練にもちょうど良いだろう。」
「ありがとう。お願いね。」
このところあまり暑さを感じなかったので、氷のことはすっかり忘れていた。
「じゃあ、飛ばすぞ。しっかり捕まっとけよ。」
昨日よりかなり速く飛んだと思われるが、必死でしがみつく程ではなかった。
タルトまで掛かった時間は、体感で30分位。ということは、思ったより、スピードが出ていたのだろう。
「セルリア、ありがとう。今のでどれくらい?」
「昨日と比べると倍位だな。今の3倍迄は行けるが、あまり速く飛ぶと我にも負担が掛かる。主が耐えられないと思うから、上げられるのはもう少しだな。」
「そうなんだ。」
恐らく、物理的な問題だろうな。
「なので、今の速度で慣れたら、旋回や上昇下降等をやっていこうと思う。」
「わ、わかった。」
うわー。酔いそう。
タルトの前に降りると、クラルさんがやって来た。
「クラルさん、こんにちは。」
「やはり、ユウマさんでしたか。ドラゴンが近付いて来てると聞いて警戒してたのですが、水色なので恐らくユウマさんだろうと……。」
「お騒がせして、すみません。突然思い付いたので、連絡できませんでした。」
「いつもテレポートで来られてるようなので、ドラゴンに乗って来られるとは思いませんでした。」
「本当にすみませんでした。」
「それで、今日はどうされたんですか?」
「はい。今日は暑いので、氷が要るかなと思いまして。」
「おぉ、それはありがたい!確かに今日は買っていく人が多く、不足気味になってたんですよ。」
「それなら、来た甲斐が有りましたね。」
お騒がせしただけだと、申し訳無さ過ぎる。
ギルドの冷凍庫には、戦闘訓練の時見たタンクが5個並んでいた。
「3つ空になっているので、この前のようにお願いできますか?」
「セルリア、お願いできる?」
「任せておけ。」
相変わらず、豪快に氷を割るセルリア。
「ありがとうございました。代金は、受付で受け取ってください。」
「わかりました。こちらこそ、ありがとうございました。」
代金は120Gだった。これも預けることができるということなので、預けることにした。
「折角来たから、依頼見ていくか。」
ここの依頼見たことないから、どんな依頼が多いか調べるのも悪くないと思う。
依頼は、低ランク限定の採取系が多かった。討伐は無い。勝手な想像だが、ここでは軍隊も討伐を行っているのだろう。
気になる依頼はなかったので、ギルドを出ようとすると……。
「ユウマさん、ちょっと待ってください。」
「クラルさん、どうしました?」
「受ける人がいないし、緊急性もないので、掲示をやめた依頼がありまして……。期限はないので受けてもらえればありがたいのですが。」
「どんな依頼ですか?」
「これです。」
================
件名:薬用朱菊の採取
推奨ランク:B
報酬:10,000G
ポイント:1,500
内容:薬用朱菊を10本採取する。本数が少ない場合や状態が悪い場合、報酬を減額する。また、10本を超えて採取しても報酬の追加はない。
================
「どうして受ける人がいないんでしょう。」
「その場所が問題でして……。」
またか!
「山に囲まれていて、辿り着く迄が大変なんです。他の所にはまだ見付かってなくて。」
「成る程。空から行ける僕には簡単だろうということですか。」
「すみません。」
「いえ。期限がないなら、受けましょう。場所を教えてください。」
場所は、タルトの北東に有るようだ。その方向に山はあまり無く、空からだと簡単にわかるだろうということだった。
今日はあまり余裕無くなったから、明日にでも場所を特定しておこう。
「クレア、おはよう。どうしたの?」
翌朝、起きると既にクレアがいた。
「夕べは、何もなかったみたいね。」
「それをわざわざチェックしに来たの?」
「エルミナ、残念だったわね。」
「何がですか?私はユウマさんと一緒に寝ることができて嬉しかったです。」
エルミナは、特に期待していた訳ではないようで、ほっとした。もし誘われていたら、危なかった気がする。
「ところで、マスター。お母さんの所には今日行く?」
「そうだね。行くなら早い方が良いよね。」
「そうね。」
お義母さんの所には、午前中に行くことになった。
午後からだとセルリアが文句を言いそうなので、朝ギルド寄った後、乗馬を休みにして行くことにしたのだ。
行くのはクレアと、テレポートするためステラが一緒だが、他のメンバーは留守番してもらっている。
ステラ、いつも申し訳ないな。
「お義母さん、おはようございます。」
「ユウマ、おはよう。早速子作りに来たのか?」
「違います。」
お義母さん、相変わらずだな。
「今日はお母さんにお願いが有って来たの。」
「そうか。ところで、ユウマがお前に乗ってるのは見たことないけど、乗せたこと有るのか?」
「ないわ。ユニコーンは処女以外乗せてはいけないんでしょ?」
「そんなことはない。確かに種族の特性で、処女かどうかはわかるが、乗せるのは処女である必要はない。」
「そうなの?」
クレア、どこから間違った情報仕入れたんだろう。まあ、多分前の主からだろうけど。
「お前が乗せないなら、私がユウマを乗せよう。」
「えっ?」
お義母さんは、僕にお尻を向けたと思ったら、腰を落として尻尾を上げた。これって……。
「さあ、乗ってくれ。」
「それ、乗るの意味が違いますよね?」
「お母さん、それがやりたかったのね……。」
クレアも呆れている。
お義母さんは、体勢を戻して、こちらを向いた。
「ダメか……。それで、お願いとはなんだ?」
「私の角を少し売るということになったんだけど……あ、もちろん、私から言い出したことよ。お母さんの角の方が高く売れるだろうから、できれば少しもらえないかなと思ったの。」
「失礼なことをお願いしてすみません。」
「成る程……。」
お義母さんは目を瞑り、何か考えているようだった。
しばらくして、お義母さんは目を開けて、クレアに向かって言った。
「私はユウマと二人で話がしたいから、お前は少し外してくれないか?」
「えっ!?マスターに変なことしないでよ!」
「大丈夫だ。心配するな。」
「信用できないんだけど……。」
クレアは、そう言いつつも、お義母さんの結界から出ていった。
「これから言うことは、娘には言っていない。娘に伝えるかどうかは、ユウマの判断に任せる。」
「わかりました。」
「こっちに来てくれ。」
「はい。」
お義母さんに着いて行くと、二つの石が置いてあり、お義母さんはその前で止まった。
「これは、両親の墓だ。」
「……。」
「私の母ももちろんユニコーンだが、父は勇者だったらしい。」
「ええっ!」
お義母さんはかなり高齢なはずだ。
そんな前から、勇者がいたのか!
「これは母から聞いた話だが……。母は、父に負けて従魔になった。最初は単なる主と従魔の関係だったが、そのうちお互い異性として意識し始め、遂には結婚するに至った。」
「……。」
「母が妊娠したとわかった父は、勇者を引退して穏やかに暮らそうと考えていたらしい。しかし、タイミング悪く、異世界からの侵略が始まり、父と母は戦闘に駆り出された。」
「……。」
やはり、そのときの勇者も、異世界からの侵略に対抗するための存在なんだな。
「侵略は防ぐことができたが、父は魔法では回復できないほど負傷し、ここで力尽きたということだ。」
「そんなことが……。」
「母はここに父の墓を作り、ずっとここを守ってきた。母も消耗が激しかったようで、まだ若かったにも関わらず、父を追うように亡くなってしまった。
母は亡くなる前に、この話を私にしてくれた。私は、その意志を引き継いで、この場を守っている。」
「そうだったんですね。」
僕は、お墓に向い、目を瞑って手を合わせた。
「ユウマと娘の関係を見て、父と母も似たような関係だったのだろうと思ったのだ。」
「……。」
「私は娘に、私の跡を継いでここを守って欲しいと思っていた。娘は、それに反発したのだと思う。」
「……。」
「もう、私のわがままを娘に押し付けるのはやめようと思う。ユウマ、改めて娘のことを頼む。」
「もちろん、クレアのことは大事にします!」
お義母さんは頷いて、言葉を続けた。
「角の件は問題ない。要るときに来ると良い。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「私ももう長くないからな。私が死ぬまで待っていても良いが、生きているうちの方が、角よ質が良いだろう。」
「そんな……。クレアのためにも、まだまだ長生きしてください。」
「それは……。いや、そうだな。」
お義母さんは、言い掛けた言葉を飲み込んで、そう言った。
待てよ……。もう長くないということは、ユニコーンの平均寿命である3000年位生きているということだ。
つまり、何度も異世界からの侵略を経験しているのではないだろうか?
「お義母さん、ちょっと聞きたいんですが。」
「ん?何だ?」
「お義母さん自身は、先程言われたような異世界からの侵略は何度も経験したのですか?」
「ここに侵略者が現れたのは、この前話した娘が生まれる前の1回だけだ。」
それまでも、恐らく異世界からの侵略があったはずだ。
だとすると、ここまで影響が及んだその時は、何かがいつもと違っていたということになる。
「その時は、大丈夫だったんですか?」
「そんなに多くはなかったし、奴らは結界の中には入って来れなかったから、問題なかった。」
「さすが、お義母さん!」
「ふん!我を誰だと思っているのだ。」
うーん……、表情が読めない。
犬系と違って嬉しさが尻尾に現れたりもしないからな。
「ところで、お義母さん。折角来たので、甘えさせてもらって良いですか?」
「もちろん。乳も吸っても構わないが。」
「それは遠慮しときます。」
その後、しばらくお義母さんに抱き付かせてもらった。
お義母さんと別れて、外に出ると、クレアが話し掛けてきた。
「マスター何かされなかった?」
「何もされなかったよ。話をしただけ。あと、角もくれるって。」
抱き付かせてもらったことは、わざわざ言わなくても良いだろう。
「それは良かったわ。」
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「今日は暑いね。」
「そうだな。」
午前中はそうでもなかったが、午後から暑くなった。
8月は1年で一番暑い月らしいが、日本の夏に比べると大した暑さではないと思っていた。
しかし、今日はそこそこ暑くなった。もちろん、猛暑日には程遠いが。
セルリアに、ついついそのことを話したら、彼女も同意してくれた。
彼女は暑さに弱そうだしな。
「あ、そうだ。セルリア、タルト迄氷を売りに行かない?」
「良いぞ。往復するのに十分時間があるからな。主の訓練にもちょうど良いだろう。」
「ありがとう。お願いね。」
このところあまり暑さを感じなかったので、氷のことはすっかり忘れていた。
「じゃあ、飛ばすぞ。しっかり捕まっとけよ。」
昨日よりかなり速く飛んだと思われるが、必死でしがみつく程ではなかった。
タルトまで掛かった時間は、体感で30分位。ということは、思ったより、スピードが出ていたのだろう。
「セルリア、ありがとう。今のでどれくらい?」
「昨日と比べると倍位だな。今の3倍迄は行けるが、あまり速く飛ぶと我にも負担が掛かる。主が耐えられないと思うから、上げられるのはもう少しだな。」
「そうなんだ。」
恐らく、物理的な問題だろうな。
「なので、今の速度で慣れたら、旋回や上昇下降等をやっていこうと思う。」
「わ、わかった。」
うわー。酔いそう。
タルトの前に降りると、クラルさんがやって来た。
「クラルさん、こんにちは。」
「やはり、ユウマさんでしたか。ドラゴンが近付いて来てると聞いて警戒してたのですが、水色なので恐らくユウマさんだろうと……。」
「お騒がせして、すみません。突然思い付いたので、連絡できませんでした。」
「いつもテレポートで来られてるようなので、ドラゴンに乗って来られるとは思いませんでした。」
「本当にすみませんでした。」
「それで、今日はどうされたんですか?」
「はい。今日は暑いので、氷が要るかなと思いまして。」
「おぉ、それはありがたい!確かに今日は買っていく人が多く、不足気味になってたんですよ。」
「それなら、来た甲斐が有りましたね。」
お騒がせしただけだと、申し訳無さ過ぎる。
ギルドの冷凍庫には、戦闘訓練の時見たタンクが5個並んでいた。
「3つ空になっているので、この前のようにお願いできますか?」
「セルリア、お願いできる?」
「任せておけ。」
相変わらず、豪快に氷を割るセルリア。
「ありがとうございました。代金は、受付で受け取ってください。」
「わかりました。こちらこそ、ありがとうございました。」
代金は120Gだった。これも預けることができるということなので、預けることにした。
「折角来たから、依頼見ていくか。」
ここの依頼見たことないから、どんな依頼が多いか調べるのも悪くないと思う。
依頼は、低ランク限定の採取系が多かった。討伐は無い。勝手な想像だが、ここでは軍隊も討伐を行っているのだろう。
気になる依頼はなかったので、ギルドを出ようとすると……。
「ユウマさん、ちょっと待ってください。」
「クラルさん、どうしました?」
「受ける人がいないし、緊急性もないので、掲示をやめた依頼がありまして……。期限はないので受けてもらえればありがたいのですが。」
「どんな依頼ですか?」
「これです。」
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件名:薬用朱菊の採取
推奨ランク:B
報酬:10,000G
ポイント:1,500
内容:薬用朱菊を10本採取する。本数が少ない場合や状態が悪い場合、報酬を減額する。また、10本を超えて採取しても報酬の追加はない。
================
「どうして受ける人がいないんでしょう。」
「その場所が問題でして……。」
またか!
「山に囲まれていて、辿り着く迄が大変なんです。他の所にはまだ見付かってなくて。」
「成る程。空から行ける僕には簡単だろうということですか。」
「すみません。」
「いえ。期限がないなら、受けましょう。場所を教えてください。」
場所は、タルトの北東に有るようだ。その方向に山はあまり無く、空からだと簡単にわかるだろうということだった。
今日はあまり余裕無くなったから、明日にでも場所を特定しておこう。
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