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2/14 バレンタインデー編
女官の精神力
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「お茶をお持ちいたしましたわっ♪ キュリオ様、アオイ姫様♪」
にっこりと麗しい笑みを湛えた女官だが、その想いは若き愛娘の恋を応援する母親のような心境だった。
いまさっき広間へと足を踏み入れた彼女だが、アオイの沈んだ表情からおおよその事態を把握出来ているようだ。頑ななキュリオがアオイの努力を台無しにしている可能性大有り! と、判断した彼女は強行突破に出る。いまにも席を立ってしまいそうなキュリオの前に可愛らしい皿と、小ぶりなスイーツ用の銀のフォークを並べていくと――……
「……なんの真似だ。私はいらないぞ」
キュリオの嗜好を把握しているはずの女官が彼の意志と真逆の行動に出たため、王の眉間には深い皺が寄っている。
「たまには甘い物が食べたいとおっしゃる姫様にお付き合いくださいませっ♪」
「…………」
こちらをちらりと見たキュリオと目が合うと、緊張に背筋を伸ばしたアオイ。
キュリオの怒りをひょいとかわしてしまった女官の精神力の強さが並大抵ではないと内心感心しながらも、とりあえずキュリオが退出してしまうという最悪な事態を回避できたことに安堵せずにはいられない。
「ごめんなさいお父様、すぐ済ませますので……」
それでも尚、自信の無さを隠しきれないアオイは眉をハの字にさげ、忙しい王の時間を拘束してしまったことを心から詫びた。
「……謝らずともよい」
キュリオは椅子へと深く座りなおし、運ばれてきた紅茶へと口をつける。
にっこりと麗しい笑みを湛えた女官だが、その想いは若き愛娘の恋を応援する母親のような心境だった。
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「……なんの真似だ。私はいらないぞ」
キュリオの嗜好を把握しているはずの女官が彼の意志と真逆の行動に出たため、王の眉間には深い皺が寄っている。
「たまには甘い物が食べたいとおっしゃる姫様にお付き合いくださいませっ♪」
「…………」
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「ごめんなさいお父様、すぐ済ませますので……」
それでも尚、自信の無さを隠しきれないアオイは眉をハの字にさげ、忙しい王の時間を拘束してしまったことを心から詫びた。
「……謝らずともよい」
キュリオは椅子へと深く座りなおし、運ばれてきた紅茶へと口をつける。
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