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悠久の王・キュリオ編

謁見

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――その頃、広間では……

ソファへ腰掛けたキュリオは赤子を膝に座らせながら紅茶に口をつけている。
そして窓からそよぐ穏やかな風にわずかな気温の高まりを感じはじめると――

(そろそろか……)

<使者>としてこの広間に顔を揃えるのが誰であったとしても、それが信頼を寄せるガーラントの見立てた者ならば異論はないが、彼がその人物に何を見出したのかを見極めるのが少なからずキュリオの楽しみでもあった。
そんなことを考えていると、待ち人の到着を知らせる声があがる。

「失礼いたしますキュリオ様。ガーラント殿が参りました」

「あぁ、奥の部屋へ通してくれ」

待ち人の到着を知らせる家臣へ入るよう指示を出し、キュリオは準備を整えるべく膝の上の赤子へ微笑んだ。

「ここで待っていてくれるかい? 私は少し用があるから行ってくるよ」

彼女を膝からおろしてソファへと寄りかからせ、体が冷えてしまわぬようストールで優しく体を包みなおした。赤子が理解してかるかどうかわからないが、相変わらず天使ような笑みを浮かべてキュリオを見つめ返している。

「いい子だね。ではまたあとで」

傍で待機する女官へ赤子の世話を任せ、キュリオは名残惜しく彼女の頬をひと撫ですると少し離れた広間の奥へと歩いて行った。

 一行のなかでキュリオと顔を合せたことがないのは唯一カイだけだった。噂に聞く王は剣術、魔術ともに人の域を超越し、五大国の王のなかで第二位の立場にいるのだという。
齢、五百を超えているという彼の姿を想像し、カイの頭の中ではとてつもない妄想が繰り広げられていた。

――扉へ入り、さらに奥の部屋へと誘導された一行は日の光の降り注ぐ明るい広間を中へと進む。
 床へ視線をうつすと、自分の姿がうつってしまうほど美しく磨かれた大理石。そして天井は高く、なかでも目を引くのは水晶を散りばめたような見事なシャンデリアだ。さらに嫌味なく配置された高貴な家具たちが品の良さをあらわしている。

「なんだこの部屋……すっげぇな……」

「う、うん……」

カイとアレスはあたりを見回しながら、現実離れしたこの空間にため息を零している。
さらに奥の巨大な扉をくぐると足元に柔らかい感触をおぼえ、眼下に広がったのは部屋の中央を走る真紅の絨毯だった。そしてここが屋外と見紛うほどに光りが溢れ、取り込むガラス窓も膨大で数えようとすれば目が回りそうだ。
やがて広間の最奥へと到着し――

「大変お待たせいたしました。キュリオ様」

ガーラントが恭しく一礼すると、透き通った男の声が返ってくる。

「ガーラント、急がせてすまなかったね」

気遣うような柔らかな物言いに、ハッとしたカイは正面の小高い場所にいる背の高い人物の顔を見つめた。

「皆、よく集まってくれた」

ガーラントの後ろに立つ数人の剣士と魔導師をみたキュリオが穏やかに言葉を述べる。
カイの妄想の真逆を行くその面差しは春のそよ風のようにあたたかく、五百歳を超えているはずの王は二十代半ばにしか見えぬ……眩い美貌を放つ若い男だった――。

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