純白のマリアと漆黒のまりあ

逢生ありす

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黒宮(くろみや)炎(えん)

見えない出口Ⅰ

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(麗先生もいるんだし……おかしなことにはならないよね……?)

「う、うん……よかった、安心してここに居られる。ありがとう」

 いちいち聖のすることを否定して突っ込まれるのも賢くないと判断したまりあは彼の機嫌を損なうことなく、養父の望むような答えを口にする。すると嬉しそうに微笑んだ聖は手早く食事の準備を整えてくれた。

 ハンバーグカレーにスープ、彩り豊かなグリーンサラダをいただきながら他愛のない話をする。

(お父さんはあの日……どうして姿を消してしまったんだろう。生きてるなら会いに来てくれたらよかったのに……)

「……美味しくない?」

 止まってしまった手を見つめながら眉をハの字に下げた聖が寂しそうに瞳を揺らした。

「そうじゃないの……ごめんなさい、考えごとが頭から離れなくて……」

「どんなこと?」

「うん……」

(聞きたいことなんてたくさんあるけど、自分から言い出さないってことは……やっぱり言いたくないんだろうな。それなら……)

「これからのこと、とか」

「……」

 まりあの言葉を聞いたとたん、今度は聖が黙ってしまった。

(……なにを聞いてもやっぱり答えてくれない)

「ごめんなさい……いまの聞かなかったことに……」

「……ううん。まりあちゃんが不安になるもの当然だよね。
突然ここが住む場所だなんて言われて、死んだと思っていた僕らが生きていて……」

「あ……」

(聞きたかったことなのに素直に頷いていいかわからない。だってお父さん……すごく辛そうな顔してる)

「あの、お父さん……」

"やっぱり言わなくていい"と言葉になる前に聖の声が続く。

「ごめん。僕も知らないんだ」

「……っ!」

 まりあは彼の言葉に頭を殴られたような大きな衝撃に襲われた。まさか言われるわけはないと思っていた言葉を告げられたしまったからだ。

(……お父さんが知らないわけ、ない……)

 ショックのあまりに震え出す手へ懸命に力を込める。すると今度は視線が勝手に泳ぎだし、不安定な精神はさらなる異常行動へ走らせそうな勢いだった。

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