異世界でも馬とともに

ひろうま

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第2章 神獣の解放

18-怪しい動き

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「おはようございます。」
「ユウマ君、おはよう。もう少し待っててくれ。」
ジョーンズさんは、荷積みを続けている。
それにしても、今日は晴れてよかったな。
「ユウマさん、お久しぶりです。」
「ギザールさん、お元気でしたか?」
「お陰様で、でも、二人が居ないんで依頼があまりできてないんです。」
「大変ですね。」
「今回もジョーンズさんのご厚意で受けさせてもらいましたが、ユウマさん達がいたら私の出番は無さそうです。本当に、ドラゴンまで従魔にしたんですね。」
「そうなんです。ブルードラゴンのセルリアです。私もなぜこうなったかわからないんですが……。」
「思ったより、小さいですね。」
「普段は、小さくなってもらってるんです。」
「そうなんですね。」

あ、そうだ。馬達に身体強化掛けないと……。
今回も一頭はハルさんだ。
「ハルさん、今回もよろしくね。」
「ユウマさん、よろしくお願いします。」
ルナが身体強化を掛ける。
もう一頭は、確か……。
「あら?この前の人ね。私はカーレンよ。よろしくね。」
「ユウマです。カーレンさん、よろしくね。」
やっぱり、この前ハルさんの隣に居た馬だ。頸を差し出してきたので思わず撫でたが、ルナが非難するような目で見てきたので、手を引っ込めた。
「私は、ルナよ。よろしく。ちょっと失礼するわね。」
「えっ?なにこれ。なんか力が沸いてくるわ。」
カーレンさんは、初めて身体強化を掛けられて、戸惑ってる様子だ。
あ、そうだ。
「今回はドラゴンがいるけど、僕の仲間だから安心してね。」
「「ドラゴン?」」

「待たせたな。それでは、出発しよう。」
「「はい。」」
最初はルナに乗った。
僕たちは先頭の馬車に並び、ステラとクレアが馬車の両側、セルリアは空から偵察にしてもらった。セルリアは、久しぶりに独りで飛ぶので、元の大きさに戻ったようだ。
「この布陣強力過ぎる……。」
先頭の馬車に御者と並んで座っているギザールさんが呟いた。
確かに、軍隊が攻めてきても大丈夫ではないだろうか。

しばらくすると、セルリアが降りてきた。やっぱり、迫力有るな。何か有ったのだろうか?
「この前を行っている馬車を変なやつらが狙っているみたいだが、我が殲滅して良いか?」
「いやいや、セルリアがやると、他の人も皆巻き込まれるからね。ステラ、前の方に不審な人たちがいるようだから、セルリアに誘導してもらって、無効化してくれる?」
「わかったわ。」
「ルナ、ジョーンズさんの所にお願い。」
「了解。」
そう言って、2台目の馬車に向かうルナ。
「何か有ったのか?」
「この先の馬車を狙っている人たちがいるようです。恐らく盗賊なので、予め無効化するためステラに行かせました。」
「そうか。わかった。」
「こういう場合って、前の馬車の護衛を邪魔したことになったりしますか?」
「いや、盗賊を捕まえても、護衛の報酬が変わったりしないから、大丈夫だと思う。」
「そうですか。安心しました。」
あ、セルリアが戻って来た。もう終わったのかな?
「ステラが取り抑えたようだ。我も奴らを吹っ飛ばしてやりたかったんだがな。」
「セルリアが役に立ちたい気持ちは嬉しいけど、気持ちだけ受け取っておくよ。」
多分、吹っ飛ぶのは、盗賊だけではないと思う。
「ジョーンズさん、ステラが盗賊を取り抑えたようなので、僕達は前の馬車に伝えに行ってきます。セルリア、こっちをお願いね。」
「わかった。」

ルナに、前の馬車に追い付いてもらうと、馬車2台が止まっていた。
馬の様子がおかしいので、後ろの馬車の御者さんに聞いてみた。
「すみません、どうかされましたか?」
「さっきドラゴンが飛んでたので、馬が硬直してしまったみたいです。」
あらら。
「申し訳ありません。私のせいです。」
「えっ?」
「あの、この隊の責任者の方いますか?」
「今、前の馬車の横に居られる方です。」
「ありがとうございます。」
僕は、ルナにそこまで行ってもらった。
「すみません。私はユウマと言いますが、この隊の責任者の方ですか?」
「そうだが、何か?」
「さっき、ドラゴンとバイコーンが通ったと思いますが、あれは私の従魔です。ご迷惑をお掛けしました。」
「何?なぜ、あんなことを?」
「ドラゴンがこの馬車を狙っている盗賊らしき人達を見つけたので、バイコーンに拘束してもらってます。」
「それは、本当ですか?」
護衛の冒険者らしき人が声を掛けてきた。
「はい。一時的に、魔法で拘束してるだけなので、ロープとかあればお願いしたいのですが。」
「わかりました。詳しい話は後にして、捕まえに行きましょう。」

僕はルナから降り、ルナと護衛1人を残して、護衛の残り2人と共に歩いて先に進んだ。
少し行くと、道端の叢に黒い霧がかかっていた。
「ステラ、そこにいるの?」
「ここにいるわ。この霧ももう長く持たないので、早めにお願い。」
「ロープ持って来てもらったんで、霧を晴らしてくれるかな?」
「わかったわ。」
霧が晴れると、12人の盗賊らしき人達が倒れていた。
護衛2人の人が手際よく縛っていく。
その間に僕は、馬の硬直を解きに行こう。
「今、護衛の方が盗賊を捕らえています。馬車を先に進ませたいと思うので、馬に動くように言って来ますね。」
「ああ……。」
微妙だが、一応許可をもらったということで、先頭の馬の所に向かった。
若い牡馬のようだし、ルナは近寄らせないようにした。
「さっきは、ドラゴンが驚かせたみたいでごめんね。」
「えっ?もしかして、君が話しかけてるの?」
「そうなんだ。それで、さっきのドラゴンは僕の仲間だから心配しなくて良いよ。」
「そうなの?すごく、怖かった。」
「本当ごめんね。大丈夫だから、指示されたら進んでくれるかな?」
「わかった。」
「御者さん、馬は大丈夫そうなので、準備できたら指示出してください。」
「あ、ああ……。」
後ろの馬車の馬も、若い牡馬だった。同じように説明して安心してもらった。

馬車が動き出したので、ルナに乗せてもらい、盗賊のところまで着いて行く。
「では、私は後から来る馬車に戻るので、失礼します。ステラ、戻ろう。」
「はーい。」
皆、唖然とした様子で反応がなかったが、気にせず、ジョーンズさんの所に戻った。

「ジョーンズさん、戻りました。」
「お帰り。どうだった?」
「やっぱり盗賊だったようです。12人居ました。こっちは、何か有りましたか?」
「いや、こっちは順調だ。ドラゴンとユニコーンが居るしな。」
「向こうの馬車の人達に挨拶してから戻ろうと思ったのですが、皆唖然としてる感じで反応がなかったです。」
「まあ、そうなるだろうな。宿場町で私も話をしとこう。」
「お手数お掛けします。」
なんか釈然としないが、ジョーンズさんに任せておけば大丈夫だろう。

~~~
宿場町に着いたら、ちょうど先程の馬車が入って行くところだった。
「あれは、コールスさんだな。」
「お知り合いですか?」
「何度か取引した商会の人だ。馬を預けたら、一緒に挨拶に行こう。」
「わかりました。」

ハルさん達が馬車から外されたところで、ルナに身体強化を解いてもらう。
「カーレンさん、疲れてないですか?」
「全然。今日は荷物が軽かったのね。」
「……。」
ハルさんが何か言い掛けたがやめたみたいだ。恐らく、説明しようとしたけど、良い説明が浮かばなかったのだろう。
「ハルさん、カーレンさん、また明日よろしくね。」

馬達が厩舎に入って、僕はジョーンズさんと一緒に、コールスさんの所に向かった。
「コールスさん、お久しぶりです。」
「ジョーンズさんではありませんか。あれ?そちらは……。」
「先程は失礼しました。ユウマです。」
「ジョーンズさんの護衛だったんですか。」
「はい。うちで雇ったんですよ。」
「さっきは、ドラゴンが上を飛ぶし、バイコーンが走って行くし、何事かと思いました。」
「申し訳ありません。私の従魔達がお騒がせしました。」
「いえいえ。盗賊を事前に捕獲できましたし、良かったと思います。」
「改めて皆を紹介させてください。まず、私の妻のルナです。」
「ルナです。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。あなたが話題のルナさんですか。確かにお美しい。」
「……ありがとうございます。」
ルナが照れている。僕は別のところが気になった。
「話題の……と言いますと?」
「馬好きの間で、美しくて神秘的な馬が居るという話が広まってるんです。」
「そうなんですか?」
「はい。私もルナさんを見て、すぐこの馬のことだとわかりました。」
そんなことになってたとは。
「あと、バイコーンはステラ、ユニコーンはクレア、ドラゴンはセルリアといいます。お恥ずかしながら、ステラも僕の妻です。」
「私は、コールスといいます。セレナスの街を中心に商いをしてます。どうぞ、お見知りおきを。あ、昼食が準備できたみたいなので、私はこれで。」
「こっちも、準備できたみたいなので、食べに行こう。」
「わかりました。ところで、ジョーンズさんは、コールスさんとお話しされなくて良かったんですか?」
「まあ、大して話もないしな。」
それはどうなんだと思わないでもないが、実際には商売敵とも言えるから、そんなものなのだろう。

~~~
「皆、お疲れ様!」
「「お疲れ様でした!」」
ジョーンズさんの一言で、食事が始まった。今回はライアさんがいないので、ルナとステラも外に出ている。
「やっぱり、何もすることがなかったですね。」
「ないのが一番だよ。」
ギザールさんが、何もしていないのを気にしているようだが、それは僕も同じだ。
「僕も何もしてませんしね。」
「盗賊を捕まえましたよね?」
「あれは、皆が勝手にやったことですし、ジョーンズさんの護衛とは関係ないですから。」
「ドラゴンがいなければ、気付かなかった可能性が高いのは確かだが……。もしあの盗賊が前の馬車を襲っていたら、こちらにも影響は有っただろうし護衛と関係ないわけではないな。」
「ユウマ、大変よ!」
「どうした?」
ステラが、かなり慌てた様子で駆け込んで来た。
「ルナさんに言い寄る奴がいたの。今、クレアが取り抑えているわ。」
「ええっ!?」
「ユウマ君、どうした?」
「ルナに言い寄って来た奴がいたようです。ちょっと行ってきます。」
「私も行こう。」
「私も行きます。」
ジョーンズさんとギザールさんも、来てくれるようだ。

「ルナ!大丈夫?」
「クレアのおかげで、何ともないわ。」
「良かった!クレア、ありがとう。もう大丈夫だから、その人を離してあげて。」
「ごめんなさい。こんな奴を近付けるなんて、油断したわ。」
クレアは、男の人を抑えていた前肢を退けた。抑えられていた人、大丈夫かな?
「カーブス、お前何をしている!」
ジョーンズさんが、立ち上がったその男の人に怒鳴った。よく見ると、今回同行しているジョーンズさんの商会の人だ。カーブスっていうんだな。
クレアは、それで油断したのかも知れない。
「私は、ルナさんのファンなので、プレゼントを渡そうと思っただけです。」
「本当か?」
「本当です。」
「ルナ、どうなの?」
「プレゼントをくれようとしたのは、本当よ。でも、断ったのにしつこく押し付けようとしたの。」
「プレゼントというのは、そのペンダントか?ちょっと、見せてみろ。」
「ダメです!これは、ルナさんのために買ったんですから。ちょっと強引だったのは、申し訳なかったと思います。ルナさん、すみませんでした。」
「もう、こんなことしないでね。」
「はい。ちょっと宿で頭を冷します。」
男の人は宿に向かった。
「ジョーンズさん、見逃して良かったんですか?」
「あのペンダントが怪しいんだが、確証がない。しばらく、様子を見よう。ギザール君、彼に気を付けておいてくれるか?」
「わかりました。」

今日は訓練も休みだし天気も良いので、夕飯まで家に戻らず、放牧場で散歩したり昼寝したりして過ごした。
久しぶりにルナにもたれて休んだが、やっぱり気持ち良かった。
ちなみに、クレアとセルリアは家で休むということで、一旦ステラに送ってもらった。
ステラ、ご苦労様。
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