36 / 81
ホワイトデー編
毎朝の光景
しおりを挟む
「アオイ姫様! 弁当は俺が持ちます!!」
「う、うんっ! ごめん!」
今朝も少し遅い目覚めに慌てているのは、この城の姫と世話係の剣士カイだった。いつもは父親の居る広間へ顔を出し挨拶をするのが決まりだが、今朝はもう出掛けていると聞いてそのまま城門へ急ぐ。
城を出てから城門を突破するまでにも敷地が広いため、鍛えていないアオイの肺と心の臓はそれだけで激しく乱れてしまう。
「……っありがとうカイ、いってきますっっ!」
「いってらっしゃいませ! ……お気を付けてっ!!」
受け取ったジルの重箱弁当が今度は腕へと圧力をかけ、キュリオに贈られた首元のチョーカーがしっとりと汗に濡れて光る。指の腹ほどの太さのそれは、落ち着いた藍色の帯に銀色の花を模った装飾品がぶら下がっている。そして何よりも美しいのがその中心にはめ込まれた真珠という海の宝石の輝きだった。
「ちょっとアンタなになに~? ついに男でも出来た!?」
そう好奇な眼差しと声で覆いかぶさってきたのは大親友のミキだ。
「うん……? どうして?」
「もーっ! とぼけちゃってぇ~! これは何かね!?」
ニヤニヤと笑みを深めながらキラリと光るアオイのチョーカーを指差す。
「あ、これは……」
隠すわけでもなく、説明しようとすると教室のドアが開いて担任と副担任が姿を現した。
「よーし皆居るなー。今日からアラン先生が復帰だ! 女子は特にはしゃぎすぎないよう気を付けるように!」
大柄の担任の念押しは体重に比例しなかったらしい。
やすやすと跳ねのけた女子生徒の声と眼差しを見ればそれは明らかだった。
「う、うんっ! ごめん!」
今朝も少し遅い目覚めに慌てているのは、この城の姫と世話係の剣士カイだった。いつもは父親の居る広間へ顔を出し挨拶をするのが決まりだが、今朝はもう出掛けていると聞いてそのまま城門へ急ぐ。
城を出てから城門を突破するまでにも敷地が広いため、鍛えていないアオイの肺と心の臓はそれだけで激しく乱れてしまう。
「……っありがとうカイ、いってきますっっ!」
「いってらっしゃいませ! ……お気を付けてっ!!」
受け取ったジルの重箱弁当が今度は腕へと圧力をかけ、キュリオに贈られた首元のチョーカーがしっとりと汗に濡れて光る。指の腹ほどの太さのそれは、落ち着いた藍色の帯に銀色の花を模った装飾品がぶら下がっている。そして何よりも美しいのがその中心にはめ込まれた真珠という海の宝石の輝きだった。
「ちょっとアンタなになに~? ついに男でも出来た!?」
そう好奇な眼差しと声で覆いかぶさってきたのは大親友のミキだ。
「うん……? どうして?」
「もーっ! とぼけちゃってぇ~! これは何かね!?」
ニヤニヤと笑みを深めながらキラリと光るアオイのチョーカーを指差す。
「あ、これは……」
隠すわけでもなく、説明しようとすると教室のドアが開いて担任と副担任が姿を現した。
「よーし皆居るなー。今日からアラン先生が復帰だ! 女子は特にはしゃぎすぎないよう気を付けるように!」
大柄の担任の念押しは体重に比例しなかったらしい。
やすやすと跳ねのけた女子生徒の声と眼差しを見ればそれは明らかだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる