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悠久の王・キュリオ編2
《番外編》バレンタインストーリー5
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アオイは、とあるミニ薔薇を探して中庭を歩き回るとすぐにそれは見つかった。
「あ、あった!」
目の前に広がったのは美しく手入れされたミニバラの園だ。
「この箱に薔薇は大きすぎるもの。ミニ薔薇がちょうどいいよね」
アオイは持ち出した小さなナイフで棘を丁寧にそぎ落としていき、小箱に見合った飾りのブーケを作る。
「……痛っ」
突然訪れた痛覚に完成しかけたブーケが手元からこぼれ、慌てて手を伸ばした。
「ふぅ……」
何をするにもあまり器用ではないアオイは人一倍時間がかかってしまう。だからこそ準備は念入りに時間も余分にとる必要があるのだ。
そして箱の数だけの小さなブーケを造り終えたころ彼女の指は傷だらけになっていた。
「急がないと。お父様が起きる前に部屋に戻らなきゃ」
城のほうを振り返るといくつもの足音がせわしなく動き回っているのが伝わってきた。給仕を任されたものたちが朝食の準備や掃除に追われているのかもしれない。
アオイは急ぎ足で城へ戻り、元来たガラス戸をくぐる。
「姫様!」
パタパタとこちらに向かってきたひとりの女官が慌てたように声をかけてきた。
「どうしたの?」
血相を変えて近づいてきた女官に何かあったのでは……とアオイも彼女に駆け寄る。それもそのはず、彼女は昨夜キュリオから逃れるために手助けしてくれたよく知る女官だったからだ。
「……た、大変ですわ! キュリオ様が姫様のお部屋にっ!!」
「えっ!?」
「姫様の”真心”は手筈通りに致しますので、何食わぬ顔でお部屋にお戻りくださいませっっ!!」
「う、うん……っ!!」
アオイは彼女にいくつもの小箱を渡すと礼を言いながら自室へと向かった。
「……」
(なんて言おう……この奥お父様がっ……)
自分の部屋にも関わらず入るのをためらうアオイ。
――コン、コンコン……
なぜか緊張のあまりノックしてしまった自分に深いため息がでる。
(ぎゃっ! ばかばかっ!!
なんで自分の部屋に入るのにノックなんて……っ!!)
動揺が伝わってしまったと肩を落としていると、案の定内側から声が返ってきた。
『入りなさい』
普段のキュリオよりも低い声にアオイは飛び上がった。
(怒ってるっっ! お父様絶対怒ってるっっ!!)
目の前に広がる"男子禁制!!"の文字はもはや意味をなさない。
そしてそれすらもキュリオの怒りを煽るものになっていようとはアオイは気づかない。
「し、失礼します……」
恐る恐る扉を開くと――
一瞬暗くなった視界に首を傾げたアオイは顔を上げる。
「……?」
すると目の前には無表情のままこちらを見下ろしているキュリオの顔があった。
「……っっ!!」
まさかすぐそこにいるとは思わず、飛び上がったアオイの言動がどんどんおかしくなっていく。
「ご、ご機嫌麗しゅうございます……お父様、こちらにいらっしゃったんです……ね?」
「……私がいると知っていたからノックしたのだろう?」
「え゙っ!? い、いいえ!?
私はいつも自分の部屋に入るときノックをするのが癖で……」
「私はお前よりよほどお前のことを知っているつもりだが……そのような癖は一度も見た事がない」
「……っい、いま初めて出た癖なもので……」
「それは癖ではない。もっとまともな嘘が用意出来ないのなら……」
「しばらく部屋から出ることを禁止しなくてはいけないな」
「あ、あった!」
目の前に広がったのは美しく手入れされたミニバラの園だ。
「この箱に薔薇は大きすぎるもの。ミニ薔薇がちょうどいいよね」
アオイは持ち出した小さなナイフで棘を丁寧にそぎ落としていき、小箱に見合った飾りのブーケを作る。
「……痛っ」
突然訪れた痛覚に完成しかけたブーケが手元からこぼれ、慌てて手を伸ばした。
「ふぅ……」
何をするにもあまり器用ではないアオイは人一倍時間がかかってしまう。だからこそ準備は念入りに時間も余分にとる必要があるのだ。
そして箱の数だけの小さなブーケを造り終えたころ彼女の指は傷だらけになっていた。
「急がないと。お父様が起きる前に部屋に戻らなきゃ」
城のほうを振り返るといくつもの足音がせわしなく動き回っているのが伝わってきた。給仕を任されたものたちが朝食の準備や掃除に追われているのかもしれない。
アオイは急ぎ足で城へ戻り、元来たガラス戸をくぐる。
「姫様!」
パタパタとこちらに向かってきたひとりの女官が慌てたように声をかけてきた。
「どうしたの?」
血相を変えて近づいてきた女官に何かあったのでは……とアオイも彼女に駆け寄る。それもそのはず、彼女は昨夜キュリオから逃れるために手助けしてくれたよく知る女官だったからだ。
「……た、大変ですわ! キュリオ様が姫様のお部屋にっ!!」
「えっ!?」
「姫様の”真心”は手筈通りに致しますので、何食わぬ顔でお部屋にお戻りくださいませっっ!!」
「う、うん……っ!!」
アオイは彼女にいくつもの小箱を渡すと礼を言いながら自室へと向かった。
「……」
(なんて言おう……この奥お父様がっ……)
自分の部屋にも関わらず入るのをためらうアオイ。
――コン、コンコン……
なぜか緊張のあまりノックしてしまった自分に深いため息がでる。
(ぎゃっ! ばかばかっ!!
なんで自分の部屋に入るのにノックなんて……っ!!)
動揺が伝わってしまったと肩を落としていると、案の定内側から声が返ってきた。
『入りなさい』
普段のキュリオよりも低い声にアオイは飛び上がった。
(怒ってるっっ! お父様絶対怒ってるっっ!!)
目の前に広がる"男子禁制!!"の文字はもはや意味をなさない。
そしてそれすらもキュリオの怒りを煽るものになっていようとはアオイは気づかない。
「し、失礼します……」
恐る恐る扉を開くと――
一瞬暗くなった視界に首を傾げたアオイは顔を上げる。
「……?」
すると目の前には無表情のままこちらを見下ろしているキュリオの顔があった。
「……っっ!!」
まさかすぐそこにいるとは思わず、飛び上がったアオイの言動がどんどんおかしくなっていく。
「ご、ご機嫌麗しゅうございます……お父様、こちらにいらっしゃったんです……ね?」
「……私がいると知っていたからノックしたのだろう?」
「え゙っ!? い、いいえ!?
私はいつも自分の部屋に入るときノックをするのが癖で……」
「私はお前よりよほどお前のことを知っているつもりだが……そのような癖は一度も見た事がない」
「……っい、いま初めて出た癖なもので……」
「それは癖ではない。もっとまともな嘘が用意出来ないのなら……」
「しばらく部屋から出ることを禁止しなくてはいけないな」
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