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悠久の王・キュリオ編2
世界を支えた存在
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現<悠久の王>キュリオ、そしてもうひとつの世界の九条。
それぞれの想いを胸に抱えたまま見上げた夜空には後悔や不安が渦巻いている。
そして、それらを予想していたかのように日の光を宿した<初代>悠久の王の瞳がすべてを見透かしたように闇夜に浮かぶ月を見つめた。
"……わかっていても繰り返してしまう運命というものは……自身の答えを見出せていないが故だ。彼(か)の者を見ているとつくづく思う。人は答えを探すために生死を繰り返しているのかもしれない……と"
――それっきり言葉を発しなくなった九条を一瞥した大和は、何事もなかったかのように彼のもとを静かに去った。
(九条には悪いが、もはやこの世に存在していない<初代王>の話などどうでもいい。恐らく仙水が最後の王だ。もう頼れる者などいない――)
大和の脳裏に浮かぶのは慈しみに満ちた瞳で微笑む彼女の姿だった。
(……っせめて彼女さえ生きていてくれたら……)
強く握りしめられた手からは血が滲んでいる。
かつてこの世界を支えていたひとりであった彼女が欠けたことで仙水らの世界は大きく傾いてしまった。それは坂道を転げ落ちる石のように留まることを知らず、王である仙水の力でさえ悪化の一途をたどるこの状況に歯止めをかけるためにとてつもない負担を強いたのだ。
(それとも……)
「<初代王>を失った時点でこの世界の運命は決まっていたのか?」
数多の命が一瞬にして消え去ってしまった仙水らの世界。
それは自然の摂理などではなく、たったひとりの別世界の王により齎された大虐殺である。
だが、侵略の目的はこの世界の王座に就くのが狙いだったというかつての<雷帝>の話も些か腑に落ちない点がある。
いくつもの不可解な点が重なり合った結果がこの悲惨な結末を迎えてしまったわけだが、世界が完全に滅びないのにはまだ理由があるからなのだろうか?
そして、この世界を壊滅寸前にまで追い込んだ<雷帝>の真の目的を知る者はたった四人であり、それは……彼女と九条、彼と親交の深かった当時の<冥王>と現<雷帝>エデンのみである。
それぞれの想いを胸に抱えたまま見上げた夜空には後悔や不安が渦巻いている。
そして、それらを予想していたかのように日の光を宿した<初代>悠久の王の瞳がすべてを見透かしたように闇夜に浮かぶ月を見つめた。
"……わかっていても繰り返してしまう運命というものは……自身の答えを見出せていないが故だ。彼(か)の者を見ているとつくづく思う。人は答えを探すために生死を繰り返しているのかもしれない……と"
――それっきり言葉を発しなくなった九条を一瞥した大和は、何事もなかったかのように彼のもとを静かに去った。
(九条には悪いが、もはやこの世に存在していない<初代王>の話などどうでもいい。恐らく仙水が最後の王だ。もう頼れる者などいない――)
大和の脳裏に浮かぶのは慈しみに満ちた瞳で微笑む彼女の姿だった。
(……っせめて彼女さえ生きていてくれたら……)
強く握りしめられた手からは血が滲んでいる。
かつてこの世界を支えていたひとりであった彼女が欠けたことで仙水らの世界は大きく傾いてしまった。それは坂道を転げ落ちる石のように留まることを知らず、王である仙水の力でさえ悪化の一途をたどるこの状況に歯止めをかけるためにとてつもない負担を強いたのだ。
(それとも……)
「<初代王>を失った時点でこの世界の運命は決まっていたのか?」
数多の命が一瞬にして消え去ってしまった仙水らの世界。
それは自然の摂理などではなく、たったひとりの別世界の王により齎された大虐殺である。
だが、侵略の目的はこの世界の王座に就くのが狙いだったというかつての<雷帝>の話も些か腑に落ちない点がある。
いくつもの不可解な点が重なり合った結果がこの悲惨な結末を迎えてしまったわけだが、世界が完全に滅びないのにはまだ理由があるからなのだろうか?
そして、この世界を壊滅寸前にまで追い込んだ<雷帝>の真の目的を知る者はたった四人であり、それは……彼女と九条、彼と親交の深かった当時の<冥王>と現<雷帝>エデンのみである。
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