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悠久の王・キュリオ編2
《番外編》バレンタインストーリー3
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朝焼けがキュリオの頬を照らし、視界の端に輝く日の光を確認した彼はゆっくり立ち上がった。
”なりませんっ! 今宵は男子禁制でございます!!
女人にとって二月十三日は聖なる日! 日が明けるまでは姫様にお会いになってはなりません!!"
「夜は明けたな……」
この国の王であるキュリオが女官や侍女の言いなりになる必要はどこにもないが、強行すれば溺愛しているアオイの心が離れてしまうような気がしてならなかったのだ。
キュリオは厚手のガウンを羽織ると、とある場所へ急いだ。
「何だこれは……」
”男子禁制”
アオイの部屋の前で女官や侍女の残した張り紙を見て驚くキュリオだが、夜の明けた今はもう必要ないと判断し、強引に扉を推して中に入る。
――ガチャッ!
「話を聞かせてもらおうかアオイ」
普段ノックせずに入室するなど有り得ないキュリオだが、大人しく引き下がった裏では随分我慢していたことが伺える。
「……」
しかし彼の問いに返答はなく、アオイの匂いがほのかに香る甘く優しい空間を静寂が包んでいた。
「……」
真っ先に天蓋のベッドへと向かったキュリオはわずかに瞳を見開いた。そこに眠るはずの彼女の姿がなかったからだ。するとシーツの中へと手を忍ばせたキュリオ。
(温もりが感じられない。随分前に部屋を出たか……)
部屋を見渡してみても窓から出た様子はなく、おそらく城の中にいることがわかる。
カイとの遊びの中で窓から外出する術を身に着けた彼女がそれを使うのは夜中に従者たちの目をかいくぐるためのものであり、今回はそれに当たらないと判断したキュリオの胸に安堵が広がる。
それもそのはず、キュリオの心を十分理解している女官や侍女がそれらを知っていたらアオイに手を貸すわけがないため、本来心配もいらないのかもしれない。
そして何も事情を知るのはアオイだけではないとわかっているキュリオだが……
「……アオイ……私を納得させられるだけの言い訳は用意してあるのだろうな?」
二人の間にわずかな溝も作りたくない彼はアオイに直接の説明を求めているのだった――。
”なりませんっ! 今宵は男子禁制でございます!!
女人にとって二月十三日は聖なる日! 日が明けるまでは姫様にお会いになってはなりません!!"
「夜は明けたな……」
この国の王であるキュリオが女官や侍女の言いなりになる必要はどこにもないが、強行すれば溺愛しているアオイの心が離れてしまうような気がしてならなかったのだ。
キュリオは厚手のガウンを羽織ると、とある場所へ急いだ。
「何だこれは……」
”男子禁制”
アオイの部屋の前で女官や侍女の残した張り紙を見て驚くキュリオだが、夜の明けた今はもう必要ないと判断し、強引に扉を推して中に入る。
――ガチャッ!
「話を聞かせてもらおうかアオイ」
普段ノックせずに入室するなど有り得ないキュリオだが、大人しく引き下がった裏では随分我慢していたことが伺える。
「……」
しかし彼の問いに返答はなく、アオイの匂いがほのかに香る甘く優しい空間を静寂が包んでいた。
「……」
真っ先に天蓋のベッドへと向かったキュリオはわずかに瞳を見開いた。そこに眠るはずの彼女の姿がなかったからだ。するとシーツの中へと手を忍ばせたキュリオ。
(温もりが感じられない。随分前に部屋を出たか……)
部屋を見渡してみても窓から出た様子はなく、おそらく城の中にいることがわかる。
カイとの遊びの中で窓から外出する術を身に着けた彼女がそれを使うのは夜中に従者たちの目をかいくぐるためのものであり、今回はそれに当たらないと判断したキュリオの胸に安堵が広がる。
それもそのはず、キュリオの心を十分理解している女官や侍女がそれらを知っていたらアオイに手を貸すわけがないため、本来心配もいらないのかもしれない。
そして何も事情を知るのはアオイだけではないとわかっているキュリオだが……
「……アオイ……私を納得させられるだけの言い訳は用意してあるのだろうな?」
二人の間にわずかな溝も作りたくない彼はアオイに直接の説明を求めているのだった――。
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