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第1章 異世界転移
3-ユニコーンとバイコーン
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僕は、反射的にその音のした方を見た。
せっかく良い雰囲気だったのに……。
「行ってみようか。」
「ええ……。」
ルナも不満そうだが、やはり気になるようで、一緒に音のした方に向かった。
少し行くと、開けた所に出た。
ドォォォン!!
二頭の馬(?)が互いに魔法を放ち、お互い避けているようだ。
『ようだ』というのは、実際には二頭の動きが早すぎてほとんど見えないだめだ。
どちらかが少し止まったと思ったら、次の瞬間には地面が爆発しているという感じなので、恐らくそこに魔法が当たっているのだと思う。
それにしても、ひどい環境破壊だな。
二頭の馬のうち、一方の馬は額に一本の角があり、たてがみと尾が淡い青紫色なのと目が青色なのを除いて真っ白だ。
もう一方の馬は、ヤギの角に似た赤紫色の二本の角があり、紫がかった灰色の身体に白いたてがみと尾、そして赤い目、とちょっと禍々しい感じがする。
とりあえず、二頭の種族を確認しておこう。
================
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
HP:4,800/4,800
MP:32,000/50,000
能力値:▼
スキル:▼
================
================
種族:バイコーン
性別:♀
年齢:217歳
HP:4,385/4,500
MP:26,000/46,000
能力値:▼
スキル:▼
================
種族を確認しようと思っただけなのに、能力値とスキルが非表示になっているだけだな。
まあ、それは置いておくとして、やはりユニコーンとバイコーンのようだ。
HP、MPの減り具合からして、バイコーンの方が消耗が激しい。というか、ユニコーンがHPが減っていないのは、回復魔法を使っているからだろう。
あと、年齢は意外だ。ここには、触れてはいけない気がするが……。
イメージしていたユニコーンやバイコーンよりかなり小さい。今のルナよりも一回り小さい位だろうか。
そう言えば、ルナも元の世界にいたときより一回り小さくなっている。この世界の馬が全体的に元の世界の馬より小さいのかも知れない。
あまりゆっくりとしていられる状況ではないが、種族の説明は見ておいた方が良いかな?
================
【ユニコーン】
一本の角がある馬型の魔獣。魔力が高く、平均寿命は3000年位。
回復魔法に長けており、角は万能薬としての効果がある。
人間は処女以外は寄せ付けないと言われているが、実際はそのようなことはない。
【バイコーン】
二本の角がある馬型の魔獣。魔力が高く、平均寿命は3000年位。
見た目のせいか、近づくと呪いを受けると言われているが、実際にはそのようなことはない。
なお、人間の目に触れることはほとんどないため、わかっていないことが多い。
================
『実際はそのようなことはない』の部分にツッコミたいところだが、今はそれどころではないようだ。
ユニコーンとバイコーンはお互い向かい合った状態で立ち止まっており、お互いの周りに魔方陣が見える。
今まで魔方陣が見えなかったので、お互いかなり強い魔法を放とうとしているのではないだろうか?
僕は、思わず二頭の方に走って行った。
「えっ、ちょっと待って!」
ルナが驚いたように言ったが、構わず二頭の間に割って入った。
「すみませーん!」
ドォォン!
二頭の魔法をまともに受けてしまったようだ。かなりの衝撃で倒れてしまったが、ダメージはなさそう。
しかし、この光景、客観的に見たらどこかで見たことあるような……。石化はしてないが。
~~~
間もなく、二頭が寄ってきた。さすがに驚いたようだ。
「えっと、大丈夫?」
「ちょっと、なに邪魔してるのよ!」
最初のがユニコーン、後のがバイコーンだ。
普通に言葉がわかる。これも翻訳スキルのおかげだろうか?
「すみません。ちょっと道を聞きたくてですね。」
起き上がってそう言うと、二頭はあきれたような顔をしていた。
何か変なことを言っただろうか?
せっかくこの世界の住人(人ではないが)に会ったのだから、街に行く道を聞くのは当然だと思う。
もし両者とも倒れてしまったら、道を聞くことができないし……。
「すみません、主人が迷惑をかけました。」
ルナがやって来て二頭に頭を下げた。
僕も続いて一礼して、話を続けた。
「お邪魔をして済みませんでした。でも、このまま続けると、この辺りが大変なことになりますよ。」
既に手遅れの感もあるが。
「「……。」」
ユニコーンとバイコーンが辺りを見回し、言葉を失っていた。状況に初めて気が付いたようだ。
「僕はユウマ、こっちは妻のルナと言います。すみまんが、街に行きたいので、どっちに行ったら良いか知っていたら教えてもらえないでしょうか。」
「「妻!?」」
あ、ツッコむところはそこなのね。
僕達は異世界から転移して来たということ、ルナとはさっき夫婦になったということを、彼女たちに説明した。
転移のことについては話して良いものか迷ったが、彼女たちと会話して、知られても問題ないと判断した。
彼女たちは人間と接することはほとんどないし、話す言葉は(僕のような例外を除いて)人間には理解できない、ということだったからだ。
「面白そうだから、私も一緒に行くわ。」
「ありがとうございます。街まで送ってくれるのですね。」
「あら、街までじゃなくて、ずっとよ。」
「「えっ!?」」
ユニコーンの言葉に、僕とルナが驚いた。
「貴女はどうする?」
ユニコーンは、バイコーンにそう聞いた。
「ア、アタシは別に行きたくないけど、アナタが寂しいだろうから、特別に一緒に行ってあげる。」
ツンデレか!……って、意外と仲が良いんだな、この二頭。
「というわけで、よろしくね。あと、そんなに丁寧な言葉使いは必要ないから。」
「わ、わかった。こちらこそよろしく。」
ユニコーンにも、丁寧な言葉使いで翻訳されているのだろうか?
そういうわけで、ユニコーンに案内してもらうことにしたけど、この二頭を街に連れていくと騒ぎになるのではないだろうか。
そのことを聞いてみたら、ユニコーンは少し考えるそぶりをしてから言った。
「そうだ、良いこと思い付いた!」
「……。」
全体碌なことではない気がするのだが……。
「先ずは、皆をきれいにしましょうか。『クリーン!』」
キラキラしたものが降り注いできて、なんかさっぱりした感じだ。名前からして浄化の魔法だろう。
「おぉ。すごいね!!」
「そうでしょう!」
ユニコーンが胸を張っている……のだろう、誇らしげだ。
今気づいたが、服がボロボロになってる。さっきの攻撃のせいだな。
「服は仕方ないわね。それはそうと、ちょっと目を瞑ってみて。」
不安を感じつつも、言われた通り目を瞑ると、唇に何か触れた。
≪従魔契約が成立しました。≫
「え、いったい何?」
「もう目を開けて良いわよ。」
目を開けると、してやったりという感じのユニコーンと、驚いた様子のルナとバイコーン。
「ちょ、ちょっと、何やってるのよ!」
ルナが我に返ったようで、抗議の声を上げた。
「従魔契約よ。従魔なら、街に入っても大丈夫なはず。」
「え、従魔契約って、そんな簡単にできるものなの?……っていうか、なんでキスしたのよ!」
バイコーンも戸惑っているみたいだが、僕も今一つ状況が飲み込めない。
でも、脳内アナウンス(?)でも言っていたし、キスによって従魔契約が成立したらしい。
ユニコーンの説明によると、従魔契約を行うには基本的に主側に特定のスキル(従魔術など)が必要であるが、魔物側からは相手のスキルや意思は関係なく契約を結ぶことが可能ということだった。確かに、従魔側のメリットはあまりなさそうだから、あり得る話だと思う。
「お互いの体の一部が触れている状態で、従魔になる意思表明をすれば良いのよ。」
「なんでアナタがそんなこと知ってるの?っていうか、それじゃあ、キスする必要はなかったんじゃない?」
僕が聞こうとしたことを、なぜか慌てたようにバイコーンが代わりに聞いてくれた。
「キスするのが確実らしいわよ……前の主に聞いたのよ。」
ユニコーンは、以前従魔術のスキルを持った女の人の従魔になっていた時があって、その時に聞いたらしい。ユニコーンを従わせることができるって、どんな人だったかすごい気になるな。
キスの話は、その人が冗談で言ったのではないかと思うが、どうだろう。
それにしても、バイコーンはなぜあんなに慌てているんだろうか。
とりあえず、自分のステータスを確認してみよう。
================
名前:ユウマ
種族:ハイ・ヒューマン
性別:♂
年齢:35歳
能力値:▼
スキル:閲覧、MP消費防御、翻訳
加護:調停者の加護、獣神の加護、馬女神の加護
妻:ルナ
従魔:???(ユニコーン)
================
お、ユニコーンが従魔になっているな。『???』は名前が入るのかな?
あと、ユニコーンの方も確認してみよう。
================
名前:???
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
能力値:▼
スキル:▼
契約主:ユウマ
================
さっき見たときはなかった『名前』の部分が追加されている。
「従魔になったんだから、名前付けてよね。」
名前かー。名前つけるの苦手なんだよね。
「その前に、アタシとも……あのー……契約を……。」
「私の名前が先よ!」
バイコーンが、なぜかしおらしく言ってきたが、ユニコーンが却下した。
しばらく言い合いしていたが、名前は落ち着いてからというバイコーンの言い分が通って、先に契約することになった。
意外なことに、バイコーンもユニコーンと同じくキスを主張した。恥ずかしかったが、ユニコーンと差を付けるのも悪いので、目を瞑って待っていると、先程と同じように脳内アナウンスが流れた。
ルナもなぜか契約したがったが、そもそもルナは魔獣ではないため、契約はできないらしい。
残念そうにしているが、ルナは夫婦になったんだから、必要ないと思う。
名前は、かなり悩んだか、ユニコーンはクリーンなイメージから「クレア」、バイコーンは夜空のイメージから「ステラ」と付けた。彼女たちも不満はなさそうなので、大丈夫だろう。
念のため、能力値とスキルも含め、彼女達のステータスを確認した。
================
名前:クレア
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
能力値:
力:A
体力:A
知力:A
精神力:A
素早さ:A
スキル:光魔法、回復魔法
契約主:ユウマ
================
================
名前:ステラ
種族:バイコーン
性別:♀
年齢:217歳
能力値:
力:A
体力:A
知力:A
精神力:A
素早さ:A
スキル:闇魔法、空間魔法
契約主:ユウマ
================
クレアもステラも、能力値オールAってすごいな!
あと、スキルについては、回復魔法以外はあまりイメージできない。追々確認していく必要があるだろう。
「じゃあ、行きましょうか、マスター。」
「マスター?」
「マスターと呼ぶのが従魔っぽくて良いでしょう?」
クレアさん、すみません。そこ胸張るところじゃないと思います。
「あなた、私に乗って。」
「良いの?」
ルナが座って乗るように促して来るが、妻に乗るのはちょっと抵抗あるな。
「もちろんよ。私はあなたの妻であると同時にあなたの馬なんだから。」
「あ、ありがとう。」
僕が乗ると、ルナは立ち上がって、クレアとステラの方をちらっと見た。
あれ?僕を乗せたのって、クレアとステラに対抗する意味もあったのかな?
せっかく良い雰囲気だったのに……。
「行ってみようか。」
「ええ……。」
ルナも不満そうだが、やはり気になるようで、一緒に音のした方に向かった。
少し行くと、開けた所に出た。
ドォォォン!!
二頭の馬(?)が互いに魔法を放ち、お互い避けているようだ。
『ようだ』というのは、実際には二頭の動きが早すぎてほとんど見えないだめだ。
どちらかが少し止まったと思ったら、次の瞬間には地面が爆発しているという感じなので、恐らくそこに魔法が当たっているのだと思う。
それにしても、ひどい環境破壊だな。
二頭の馬のうち、一方の馬は額に一本の角があり、たてがみと尾が淡い青紫色なのと目が青色なのを除いて真っ白だ。
もう一方の馬は、ヤギの角に似た赤紫色の二本の角があり、紫がかった灰色の身体に白いたてがみと尾、そして赤い目、とちょっと禍々しい感じがする。
とりあえず、二頭の種族を確認しておこう。
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種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
HP:4,800/4,800
MP:32,000/50,000
能力値:▼
スキル:▼
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種族:バイコーン
性別:♀
年齢:217歳
HP:4,385/4,500
MP:26,000/46,000
能力値:▼
スキル:▼
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種族を確認しようと思っただけなのに、能力値とスキルが非表示になっているだけだな。
まあ、それは置いておくとして、やはりユニコーンとバイコーンのようだ。
HP、MPの減り具合からして、バイコーンの方が消耗が激しい。というか、ユニコーンがHPが減っていないのは、回復魔法を使っているからだろう。
あと、年齢は意外だ。ここには、触れてはいけない気がするが……。
イメージしていたユニコーンやバイコーンよりかなり小さい。今のルナよりも一回り小さい位だろうか。
そう言えば、ルナも元の世界にいたときより一回り小さくなっている。この世界の馬が全体的に元の世界の馬より小さいのかも知れない。
あまりゆっくりとしていられる状況ではないが、種族の説明は見ておいた方が良いかな?
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【ユニコーン】
一本の角がある馬型の魔獣。魔力が高く、平均寿命は3000年位。
回復魔法に長けており、角は万能薬としての効果がある。
人間は処女以外は寄せ付けないと言われているが、実際はそのようなことはない。
【バイコーン】
二本の角がある馬型の魔獣。魔力が高く、平均寿命は3000年位。
見た目のせいか、近づくと呪いを受けると言われているが、実際にはそのようなことはない。
なお、人間の目に触れることはほとんどないため、わかっていないことが多い。
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『実際はそのようなことはない』の部分にツッコミたいところだが、今はそれどころではないようだ。
ユニコーンとバイコーンはお互い向かい合った状態で立ち止まっており、お互いの周りに魔方陣が見える。
今まで魔方陣が見えなかったので、お互いかなり強い魔法を放とうとしているのではないだろうか?
僕は、思わず二頭の方に走って行った。
「えっ、ちょっと待って!」
ルナが驚いたように言ったが、構わず二頭の間に割って入った。
「すみませーん!」
ドォォン!
二頭の魔法をまともに受けてしまったようだ。かなりの衝撃で倒れてしまったが、ダメージはなさそう。
しかし、この光景、客観的に見たらどこかで見たことあるような……。石化はしてないが。
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間もなく、二頭が寄ってきた。さすがに驚いたようだ。
「えっと、大丈夫?」
「ちょっと、なに邪魔してるのよ!」
最初のがユニコーン、後のがバイコーンだ。
普通に言葉がわかる。これも翻訳スキルのおかげだろうか?
「すみません。ちょっと道を聞きたくてですね。」
起き上がってそう言うと、二頭はあきれたような顔をしていた。
何か変なことを言っただろうか?
せっかくこの世界の住人(人ではないが)に会ったのだから、街に行く道を聞くのは当然だと思う。
もし両者とも倒れてしまったら、道を聞くことができないし……。
「すみません、主人が迷惑をかけました。」
ルナがやって来て二頭に頭を下げた。
僕も続いて一礼して、話を続けた。
「お邪魔をして済みませんでした。でも、このまま続けると、この辺りが大変なことになりますよ。」
既に手遅れの感もあるが。
「「……。」」
ユニコーンとバイコーンが辺りを見回し、言葉を失っていた。状況に初めて気が付いたようだ。
「僕はユウマ、こっちは妻のルナと言います。すみまんが、街に行きたいので、どっちに行ったら良いか知っていたら教えてもらえないでしょうか。」
「「妻!?」」
あ、ツッコむところはそこなのね。
僕達は異世界から転移して来たということ、ルナとはさっき夫婦になったということを、彼女たちに説明した。
転移のことについては話して良いものか迷ったが、彼女たちと会話して、知られても問題ないと判断した。
彼女たちは人間と接することはほとんどないし、話す言葉は(僕のような例外を除いて)人間には理解できない、ということだったからだ。
「面白そうだから、私も一緒に行くわ。」
「ありがとうございます。街まで送ってくれるのですね。」
「あら、街までじゃなくて、ずっとよ。」
「「えっ!?」」
ユニコーンの言葉に、僕とルナが驚いた。
「貴女はどうする?」
ユニコーンは、バイコーンにそう聞いた。
「ア、アタシは別に行きたくないけど、アナタが寂しいだろうから、特別に一緒に行ってあげる。」
ツンデレか!……って、意外と仲が良いんだな、この二頭。
「というわけで、よろしくね。あと、そんなに丁寧な言葉使いは必要ないから。」
「わ、わかった。こちらこそよろしく。」
ユニコーンにも、丁寧な言葉使いで翻訳されているのだろうか?
そういうわけで、ユニコーンに案内してもらうことにしたけど、この二頭を街に連れていくと騒ぎになるのではないだろうか。
そのことを聞いてみたら、ユニコーンは少し考えるそぶりをしてから言った。
「そうだ、良いこと思い付いた!」
「……。」
全体碌なことではない気がするのだが……。
「先ずは、皆をきれいにしましょうか。『クリーン!』」
キラキラしたものが降り注いできて、なんかさっぱりした感じだ。名前からして浄化の魔法だろう。
「おぉ。すごいね!!」
「そうでしょう!」
ユニコーンが胸を張っている……のだろう、誇らしげだ。
今気づいたが、服がボロボロになってる。さっきの攻撃のせいだな。
「服は仕方ないわね。それはそうと、ちょっと目を瞑ってみて。」
不安を感じつつも、言われた通り目を瞑ると、唇に何か触れた。
≪従魔契約が成立しました。≫
「え、いったい何?」
「もう目を開けて良いわよ。」
目を開けると、してやったりという感じのユニコーンと、驚いた様子のルナとバイコーン。
「ちょ、ちょっと、何やってるのよ!」
ルナが我に返ったようで、抗議の声を上げた。
「従魔契約よ。従魔なら、街に入っても大丈夫なはず。」
「え、従魔契約って、そんな簡単にできるものなの?……っていうか、なんでキスしたのよ!」
バイコーンも戸惑っているみたいだが、僕も今一つ状況が飲み込めない。
でも、脳内アナウンス(?)でも言っていたし、キスによって従魔契約が成立したらしい。
ユニコーンの説明によると、従魔契約を行うには基本的に主側に特定のスキル(従魔術など)が必要であるが、魔物側からは相手のスキルや意思は関係なく契約を結ぶことが可能ということだった。確かに、従魔側のメリットはあまりなさそうだから、あり得る話だと思う。
「お互いの体の一部が触れている状態で、従魔になる意思表明をすれば良いのよ。」
「なんでアナタがそんなこと知ってるの?っていうか、それじゃあ、キスする必要はなかったんじゃない?」
僕が聞こうとしたことを、なぜか慌てたようにバイコーンが代わりに聞いてくれた。
「キスするのが確実らしいわよ……前の主に聞いたのよ。」
ユニコーンは、以前従魔術のスキルを持った女の人の従魔になっていた時があって、その時に聞いたらしい。ユニコーンを従わせることができるって、どんな人だったかすごい気になるな。
キスの話は、その人が冗談で言ったのではないかと思うが、どうだろう。
それにしても、バイコーンはなぜあんなに慌てているんだろうか。
とりあえず、自分のステータスを確認してみよう。
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名前:ユウマ
種族:ハイ・ヒューマン
性別:♂
年齢:35歳
能力値:▼
スキル:閲覧、MP消費防御、翻訳
加護:調停者の加護、獣神の加護、馬女神の加護
妻:ルナ
従魔:???(ユニコーン)
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お、ユニコーンが従魔になっているな。『???』は名前が入るのかな?
あと、ユニコーンの方も確認してみよう。
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名前:???
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
能力値:▼
スキル:▼
契約主:ユウマ
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さっき見たときはなかった『名前』の部分が追加されている。
「従魔になったんだから、名前付けてよね。」
名前かー。名前つけるの苦手なんだよね。
「その前に、アタシとも……あのー……契約を……。」
「私の名前が先よ!」
バイコーンが、なぜかしおらしく言ってきたが、ユニコーンが却下した。
しばらく言い合いしていたが、名前は落ち着いてからというバイコーンの言い分が通って、先に契約することになった。
意外なことに、バイコーンもユニコーンと同じくキスを主張した。恥ずかしかったが、ユニコーンと差を付けるのも悪いので、目を瞑って待っていると、先程と同じように脳内アナウンスが流れた。
ルナもなぜか契約したがったが、そもそもルナは魔獣ではないため、契約はできないらしい。
残念そうにしているが、ルナは夫婦になったんだから、必要ないと思う。
名前は、かなり悩んだか、ユニコーンはクリーンなイメージから「クレア」、バイコーンは夜空のイメージから「ステラ」と付けた。彼女たちも不満はなさそうなので、大丈夫だろう。
念のため、能力値とスキルも含め、彼女達のステータスを確認した。
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名前:クレア
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
能力値:
力:A
体力:A
知力:A
精神力:A
素早さ:A
スキル:光魔法、回復魔法
契約主:ユウマ
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名前:ステラ
種族:バイコーン
性別:♀
年齢:217歳
能力値:
力:A
体力:A
知力:A
精神力:A
素早さ:A
スキル:闇魔法、空間魔法
契約主:ユウマ
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クレアもステラも、能力値オールAってすごいな!
あと、スキルについては、回復魔法以外はあまりイメージできない。追々確認していく必要があるだろう。
「じゃあ、行きましょうか、マスター。」
「マスター?」
「マスターと呼ぶのが従魔っぽくて良いでしょう?」
クレアさん、すみません。そこ胸張るところじゃないと思います。
「あなた、私に乗って。」
「良いの?」
ルナが座って乗るように促して来るが、妻に乗るのはちょっと抵抗あるな。
「もちろんよ。私はあなたの妻であると同時にあなたの馬なんだから。」
「あ、ありがとう。」
僕が乗ると、ルナは立ち上がって、クレアとステラの方をちらっと見た。
あれ?僕を乗せたのって、クレアとステラに対抗する意味もあったのかな?
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