7 / 8
”異世界へ零れ落ちた者”(2)
大切な笑顔のために3
しおりを挟む
そうこうしているうちに、ドアが開いてマリとマリの両親が姿を見せた。
「……オプティアッ!」
「マリ……」
マリの涙でぐしゃぐしゃになった顔には笑顔が広がっている。
「……ありがと、ありがとうっっ!!」
両手を広げて抱き着いてきたマリをオプティアは受け止める。
「……ううん、ごめんね。これしか私に出来ることなくて……」
すると、オプティアから体を離したマリがブンブンと首を振って――
「そんなことないっ! オプティアの優しさがおばあちゃんを救ったの!! 私はおばあちゃんに元気になってほしくて……体にいいものを作ってきたつもりだったのにっ……」
「マリ……」
(……マリの手料理はおばあちゃんの体を思ってのことだったんだ……)
今まで彼女がしてきたことが無駄だと思ってほしくないオプティアは、マリを再び強く抱きしめると彼女に伝えた。
「マリの笑顔と手料理がなによりの薬なの。だからおばあちゃん、ずっと元気でいられたんだよ?」
「……オプティアァ……」
オプティアの言葉を聞いて大粒の涙をこぼしたマリのそれは……無力な自分に対する懺悔の涙か、すこしでも報われたと感じたための涙かはわからない。
心行くまで泣かせてあげようと胸を貸していると、ミランダの声がかすかに聞こえた。
「そこにいるのは……マリとオプティアかい?」
「……っ! おばあちゃん!!」
同時に駆け寄った私たちを、すこしだけ弱めな日差しのお日様が笑いかけてくれる。
泣き笑いのマリと、優しい眼差しのミランダ。ふたりを見つめているこちらの頬にも涙が伝う。
(これがお互いを必要としている証……)
日本に居た頃に感じていた愛は、やはり一方通行だったのだと思い知らされて心の陰と落とす。
邪魔をしないようにと一歩後退ったオプティアに、気づいたミランダが体を起こそうとするのを医療班が宥める。
「……オプティア? どうしたんだい?」
「ほら、オプティア。こっちで顔を見せてあげて」
「う、うん……」
オプティアが来るのを待って、歩調を合わせてくれるマリ。ふたり揃ってベッドの傍へ並ぼうとすると――
「ああ、このバブルには触れないでくださいね。術が馴染むまで丸一日かかるんです」
慌ててミランダおばあちゃんと私たちの間へ割って入ったミラーさんが説明してくれる。
「ごめんなさいっ……!」
頬を赤らめたマリが数歩下がると、床にあいていたあの謎の穴に足を取られてバランスを崩した。
「きゃっ!」
「マリ!」
咄嗟に伸ばした手は彼女に届かない!
(マリが落ちちゃうっ!!)
眼下には荒く抉られて、鋭利な木片が突き出てふたりを待ち構えている。
(……ダメッ!! これじゃ今度はおばあちゃんを悲しませる!!)
強烈な心の声が全身へと広がると、床を蹴ったオプティアのスピードがマリの落下速度を上回って彼女を抱き上げた。
「おお、これはっ……」
ダンッ! と重厚な音を立てて着地したオプティアは、驚いて目を丸くするマリをそっとおろした。
「オプティア……」
自分を羨ましいと言ってくれたマリ。
だが、実際のオプティアに与えられたスキルは女性らしさの欠片もなく、よく見ると袖から伸びた腕や強化された足はひと回り太くなって血管が浮き出ていた。
「……オプティアッ!」
「マリ……」
マリの涙でぐしゃぐしゃになった顔には笑顔が広がっている。
「……ありがと、ありがとうっっ!!」
両手を広げて抱き着いてきたマリをオプティアは受け止める。
「……ううん、ごめんね。これしか私に出来ることなくて……」
すると、オプティアから体を離したマリがブンブンと首を振って――
「そんなことないっ! オプティアの優しさがおばあちゃんを救ったの!! 私はおばあちゃんに元気になってほしくて……体にいいものを作ってきたつもりだったのにっ……」
「マリ……」
(……マリの手料理はおばあちゃんの体を思ってのことだったんだ……)
今まで彼女がしてきたことが無駄だと思ってほしくないオプティアは、マリを再び強く抱きしめると彼女に伝えた。
「マリの笑顔と手料理がなによりの薬なの。だからおばあちゃん、ずっと元気でいられたんだよ?」
「……オプティアァ……」
オプティアの言葉を聞いて大粒の涙をこぼしたマリのそれは……無力な自分に対する懺悔の涙か、すこしでも報われたと感じたための涙かはわからない。
心行くまで泣かせてあげようと胸を貸していると、ミランダの声がかすかに聞こえた。
「そこにいるのは……マリとオプティアかい?」
「……っ! おばあちゃん!!」
同時に駆け寄った私たちを、すこしだけ弱めな日差しのお日様が笑いかけてくれる。
泣き笑いのマリと、優しい眼差しのミランダ。ふたりを見つめているこちらの頬にも涙が伝う。
(これがお互いを必要としている証……)
日本に居た頃に感じていた愛は、やはり一方通行だったのだと思い知らされて心の陰と落とす。
邪魔をしないようにと一歩後退ったオプティアに、気づいたミランダが体を起こそうとするのを医療班が宥める。
「……オプティア? どうしたんだい?」
「ほら、オプティア。こっちで顔を見せてあげて」
「う、うん……」
オプティアが来るのを待って、歩調を合わせてくれるマリ。ふたり揃ってベッドの傍へ並ぼうとすると――
「ああ、このバブルには触れないでくださいね。術が馴染むまで丸一日かかるんです」
慌ててミランダおばあちゃんと私たちの間へ割って入ったミラーさんが説明してくれる。
「ごめんなさいっ……!」
頬を赤らめたマリが数歩下がると、床にあいていたあの謎の穴に足を取られてバランスを崩した。
「きゃっ!」
「マリ!」
咄嗟に伸ばした手は彼女に届かない!
(マリが落ちちゃうっ!!)
眼下には荒く抉られて、鋭利な木片が突き出てふたりを待ち構えている。
(……ダメッ!! これじゃ今度はおばあちゃんを悲しませる!!)
強烈な心の声が全身へと広がると、床を蹴ったオプティアのスピードがマリの落下速度を上回って彼女を抱き上げた。
「おお、これはっ……」
ダンッ! と重厚な音を立てて着地したオプティアは、驚いて目を丸くするマリをそっとおろした。
「オプティア……」
自分を羨ましいと言ってくれたマリ。
だが、実際のオプティアに与えられたスキルは女性らしさの欠片もなく、よく見ると袖から伸びた腕や強化された足はひと回り太くなって血管が浮き出ていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる