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第1章 異世界転移
6-乗馬施設
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「ユウマさんですね。」
早めにギルドに戻ると、冒険者らしい男の人が声を掛けてきた。後ろに男の人と女の人がいる。
声を掛けてきた人は僕より少し年上、後ろの二人は僕より少し年下に見える。
「はい。そうです。」
「私達は、今回の護衛依頼を受けたパーティーのメンバーです。私は、リーダーのギザールです。よろしくお願いします。」
「ユウマです。よろしくお願いします。」
某ゲームに出てくる野菜みたい……おっと、失礼なことを考えてしまった。
「俺は、ルコル。よろしく頼む。」
「ライアだよ。よろしくね。」
「この馬が、僕の妻でパーティーメンバーでもあるルナ。あと、ユニコーンのクレアとバイコーンのステラです。」
「ルナです。よろしくお願いします。」
皆の紹介に驚いた様子をしていたギザールさん達は、ルナがあいさつすると、さらに驚いていた。
「依頼主さんが来るまでまだ時間ありそうなので、報酬の分け方について相談したいと思いまして。」
「成る程、わかりました。そちらの希望はありますか?」
「人数で分けてもらえると助かります。」
「こちらは2人なので、3対2ということですね。」
「ええ。そちらは強力な従魔がいるので、不公平と思われるかも知れませんが。」
「いえ、問題ないです。従魔は数に含めないのが普通でしょうから。」
「ありがとうございます。助かります。」
「ねぇねぇ、このコ達、触っていい?」
いつの間にか、ライアさんは、クレア達の側にいた。
「ライア、失礼だよ。」
「ギザールさん、大丈夫ですよ。クレアとステラは、どうかな?」
「私に触って良いのは、マスターと処女だけよ。」
「アタシは少しなら良いけど……。」
クレア、また問題発言してるし。ライアさん達に伝わらなくて良かった。処女がオーケーなのは、ネタなのか本気なのかわからないが。
というか、つまりライアさんは……いや、やめておこう。
ステラが了解するのは意外だな。
「ライアさん、バイコーンの方は少しなら良いそうです。」
「そう?」
ライアさんは、嬉しそうにステラを撫でている。この人、バイコーンを怖がらないんだな。
ステラは固まっているけど、大丈夫かな?
「サラサラで気持ちいい!」
「ライア、そろそろ止めとけよ。」
ルコルさん、ナイス。ライアさんは、残念そうだが、撫でるのを止めた。
なんとなくだが、ライアさんのお相手はルコルさんだと思う。
「ありがとね。」
「いえいえ。ところで、ライアさんはステラが怖くないんですか?」
「怖くないよ。バイコーンに悪い噂あるあるらしいけど、このコを見るたあれは嘘というのがよくわかるし。」
悪い噂はやはりあるんだな。
「ステラ、ありがとう。」
「べ、別に、どうってことないわよ。」
かなり無理してるな。僕も撫でておこう。
そうこうしていると、五の鐘が鳴った。
恰幅の良い中年と、それより少し若い細身の男の人、あと、ギルドの職員らしき人が一緒に奥から出てきた。
ギルドの奥から出てきたということは、ボルムさんと話をしていたのだろうか。
「みなさん、お疲れ様です。こちらへどうぞ。」
ギルドの職員らしい人が、会議室のような所へ案内してくれた。
皆が席に着くと(ルナ達は立っているが)、中年の男性が立ち上がった。
「この度は依頼を受けてくれて、ありがとう。ギザール君達は、前にも護衛してもらってるけど、ユウマ君は初めてなので、自己紹介させてもらおう。」
僕の名前は、ボルムさんに聞いたのかな?
「私は、依頼主でジョーンズ。これは、部下のルークだ。」
「はじめまして、ユウマです。今回はよろしくお願いします。」
「ルナです。よろしくお願いします。」
ルナが挨拶しても、ジョーンズさんは、驚かずに嬉しそうにしている。
「あと、後ろにいるのは、従魔のクレアとステラです。あ、ユニコーンの方がクレアで、バイコーンの方がステラです。」
「今回は馬車3頭で、その割には護衛の人数が少ないが、ユニコーンとバイコーンがいたら、魔物は近づいて来ないだろうし、いつもより楽な道中になりそうだな。さて、聞いているかと思うが、出発は明後日にしようと思う。一の鐘がなったら街の入口に集合とする。」
「「わかりました。」」
「目的地まではおよそ3日掛かるので、明日迄に必要なものは準備してくれ。」
ギザールさんに、必要なものとか聞いてみた。
「途中泊まるのは宿場町なので、ある程度お金が有れば大抵何とかなりますが、万一を考えて水と非常食はあった方が良いです。」
「ありがとうございます。」
「また何か有れば、聞いてくださいね。」
ずっと野宿かと思ったが、宿場町があるんだ。考えてみれば、当然か。
基本食事は要らないが、水はどうかな?
こういうときは……、
「物知りクレアさん、水は僕たちも摂る必要ありますか?」
「ないことはないけど、そんなに頻繁には要らないわ。」
「ありがとうございます。」
「なんで、そんなに他人行儀なのよ。」
「いや、これは様式美というか……。」
「意味わからないし……。それより、もし野宿とかなったら馬の水を確保するのが大変だから、持っておいた方が良いんじゃない?運び役は、ここにいるから。」
「えっ、アタシ?」
「さすが、クレアさん。」
「スルーなの?」
「馬車を曳く牝馬の好感度上げられるチャンスかもよ。」
「いや、別にそんなつもりないし。」
「……。」
「ステラ、ごめんね。泣かないで。」
「なんで、アタシが泣くのよ!」
「水はこれから仕入れに行くとして、ほかには準備はあまり無さそうだから、明日空いちゃうね。別の依頼受けるのは厳しそうだし。」
「だったら、乗馬はどう?運動がどれくらい出来るか確認したいし。」
僕のつぶやきに、ルナがすかさずそう言った。
「それは良いね。でも、いいの?」
「もちろんよ。」
「ステラ、私たちはバトルでもする?」
「そうね、戦いたい気持ちはあまり起きないけど、体動かさないと鈍っちゃうわね。」
「あのー、お二人さん。その辺りでバトルするのやめてね……大迷惑だから。あ、そうだ。ギルドに訓練所みたいな所があるんじゃないかな?」
とりあえず、ノアさんの所に行こう。今なら、空いてるみたいだし。
「あなた、ノアさん好きでしょ。」
ルナは、また心を読んだのか?
「それはない!キッパリ!」
「普通、自分で『キッパリ』って言う?」
ルナが何か言ってるけど、気にしないでおこう。
~~~
「すみません、ウチの従魔たちがバトル……いや、模擬戦やりたいらしいんですが、訓練所とか借りることできますか?」
「えっ、ちょっと待ってくださいね!」
ノアさん、慌ててどっか行ったけど。
と、思ったら、ボルムさんを連れてきた。
「ユウマ、何か物騒なことを聞いたが。」
「えっ?ただ、ウチの従魔たちが模擬戦やりたいから、訓練所貸してもらえないか聞いただけなんですが。」
「多分、訓練所が耐えられない。」
「ええっ!?」
「しかし、私も是非見たいので、特別に許可しよう。」
「ギルマス、良いんですか?」
ノアさん、かなり心配そうだな。
「うむ。私と何名かで結界を張ろう。ユウマ、いつが良いかな?」
「明日、場所が空いてる時間でお願いします。」
「では、明日の昼休み明けにしよう。それなら、利用者もあまりいないし、結界の準備もできるだろう。」
「お手数をお掛けします。」
「いや、こちらも貴重なものを見せてもらえるから、ありがたい。そうだ。希望者は見学できるように告知を出しとこう。ユウマ、良いかな?」
「それは大丈夫ですが……。」
なんか大変なことになってるけど。
「よろしく頼む。」
「利用料とか必要ですか?」
「Dランク以上は必要なのだが、今回は皆が見学させてもらうので、無料にしておこう。」
「助かります。あ、ついでに聞きたいことがあるんですが。」
「何かな?」
「ルナに乗って運動させたいんですが、乗馬できる施設とかありますか?」
「それなら、街の入口に近いところにある。わからなければ、門番に聞いてみるといい。」
「わかりました。ありがとうございました。」
ギルドから出た僕たちは、水を買った。
「ステラ、お願いね。」
「これ、私がイヤって言ったらどうするつもりなの?」
目の前には樽2つ、合計50リットルくらいだと思う。値段は80Gで高めに感じる。
「ステラが、困ってる僕達を見棄てるわけないじゃないか。」
「アタシはそんな言葉に動くような、安い女じゃないわよ!」
「仕方ないわね。荷車に載せたら、私が曳くわ。」
「ちょっと、クレアまた好感度上げようとして!しょうがないわね。アイテムボックスに入れてあげるわ。感謝しなさいよ!」
「ありがとう!助かるよ、ステラ!」
ステラをおもいっきり撫で回す。
「チョロいわね……。」
小声で言うクレア。それ言っちゃダメだから。ステラには、聞こえてないみたいだけど……。
そうこうしているうちに、日が傾いて来たので、街を出ることにした。
出る前に、乗馬施設の場所の確認だけしといた。
「今日は、皆で一緒に寝ようか。」
「マスターったら、そういう趣味もあったのね。」
「何を想像してるかわからないけど、仲間なんだから、別々に寝るのもどうかなと思って。ルナは、どう?」
「私は良いわよ。」
「わかったわ。私もマスターの側で寝たいし。ステラもでしょ?」
「アタシは別にそんなことないけど。」
「じゃあ、ステラだけ自分のねぐらで寝る?」
「うっ……。」
「まあまあ。ステラも一緒に寝ようね。」
「ユウマがどうしてもって言うなら、仕方ないわね。」
「うん。是非お願い。」
「マスター、ステラの扱いに慣れてきたわね。」
クレア、呆れたように言うのやめて。
「本当ね。」
ルナまで……。
その夜は、なぜかステラにくっついて寝ることになった。
背中合わせで寝たが、朝起きたらステラを背中から抱き枕みたいに抱いていた。
ステラ、毛並みサラサラで気持ち良いから仕方ないよね。
~~~
「これから、乗馬施設行くけど、クレアとステラはどうする?」
「特にすることもないし、見に行くわ。」
「クレアが行くなら、アタシも。」
乗馬施設に行くと、馬場には既に馬に乗ってる人が何人かいた。
馬場沿いに受付に向かってたら、馬に乗ったまま何人か寄って来た。挨拶しに来たのかな?
「おはようございます。」
声を掛けたけど、様子がおかしい。
「「「おはようございます!」」」
馬達の方が挨拶して来た。
どうやら、馬が勝手に寄ってきたみたいだ。乗ってる人には申し訳なかったな。
「おはよう。乗ってる人が困ってるから、皆ちゃんと運動してね。」
「「「はーい。」」」
皆、運動に戻った。乗ってる人より、通りすがりの人のいうこと聞くのは、どうかと思うが。
「相変わらず、馬たらしスキル発動させてるのね。」
クレアがそう言ったのを聞いて、ドキッとした。
加護のことはまだクレア達には話していないはずだけど……。
もしかすると、クレアは直感的に特別な何かがあると気付いているのかも知れない。
受付で、ルナに乗って運動したい旨を告げた。
「会員以外の方が馬持ち込みで馬場を使用される場合、1単位時間50Gです。会員で馬も登録されれば、使用時間と回数に制限がなくなります。この場合の金額は、登録時300G、あとは1か月につき30Gです。」
受付のお姉さんが、そう説明してくれた。
元の世界の乗馬クラブと似た制度だな。値段はよくわからないが、ギルドの登録料よりずっと高いな。そろそろお金下ろさないといけなくなりそうだ。
「では、会員で馬も登録お願いします。」
「わかりました。では、ギルドカードと料金をお願いします。」
「はい、こちらです。」
僕とルナのカードをお金と一緒に出した。
カードを見て、受付の人は驚いた様子だった。
「ルナさんも冒険者登録されてるんですね。」
「はい。でも、こちらでは、私は普通に馬として登録してください。」
「は、はい、わかりました。少しお待ち下さい。」
ルナの言葉を聞いて戸惑いつつも、手続きを進めるお姉さん。さすがプロだ。
それにしても、サインとかしなくて良いのは楽だな。
しばらくして、お姉さんはカードを返してくれた。
「登録ありがとうございました。登録が完了しましたので、今後ギルドカードを出されたら、いつでも利用できます。今日早速利用されますか?」
「はい、お願いします。あ、そう言えば、今乗馬ズボンもの長靴もないんですが、こちらで購入できますか?」
『キュロット』と言ってちゃんと翻訳してくれるかわからないので、敢えて『乗馬ズボン』と言ってみた。
「乗馬ズボンは売ってますが、長靴は専門店で作ってもらってください。貸し長靴は一応ありますので、今日はそれを使用されますか?」
「はい、そうします。」
相手の言葉でも『乗馬ズボン』になっているし、これで良さそうだ。
その『乗馬ズボン』は、手頃なのがあったので、買っておいた。
貸し長靴は微妙だが、まあ仕方ないだろう。後で買いに行かなきゃな。
「ちなみに、勒と鞍はどうされるんですか?」
「ルナには使わないので、大丈夫です。」
「はあ?」
「そのうち、他の馬に乗るようになったら、考えます。」
「……。」
なんか混乱してるみたいだな。
「実際乗ってみるので、見てみて下さい。」
「そ、そうですね。見させてもらいます。」
いざルナに乗ろうと思った時、鞍なしだと飛び乗るのは大変だということに気付いた。
「あなた、良いわよ。」
ルナが気を利かせて座っくれた。人前で座らせて、申し訳ない。
「ありがとう!じゃあ、ルナ、お願いね。」
「任せて!」
早めにギルドに戻ると、冒険者らしい男の人が声を掛けてきた。後ろに男の人と女の人がいる。
声を掛けてきた人は僕より少し年上、後ろの二人は僕より少し年下に見える。
「はい。そうです。」
「私達は、今回の護衛依頼を受けたパーティーのメンバーです。私は、リーダーのギザールです。よろしくお願いします。」
「ユウマです。よろしくお願いします。」
某ゲームに出てくる野菜みたい……おっと、失礼なことを考えてしまった。
「俺は、ルコル。よろしく頼む。」
「ライアだよ。よろしくね。」
「この馬が、僕の妻でパーティーメンバーでもあるルナ。あと、ユニコーンのクレアとバイコーンのステラです。」
「ルナです。よろしくお願いします。」
皆の紹介に驚いた様子をしていたギザールさん達は、ルナがあいさつすると、さらに驚いていた。
「依頼主さんが来るまでまだ時間ありそうなので、報酬の分け方について相談したいと思いまして。」
「成る程、わかりました。そちらの希望はありますか?」
「人数で分けてもらえると助かります。」
「こちらは2人なので、3対2ということですね。」
「ええ。そちらは強力な従魔がいるので、不公平と思われるかも知れませんが。」
「いえ、問題ないです。従魔は数に含めないのが普通でしょうから。」
「ありがとうございます。助かります。」
「ねぇねぇ、このコ達、触っていい?」
いつの間にか、ライアさんは、クレア達の側にいた。
「ライア、失礼だよ。」
「ギザールさん、大丈夫ですよ。クレアとステラは、どうかな?」
「私に触って良いのは、マスターと処女だけよ。」
「アタシは少しなら良いけど……。」
クレア、また問題発言してるし。ライアさん達に伝わらなくて良かった。処女がオーケーなのは、ネタなのか本気なのかわからないが。
というか、つまりライアさんは……いや、やめておこう。
ステラが了解するのは意外だな。
「ライアさん、バイコーンの方は少しなら良いそうです。」
「そう?」
ライアさんは、嬉しそうにステラを撫でている。この人、バイコーンを怖がらないんだな。
ステラは固まっているけど、大丈夫かな?
「サラサラで気持ちいい!」
「ライア、そろそろ止めとけよ。」
ルコルさん、ナイス。ライアさんは、残念そうだが、撫でるのを止めた。
なんとなくだが、ライアさんのお相手はルコルさんだと思う。
「ありがとね。」
「いえいえ。ところで、ライアさんはステラが怖くないんですか?」
「怖くないよ。バイコーンに悪い噂あるあるらしいけど、このコを見るたあれは嘘というのがよくわかるし。」
悪い噂はやはりあるんだな。
「ステラ、ありがとう。」
「べ、別に、どうってことないわよ。」
かなり無理してるな。僕も撫でておこう。
そうこうしていると、五の鐘が鳴った。
恰幅の良い中年と、それより少し若い細身の男の人、あと、ギルドの職員らしき人が一緒に奥から出てきた。
ギルドの奥から出てきたということは、ボルムさんと話をしていたのだろうか。
「みなさん、お疲れ様です。こちらへどうぞ。」
ギルドの職員らしい人が、会議室のような所へ案内してくれた。
皆が席に着くと(ルナ達は立っているが)、中年の男性が立ち上がった。
「この度は依頼を受けてくれて、ありがとう。ギザール君達は、前にも護衛してもらってるけど、ユウマ君は初めてなので、自己紹介させてもらおう。」
僕の名前は、ボルムさんに聞いたのかな?
「私は、依頼主でジョーンズ。これは、部下のルークだ。」
「はじめまして、ユウマです。今回はよろしくお願いします。」
「ルナです。よろしくお願いします。」
ルナが挨拶しても、ジョーンズさんは、驚かずに嬉しそうにしている。
「あと、後ろにいるのは、従魔のクレアとステラです。あ、ユニコーンの方がクレアで、バイコーンの方がステラです。」
「今回は馬車3頭で、その割には護衛の人数が少ないが、ユニコーンとバイコーンがいたら、魔物は近づいて来ないだろうし、いつもより楽な道中になりそうだな。さて、聞いているかと思うが、出発は明後日にしようと思う。一の鐘がなったら街の入口に集合とする。」
「「わかりました。」」
「目的地まではおよそ3日掛かるので、明日迄に必要なものは準備してくれ。」
ギザールさんに、必要なものとか聞いてみた。
「途中泊まるのは宿場町なので、ある程度お金が有れば大抵何とかなりますが、万一を考えて水と非常食はあった方が良いです。」
「ありがとうございます。」
「また何か有れば、聞いてくださいね。」
ずっと野宿かと思ったが、宿場町があるんだ。考えてみれば、当然か。
基本食事は要らないが、水はどうかな?
こういうときは……、
「物知りクレアさん、水は僕たちも摂る必要ありますか?」
「ないことはないけど、そんなに頻繁には要らないわ。」
「ありがとうございます。」
「なんで、そんなに他人行儀なのよ。」
「いや、これは様式美というか……。」
「意味わからないし……。それより、もし野宿とかなったら馬の水を確保するのが大変だから、持っておいた方が良いんじゃない?運び役は、ここにいるから。」
「えっ、アタシ?」
「さすが、クレアさん。」
「スルーなの?」
「馬車を曳く牝馬の好感度上げられるチャンスかもよ。」
「いや、別にそんなつもりないし。」
「……。」
「ステラ、ごめんね。泣かないで。」
「なんで、アタシが泣くのよ!」
「水はこれから仕入れに行くとして、ほかには準備はあまり無さそうだから、明日空いちゃうね。別の依頼受けるのは厳しそうだし。」
「だったら、乗馬はどう?運動がどれくらい出来るか確認したいし。」
僕のつぶやきに、ルナがすかさずそう言った。
「それは良いね。でも、いいの?」
「もちろんよ。」
「ステラ、私たちはバトルでもする?」
「そうね、戦いたい気持ちはあまり起きないけど、体動かさないと鈍っちゃうわね。」
「あのー、お二人さん。その辺りでバトルするのやめてね……大迷惑だから。あ、そうだ。ギルドに訓練所みたいな所があるんじゃないかな?」
とりあえず、ノアさんの所に行こう。今なら、空いてるみたいだし。
「あなた、ノアさん好きでしょ。」
ルナは、また心を読んだのか?
「それはない!キッパリ!」
「普通、自分で『キッパリ』って言う?」
ルナが何か言ってるけど、気にしないでおこう。
~~~
「すみません、ウチの従魔たちがバトル……いや、模擬戦やりたいらしいんですが、訓練所とか借りることできますか?」
「えっ、ちょっと待ってくださいね!」
ノアさん、慌ててどっか行ったけど。
と、思ったら、ボルムさんを連れてきた。
「ユウマ、何か物騒なことを聞いたが。」
「えっ?ただ、ウチの従魔たちが模擬戦やりたいから、訓練所貸してもらえないか聞いただけなんですが。」
「多分、訓練所が耐えられない。」
「ええっ!?」
「しかし、私も是非見たいので、特別に許可しよう。」
「ギルマス、良いんですか?」
ノアさん、かなり心配そうだな。
「うむ。私と何名かで結界を張ろう。ユウマ、いつが良いかな?」
「明日、場所が空いてる時間でお願いします。」
「では、明日の昼休み明けにしよう。それなら、利用者もあまりいないし、結界の準備もできるだろう。」
「お手数をお掛けします。」
「いや、こちらも貴重なものを見せてもらえるから、ありがたい。そうだ。希望者は見学できるように告知を出しとこう。ユウマ、良いかな?」
「それは大丈夫ですが……。」
なんか大変なことになってるけど。
「よろしく頼む。」
「利用料とか必要ですか?」
「Dランク以上は必要なのだが、今回は皆が見学させてもらうので、無料にしておこう。」
「助かります。あ、ついでに聞きたいことがあるんですが。」
「何かな?」
「ルナに乗って運動させたいんですが、乗馬できる施設とかありますか?」
「それなら、街の入口に近いところにある。わからなければ、門番に聞いてみるといい。」
「わかりました。ありがとうございました。」
ギルドから出た僕たちは、水を買った。
「ステラ、お願いね。」
「これ、私がイヤって言ったらどうするつもりなの?」
目の前には樽2つ、合計50リットルくらいだと思う。値段は80Gで高めに感じる。
「ステラが、困ってる僕達を見棄てるわけないじゃないか。」
「アタシはそんな言葉に動くような、安い女じゃないわよ!」
「仕方ないわね。荷車に載せたら、私が曳くわ。」
「ちょっと、クレアまた好感度上げようとして!しょうがないわね。アイテムボックスに入れてあげるわ。感謝しなさいよ!」
「ありがとう!助かるよ、ステラ!」
ステラをおもいっきり撫で回す。
「チョロいわね……。」
小声で言うクレア。それ言っちゃダメだから。ステラには、聞こえてないみたいだけど……。
そうこうしているうちに、日が傾いて来たので、街を出ることにした。
出る前に、乗馬施設の場所の確認だけしといた。
「今日は、皆で一緒に寝ようか。」
「マスターったら、そういう趣味もあったのね。」
「何を想像してるかわからないけど、仲間なんだから、別々に寝るのもどうかなと思って。ルナは、どう?」
「私は良いわよ。」
「わかったわ。私もマスターの側で寝たいし。ステラもでしょ?」
「アタシは別にそんなことないけど。」
「じゃあ、ステラだけ自分のねぐらで寝る?」
「うっ……。」
「まあまあ。ステラも一緒に寝ようね。」
「ユウマがどうしてもって言うなら、仕方ないわね。」
「うん。是非お願い。」
「マスター、ステラの扱いに慣れてきたわね。」
クレア、呆れたように言うのやめて。
「本当ね。」
ルナまで……。
その夜は、なぜかステラにくっついて寝ることになった。
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ステラ、毛並みサラサラで気持ち良いから仕方ないよね。
~~~
「これから、乗馬施設行くけど、クレアとステラはどうする?」
「特にすることもないし、見に行くわ。」
「クレアが行くなら、アタシも。」
乗馬施設に行くと、馬場には既に馬に乗ってる人が何人かいた。
馬場沿いに受付に向かってたら、馬に乗ったまま何人か寄って来た。挨拶しに来たのかな?
「おはようございます。」
声を掛けたけど、様子がおかしい。
「「「おはようございます!」」」
馬達の方が挨拶して来た。
どうやら、馬が勝手に寄ってきたみたいだ。乗ってる人には申し訳なかったな。
「おはよう。乗ってる人が困ってるから、皆ちゃんと運動してね。」
「「「はーい。」」」
皆、運動に戻った。乗ってる人より、通りすがりの人のいうこと聞くのは、どうかと思うが。
「相変わらず、馬たらしスキル発動させてるのね。」
クレアがそう言ったのを聞いて、ドキッとした。
加護のことはまだクレア達には話していないはずだけど……。
もしかすると、クレアは直感的に特別な何かがあると気付いているのかも知れない。
受付で、ルナに乗って運動したい旨を告げた。
「会員以外の方が馬持ち込みで馬場を使用される場合、1単位時間50Gです。会員で馬も登録されれば、使用時間と回数に制限がなくなります。この場合の金額は、登録時300G、あとは1か月につき30Gです。」
受付のお姉さんが、そう説明してくれた。
元の世界の乗馬クラブと似た制度だな。値段はよくわからないが、ギルドの登録料よりずっと高いな。そろそろお金下ろさないといけなくなりそうだ。
「では、会員で馬も登録お願いします。」
「わかりました。では、ギルドカードと料金をお願いします。」
「はい、こちらです。」
僕とルナのカードをお金と一緒に出した。
カードを見て、受付の人は驚いた様子だった。
「ルナさんも冒険者登録されてるんですね。」
「はい。でも、こちらでは、私は普通に馬として登録してください。」
「は、はい、わかりました。少しお待ち下さい。」
ルナの言葉を聞いて戸惑いつつも、手続きを進めるお姉さん。さすがプロだ。
それにしても、サインとかしなくて良いのは楽だな。
しばらくして、お姉さんはカードを返してくれた。
「登録ありがとうございました。登録が完了しましたので、今後ギルドカードを出されたら、いつでも利用できます。今日早速利用されますか?」
「はい、お願いします。あ、そう言えば、今乗馬ズボンもの長靴もないんですが、こちらで購入できますか?」
『キュロット』と言ってちゃんと翻訳してくれるかわからないので、敢えて『乗馬ズボン』と言ってみた。
「乗馬ズボンは売ってますが、長靴は専門店で作ってもらってください。貸し長靴は一応ありますので、今日はそれを使用されますか?」
「はい、そうします。」
相手の言葉でも『乗馬ズボン』になっているし、これで良さそうだ。
その『乗馬ズボン』は、手頃なのがあったので、買っておいた。
貸し長靴は微妙だが、まあ仕方ないだろう。後で買いに行かなきゃな。
「ちなみに、勒と鞍はどうされるんですか?」
「ルナには使わないので、大丈夫です。」
「はあ?」
「そのうち、他の馬に乗るようになったら、考えます。」
「……。」
なんか混乱してるみたいだな。
「実際乗ってみるので、見てみて下さい。」
「そ、そうですね。見させてもらいます。」
いざルナに乗ろうと思った時、鞍なしだと飛び乗るのは大変だということに気付いた。
「あなた、良いわよ。」
ルナが気を利かせて座っくれた。人前で座らせて、申し訳ない。
「ありがとう!じゃあ、ルナ、お願いね。」
「任せて!」
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ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
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