異世界でも馬とともに

ひろうま

文字の大きさ
上 下
35 / 94
第3章 平和な日常

26-ユニコーンの角

しおりを挟む
ギルドに着いたが、まだ昼休み中なので、ロビーで待つことにした。
「ユウマさん、ルナさん、こんにちは。」
「あ、ロートスさん、こんにちは。どうしたんですか?」
「さっき、依頼を見に来た時に、ユウマさんがまた午後から来られるということだったので、待ってたんですよ。」
「僕ではなく、ルナをですよね。」
「まあ、そうなんですけど……。ルナさん、撫でても良いですか?」
否定しないし……。しかも、図々しい!
「チケット使ったらね。」
「そんなー。」
さすが、ルナ。ちゃっかりしてるな。
「あれ?また、美人さん増えてるじゃないですか。」
「はい。エルミナと言います。」
今気付いたのか。ルナしか目に入ってなかったんだろうな。
「エルミナさん、撫でさせてもらっても良いですか?」
「浮気?」
「い、いえ、とんでもないです!」
いやいや。ルナ、チケット要求してたのに、浮気って……。ロートスさん、伸ばしかけた手を慌てて引っ込めたけど……。

その後、ルナのファンクラブについて話をしてたら、五の鐘が鳴った。
「では、私はこれで。また、来月キス会する予定なので、ルナさんよろしくお願いします。詳しいことは、また連絡します。」
そう言ってギルドを出ていったロートスさんと入れ替わるように、ジョーンズさんが入って来た。
僕は、ジョーンズさんの方へ歩いて行った。
「ジョーンズさん、こんにちは。」
「ユウマ君、待たせたね。」
「大丈夫です。お話があるそうですが。」
「そうなんだ。ん?また、新しい美人を侍らせてるな。」
「は、はい。」
ジョーンズさんも、ロートスさんと似たようなこと言ってる。それにしても、『侍らせてる』って……。
「ここではなんだから、私の所に行こうか。」
「わかりました。」

「ここが、セレナスで私が拠点にしている店だ。」
「お邪魔します。」
あまり広い場所ではないので、ルナとステラには入り口の所で待ってもらっている。
「そういえば、ルナにちょっかい掛けてきた人はどうなりました?」
「彼は今謹慎にしている。反省しているようだし、そろそろ復帰させても良いかなとも思っている。」
「そうですか。」
「ただ、彼は馬に興味を持つような男ではなかったはずだから、なぜあんな行動をしたのか気になりはする。」
「もしかして、別の目的があったとかですか?」
「その可能性は高いだろう。復帰させても、注意しておく必要はありそうだ。」
「そうですね。」
「では、本題に入ろう。」
「はい。」
「例のユニコーンの角の件だが、話しがまとまった。ユニコーンの角の品質なんて私にはわからないから、鑑定のできる者が直接買い取ることになる。」
「そうなんですね。失礼な言い方ですが、その方は信頼できるのですか?」
「心配するのも無理はないが、私の長年付き合いがある者だ。」
「そうですか。すみません。」
「気にするな。ユウマは警戒し過ぎる位でちょうど良いだろう。」
「そ、そうですね。」
「それで、その者をあの家につれて行こうと思うのだが、問題ないか?もちろん、最初は私も立ち会う。」
「それなら問題ないです。いつ来られます?」
「私がワーテンに戻ってからになるが、まだこちらですることがあるから、もう少し後になる。移動するときは、また護衛を依頼しようと思う。」
「わかりました。ありがとうございます。」

~~~
家に戻ると、早速セルリアに捕まった。
「待った分、しっかり訓練するぞ。」
「お手柔らかにお願いします。」
僕が跨がると、セルリアは急上昇した。
うっ、気分が悪い!
上昇が止まったので、急加速されるかと思って身構えたが、セルリアはゆっくり飛んでいる。
「あれ?」
「どうした?」
「いや。いきなり高速で飛ぶのかと思ったから。」
「それだと主と話しができないだろう。」
「えっ?」
「あ……そのー。最初は説明が必要かと思ってだな。あと、徐々に慣らしていかないとな。」
「なるほど。親切にありがとう。」
「う、うむ。」
セルリアが言った通り、今日は全体的にゆったりとした飛行だった。これ位なら、気持ち良く乗っていられる。「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんだけど。」
「何だ?」
「獣神様の信託が受けられる場所とか知らないかな。」
「そういう場所があるというのは聞いたことがある気はするが、どこにあるかは知らないな。あの鳥に聞いてみた方が良いかも知れない。無駄に長く生きているからな。」
「無駄にって……。セルリア、ヴァミリオのこと苦手みたいだね。」
「あやつ、煩いのだ。しかも、我を子供扱いするからな。」
「煩いのは否定しないけど……。子供扱いするのは、ヴァミリオはセルリアが産まれた時から知っているんだろうし、仕方ないところも有るだろうけどね。」
「わかっているのだがな。」
「まあ、苦手な相手というのは誰にでもいるからね。でも、仲間だからできれば仲良くして欲しいな。」
「うむ。善処する。」

その後、そこそこの速度で飛んでいたようだが、そんなに苦ではなかった。
しっかり訓練するとか言いつつ、初日ということで手加減したのだろう。
しばらく飛んでから、セルリアは地上に降りた。
「今日は楽しかったよ。ありがとう。」
「そうか。今日は、この前タルトに向かった時くらいの速度だったが、今後徐々に速度を上げていくからな。」
「うん。楽しみにしておくよ。」
しかし、あれが最初はしがみつくのに必死だった速度なんだな。そう考えると、大分慣れたことがわかる。

家に帰ってから、クレアに角の販売の件を話した。
「そう。良かったわね。」
「クレア、本当に大丈夫なの?」
「何度も言った通り、大丈夫よ。でも……。」
「どうしたの?」
「角の品質という点では、母に劣ると思うわ。悔しいけどね。」
「そうなの?」
「魔物全般的に言えるんだけど、魔力が高いほど素材の品質も高くなるの。だから、私より圧倒的に魔力の高い母の方が角も高品質なのは間違いないわ。だから、母にも角を分けてくれるように頼むのも有りかもね。」
「そうか……。考えてみるよ」
「あ、そう言えば、さっきマスターたちが空中デートを楽しんでいる間に、マスターと寝る順番を決めたの。今、ルナさんがセルリアに説明してると思うわ。」
「そんなこと話してたの?」
クレアの言った『空中デート』という言葉が気になったが、とりあえずスルーしとこう。
「『そんなこと』って……。これは、重要なことなのよ。後でマスターにも皆から話しをするけど、今日はエルミナの番だからね。」
「えっ!?」
「あら?エルミナと寝るのは嫌なの?」
「そんなことないよ。エルミナが僕と二人で寝て大丈夫なのかなと思って……。ちなみに、エルミナって大人だよね。」
「他の魔物のことはわからないけど、一応大人なんじゃない?私から見たら、まだまだ子供だけど。それがどうしたの?」
「いや、犯罪にならないか心配になったんで……。」
「相変わらず、意味不明なこと言ってるわね。」
「そうだ。クレア、エルミナに発情した経験あるか聞いてみてよ。」
「マスターが聞けば良いじゃない。」
「さすがに僕からはちょっと……。クレアが適任かなと思って。」
「どうしてそうなるかわからないけど、まあ良いわよ。」
「ありがとう。よろしくね。」

~~~
「エルミナ、えっと……発情した経験は有る?」
クレアがエルミナに聞いてくれた。
ちなみに、僕は隠れて声だけ聞いていた。
「発情って何ですか?」
「あ、わからないなら良いわ。そのうち、わかる時が来ると思うから。」
『もしかして、まだ発情来てないのかな。』
気になって、クレアに念話を入れた。
『わからないわね。オスとの接触の機会がなかったから、気が付かなかっただけかも知れないし。』
『そうだね。その辺りは注意するよ。聞いてくれて、ありがとう。』

今日は、お風呂もエルミナと一緒だ。
この前はルナも途中迄一緒だったが、今日は最初から二人っきりのお風呂ということで緊張する。
まだ発情も来ていない可能性があるというのを知って、微妙な所触るのも余計に抵抗を感じた。
「エルミナ、股とか後ろの方は洗うのやめとこうか?」
「どうしてですか?この前も洗ってもらったし、問題ないですよ?」
「そ、そう?」
断る理由がないので洗うことにしたが、背徳感が……。
段々変な気持ちになってきた。
「どうかしましたか?」
「い、いや。そろそろ、お風呂浸かろうか。」
「はい。」
このままだと、色々とヤバい。

風呂から上がると、ヴァミリオが待機していた。
やる気満々で乾かしてくれて大変ありがたいのだけど、どうしてそんなに気合い入っているのだろうか。
「ヴァミリオ、ありがとう。悪いね。」
「ボクもユウマの役に立ちたいけど、今のところできるのはこれ位だからね。あ、もう少ししたら、ユウマを乗せて飛べると思うけど。」
「そ、そう?楽しみにしておくよ。」
「うん。」
セルリアの飛行訓練もやっているので、正直遠慮したいけど、それを言うとヴァミリオは確実に落ち込むだろうから言えなかった。

~~~
「この上で寝るんですか?」
「うん。ベッドっていうんだけど、厳しそうなら、床に布団敷くよ。」
ベッドの上で寝るのは抵抗有るみたいだ。
まあ、普通そうだよね。人間の知識があるルナや、人間と暮らしたことがあるクレアは別にして、ベッドなんて見たことないだろうし。そういう意味では、最初から躊躇なくベッドで寝たステラは凄いのかも。
しかも、ベッドは十分大きいとは言え、エルミナが横になるとかなりギリギリだと思う。
「いえ。ユウマさんはこのベッドで寝るんですよね。だったら、私もそっちで寝ます。」
「無理しないでね。」
エルミナは試行錯誤していたが、なんとかベッドに乗れた。エルミナが横になると、ベッドが小さく見える。
僕も寝ようとしたが……。
「どうしたんですか?」
「いや。どうやって寝ようかと思って。」
「私が場所取り過ぎてますね。すみません。でも、他の人の時はどうやって寝てるんですか?」
「えーと……抱き付いて寝てる。」
「じゃあ、私にも抱き付いてください。」
「そうするしかないか。」
「私じゃあ嫌なんですか?」
「そんなことはないよ。ちなみに、エルミナって、もう大人なんだよね。」
「もちろん、大人です。多分……。」
多分って、不安にさせることを……。
でも、彼女は自分が馬だと思っていたのに魔物だったから、自分がわからなくなっているところがあるのだろう。
「じゃあ、抱き付かせてもらうね。」

そう言ってはみたものの、エルミナはやっぱり大きいので、抱き付くのは大変だった。
顔が見える位置に行きたかったが、体勢が辛くなるので、お腹にくっつく感じにした。
微妙だが、ここが一番安定する。
しかし、僕の顔はエルミナの胸辺りになるので、エルミナの鼓動が凄い伝わって来る。
「エルミナ、かなり鼓動が早いけど大丈夫?」
「大丈夫です。ユウマさんとくっついてるのを感じて、ドキドキしてるだけなので。」
「そ、そう?」
そんなこと言われると、こっちまで意識してしまう。
あまり考えないようにして、寝ようとしたが、良い匂いがして逆に興奮して来た。
馬って、なんでこう良い匂いがするんだろうか。エルミナは馬じゃないけど……。
それにしても、物凄く今更な気もするが、馬の匂いで興奮する僕ってかなりヤバくないだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界から来た馬

ひろうま
ファンタジー
ユウマの子であるアイリスは優秀な乗り手を求めて、家出を繰り返していた。 ある日、勇者送還の場に遭遇したアイリスは、それに乗じて現在日本に転移し、そこで一人の青年と出会う。 ※本作品は、「異世界でも馬とともに」の続編になります。 ※本作品は、某サイトで公開していた作品の転載となります(一部、言い回しの修正や加筆あり)。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

壊れた脚で

トラストヒロキ
SF
約150年後の、地球と宇宙の文明が交流しあう世界での馬と人、競馬の物語。その最高の証である "宇宙ダービー"を目指す主人公の馬威人(マイト)に降りかかる様々な壁。 全ての馬、競馬好きに届ける競馬×SFのNEWファンタジードラマ。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎町に住んでいたロボット好きの宮本荒人は、交通事故に巻き込まれたことにより異世界に転生する。 転生した先は、古代魔法文明の遺跡を探索する探索者の集団……クランに所属する夫婦の子供、アラン。 ただし、アランには武器や魔法の才能はほとんどなく、努力に努力を重ねてもどうにか平均に届くかどうかといった程度でしかなかった。 だがそんな中、古代魔法文明の遺跡に潜った時に強制的に転移させられた先にあったのは、心核。 使用者の根源とも言うべきものをその身に纏うマジックアイテム。 この世界においては稀少で、同時に極めて強力な武器の一つとして知られているそれを、アランは生き延びるために使う。……だが、何故か身に纏ったのはファンタジー世界なのにロボット!? 剣と魔法のファンタジー世界において、何故か全高十八メートルもある人型機動兵器を手に入れた主人公。 当然そのような特別な存在が放っておかれるはずもなく……? 小説家になろう、カクヨムでも公開しています。

処理中です...