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第1章 異世界転移
12-封印された神獣
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「ユウマですが、コリーさんいますか?」
「少々お待ち下さい。」
ワーテンのギルドで、前依頼の説明をしてくれた受付の人に声を掛けた。
「今不在みたいですが、どうされましたか?」
「依頼達成したので、ご報告に来ました。」
「ふぇ?……失礼しました。もうですか?」
受付の人、驚いて変な声が出たようだ。
「はい。ここで出しますか?」
「先ずは、向こうの鑑定受付で採取したものをみてもらって下さい。」
「わかりました。」
受付の人が示した方に行くと、それらしい窓口が有った。
「すみません、依頼で薬用水仙を採取したので、鑑定してもらえますか?」
「では、依頼書と採取した物を出して下さい。」
ステラに、水仙を出してもらい、依頼書と一緒に渡した。
「これは……。」
鑑定の人が水仙を受け取った瞬間、固まった。何かまずかったかな?
「すみません。何か不都合でもありましたか?」
「いえ。最も薬用成分が多いとされる開花直後であることに加え、茎を摘んだり、抜き取った様子がないので……。通常、こういう状態では採取できないはずですが、どうやって採ったのですか?」
「水仙にお願いしたら、これをくれたんです。」
「えっ?」
何を言ってるんだコイツは、みたいな顔で見られてるけど、本当のことだからね。
「とにかく、これまで見た中で最高の状態です。鑑定書を渡すので、受付に依頼書と一緒に提出して下さい。」
「ありがとうございました。」
「あ、ユウマさん、ギルドマスターが戻ったみたいです。こちらの職員が案内します。」
「それは良かったです。では、お願いします。」
鑑定書を持って受付に戻ろうとしたら、さっきの受付の人に声を掛けられた。
コリーさんが戻ったようだ。職員にコリーさんの所まで案内してもらう。
「コリーさん、お久しぶりです。」
「いや、会ったのは昨日じゃなかったでしたっけ?」
「これ、依頼書と鑑定書です。」
鑑定書をじっと見ている、コリーさん。
ふとコリーさんの後ろをみると、子犬が寝ていた。ボーダーコリーの子供のようだ。可愛い!
「本当に採ってきたんですね。近くに群生地が有ったとかですか?」
「いや、ちゃんと湿原で撮りましたよ。」
「確かにこの辺には、ないですが……。リザードマンはいませんでしたか?」
「いましたけど、採っても構わないと言われましたよ。」
「えっ?」
あ、コリーさんまで、何を言ってるんだコイツは的な表情をしている。
「あと、水仙も自分で茎を折ってくれました。状態が良かったのは、そのせいだと思います。」
「……。」
「というわけで、依頼達成で良いですか?」
「……。」
「コリーさん?」
「あ、すみません。放心してました。」
「それは見ててわかりました。依頼達成で良いですか?」
「はい。問題ありません。サインしますので、後で受付で手続きして下さい。」
「依頼主の方がサインされるのでは?」
気になったので、サインしているコリーさんに聞いてみた。
「この依頼は、このギルドが出したものなんですよ。」
「そうなんですか?ちなみに、後ろの犬はコリーさんのお子さんですか?」
「違います!うちで飼ってるんですよ。」
ボーダーコリーがボーダーコリーを飼うとは、シュールだな。
「ユウマさん、今確実に失礼なこと考えましたね。」
「バレましたか。」
「否定しない!?この子は、捨てられていたようで、冒険者の方が拾って届けてくれたんですよ。」
「やっぱり、コリーさんの子供だと思ったんですかね?」
「違うと思いたいですが……。それはそうとして、この子を撫でさせてあげますから、私に触るのは勘弁してください。」
「しょうがないですね。今回は見逃してあげましょう。」
「ありがとうございます……って、なんで私がお礼言わないといけないのか……。」
ブツブツ言っているコリーさんから子犬を受けとり、抱いた。可愛いし、モフモフだ!
モフモフを堪能していると、子犬は目を覚まし、顔をペロペロなめ始めた。くすぐったい!
「ルナさん、あれ大丈夫?」
「何が?」
「馬じゃないけど、あれメスよね。『たらしスキル』にやられないかしら?」
「子犬だし、大丈夫と思うけど……。」
後でクレアが何か言っているが、ルナの言う通り問題ないよね?
あと、『たらしスキル』って……。
その後、子犬をコリーさんに返そうとすると、子犬が僕から離れたがらずに苦労したが、単に懐いただけだろう。
「明日、ステラの故郷の先にある、神獣が封印されている場所に行ってみようと思う。」
ギルドから出て、僕は皆に言った。
「場所はわかるの?」
そう聞いたのは、ルナだ。
「場所に関しての記憶が埋め込まれているから大丈夫だと思う。」
「急に封印が解けて、ユウマが襲われたりしないかしら?」
「これまで封印が解かれたことないんだから、それはないだろう。取り敢えず、今回は見に行くだけで、もしヒントでも見つかればラッキーという感じだし……。ちなみに、ステラは封印された神獣のことは知らなかったんだよね。」
「ええ、聞いたこともないわ。」
「そうか……。では、明日またテレポート頼むね。」
「任せて!」
~~~
「マスター!カモーン!」
「やっぱり!」
夜は、予想通り、クレアが誘って来た。ベッドの上だから、更に艶かしさがアップしている。
何が『カモーン』だよ!っていうか、翻訳スキル、空気読み過ぎではないだろうか。
しかし、妻である二人を別の部屋に置いて、別の牝馬とベッドで寝るとは、凄い背徳的な感じがする。
とは言うものの、クレアを無視して寝るのも難しそうだし……。
「一緒に寝るけど、何もしないからね!」
「そうなの?残念ね。」
僕は、クレアが肢を広げている間に入り、クレアを抱き締めた。
クレアは、肢を閉じて僕を挟み込んだ。
「フフッ!無理して我慢しなくて良いからね?」
「大丈夫だよ。」
密着してるので、僕が興奮しているのがバレバレだ。でも、しばらくすれば、慣れて落ち着くだろう。
そう思っていたのだが……。
「マスター、ごめん。私の方が我慢できなかったみたい。」
「えっ?」
クレアは慌てたように起き出して、ベッドの横で腰を落とした。
「えっ、ちょっと待って!」
僕も慌ててベッドから起き出したが、次の瞬間、辺りに魅惑的な匂いが立ち込めた。
~~~
気が付くと朝になっていた。
あの後の記憶が全くないが、僕はちゃんとベッドで寝ていて、クレアも目の前で横になっていた。
あれは夢だったのか?ベッドの周りを見ても汚れていないみたいだし……。
「おはよう、クレア。」
「お、おはよう、マスター。……あの、ごめんなさい。」
夢じゃなかったようだ。
ユニコーンなどの魔獣の場合、メスが発情すると、オスは本能に支配されてしまうらしい。僕は、そのせいで意識が飛んだようだ。
「ごめん。僕の方も気を付けないといけなかったね。」
「ううん。私が誘ったんだから。」
「入るわよ。……って、まだ寝てるの?」
あ、ルナたちが来たようだ。ちょっと、気まずい。
「あれ?この匂い、もしかして……。クレア?」
クレアはクリーンで綺麗にしたんだろうけど、匂いは消しきれていないようだ。僕にはわからないけど。
「前クレアが言ってたのは、こういうことだったのね。発情したってことは、子供ができる可能性が有るの?」
「……。」
「周期的な発情じゃないから可能性は低いけど、ないとは言えないわね。」
何も言えずにいるクレアの代わりに、ステラが答えた。
「……。」
クレア落ち込んでるな。
「クレア……。」
「あなた。」
ルナを見ると首を振った。そっとしておけということだろう。
気を取り直して、ステラにお願いして、ルナも一緒に裏庭からステラの故郷附近にテレポートしてもらった。
「本当に場所がわかるの?」
ルナは、不思議そうにそう聞いた。
「うん。まずは、ステラの故郷の先を目指そう。」
前のように岩場を越えて、ステラが生まれたという開けた場所を通り過ぎた。
反対側も岩場があり、それも越えると、森が有った。ただ、この森は、木が生い茂っておらず、中まで日の光が届いていた。
~~~
しばらく歩いていると、突然かなり大きな広場のような所に出た。
「あそこだ。」
広場の真ん中に、ドーム状のものがあった。近付いていくと、最初に思ったより大きいことがわかった。入り口らしき所も見えるが、あそこから入れるのか?
「こんな物があるなんて……。」
ステラは、故郷の近くにこのようなものがあると知って驚いた様子だった。
意外なことに、入り口には扉もなく、すんなり入れた。
「これは……。」
巨大な卵――というより繭という感じだろうか――半透明で中が透けて見えた。高さは5m以上、幅は3m位あると思う。
中に居るのは青いドラゴンだろうか?こちらに背を向けて丸くなっている感じのため、顔は見えなかった。
「これ、ドラゴンよね?このドラゴンが神獣なの?」
ルナが不思議そうにそう言った。
ドラゴンのことはもらった知識に含まれていたのだろうが、『獣』のイメージと一致しないのかも知れない。
「そうみたいだね。」
恐らく間違いないと感じていたが、一応閲覧してみた。
================
種族:ブルードラゴン
性別:―
年齢:―
状態異常:封印
HP:―/―
MP:―/―
能力値:(封印されているため、閲覧できません。)
スキル:(封印されているため、閲覧できません。)
================
================
【ブルードラゴン】
神獣の一体。水・氷属性。相反属性である炎属性を持つ武器や魔法以外ではダメージを与えられない。
強大な魔力を持ち、永遠の命を持つ言われている。ただし、これまで世代交代が行われているため、実際には寿命があると思われる。
【封印】
生命活動を停止させられた状態。
封印の解除方法は、術者の目的や能力により様々である(例えは、術者だけしか解除できないものや、複数の条件を満たすことが必要なもの等々)。
なお、術者しか解除できない封印は、術者が死亡したら解除される。
================
うーん。炎属性が有効というのはわかったけど、封印を解除するのには関係無いだろうし、ヒントはなしか。
「せっかく来たから、周りを回ってみよう。」
反対側に回ると当然顔が見える訳で……。
「あ、可愛い!」
「可愛い?」
僕の言葉に、ルナが反応した。
「い、いや。ルナの方が可愛いよ!」
「そういうことじゃなくて、このドラゴンのどこに可愛らしさが有るの?」
「えっ?可愛いじゃない。」
「はぁ……。あなたって、守備範囲広いのね。」
「守備範囲って……。そんなことないよ。リザードマンは無理だったし。」
「なんの話ししてるの?」
遅れてやって来たステラが、そう聞いてきた。
「あ、もちろん、ステラも可愛いよ!」
「あ、ありがとう……じゃなくて!」
「そもそも、このドラゴンはメスなの?」
「封印されてて、性別見れなかったけど、この顔はメスで間違いないね。」
「あなたの目、どうなってるの?」
「別に、普通だけど?それにしても、このドラゴンお待ち帰りしたいな。」
「「……。」」
僕の言葉に、ルナもステラも呆れたような顔をした。
「さ、さて、顔も見たことだし、一旦帰ろうか。」
一周回って、入って来た所から外に出ようとしたその時……。
『待て!』
えっ、何?頭の中に声が響いたような……。
「少々お待ち下さい。」
ワーテンのギルドで、前依頼の説明をしてくれた受付の人に声を掛けた。
「今不在みたいですが、どうされましたか?」
「依頼達成したので、ご報告に来ました。」
「ふぇ?……失礼しました。もうですか?」
受付の人、驚いて変な声が出たようだ。
「はい。ここで出しますか?」
「先ずは、向こうの鑑定受付で採取したものをみてもらって下さい。」
「わかりました。」
受付の人が示した方に行くと、それらしい窓口が有った。
「すみません、依頼で薬用水仙を採取したので、鑑定してもらえますか?」
「では、依頼書と採取した物を出して下さい。」
ステラに、水仙を出してもらい、依頼書と一緒に渡した。
「これは……。」
鑑定の人が水仙を受け取った瞬間、固まった。何かまずかったかな?
「すみません。何か不都合でもありましたか?」
「いえ。最も薬用成分が多いとされる開花直後であることに加え、茎を摘んだり、抜き取った様子がないので……。通常、こういう状態では採取できないはずですが、どうやって採ったのですか?」
「水仙にお願いしたら、これをくれたんです。」
「えっ?」
何を言ってるんだコイツは、みたいな顔で見られてるけど、本当のことだからね。
「とにかく、これまで見た中で最高の状態です。鑑定書を渡すので、受付に依頼書と一緒に提出して下さい。」
「ありがとうございました。」
「あ、ユウマさん、ギルドマスターが戻ったみたいです。こちらの職員が案内します。」
「それは良かったです。では、お願いします。」
鑑定書を持って受付に戻ろうとしたら、さっきの受付の人に声を掛けられた。
コリーさんが戻ったようだ。職員にコリーさんの所まで案内してもらう。
「コリーさん、お久しぶりです。」
「いや、会ったのは昨日じゃなかったでしたっけ?」
「これ、依頼書と鑑定書です。」
鑑定書をじっと見ている、コリーさん。
ふとコリーさんの後ろをみると、子犬が寝ていた。ボーダーコリーの子供のようだ。可愛い!
「本当に採ってきたんですね。近くに群生地が有ったとかですか?」
「いや、ちゃんと湿原で撮りましたよ。」
「確かにこの辺には、ないですが……。リザードマンはいませんでしたか?」
「いましたけど、採っても構わないと言われましたよ。」
「えっ?」
あ、コリーさんまで、何を言ってるんだコイツは的な表情をしている。
「あと、水仙も自分で茎を折ってくれました。状態が良かったのは、そのせいだと思います。」
「……。」
「というわけで、依頼達成で良いですか?」
「……。」
「コリーさん?」
「あ、すみません。放心してました。」
「それは見ててわかりました。依頼達成で良いですか?」
「はい。問題ありません。サインしますので、後で受付で手続きして下さい。」
「依頼主の方がサインされるのでは?」
気になったので、サインしているコリーさんに聞いてみた。
「この依頼は、このギルドが出したものなんですよ。」
「そうなんですか?ちなみに、後ろの犬はコリーさんのお子さんですか?」
「違います!うちで飼ってるんですよ。」
ボーダーコリーがボーダーコリーを飼うとは、シュールだな。
「ユウマさん、今確実に失礼なこと考えましたね。」
「バレましたか。」
「否定しない!?この子は、捨てられていたようで、冒険者の方が拾って届けてくれたんですよ。」
「やっぱり、コリーさんの子供だと思ったんですかね?」
「違うと思いたいですが……。それはそうとして、この子を撫でさせてあげますから、私に触るのは勘弁してください。」
「しょうがないですね。今回は見逃してあげましょう。」
「ありがとうございます……って、なんで私がお礼言わないといけないのか……。」
ブツブツ言っているコリーさんから子犬を受けとり、抱いた。可愛いし、モフモフだ!
モフモフを堪能していると、子犬は目を覚まし、顔をペロペロなめ始めた。くすぐったい!
「ルナさん、あれ大丈夫?」
「何が?」
「馬じゃないけど、あれメスよね。『たらしスキル』にやられないかしら?」
「子犬だし、大丈夫と思うけど……。」
後でクレアが何か言っているが、ルナの言う通り問題ないよね?
あと、『たらしスキル』って……。
その後、子犬をコリーさんに返そうとすると、子犬が僕から離れたがらずに苦労したが、単に懐いただけだろう。
「明日、ステラの故郷の先にある、神獣が封印されている場所に行ってみようと思う。」
ギルドから出て、僕は皆に言った。
「場所はわかるの?」
そう聞いたのは、ルナだ。
「場所に関しての記憶が埋め込まれているから大丈夫だと思う。」
「急に封印が解けて、ユウマが襲われたりしないかしら?」
「これまで封印が解かれたことないんだから、それはないだろう。取り敢えず、今回は見に行くだけで、もしヒントでも見つかればラッキーという感じだし……。ちなみに、ステラは封印された神獣のことは知らなかったんだよね。」
「ええ、聞いたこともないわ。」
「そうか……。では、明日またテレポート頼むね。」
「任せて!」
~~~
「マスター!カモーン!」
「やっぱり!」
夜は、予想通り、クレアが誘って来た。ベッドの上だから、更に艶かしさがアップしている。
何が『カモーン』だよ!っていうか、翻訳スキル、空気読み過ぎではないだろうか。
しかし、妻である二人を別の部屋に置いて、別の牝馬とベッドで寝るとは、凄い背徳的な感じがする。
とは言うものの、クレアを無視して寝るのも難しそうだし……。
「一緒に寝るけど、何もしないからね!」
「そうなの?残念ね。」
僕は、クレアが肢を広げている間に入り、クレアを抱き締めた。
クレアは、肢を閉じて僕を挟み込んだ。
「フフッ!無理して我慢しなくて良いからね?」
「大丈夫だよ。」
密着してるので、僕が興奮しているのがバレバレだ。でも、しばらくすれば、慣れて落ち着くだろう。
そう思っていたのだが……。
「マスター、ごめん。私の方が我慢できなかったみたい。」
「えっ?」
クレアは慌てたように起き出して、ベッドの横で腰を落とした。
「えっ、ちょっと待って!」
僕も慌ててベッドから起き出したが、次の瞬間、辺りに魅惑的な匂いが立ち込めた。
~~~
気が付くと朝になっていた。
あの後の記憶が全くないが、僕はちゃんとベッドで寝ていて、クレアも目の前で横になっていた。
あれは夢だったのか?ベッドの周りを見ても汚れていないみたいだし……。
「おはよう、クレア。」
「お、おはよう、マスター。……あの、ごめんなさい。」
夢じゃなかったようだ。
ユニコーンなどの魔獣の場合、メスが発情すると、オスは本能に支配されてしまうらしい。僕は、そのせいで意識が飛んだようだ。
「ごめん。僕の方も気を付けないといけなかったね。」
「ううん。私が誘ったんだから。」
「入るわよ。……って、まだ寝てるの?」
あ、ルナたちが来たようだ。ちょっと、気まずい。
「あれ?この匂い、もしかして……。クレア?」
クレアはクリーンで綺麗にしたんだろうけど、匂いは消しきれていないようだ。僕にはわからないけど。
「前クレアが言ってたのは、こういうことだったのね。発情したってことは、子供ができる可能性が有るの?」
「……。」
「周期的な発情じゃないから可能性は低いけど、ないとは言えないわね。」
何も言えずにいるクレアの代わりに、ステラが答えた。
「……。」
クレア落ち込んでるな。
「クレア……。」
「あなた。」
ルナを見ると首を振った。そっとしておけということだろう。
気を取り直して、ステラにお願いして、ルナも一緒に裏庭からステラの故郷附近にテレポートしてもらった。
「本当に場所がわかるの?」
ルナは、不思議そうにそう聞いた。
「うん。まずは、ステラの故郷の先を目指そう。」
前のように岩場を越えて、ステラが生まれたという開けた場所を通り過ぎた。
反対側も岩場があり、それも越えると、森が有った。ただ、この森は、木が生い茂っておらず、中まで日の光が届いていた。
~~~
しばらく歩いていると、突然かなり大きな広場のような所に出た。
「あそこだ。」
広場の真ん中に、ドーム状のものがあった。近付いていくと、最初に思ったより大きいことがわかった。入り口らしき所も見えるが、あそこから入れるのか?
「こんな物があるなんて……。」
ステラは、故郷の近くにこのようなものがあると知って驚いた様子だった。
意外なことに、入り口には扉もなく、すんなり入れた。
「これは……。」
巨大な卵――というより繭という感じだろうか――半透明で中が透けて見えた。高さは5m以上、幅は3m位あると思う。
中に居るのは青いドラゴンだろうか?こちらに背を向けて丸くなっている感じのため、顔は見えなかった。
「これ、ドラゴンよね?このドラゴンが神獣なの?」
ルナが不思議そうにそう言った。
ドラゴンのことはもらった知識に含まれていたのだろうが、『獣』のイメージと一致しないのかも知れない。
「そうみたいだね。」
恐らく間違いないと感じていたが、一応閲覧してみた。
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種族:ブルードラゴン
性別:―
年齢:―
状態異常:封印
HP:―/―
MP:―/―
能力値:(封印されているため、閲覧できません。)
スキル:(封印されているため、閲覧できません。)
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【ブルードラゴン】
神獣の一体。水・氷属性。相反属性である炎属性を持つ武器や魔法以外ではダメージを与えられない。
強大な魔力を持ち、永遠の命を持つ言われている。ただし、これまで世代交代が行われているため、実際には寿命があると思われる。
【封印】
生命活動を停止させられた状態。
封印の解除方法は、術者の目的や能力により様々である(例えは、術者だけしか解除できないものや、複数の条件を満たすことが必要なもの等々)。
なお、術者しか解除できない封印は、術者が死亡したら解除される。
================
うーん。炎属性が有効というのはわかったけど、封印を解除するのには関係無いだろうし、ヒントはなしか。
「せっかく来たから、周りを回ってみよう。」
反対側に回ると当然顔が見える訳で……。
「あ、可愛い!」
「可愛い?」
僕の言葉に、ルナが反応した。
「い、いや。ルナの方が可愛いよ!」
「そういうことじゃなくて、このドラゴンのどこに可愛らしさが有るの?」
「えっ?可愛いじゃない。」
「はぁ……。あなたって、守備範囲広いのね。」
「守備範囲って……。そんなことないよ。リザードマンは無理だったし。」
「なんの話ししてるの?」
遅れてやって来たステラが、そう聞いてきた。
「あ、もちろん、ステラも可愛いよ!」
「あ、ありがとう……じゃなくて!」
「そもそも、このドラゴンはメスなの?」
「封印されてて、性別見れなかったけど、この顔はメスで間違いないね。」
「あなたの目、どうなってるの?」
「別に、普通だけど?それにしても、このドラゴンお待ち帰りしたいな。」
「「……。」」
僕の言葉に、ルナもステラも呆れたような顔をした。
「さ、さて、顔も見たことだし、一旦帰ろうか。」
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