異世界でも馬とともに

ひろうま

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第2章 神獣の解放

23-フェニックス

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「マスター。そろそろ離れた方が良いわよ。」
「えっ?」
お義母さんを見ると、目がトローンとしている。さっきまでの威厳はどこへ行ったのだろうか。
「ブヒヒーン♪」
お義母さんが、突然仰向けになって転がり始めた。しかも、翻訳が効かない声出してるし。
「お義母さん、どうしました?」
「お母さん、はしたないわよ!」
マタタビに酔った猫みたいになってるんだが。
もしかして、加護の効果のせいか?
「ユウマ~♪娘をもらっていくなら、私と次の子供を作らない?」
「お母さん、何バカなこと言ってるの!」
あ、クレアのキックが炸裂した。
「何するのよ、痛いわね!」
「お母さんがバカなこというからでしょ!」
痛いと言ってるが、ダメージは無さそうだな。でも、正気には戻ったようだ。

その後も、お義母さんからの子作りのお誘いが続いたが、丁重にお断りした。
まあ、本気ではないだろう。発情されたら、クレアの時みたいに、意識無くなってしまうだろうし。
「あ、そうだ。お義母さん、神獣について何かご存じないですか?」
「神獣?フェニックスなら、向こうの山の方に封印されたみたいだけど。」
お義母さんが向いた方を見ると、山が連なっている所が有った。あそこのことだろうか。今度は、朱雀ならぬフェニックスか……。
「お義母さん、その時のことをご存じなんですか?」
「詳しくは知らないけどね。この娘が生まれる前、異世界から大量の侵略者が来たらしく、こっちで最前線で戦ったのが、勇者とフェニックスらしい。私はここを守るのに必死で見てないんだが、それを見ていた魔物が言ってたよ。」
「そんなことが……。」
「フェニックスがなぜ勇者に協力したのかも、なぜ封印されたのかも知らないけどね。」
「ありがとうございました。」
「じゃあ、お母さん、行くわね。」
「ああ、いつでも遊びにおいで。ユウマも……。」
「ありがとうございます。」
「いつでも子作りしに来て。」
「遠慮します。」

~~~
クレアのお母さんの所を後にして、テレポートポイントに向かう途中、セルリアがクレアに話し掛けた。
「お前の母は強いな。そのうち、お手合わせ願うか。」
「母も喜ぶと思うわ。」
戦闘狂同士気が合いそうだな。というか、もしかしてセルリアはそんなことを考えながら、クレアとお母さんの戦いを見ていたのだろうか?
「師匠、これまでありがとうございました。」
「別にどうということはない。あまり、役に立たなかったしな。」
「うっ!私がまだまだ実力不足ということです。師匠、良かったら、これからもご指導ください。」
「ダメだ。それと師匠とかいう呼び方も、丁寧な口調もやめろ。」
「そんな!」
「そんなに痛め付けられたかったら、痛め付けてやる……仲間としてな。」
「し……セルリア、ありがとう。」
クレア、良かったな。しかし、クレア変な趣味に目覚めたのかな?
「違うと思うわよ。」
「えっ?」
久しぶりに、僕の心の声にルナがツッコんだ。

「恐らく、お義母さんは、最初からクレアを認めるつもりだったんだろうね。」
「えっ?どういうこと?」
「お義母さんは、クレアに止めをさすと言いつつ、壁だか結界だかを解除して僕がクレアを助けるように誘導した。そして、僕を罵ることで、クレアの本当の気持ちを引き出そうとしたんだと思う。」
「……。」
「それに、あの最後の魔法は強力だったけど、お母さんがいくら油断してたとしても、避けられないとは思えない。しかも、回復魔法を使えば反撃できただろうに、それもしなかった。」
「確かにそうね。あのときは、感情的になってて気付かなかったけど、お母さんがあの程度でやられる訳はないわよね。」
「でも、晴れて独り立ちを認めてもらえたし、良かったね。」
「そうね、マスターとも結婚できたしね。そうだ!早速、今夜どうかしら?」
「い、いや、今夜は魔力回復に専念した方が良いと思うよ。」

ちなみに、馬女神の加護の説明を改めて見たら、これまで閲覧不可だった3つ目の効果が見えるようになっていた。

================
【馬女神の加護】
馬または馬系魔物に対する加護による効果と、それ以外に対するそれとで異なり、それぞれ次の通り。
①馬または馬系魔物に対する効果
・馬または馬系魔物から敬われやすくなる。
・他種族を含め、他者から好意を寄せられやすくなる。
・(解放の条件を満たしていないため閲覧不可)
②それ以外に対する効果
・馬または馬系魔獣に好意を寄せられやすくなる。
・馬または馬系魔獣との間に子供ができやすくなる。
・MP共有(馬または馬系魔物限定)スキルを得る。(解放の条件:3体以上の馬または馬系魔物と結婚する)
================

~~~
テレポートポイントまで戻って来たところで、ふと気になったことがあり、エルミナに聞いてみた。
「エルミナが飼われてたのって、どっちの方?」
「あっちの方です。」
エルミナが顔を向けたのは、北西の方だった。あっちには、近付かないようにしよう。
「あ、そうだ。クレア、キュアは使える。」
「少し魔力回復したし、大丈夫だけど、どうしたの?」
「エルミナに魅了掛けてもらって、こういうスキルにMP防御が効くか試しておこうかと思って。僕の様子がおかしかったら、キュアを掛けてくれる?」
「また危険なことを……でも、面白そうね。わかったわ。」
「面白そうって……ちゃんとキュア掛けてよね。」
「はいはい。」
クレアのいい加減な返事にちょっと不安になるが、大丈夫だと信じよう。
「エルミナ、お願いできる?」
「使ったことないですが、やってみます。」
エルミナが魅了使ったようだけど、何も起きない。ステータスを確認してみよう。

================
名前:ユウマ
種族:ハイ・ヒューマン
性別:♂
年齢:35歳
状態異常:魅了
HP:1,200/1,200
MP:-
能力値:▼
スキル:▼
加護:▼
================

「マスター、どう?」
「魅了状態になってるみたいだけど、特に変化が感じられないかな?」
「既にエルミナに魅了されてるから、効果がわからないんじゃない?」
クレア、上手いこと言うな。
「そうかもね。あ、しまった。」
スキルのせいにして、あんなことやこんなことをするチャンスだったのでは?
「どうしたの?」
「い、いや、何でもない。」
「あなた、今変なこと考えたでしょ。」
「ソンナコトナイヨ。」
「私のスキルが未熟なんでしょうか?」
「エルミナ……。」
あれ?ちょっと頭がボーッとして来た。
体が勝手に動いて、エルミナを抱き締める。
「えっ、ユウマさん?」
「あなた?」
「これは、演技じゃなさそうね。」
「クレア、キュア掛けてあげてよ。」
「もう少し、様子を見ましょう。」
意識は有るけど、体が言うことを聞かない感じだな。このままでは、本当にあんなことやこんなことをしてしまう。
通常は、敵対している相手に使うのだから、相手が腑抜けになった状態で攻撃すれば良いわけだ。
「クレアさん、お願いします。」
「エルミナも満更でもなさそうだけど……まあ、仕方ないわね『キュア』。」
「あ、ありがとう、クレア。あれ?魅了解いてもらったのに、まだエルミナがすごく魅力的に見えるんだけど……。」
「もう!」
「うゎ!」
ルナが蹴りを入れてきた。ダメージは受けないけど……。
「ユウマさん、大丈夫ですか?」
「問題ないよ。エルミナ、変なことしてごめんね。」
「いえ、私は平気です。できれば、魅了されてない状態でやって欲しいですけど。」
「やっぱり、満更でもなかったんだ。」
「それにしても、なぜ急に効果が現れたんだろう。」
「今のタイミングだと、エルミナが話し掛けたのがきっかけみたいな気がするわね。」
クレアが見ていた感想を伝えてくれた。
「なるほど、そうかも知れない。とにかく、状態異常系のスキルは僕にも効果あることがわかったね。エルミナに敵意がないからかも知れないけど、注意するに越したことはないね。」

~~~
「ということで、フェニックスが封印されてる所に行ってみようか。ルナ、お願いするね。」
「どういうことでかはわからないけど、どうぞ。」
そう言ってルナが座ってくれた。『お願いする』と言っただけなのに、さすがルナは察しが良いな!
エルミナに神獣の話をしておこうかと思ったら、ちょうどステラがしてくれているところだった。ステラ、やっぱり気が利くな。
「えーっと、皆はどうする?ステラは、申し訳ないけど、テレポートお願いするから来てもらわないといけないけど。」
「私は残るわ。ちょっと疲れてるし。」
「確かに、クレアは疲れてるよね。じゃあ、エルミナと一緒に待っててね。」
「わかったわ。」
「我も待っておこう。」
「え?セルリアが残ってくれたら安心だけど、どうしたの?」
「ベ、別に何でもないぞ。」
なぜか、セルリアの様子が変だな。まあ、気にすることもないか。

ルナに乗せてもらい、クレアのお母さんが言ってた山の方に向かった。
「思い出した。この山の中腹だね。」
「例の記憶ってやつ?」
「うん。」
山道は長いこと人が通ってないため、かなり草が繁っていた。僕が乗ってるとルナが大変だろうから、降りて歩くことにした。
「ユウマ、アタシに乗って。こういう所は、力のあるアタシの方が進みやすいわ。
「そう?ありがとう。助かるよ。」

お言葉に甘え、ステラに乗せてもらってしばらく行くと、開けた場所に出た。
「ここだね。」
セルリアの時と同じように、中央にドーム状のものが有った。
ステラから降りて、中に入ってみた。
中には、繭のようなものが有った。セルリアの時より少し小さく、高さ3m強くらいだろうか。
透けて見える姿は神々しさを感じさせ、僕は言葉を失った。
「セルリアの時と、反応が随分違うわね。」
ルナ、空気読んでよね!まあ、事実ではあるけど……。
目の前の存在は、どちらかと言うと、近付きがたい雰囲気が有る。
どうせほとんど見えないけど、一応ステータス見ておくか。

================
種族:フェニックス
性別:―
年齢:―
状態異常:封印
HP:―
MP:―/―
能力値:(封印されているため、閲覧できません。)
スキル:(封印されているため、閲覧できません。)
================

================
【フェニックス】
神獣の一体。炎属性。
生命力の上限がなく、寿命はない。
基本ダメージを与えることはできないため、倒すにはMPを0にして気絶させるしかない。
神獣の中で、世代交代をしていない唯一の存在。
================

ほとんど見えないのは、予想通りだった。
しかし、生命力の上限がないとは、なんというチート。絶対敵対しちゃ駄目な相手だな。
そう思って見ていたら、フェニックスを目が合った。さっきまで、目は閉じていたと思うんだけど……。
セルリアの時も封印が解けた理由はわからないし、今回もヒントはない。
「あれ?」
なんか、フェニックスが徐々に輝いて来て、それと共に繭が薄らいでいっている。
戸惑ってると、フェニックスが目を開けたので、今度は本当に目が合った。
『キミが封印を解いてくれたの?』
「え?」
今の、フェニックスの念話なのか?話し方に違和感有るな。
「あなたが話し掛けたのですか?」
「そう、ボクが話し掛けたの。なんだ、言葉通じるんだ……って言うか、その丁寧な言葉やめてよ。」
ボクって言ったぞ。オスなのか?

================
種族:フェニックス
年齢:―
性別:♀
HP ―
MP 20,000/3,000,000
能力値:
 力:A
 体力:S
 知力:SS
 精神力:SS
 素早さ:S
スキル:炎魔法、蘇生、飛行、小型化、念話
加護:獣神の加護
================

メスじゃん!まさかの、ボクっ娘?
見た目の神々しさとギャップが有り過ぎるんだが……。
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