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”異世界へ零れ落ちた者”(2)

大切な笑顔のために3

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 そうこうしているうちに、ドアが開いてマリとマリの両親が姿を見せた。

「……オプティアッ!」

「マリ……」

 マリの涙でぐしゃぐしゃになった顔には笑顔が広がっている。

「……ありがと、ありがとうっっ!!」

 両手を広げて抱き着いてきたマリをオプティアは受け止める。

「……ううん、ごめんね。これしか私に出来ることなくて……」

 すると、オプティアから体を離したマリがブンブンと首を振って――

「そんなことないっ! オプティアの優しさがおばあちゃんを救ったの!! 私はおばあちゃんに元気になってほしくて……体にいいものを作ってきたつもりだったのにっ……」

「マリ……」

(……マリの手料理はおばあちゃんの体を思ってのことだったんだ……)

 今まで彼女がしてきたことが無駄だと思ってほしくないオプティアは、マリを再び強く抱きしめると彼女に伝えた。

「マリの笑顔と手料理がなによりの薬なの。だからおばあちゃん、ずっと元気でいられたんだよ?」

「……オプティアァ……」

 オプティアの言葉を聞いて大粒の涙をこぼしたマリのそれは……無力な自分に対する懺悔の涙か、すこしでも報われたと感じたための涙かはわからない。
 心行くまで泣かせてあげようと胸を貸していると、ミランダの声がかすかに聞こえた。

「そこにいるのは……マリとオプティアかい?」

「……っ! おばあちゃん!!」

 同時に駆け寄った私たちを、すこしだけ弱めな日差しのお日様が笑いかけてくれる。
 泣き笑いのマリと、優しい眼差しのミランダ。ふたりを見つめているこちらの頬にも涙が伝う。

(これがお互いを必要としている証……)

 日本に居た頃に感じていた愛は、やはり一方通行だったのだと思い知らされて心の陰と落とす。
 邪魔をしないようにと一歩後退ったオプティアに、気づいたミランダが体を起こそうとするのを医療班が宥める。

「……オプティア? どうしたんだい?」

「ほら、オプティア。こっちで顔を見せてあげて」

「う、うん……」

 オプティアが来るのを待って、歩調を合わせてくれるマリ。ふたり揃ってベッドの傍へ並ぼうとすると――

「ああ、このバブルには触れないでくださいね。術が馴染むまで丸一日かかるんです」

 慌ててミランダおばあちゃんと私たちの間へ割って入ったミラーさんが説明してくれる。

「ごめんなさいっ……!」

 頬を赤らめたマリが数歩下がると、床にあいていたあの謎の穴に足を取られてバランスを崩した。

「きゃっ!」

「マリ!」

 咄嗟に伸ばした手は彼女に届かない!

(マリが落ちちゃうっ!!)

 眼下には荒く抉られて、鋭利な木片が突き出てふたりを待ち構えている。

(……ダメッ!! これじゃ今度はおばあちゃんを悲しませる!!)

 強烈な心の声が全身へと広がると、床を蹴ったオプティアのスピードがマリの落下速度を上回って彼女を抱き上げた。

「おお、これはっ……」

 ダンッ! と重厚な音を立てて着地したオプティアは、驚いて目を丸くするマリをそっとおろした。

「オプティア……」

 自分を羨ましいと言ってくれたマリ。
 だが、実際のオプティアに与えられたスキルは女性らしさの欠片もなく、よく見ると袖から伸びた腕や強化された足はひと回り太くなって血管が浮き出ていた。

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