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2/14 バレンタインデー編
アオイの攻撃
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途中、キュリオとアオイの姿を見かけた女官と侍女が互いの顔を見合いながら小さく頷く。
『わたくしたちも準備に取り掛かりますわよ!』
『畏まりました!』
なるべくキュリオの目に触れぬよう秘密裡に動き始めた彼女らは素早い身のこなしで厨房へと向かった。
広間のテーブルに飾られた可愛らしい花々がその場の空気を和ませようと努力するが、凍てついた銀髪の王の顔は一行に和らぐことはない。
「あの、お父様……食後にスイーツはいかがですか?」
アオイにそう問われたキュリオの手が止まり、不機嫌そうな空色の瞳がスッと細められた。
「私が甘いものを好まないのは、お前が一番よく知っているだろう」
愛娘の提案にそっけなく言葉を返したキュリオの怒りが収まらないのはその口調と冷やかな視線でよくわかる。
「……は、はいっ……」
(……ここで引き下がっちゃだめっ!!)
「わ、私! 今日とても甘いものが食べたくて……このあと出してもらおうかな、なんて……」
アオイの意気込みなどキュリオのひと睨みで跡形もなく崩れ去ってしまう。弱り切った語尾が視線とともにテーブルを彷徨い、行く当てもなく宙に消える。
「なにもお前に食べるなとは言ってはいない。好きにしなさい」
「はい……」
キュリオは丁寧な動作でナイフとフォークを置くと、横から現れた侍女が空になった皿を片付けていく。
すると、なんとタイミングの悪いことか――……
『わたくしたちも準備に取り掛かりますわよ!』
『畏まりました!』
なるべくキュリオの目に触れぬよう秘密裡に動き始めた彼女らは素早い身のこなしで厨房へと向かった。
広間のテーブルに飾られた可愛らしい花々がその場の空気を和ませようと努力するが、凍てついた銀髪の王の顔は一行に和らぐことはない。
「あの、お父様……食後にスイーツはいかがですか?」
アオイにそう問われたキュリオの手が止まり、不機嫌そうな空色の瞳がスッと細められた。
「私が甘いものを好まないのは、お前が一番よく知っているだろう」
愛娘の提案にそっけなく言葉を返したキュリオの怒りが収まらないのはその口調と冷やかな視線でよくわかる。
「……は、はいっ……」
(……ここで引き下がっちゃだめっ!!)
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「なにもお前に食べるなとは言ってはいない。好きにしなさい」
「はい……」
キュリオは丁寧な動作でナイフとフォークを置くと、横から現れた侍女が空になった皿を片付けていく。
すると、なんとタイミングの悪いことか――……
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