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「ゆびきりげんまん」舞台台本版
第二幕 ①
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どことも言えない空間。
(さまざまな小道具・椅子等、散乱した状態でも可。)
ウリが1人で、いる。(何をしていても可。)
天遣3人と、キョロキョロしながら実琴が登場。
実琴 「何? ココ?」
カイル「さあ?」
実琴 「は!? ちょっと!! アンタねー!!」
イズラ「もー。何でケンカ腰かなぁ。
もうちょっと、お互いに友好的に出来ないン?」
カイル「俺もかよ!?」
ウリ 「カイルもだよ。おねーさんも。怒鳴ってばっか。」
カイル「仕方ねぇだろ? コイツ、ムカつく事しか言わねーんだから。」
実琴 「仕方ないじゃない。ド変態とマトモに会話なんて出来ないし!」
カイル「なっ!?」
ジブリ「はいはい。終了。出会いが悪かっただけだ。
もう一度、仕切り直しすればいい。」
イズラ「そゆこと。(実琴に向かって)な?」
実琴、不満そうに、大きくため息をつくと、カイルに向き直る。
実琴 「で、さっき・・・て、ちょっと待って!? さっきの子は?」
カイル「ん?」
実琴 「アンタが、さっき、誘拐してた子!!」
カイル「だから!! 誘拐じゃっ!!」
イズラ「あーー! もー!(カイルを抑える)」
ウリ 「帰ったよ。」
実琴 「え? 帰・・・った?」
ウリ 「うん。ママのトコに帰るって。さっきそう言ってたじゃん?」
実琴 「そう・・・だけど・・・。」
ジブリ「ココは、そういうトコロだ。帰りたい者は、ちゃんと帰れる。」
実琴 「何それ? まるで、私が帰りたがってないとでも?」
ジブリ「あながち間違ってはいないだろ? その証拠に君はココに居る。」
実琴 「・・・貴方、ホント嫌な言い方するね。」
ジブリ「お褒めに預かり光栄。」
カイル「(イズラに)おい。コイツ、同じケンカ腰なのに、
何で、俺にばっか怒鳴るんだ?」
イズラ「う~ん。出会い方の問題?」
カイル「なんだ? そりゃ・・・」
実琴 「悪かったわよ! アンタ、反応がぽんぽん返って来るから、
つい、からかいたくなるの!!」
カイル「あんだよ!! それ!!」
実琴 「うっさい!! だから謝ってんじゃない!!」
カイル「テメーは、侘びも怒鳴るんかっ!!」
実琴 「悪かったわねっ!!」
カイル「なっ・・・」
イズラ、ウリ、吹き出して爆笑。ジブリも肩を震わせて笑う。
ウリ 「(笑いながら)凄っ・・・怒鳴り・・・漫・・・才・・・。」
イズラ「(笑いながら)しかも・・・どっちも、ボケ・・・。」
実琴 「ちょと!・・・そんな、笑うことないでしょ・・・。」
カイル「見ろ。笑われちまったじゃねーか・・・。」
実琴 「何? 私のせいだとでもっ」
ジブリ「(笑いつつ)もう止めとけ。腹も喉も持たない。」
実琴、カイル、互いを見合う。カイル、ため息。
カイル「分ったよ。もう、お前には怒鳴らない。約束してやる。
だから、『ド変態』言うな。誘拐もしてねぇ。」
実琴 「OK。認めましょ。」
カイル「みとっ・・・」
実琴 「(無視して)その代わり、ちゃんと全部説明して。」
カイル「(ため息)わーたよ。・・・ジブリ!」
ジブリ「ん? 俺が?」
カイル「仕方ねーだろ。俺、怒鳴らない自信、ねぇ。」
実琴 「意志、弱っ。」
カイル、怒鳴りかけて口をふさぐ。ジブリ、呆れる。
ジブリ「さて、何が知りたい?」
実琴 「貴方達・・・えーと、名前は?」
ジブリ「ジブリ。」
イズラ「イズラだ。」
ウリ 「僕は、ウリだよ。」
天遣3人、カイルを見る。カイル、抑えていた手を放し、咳払い。
口を開きかける。
実琴 「あー、ソレはいい。カイルでしょ?
さっきから貴方達、大声で呼んでるし。」
カイル、再び怒鳴りかけて、口をふさぐ。
実琴 「で、私は実琴。貴方達4人は『天使』で、
すべての『ミコト』ってコの担当?」
ジブリ「そうだ。」
イズラ「なぁんだ。ちゃんと分かってンじゃん。」
実琴 「全然分かって無いって。謎だらけだもん。
大体、貴方達が天使だって事自体、信じらんない。」
ウリ 「天遣だよ?」
実琴 「ホントに?」
イズラ「嘘ついてもしょーがねーって。」
実琴 「証拠は?」
カイル「んーなもんねぇーよ。」
全員、カイルを睨む。カイル、口をふさぐ。
実琴 「そうだ! 羽根見せて。あるんでしょ?」
4人、顔を見合う。
ウリ 「おねーさん、羽根見たいの?」
実琴 「何? ダメなの?」
イズラ「んー。あれさぁ、疲れるんだよなぁ。
いちおー、オプションだから、申請しねーといけねーし。
大体、俺達は管轄違いだしなー。まず申請しても下りねぇ。」
実琴 「オプション!? 申請って・・・」
ジブリ「お子様専用オプションだ。幼児には無条件で好かれる。」
実琴 「じゃあ、さっきの子にだって、そうすれば・・・」
ウリ 「ダメだよ! だってあの子は、迷って来ちゃっただけなんだから!」
ジブリ「ウリ。(ウリを戒めた後)子供は、死の概念が薄くてな。
その為のオプションだ。俺達の管轄は、さ迷う『ミコト』を帰すだけ。
だから、もし申請して下りることがあれば、
それは、その『ミコト』が戻れないと判断された時だ。」
実琴 「あ・・・、なるほど。(ウリに)ゴメン。」
ウリ、首を横に振って笑う。
実琴 「でも、それじゃあ、天使だって証拠は・・・?」
カイル「天遣だよ。」
実琴 「証拠ないんでしょ?」
カイル「証拠なくたって、俺達は、天の御遣いだ。」
実琴 「御遣い・・・?」
ジブリ「そう。だから、天遣。」
実琴 「なんか・・・想像してたのと、ずいぶんシステムが違うんだ。
ちなみに、悪魔とかはどうなってるの?」
ウリ 「あ・・・くま?」
イズラ「何だ? それ?」
実琴 「いないの? だって、天使って言ったら、悪魔でしょ?」
ジブリ「よく分からんが、とりあえず、その『アクマ』とやらは知らない。」
実琴 「じゃあ・・・天使に相反する存在っていないの?
全身黒づくめで、人の命を弄ぶ・・・。」
カイル「そりゃ、死神だ。」
実琴 「死神は、いるの?」
ジブリ「確かにいるが、弄ぶと言うには語弊があるな。
アイツらは、命を回収しているだけだ。」
イズラ「いい加減だけどなー。」
カイル「おかげで、時々取りこぼしの仕事が、俺ら回ってくる。いい迷惑だ。」
実琴 「ふーん。」
ジブリ「さて、それでは、君の事情を聞こうか?」
実琴 「え? なんで?」
カイル「『なんで?』じゃ、ねーだろ? お前、俺らの仕事聞いたろ?」
実琴 「・・・『ミコト』を帰す?」
4人、うなずく。
実琴 「それって・・・
つまり、私は、今、生死の境をさ迷っちゃってる・・・的な?」
4人、深くうなずく。
実琴 「えーと。生霊・・・みたいな?」
4人、更に深くうなずく。
実琴 「・・・にわかには信じられないんだけど、私ってさ・・・
今、結構ヤバイ?」
4人、2回深くうなずく。
実琴 「あ・・・でも! 『帰す』って事は、ちゃんと生還できるんだよね?」
カイル「その為には、お前の事情をキッチリ話してもらう必要があるけどな。」
実琴 「事情・・・と言われても・・・。」
イズラ「なんで、キミは、さ迷ってんの?」
沈黙。
ウリ 「おねーさん?」
実琴 「(気まずそうに)あーーー。本屋・・・でね。」
4人、真剣な眼差しで、実琴に注目。
実琴 「・・・本を・・・見つけて・・・さ。」
4人、うんうんと、うなずく。
実琴 「彼氏に振られたトコだったし・・・何やってもつまんなかったし・・・。
だから、ムシャクシャしてたのよね、私・・・。
ほらっ! 人間てさ、ムシャクシャした時って、
衝動買いとかするじゃない? ストレス解消にさっ!」
沈黙。
イズラ「・・・それで?」
実琴 「気づいたら、・・・・・・ココに居た。」
4人 「「「「はぁ!?」」」」
ウリ 「えーと、どーゆーコト?」
イズラ「すげぇ。全っ然っ! わかんねぇ。」
カイル「分かってたまるかっ!!」
実琴 「ちょっと! 怒鳴らないって約束!!」
カイル「お前に怒鳴ってねぇ!!」
実琴 「今怒鳴ってるじゃない!!」
カイル「うるせ(イズラに口をふさがれる)ふががっ!! ふがっ!!」
ジブリ「・・・なんとなく、想定は付いた。」
全員、動きを止め、ジブリに注目。実琴のみ、目をそらす。
ジブリ「ちなみに、その衝動買いした本のタイトルは?」
間。
ウリ 「・・・おねーさん?」
実琴 「・・・ゆ・・・」
カイル・イズラ・ウリ「「「『ゆ』?」」」
実琴 「・・・『幽体離脱入門』。」
間。
カイル「お・・・前・・・なっ!!」
実琴 「(可愛らしく)あらやだ。怒鳴っちゃ、ダ・メ。」
カイル、口をパクパクしたまま、昏倒。
イズラ「カイル!!」
ウリ 「カイルー!! 死んじゃやだー!」
ジブリ「見事な、殺傷能力だな。」
実琴 「天使も死んじゃったりするの?」
ジブリ「『死』という概念はないな。あって消滅・・・もしくは」
ジブリ、言いかけ黙る。
実琴 「もしくは・・・何?」
ジブリ「いや。(カイルを見て)少々過呼吸になっているだけだろ。問題はない。」
実琴 「ふーん。」
ジブリ「それで?」
実琴 「? 何? 全部話したケド?」
ジブリ「それだけなら、まぐれで成功したとしても、すぐ戻る。
『戻れない』理由を聞いている。」
実琴 「・・・知らない。言ったでしょ? 気付いたらココにいたって。」
ジブリ「それでも、『戻りたくない』理由があるだろう?
それが分からなければ、君は帰れない。」
実琴、黙り込む。
ジブリ「・・・と、脅したところで、『戻りたくない』君だ。強制はしない。
ご希望とあらば、お子様専用オプションを、申請してもいいが?」
実琴 「ホント、嫌な天使。」
ジブリ「お褒めに預かり・・・」
実琴 「(さえぎって)褒めてない!」
イズラ・ウリ、ビックリして、実琴を見る。
実琴 「別に、死にたいなんて思ってない。願った事もない。
ただ・・・ちょっとだけ休みたかっただけじゃない。
・・・最近、本気でシンドイから・・・」
実琴、拗ねたように、しゃがみこむ。
ウリ 「おねーさん。」
カイル「なぁ~んだ。現実から逃げてきただけか。」
イズラ「カイル、言い過ぎ。」
カイル「知るか。俺は、ぐずぐずウジウジされんのが大嫌いなんだよ。」
実琴、立ち上がり、カイルに近づき、叩く。
実琴 「うっさい! 悪かったわね! アンタに人の気持ちなんか分からない!」
カイル「そりゃそーだ。俺らは人間じゃない。天遣だもんよ。」
実琴 「なっ! なんて天使なの!?」
実琴、さらに叩こうとして、ウリとイズラが止める。
ウリ 「おねーさん。だめだよぉ~。」
ジブリ「単純だな。口で勝てないと、すぐに暴力に走る。」
実琴、動きが止まる。
イズラ「ジブリ。・・・カイルも。苛めたら可哀想だって。」
ウリ 「そーだよー。おねーさんが可哀想だよ~!」
実琴 「あら? 2人は優しいのね~。」
実琴、イズラとウリを引き寄せて、腕を絡ませる。
実琴 「(カイル・ジブリに向かって)貴方達2人、もう用済み。クビ。
後は、ウリちゃんとイズラ君に帰してもらうから、
もうどっか行っちゃって。」
ウリ 「(ほぼ同時に)『ちゃん』?」
イズラ「(ほぼ同時に)『くん』・・・。」
カイル「なんだと? お前っ!」
実琴 「(さえぎるように)怒鳴らないってや・く・そ・く!!」
カイル「ぐっ・・・」
ジブリ「いいだろう。カイル、行こう。」
ジブリ、退場。カイル、実琴を気にしながらも、後に続き退場。
(さまざまな小道具・椅子等、散乱した状態でも可。)
ウリが1人で、いる。(何をしていても可。)
天遣3人と、キョロキョロしながら実琴が登場。
実琴 「何? ココ?」
カイル「さあ?」
実琴 「は!? ちょっと!! アンタねー!!」
イズラ「もー。何でケンカ腰かなぁ。
もうちょっと、お互いに友好的に出来ないン?」
カイル「俺もかよ!?」
ウリ 「カイルもだよ。おねーさんも。怒鳴ってばっか。」
カイル「仕方ねぇだろ? コイツ、ムカつく事しか言わねーんだから。」
実琴 「仕方ないじゃない。ド変態とマトモに会話なんて出来ないし!」
カイル「なっ!?」
ジブリ「はいはい。終了。出会いが悪かっただけだ。
もう一度、仕切り直しすればいい。」
イズラ「そゆこと。(実琴に向かって)な?」
実琴、不満そうに、大きくため息をつくと、カイルに向き直る。
実琴 「で、さっき・・・て、ちょっと待って!? さっきの子は?」
カイル「ん?」
実琴 「アンタが、さっき、誘拐してた子!!」
カイル「だから!! 誘拐じゃっ!!」
イズラ「あーー! もー!(カイルを抑える)」
ウリ 「帰ったよ。」
実琴 「え? 帰・・・った?」
ウリ 「うん。ママのトコに帰るって。さっきそう言ってたじゃん?」
実琴 「そう・・・だけど・・・。」
ジブリ「ココは、そういうトコロだ。帰りたい者は、ちゃんと帰れる。」
実琴 「何それ? まるで、私が帰りたがってないとでも?」
ジブリ「あながち間違ってはいないだろ? その証拠に君はココに居る。」
実琴 「・・・貴方、ホント嫌な言い方するね。」
ジブリ「お褒めに預かり光栄。」
カイル「(イズラに)おい。コイツ、同じケンカ腰なのに、
何で、俺にばっか怒鳴るんだ?」
イズラ「う~ん。出会い方の問題?」
カイル「なんだ? そりゃ・・・」
実琴 「悪かったわよ! アンタ、反応がぽんぽん返って来るから、
つい、からかいたくなるの!!」
カイル「あんだよ!! それ!!」
実琴 「うっさい!! だから謝ってんじゃない!!」
カイル「テメーは、侘びも怒鳴るんかっ!!」
実琴 「悪かったわねっ!!」
カイル「なっ・・・」
イズラ、ウリ、吹き出して爆笑。ジブリも肩を震わせて笑う。
ウリ 「(笑いながら)凄っ・・・怒鳴り・・・漫・・・才・・・。」
イズラ「(笑いながら)しかも・・・どっちも、ボケ・・・。」
実琴 「ちょと!・・・そんな、笑うことないでしょ・・・。」
カイル「見ろ。笑われちまったじゃねーか・・・。」
実琴 「何? 私のせいだとでもっ」
ジブリ「(笑いつつ)もう止めとけ。腹も喉も持たない。」
実琴、カイル、互いを見合う。カイル、ため息。
カイル「分ったよ。もう、お前には怒鳴らない。約束してやる。
だから、『ド変態』言うな。誘拐もしてねぇ。」
実琴 「OK。認めましょ。」
カイル「みとっ・・・」
実琴 「(無視して)その代わり、ちゃんと全部説明して。」
カイル「(ため息)わーたよ。・・・ジブリ!」
ジブリ「ん? 俺が?」
カイル「仕方ねーだろ。俺、怒鳴らない自信、ねぇ。」
実琴 「意志、弱っ。」
カイル、怒鳴りかけて口をふさぐ。ジブリ、呆れる。
ジブリ「さて、何が知りたい?」
実琴 「貴方達・・・えーと、名前は?」
ジブリ「ジブリ。」
イズラ「イズラだ。」
ウリ 「僕は、ウリだよ。」
天遣3人、カイルを見る。カイル、抑えていた手を放し、咳払い。
口を開きかける。
実琴 「あー、ソレはいい。カイルでしょ?
さっきから貴方達、大声で呼んでるし。」
カイル、再び怒鳴りかけて、口をふさぐ。
実琴 「で、私は実琴。貴方達4人は『天使』で、
すべての『ミコト』ってコの担当?」
ジブリ「そうだ。」
イズラ「なぁんだ。ちゃんと分かってンじゃん。」
実琴 「全然分かって無いって。謎だらけだもん。
大体、貴方達が天使だって事自体、信じらんない。」
ウリ 「天遣だよ?」
実琴 「ホントに?」
イズラ「嘘ついてもしょーがねーって。」
実琴 「証拠は?」
カイル「んーなもんねぇーよ。」
全員、カイルを睨む。カイル、口をふさぐ。
実琴 「そうだ! 羽根見せて。あるんでしょ?」
4人、顔を見合う。
ウリ 「おねーさん、羽根見たいの?」
実琴 「何? ダメなの?」
イズラ「んー。あれさぁ、疲れるんだよなぁ。
いちおー、オプションだから、申請しねーといけねーし。
大体、俺達は管轄違いだしなー。まず申請しても下りねぇ。」
実琴 「オプション!? 申請って・・・」
ジブリ「お子様専用オプションだ。幼児には無条件で好かれる。」
実琴 「じゃあ、さっきの子にだって、そうすれば・・・」
ウリ 「ダメだよ! だってあの子は、迷って来ちゃっただけなんだから!」
ジブリ「ウリ。(ウリを戒めた後)子供は、死の概念が薄くてな。
その為のオプションだ。俺達の管轄は、さ迷う『ミコト』を帰すだけ。
だから、もし申請して下りることがあれば、
それは、その『ミコト』が戻れないと判断された時だ。」
実琴 「あ・・・、なるほど。(ウリに)ゴメン。」
ウリ、首を横に振って笑う。
実琴 「でも、それじゃあ、天使だって証拠は・・・?」
カイル「天遣だよ。」
実琴 「証拠ないんでしょ?」
カイル「証拠なくたって、俺達は、天の御遣いだ。」
実琴 「御遣い・・・?」
ジブリ「そう。だから、天遣。」
実琴 「なんか・・・想像してたのと、ずいぶんシステムが違うんだ。
ちなみに、悪魔とかはどうなってるの?」
ウリ 「あ・・・くま?」
イズラ「何だ? それ?」
実琴 「いないの? だって、天使って言ったら、悪魔でしょ?」
ジブリ「よく分からんが、とりあえず、その『アクマ』とやらは知らない。」
実琴 「じゃあ・・・天使に相反する存在っていないの?
全身黒づくめで、人の命を弄ぶ・・・。」
カイル「そりゃ、死神だ。」
実琴 「死神は、いるの?」
ジブリ「確かにいるが、弄ぶと言うには語弊があるな。
アイツらは、命を回収しているだけだ。」
イズラ「いい加減だけどなー。」
カイル「おかげで、時々取りこぼしの仕事が、俺ら回ってくる。いい迷惑だ。」
実琴 「ふーん。」
ジブリ「さて、それでは、君の事情を聞こうか?」
実琴 「え? なんで?」
カイル「『なんで?』じゃ、ねーだろ? お前、俺らの仕事聞いたろ?」
実琴 「・・・『ミコト』を帰す?」
4人、うなずく。
実琴 「それって・・・
つまり、私は、今、生死の境をさ迷っちゃってる・・・的な?」
4人、深くうなずく。
実琴 「えーと。生霊・・・みたいな?」
4人、更に深くうなずく。
実琴 「・・・にわかには信じられないんだけど、私ってさ・・・
今、結構ヤバイ?」
4人、2回深くうなずく。
実琴 「あ・・・でも! 『帰す』って事は、ちゃんと生還できるんだよね?」
カイル「その為には、お前の事情をキッチリ話してもらう必要があるけどな。」
実琴 「事情・・・と言われても・・・。」
イズラ「なんで、キミは、さ迷ってんの?」
沈黙。
ウリ 「おねーさん?」
実琴 「(気まずそうに)あーーー。本屋・・・でね。」
4人、真剣な眼差しで、実琴に注目。
実琴 「・・・本を・・・見つけて・・・さ。」
4人、うんうんと、うなずく。
実琴 「彼氏に振られたトコだったし・・・何やってもつまんなかったし・・・。
だから、ムシャクシャしてたのよね、私・・・。
ほらっ! 人間てさ、ムシャクシャした時って、
衝動買いとかするじゃない? ストレス解消にさっ!」
沈黙。
イズラ「・・・それで?」
実琴 「気づいたら、・・・・・・ココに居た。」
4人 「「「「はぁ!?」」」」
ウリ 「えーと、どーゆーコト?」
イズラ「すげぇ。全っ然っ! わかんねぇ。」
カイル「分かってたまるかっ!!」
実琴 「ちょっと! 怒鳴らないって約束!!」
カイル「お前に怒鳴ってねぇ!!」
実琴 「今怒鳴ってるじゃない!!」
カイル「うるせ(イズラに口をふさがれる)ふががっ!! ふがっ!!」
ジブリ「・・・なんとなく、想定は付いた。」
全員、動きを止め、ジブリに注目。実琴のみ、目をそらす。
ジブリ「ちなみに、その衝動買いした本のタイトルは?」
間。
ウリ 「・・・おねーさん?」
実琴 「・・・ゆ・・・」
カイル・イズラ・ウリ「「「『ゆ』?」」」
実琴 「・・・『幽体離脱入門』。」
間。
カイル「お・・・前・・・なっ!!」
実琴 「(可愛らしく)あらやだ。怒鳴っちゃ、ダ・メ。」
カイル、口をパクパクしたまま、昏倒。
イズラ「カイル!!」
ウリ 「カイルー!! 死んじゃやだー!」
ジブリ「見事な、殺傷能力だな。」
実琴 「天使も死んじゃったりするの?」
ジブリ「『死』という概念はないな。あって消滅・・・もしくは」
ジブリ、言いかけ黙る。
実琴 「もしくは・・・何?」
ジブリ「いや。(カイルを見て)少々過呼吸になっているだけだろ。問題はない。」
実琴 「ふーん。」
ジブリ「それで?」
実琴 「? 何? 全部話したケド?」
ジブリ「それだけなら、まぐれで成功したとしても、すぐ戻る。
『戻れない』理由を聞いている。」
実琴 「・・・知らない。言ったでしょ? 気付いたらココにいたって。」
ジブリ「それでも、『戻りたくない』理由があるだろう?
それが分からなければ、君は帰れない。」
実琴、黙り込む。
ジブリ「・・・と、脅したところで、『戻りたくない』君だ。強制はしない。
ご希望とあらば、お子様専用オプションを、申請してもいいが?」
実琴 「ホント、嫌な天使。」
ジブリ「お褒めに預かり・・・」
実琴 「(さえぎって)褒めてない!」
イズラ・ウリ、ビックリして、実琴を見る。
実琴 「別に、死にたいなんて思ってない。願った事もない。
ただ・・・ちょっとだけ休みたかっただけじゃない。
・・・最近、本気でシンドイから・・・」
実琴、拗ねたように、しゃがみこむ。
ウリ 「おねーさん。」
カイル「なぁ~んだ。現実から逃げてきただけか。」
イズラ「カイル、言い過ぎ。」
カイル「知るか。俺は、ぐずぐずウジウジされんのが大嫌いなんだよ。」
実琴、立ち上がり、カイルに近づき、叩く。
実琴 「うっさい! 悪かったわね! アンタに人の気持ちなんか分からない!」
カイル「そりゃそーだ。俺らは人間じゃない。天遣だもんよ。」
実琴 「なっ! なんて天使なの!?」
実琴、さらに叩こうとして、ウリとイズラが止める。
ウリ 「おねーさん。だめだよぉ~。」
ジブリ「単純だな。口で勝てないと、すぐに暴力に走る。」
実琴、動きが止まる。
イズラ「ジブリ。・・・カイルも。苛めたら可哀想だって。」
ウリ 「そーだよー。おねーさんが可哀想だよ~!」
実琴 「あら? 2人は優しいのね~。」
実琴、イズラとウリを引き寄せて、腕を絡ませる。
実琴 「(カイル・ジブリに向かって)貴方達2人、もう用済み。クビ。
後は、ウリちゃんとイズラ君に帰してもらうから、
もうどっか行っちゃって。」
ウリ 「(ほぼ同時に)『ちゃん』?」
イズラ「(ほぼ同時に)『くん』・・・。」
カイル「なんだと? お前っ!」
実琴 「(さえぎるように)怒鳴らないってや・く・そ・く!!」
カイル「ぐっ・・・」
ジブリ「いいだろう。カイル、行こう。」
ジブリ、退場。カイル、実琴を気にしながらも、後に続き退場。
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