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壱
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それは、何故か懐かしさを覚える光景。生まれたときからずっと此処にいる筈なのに、無性に泣きたくなるような不思議な感覚。
とある田舎町。
山の麓の古い温泉宿は、決して賑わっている訳でもなく訪れるのは大抵が老人か登山者だ。しかし、そこは俺が大切にしている場所。優しい母と、小さな学校に一緒に通う友達。毎日遊びまわる子供達を見守ってくれる近所の人々。あふれる緑、済んだ空気。静かな町並み。俺はそんなこの場所が大好きだ。
『譲。お客さんの邪魔したらあかんって言ってるでしょ?ほら、荷物運んで』
宿の若女将である母の背をついて回るといつも田舎訛交じりにそんな風に叱られた。その顔は向かいの朝日に邪魔されてよく見えない。
『お母さん、お母さん。お父さんはいつ帰ってくるん?』
仕事を終えた母の膝の上で問いかけた。物心着く頃から父は家にはおらず、その顔はまったく覚えていない。仕事の都合で一緒に暮らすことができない父は俺にとってはいてもいなくても同じ。その程度の存在だ。
『‥‥‥お父さんは忙しい人やから。いつになるかな?』
しかし、母は違う。母は父の話になるといつも寂しそうに笑った。
『お母さん』
俺は、母に体ごと振り返り、短い両手で精一杯抱き締めた。
『大丈夫だよ。お父さんいなくても、譲は寂しくないから。お父さんの代わりに譲がお母さんのこと守るから』
『譲‥‥』
優しい声で名を呼んで母は俺を抱き返す。
しかし、そこに望んだ温もりはなかった。
一瞬にして穏やかな田舎の景色は闇色に染まる。
『お母、さん?』
体温のない体を押し退けると、その顔には面のように貼り付いた不気味な笑顔があった。
『無理よ』
つり上がった唇から紡がれる残酷な言葉。いつの間にか俺の身体は幼い頃のものではなかった。
『あなたじゃ私を守れないもの』
降り注ぐ言葉は俺を追い詰める。
逃げたい。耳を塞ぎたい。
でも、体が動かない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
ドサッ‥‥‥。
『っ、え?』
母は消え、背後の音に振り返る。
突然目の前に現れたのは、半分になった血塗れの見慣れた体躯。
それは、かつて俺が失った大切な―――――‥‥‥
―――――ホラ、大人ニナッタッテ何モ守レテイナイジャナイ。
『い、嫌だ、嫌だっっ――――‥‥‥!』
†
ドンッッ‥‥。
「っ!」
軽い振動を伴った音が響き、俺の意識は一気に覚醒した。どうやら眠っていたらしい。嫌な夢を見た気がする。額から流れる嫌な汗を拭い、木の匂いが香る縁側から庭を覗くと、そこには涙目で尻を摩るワイシャツ姿の大男。日向陽がいた。
「大丈夫かぁ?日向」
寝返りを打ち、仰向けのまま音のした方に声をかける。日向はどうやら尻を強く打ったらしく、俺の言葉に返事を返すこともままならないと言った様子だった。
「なんや落ちたんか?相変わらずドジやな。つーか、屋根なんか昇って何しとったん?」
日向は何も言わない。いや、まだ言えないらしく、瞳に涙をためながら口をぱくぱくとさせている。子供が見たら泣きながら逃げ出すような図体と顔を持ち合わせた大の大人の姿とはとても思えなかった。
「だあほが!お前がいつまでもいつまでも屋敷の雨漏りの修理せんもんやから日向の兄さんが直してくれたんじゃろうが」
突然頭上に降り注いだおかしな訛りに頭をあげると、そこには眉間に皺を寄せた美青年と寄り添うように後ろについた黒髪の似合う美少女、伊勢谷無月、満月兄妹の姿があった。
「大丈夫ですか?日向の兄様」
「おぉ、伊勢谷兄妹か。いやいや恥ずかしいところを見られてしまったな」
日向は、顔を赤らめながらようやく紡ぎ出せた声で言った。
「大丈夫か兄さん。たく、こんな野郎の為に無理しなさんな。なにせ兄さんはなーんも見えんのだから」
日向は、堅く閉ざした瞼を撫で、どっこいしょ。とオヤジくさく言いながら立ち上がる。
「いやいや、志摩殿に危ない事はさせられんよ」
ワイシャツについた汚れを払い落とすその仕種はまるで無月の言葉を否定するようだ。
「まったく、兄様は志摩を甘やかしすぎです。いくら当主、《うたかた》だからと‥‥」
「俺は好きでなったわけじゃないからな」
満月の言い分に重ねるように俺は断固否定する。
「そうやそうや。《倭家》当主の《うたかた》がこんな怠け者の《異端児》なんて知れたら先代に顔向けできやせんじゃろうて」
無月はそう言って嫌らしくけたけたと笑った。思わず右手に力が篭る。《異端児》それは俺が最も嫌う言葉だった。
「駄目です!」
満月が叫ぶが、頭にかっと血が上り耳を通り抜ける。俺の意志に同調するように風が俺を取り囲み吹き荒れた。
「てめぇ、人の恩を阿多でかえすようなこと言うなんてええ度胸しとるやないか。―――その面【燃やす】ぞ!」
怒鳴るように言葉を紡ぐと風は温度を増し、炎へと変わる。俺の右手は赤く燃え上がる。
「誰が助けろなんて頼んだんじゃ!恩着せがましいんや――【睡蓮】!」
無月の言葉は懐から取り出した細い鉄柱を刃のように鋭い鉄扇へと変化させた。そして、俺達は同時に縁側から庭に飛び、その手を振り上げた。力が激しくぶつかり合い空気を揺らす。
「はは、相変わらず正面一本か?《うたかた》様じゃろうとたいしたことないなぁ」
「っるせー!その煩い舌焦がして二度とそんな口きけへんくしたるわ!」
炎の拳と水の扇が重なり合う度に容赦なく舞い上がる火の粉が満月と日向を襲う。
日向は小さな悲鳴を上げる満月の盾になりながら、穏やかな顔を少しずつ歪めていく。
「二人ともいい加減にしないか!‥‥――【封】っ」
叫ぶと、日向の両手に藍色の淡い光が宿る。そのまま日向は俺と無月の戦線に乱入。灼熱の拳と水の刃をかい潜り、がっしりと俺達のこめかみを大きな両手で掴んだ。すると、俺の炎は酸素を失ったように小さくなり、やがて消えた。無月の扇も蒸発したようにただの鉄柱となった。日向は、ふぅ、と軽くため息をつき、両手を離した。
「まったく、毎度毎度良く飽きないものだ。二人には辛抱という言葉が足りなさすぎる。もう少し大人になったらどうだ?二人共志摩と伊勢谷。両家の当主であり、《倭家》という家族なのだから」
日向に叱られては俺も無月も言い返す言葉もなく、すっかり炎の消えた右手を下ろす。
《倭家》
それはひとつの家系としての名ではなく、不思議な血で繋がれた家々の総称。
《倭家》は江戸の頃より言葉を使った不思議な力を持っていた血筋。
言葉によって様々な物質を生み出したり、人の意志を操ったりと用途は様々だった。当時は神の力を持って生まれたと崇められ、恐れられ、いつしか《言霊師》と呼ばれその地位を築いてきたのだ。
戦場で《倭家》の人間が一人いれば百の兵にも勝ると言われた時代もあったらしい。
当時はその血を誰もがほしがった。しかし、その血が流れる身ならば誰しもがその力を受け継ぐという訳ではない。その根拠はわかってはいないが、一族の中でも力を宿す者の血の濃さがそれに繋がるという。簡単にその血を奪われることはなかったわけだ。
血に宿る力は言葉という媒体を得て発動し、奇跡と呼ばれるような様々な現象を生み出してきた。
それはこの力が奇跡という言葉で済まなくなってしまった現代となっても健在だ。それを堂々と表に出す事は叶わないが、政治家や大手企業の会長、この国の権力者には《倭家》の血筋が関わっていることも少なくはない。
《倭家》に存在する家々は、《分家》と呼ばれ、それぞれ様々な力を持つ言霊師の家系である。そして力の特徴も家によって様々だ。
そんな言霊師の集まりを束ねる《倭家》の主が《うたかた》である。
言霊師の力の源であると言われている《十二月の守護神》睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神有月、霜月、師走、のうち自身の誕生月の名を持つ守護神に選ばれる唯一の存在。
言葉という力を使って「歌う者(方)」と、代々神を宿す負荷に耐えられず短命であることから「泡沫」を掛けた名らしい。《うたかた》は、《倭家》のすべての権限を持つ絶対的存在なのだ。
それに選ばれたのが俺。志摩譲だ。
だが、俺は今までの《うたかた》とは存在からして大きく異なっていた。
それは俺の生まれた家、誕生月と守護神の関係、そして血縁者にあった。
俺の誕生日は十月二日。《倭家》風に言えば神無月の二日。字の通り俺は神無き月に生まれた。『神無月生まれの言霊師』はかつて例を見ない。
神無月生まれの言霊師は本来生まれ月を“神有月”と名を変える事ができる出雲姓にしか生まれないとされいた。それは、《倭家》の出雲姓が、神有月(神無月)に神が集結する出雲大社よりもらった名だからだ。神の恩恵を受けて力を得る《倭家》にとっては神無月生まれの人間が言霊師の力を得た事が異端なのだ。
しかし、実際神無月生まれの言霊師が誕生した。それと同時に神有月とは別に神無月の神の存在が明らかとなり、十二の守護神が十三の守護神となった。十三という不吉の数値、そして神なき月の神という矛盾。《倭家》が江戸より受け継いできた「理」が俺という存在から狂い始めてきたのだ。
そして、《倭家》の人々が俺を異端児と呼ぶ由縁に拍車をかけたのは俺の母親の存在にあった。
《倭家》、そして、言霊師を継ぐ者は遠かれど皆が血縁関係にある。一時期は血を絶やすまいと近親相姦なんて禁忌を犯した事もあったらしい。いや、あったと言うべきか。簡単に言えば、《倭家》の人間全員が親戚関係にあるのだ。
だが、俺の母親は《倭家》には縁も所縁もなく、《倭家》の存在すら知らず普通に育った、ごくごく普通の世界のただの田舎の旅館の若女将だった。
対して父親は当時の志摩家当主。齢二十八。当主となったのは十四というから当時としても異例の若さで志摩家を束ねていたのだ。
しかし、そんな父は血に縛られ、世から隔離され陰で暗躍することしか許されない《倭家》を好いてはいなかった。《倭家》のみが住まう山奥の「村」をぬけ出しては外で自由に遊び呆け、いつしか外の血を混ぜて志摩家の言霊師の力を途絶させようとまで考えるようになった。そんな父の野望など知る由もなく、俺の母は父の年相応にない大人びた態度や言いしれぬカリスマ性。そして何より優しかったという父に惹かれていったという。対する父もいつしか歪んだ野望は捨て去って本気で母に惹かれ互いの子を、と、願っていたらしい。
そして、《倭家》との決別を決心した父は母と結婚。無事に子供も生まれた。もちろんそこに愛はあった。結婚を決意した時に《倭家》や《言霊師》のこと、自分には志摩家という置いてきた家があったことなどを全て打ち明けたうえで、せめて自分の子と妻だけは《倭家》の呪縛から解き放ってやりたかったのだと母に言っていたらしい。
しかし、父の願いは叶わなかったのだ。
志摩家を絶やそうとした父は罪に問われ《倭家》へ強制的に戻されそこで病に倒れて数年とせずに死んだ。そして、その後を追うように母も病でこの世を去った。
俺は両親を失った。
《倭家》に引き取られた数年後、元より力のなかった俺がある事件をきっかけに言霊師としての力に目覚め同時に《十二月の守護神》に《うたかた》として選ばれてしまったのだ。
異種の血が混じった言霊師などましてやそれが《倭家》の主となった。歴史上あり得ない。
それが俺が《うたかた》でなく《異端児》と呼ばれるもうひとつの由縁なのだ。
血に呪われたいくつもの忌まわしい過去。出来ることなら忘れてしまいたい、捨ててしまいたい過去。それ故に誰にも触れられたくはないのだ。
日向に諭されて、ばつが悪くなった俺達はお互い何も言わなかった。
見兼ねた満月は裸足のまま庭に降り、無月に歩み寄ると、頬についた煤を掃ってにっこりと笑う。
「‥‥満月」
しかし、気を許した無月をたしなめるようにその笑顔とは裏腹に、容赦なく無月にビンタした。無月の顔が大きく左に振れる。顔に似合わぬ強力さだった。
「日向の兄様の言う通りです無月。本来ならここで生きることを許されない双子の私達を当主として認めて、生かしてくれたのは志摩でしょう?‥‥異端児は私達です」
満月の諭すような言葉に無月は何も言わず、縁側から家に入り奥へと消えた。満月も俺と日向に頭を下げてその後を追った。
「‥‥異端児か」
「志摩殿」
自嘲するように笑うと、日向はそれを悟ったようにそっと右手を俺の頭に乗せた。
「大丈夫。気にしてへんよ。無月は間違ってない。俺が異端なのはな事実や」
「‥‥‥‥。」
俺はまだ正式に《うたかた》と認められていない。
それにはいくつかの条件があるのだが、最も重要である《守護神》の証明。村の皆に守護神の姿を見せてはいないのだ。力に目覚めたあの日《守護神》は俺の名を呼んだ『あの日』以来、一度も俺の前に姿を現してくれてはいないのだ。
「な、なにするんじゃ。俺はなにもしとらへん!は、な、せぇぇっ!」
突然玄関先で無月の声とこちらに迫る足音が響いた。驚いて振り替えれば、スリットがそれはもうギリギリまで入った漆黒にてらてらと光る同色の龍が浮かぶチャイナドレスを身に纏った妖艶という言葉を具現化したような美しくも妖しい美女の姿があった。そして、それに首根っこを捕まれ無月は再び俺たちの前に現れた。後ろから満月もパタパタと小走りでやってくる。
「何もしてない、だ?おい、どの口がほざいている。お前みたいな下等な男が私の可愛い満月を泣かしやがったのに何もしてないとはよく言えたものだな」
「い、出雲の姉様違うんです。私が勝手に‥‥」
「満月。こんな奴を庇う必要なんてないよ。ああ、手が腫れているじゃないか。こんな馬鹿殴ったら馬鹿が伝染るだろう。ささ、今すぐ手を洗っておいで」
満月が彼女、出雲聖斗を制止すると、彼女はまるで野良猫を放るように無月を突き飛ばし、満月に寄り添い顎に手をかける。
「姉様‥‥」
「おい、このオカマ野郎!俺を黴菌みたいに言いやがって。満月をそっちの世界に引き込むなって何度言えばわかるんじゃ‥‥でっっっ!」
出雲の強力なデコピンに無月はのけ反り一発ノックアウト。うわ、と思わず俺も額を撫でた。
「阿呆。私はれっきとした女だっつってんだろ。以前この洗礼された私の身体を見て鼻血出して卒倒したのはどこの童貞君だったかな?無月君」
無月が額を抑えしゃがみこんだまま怯んだ。
出雲は以前無月と今日のように満月をめぐって言い合いをしていたとき突然チャイナドレスを脱ぎ出し、無月にその妖艶な身体を露わにしたのだ。それも全裸。服の上からでもわかる放漫な胸部に健康的な身体。そんなものを生で見せられたら俺だって卒倒ものだ。残念ながら俺は後ろ姿しか見ることは出来なかった。それでも破壊力は十分だったと言えるが。
「出雲。無月もさっさと卒業したいお年頃なんやからあんまり傷をえぐったるな」
出雲は呆れたようにため息をつくと、再び無月を不安そうに覗きこむ満月に振り返り、推定Fはあるであろう胸で挟み込むように抱き締めた。くそ、うらやましいな満月のやつ。
しかし、彼女はその美貌の無駄遣いと言わんばかりの大の男嫌いで、いわば『そっちの気』がある女性なのだ。
出雲家は初代当主から女性が当主を務める女系一族。
俺はかろうじて先々代である出雲家当主、聖斗の祖母の代から彼女らを知っているが皆が皆、男であるなら誰をも魅了する美貌を持っている女性ばかりだ。
しかし、その外見虚しく、男顔負けの勇ましい女性達なのだ。まったく家系とはおそろしい。
「で、何で出雲が本家に?」
俺の問いに不貞腐れていた無月も、出雲に埋もれていた満月はぎょっとした顔でこちらを見つめ、日向もはっと、頭を上げた。
「こんっっの、ど阿呆が!手前今日が何の日か忘れたとは言わせないぞ」
出雲の怒声が俺の鼓膜を貫いた。今日?今日は‥‥。
「――あ‥‥」
数分考え、今日の日付を思い出す。それだけで、俺の頭の引き出しを開くのには十分だった。
「親父の命日、か」
今日は、親父。俺を言霊師として育ててくれたもう一人の父、陸奥隆信の命日なのだ。
親父は力を持ってはいなかったが、力の根源たる『言葉』の大切さを《倭家》の子供たちに教えてやりたいと早々に家を出て、《倭家》の外れに構えた道場で書道の教室を開いていた。初めはだの書道教室だったそこはやがて《倭家》にとって唯一の中立地となり、俺のような子供達を匿う場としても利用されていた。力を持つ者、持たざる者。わけ隔てなく優しかった親父は様々な人から愛された人望厚い存在だったのだ。
「ああ。だからお前ら制服なのか」
そんな大事な日を忘れていたのかと若干の軽蔑の眼差しを誤魔化すように伊勢谷兄妹を見る。
無月は制服といっても派手に気崩しているし、満月は普段着を制服とするほどにをあまり着飾るタイプではないので気にもとめていなかった。よく見れば日向のネクタイも黒いし、出雲だってチャイナドレスとはいえ黒を身に纏っているじゃないか。
なんで、忘れていたのだろう。
とある田舎町。
山の麓の古い温泉宿は、決して賑わっている訳でもなく訪れるのは大抵が老人か登山者だ。しかし、そこは俺が大切にしている場所。優しい母と、小さな学校に一緒に通う友達。毎日遊びまわる子供達を見守ってくれる近所の人々。あふれる緑、済んだ空気。静かな町並み。俺はそんなこの場所が大好きだ。
『譲。お客さんの邪魔したらあかんって言ってるでしょ?ほら、荷物運んで』
宿の若女将である母の背をついて回るといつも田舎訛交じりにそんな風に叱られた。その顔は向かいの朝日に邪魔されてよく見えない。
『お母さん、お母さん。お父さんはいつ帰ってくるん?』
仕事を終えた母の膝の上で問いかけた。物心着く頃から父は家にはおらず、その顔はまったく覚えていない。仕事の都合で一緒に暮らすことができない父は俺にとってはいてもいなくても同じ。その程度の存在だ。
『‥‥‥お父さんは忙しい人やから。いつになるかな?』
しかし、母は違う。母は父の話になるといつも寂しそうに笑った。
『お母さん』
俺は、母に体ごと振り返り、短い両手で精一杯抱き締めた。
『大丈夫だよ。お父さんいなくても、譲は寂しくないから。お父さんの代わりに譲がお母さんのこと守るから』
『譲‥‥』
優しい声で名を呼んで母は俺を抱き返す。
しかし、そこに望んだ温もりはなかった。
一瞬にして穏やかな田舎の景色は闇色に染まる。
『お母、さん?』
体温のない体を押し退けると、その顔には面のように貼り付いた不気味な笑顔があった。
『無理よ』
つり上がった唇から紡がれる残酷な言葉。いつの間にか俺の身体は幼い頃のものではなかった。
『あなたじゃ私を守れないもの』
降り注ぐ言葉は俺を追い詰める。
逃げたい。耳を塞ぎたい。
でも、体が動かない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
ドサッ‥‥‥。
『っ、え?』
母は消え、背後の音に振り返る。
突然目の前に現れたのは、半分になった血塗れの見慣れた体躯。
それは、かつて俺が失った大切な―――――‥‥‥
―――――ホラ、大人ニナッタッテ何モ守レテイナイジャナイ。
『い、嫌だ、嫌だっっ――――‥‥‥!』
†
ドンッッ‥‥。
「っ!」
軽い振動を伴った音が響き、俺の意識は一気に覚醒した。どうやら眠っていたらしい。嫌な夢を見た気がする。額から流れる嫌な汗を拭い、木の匂いが香る縁側から庭を覗くと、そこには涙目で尻を摩るワイシャツ姿の大男。日向陽がいた。
「大丈夫かぁ?日向」
寝返りを打ち、仰向けのまま音のした方に声をかける。日向はどうやら尻を強く打ったらしく、俺の言葉に返事を返すこともままならないと言った様子だった。
「なんや落ちたんか?相変わらずドジやな。つーか、屋根なんか昇って何しとったん?」
日向は何も言わない。いや、まだ言えないらしく、瞳に涙をためながら口をぱくぱくとさせている。子供が見たら泣きながら逃げ出すような図体と顔を持ち合わせた大の大人の姿とはとても思えなかった。
「だあほが!お前がいつまでもいつまでも屋敷の雨漏りの修理せんもんやから日向の兄さんが直してくれたんじゃろうが」
突然頭上に降り注いだおかしな訛りに頭をあげると、そこには眉間に皺を寄せた美青年と寄り添うように後ろについた黒髪の似合う美少女、伊勢谷無月、満月兄妹の姿があった。
「大丈夫ですか?日向の兄様」
「おぉ、伊勢谷兄妹か。いやいや恥ずかしいところを見られてしまったな」
日向は、顔を赤らめながらようやく紡ぎ出せた声で言った。
「大丈夫か兄さん。たく、こんな野郎の為に無理しなさんな。なにせ兄さんはなーんも見えんのだから」
日向は、堅く閉ざした瞼を撫で、どっこいしょ。とオヤジくさく言いながら立ち上がる。
「いやいや、志摩殿に危ない事はさせられんよ」
ワイシャツについた汚れを払い落とすその仕種はまるで無月の言葉を否定するようだ。
「まったく、兄様は志摩を甘やかしすぎです。いくら当主、《うたかた》だからと‥‥」
「俺は好きでなったわけじゃないからな」
満月の言い分に重ねるように俺は断固否定する。
「そうやそうや。《倭家》当主の《うたかた》がこんな怠け者の《異端児》なんて知れたら先代に顔向けできやせんじゃろうて」
無月はそう言って嫌らしくけたけたと笑った。思わず右手に力が篭る。《異端児》それは俺が最も嫌う言葉だった。
「駄目です!」
満月が叫ぶが、頭にかっと血が上り耳を通り抜ける。俺の意志に同調するように風が俺を取り囲み吹き荒れた。
「てめぇ、人の恩を阿多でかえすようなこと言うなんてええ度胸しとるやないか。―――その面【燃やす】ぞ!」
怒鳴るように言葉を紡ぐと風は温度を増し、炎へと変わる。俺の右手は赤く燃え上がる。
「誰が助けろなんて頼んだんじゃ!恩着せがましいんや――【睡蓮】!」
無月の言葉は懐から取り出した細い鉄柱を刃のように鋭い鉄扇へと変化させた。そして、俺達は同時に縁側から庭に飛び、その手を振り上げた。力が激しくぶつかり合い空気を揺らす。
「はは、相変わらず正面一本か?《うたかた》様じゃろうとたいしたことないなぁ」
「っるせー!その煩い舌焦がして二度とそんな口きけへんくしたるわ!」
炎の拳と水の扇が重なり合う度に容赦なく舞い上がる火の粉が満月と日向を襲う。
日向は小さな悲鳴を上げる満月の盾になりながら、穏やかな顔を少しずつ歪めていく。
「二人ともいい加減にしないか!‥‥――【封】っ」
叫ぶと、日向の両手に藍色の淡い光が宿る。そのまま日向は俺と無月の戦線に乱入。灼熱の拳と水の刃をかい潜り、がっしりと俺達のこめかみを大きな両手で掴んだ。すると、俺の炎は酸素を失ったように小さくなり、やがて消えた。無月の扇も蒸発したようにただの鉄柱となった。日向は、ふぅ、と軽くため息をつき、両手を離した。
「まったく、毎度毎度良く飽きないものだ。二人には辛抱という言葉が足りなさすぎる。もう少し大人になったらどうだ?二人共志摩と伊勢谷。両家の当主であり、《倭家》という家族なのだから」
日向に叱られては俺も無月も言い返す言葉もなく、すっかり炎の消えた右手を下ろす。
《倭家》
それはひとつの家系としての名ではなく、不思議な血で繋がれた家々の総称。
《倭家》は江戸の頃より言葉を使った不思議な力を持っていた血筋。
言葉によって様々な物質を生み出したり、人の意志を操ったりと用途は様々だった。当時は神の力を持って生まれたと崇められ、恐れられ、いつしか《言霊師》と呼ばれその地位を築いてきたのだ。
戦場で《倭家》の人間が一人いれば百の兵にも勝ると言われた時代もあったらしい。
当時はその血を誰もがほしがった。しかし、その血が流れる身ならば誰しもがその力を受け継ぐという訳ではない。その根拠はわかってはいないが、一族の中でも力を宿す者の血の濃さがそれに繋がるという。簡単にその血を奪われることはなかったわけだ。
血に宿る力は言葉という媒体を得て発動し、奇跡と呼ばれるような様々な現象を生み出してきた。
それはこの力が奇跡という言葉で済まなくなってしまった現代となっても健在だ。それを堂々と表に出す事は叶わないが、政治家や大手企業の会長、この国の権力者には《倭家》の血筋が関わっていることも少なくはない。
《倭家》に存在する家々は、《分家》と呼ばれ、それぞれ様々な力を持つ言霊師の家系である。そして力の特徴も家によって様々だ。
そんな言霊師の集まりを束ねる《倭家》の主が《うたかた》である。
言霊師の力の源であると言われている《十二月の守護神》睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神有月、霜月、師走、のうち自身の誕生月の名を持つ守護神に選ばれる唯一の存在。
言葉という力を使って「歌う者(方)」と、代々神を宿す負荷に耐えられず短命であることから「泡沫」を掛けた名らしい。《うたかた》は、《倭家》のすべての権限を持つ絶対的存在なのだ。
それに選ばれたのが俺。志摩譲だ。
だが、俺は今までの《うたかた》とは存在からして大きく異なっていた。
それは俺の生まれた家、誕生月と守護神の関係、そして血縁者にあった。
俺の誕生日は十月二日。《倭家》風に言えば神無月の二日。字の通り俺は神無き月に生まれた。『神無月生まれの言霊師』はかつて例を見ない。
神無月生まれの言霊師は本来生まれ月を“神有月”と名を変える事ができる出雲姓にしか生まれないとされいた。それは、《倭家》の出雲姓が、神有月(神無月)に神が集結する出雲大社よりもらった名だからだ。神の恩恵を受けて力を得る《倭家》にとっては神無月生まれの人間が言霊師の力を得た事が異端なのだ。
しかし、実際神無月生まれの言霊師が誕生した。それと同時に神有月とは別に神無月の神の存在が明らかとなり、十二の守護神が十三の守護神となった。十三という不吉の数値、そして神なき月の神という矛盾。《倭家》が江戸より受け継いできた「理」が俺という存在から狂い始めてきたのだ。
そして、《倭家》の人々が俺を異端児と呼ぶ由縁に拍車をかけたのは俺の母親の存在にあった。
《倭家》、そして、言霊師を継ぐ者は遠かれど皆が血縁関係にある。一時期は血を絶やすまいと近親相姦なんて禁忌を犯した事もあったらしい。いや、あったと言うべきか。簡単に言えば、《倭家》の人間全員が親戚関係にあるのだ。
だが、俺の母親は《倭家》には縁も所縁もなく、《倭家》の存在すら知らず普通に育った、ごくごく普通の世界のただの田舎の旅館の若女将だった。
対して父親は当時の志摩家当主。齢二十八。当主となったのは十四というから当時としても異例の若さで志摩家を束ねていたのだ。
しかし、そんな父は血に縛られ、世から隔離され陰で暗躍することしか許されない《倭家》を好いてはいなかった。《倭家》のみが住まう山奥の「村」をぬけ出しては外で自由に遊び呆け、いつしか外の血を混ぜて志摩家の言霊師の力を途絶させようとまで考えるようになった。そんな父の野望など知る由もなく、俺の母は父の年相応にない大人びた態度や言いしれぬカリスマ性。そして何より優しかったという父に惹かれていったという。対する父もいつしか歪んだ野望は捨て去って本気で母に惹かれ互いの子を、と、願っていたらしい。
そして、《倭家》との決別を決心した父は母と結婚。無事に子供も生まれた。もちろんそこに愛はあった。結婚を決意した時に《倭家》や《言霊師》のこと、自分には志摩家という置いてきた家があったことなどを全て打ち明けたうえで、せめて自分の子と妻だけは《倭家》の呪縛から解き放ってやりたかったのだと母に言っていたらしい。
しかし、父の願いは叶わなかったのだ。
志摩家を絶やそうとした父は罪に問われ《倭家》へ強制的に戻されそこで病に倒れて数年とせずに死んだ。そして、その後を追うように母も病でこの世を去った。
俺は両親を失った。
《倭家》に引き取られた数年後、元より力のなかった俺がある事件をきっかけに言霊師としての力に目覚め同時に《十二月の守護神》に《うたかた》として選ばれてしまったのだ。
異種の血が混じった言霊師などましてやそれが《倭家》の主となった。歴史上あり得ない。
それが俺が《うたかた》でなく《異端児》と呼ばれるもうひとつの由縁なのだ。
血に呪われたいくつもの忌まわしい過去。出来ることなら忘れてしまいたい、捨ててしまいたい過去。それ故に誰にも触れられたくはないのだ。
日向に諭されて、ばつが悪くなった俺達はお互い何も言わなかった。
見兼ねた満月は裸足のまま庭に降り、無月に歩み寄ると、頬についた煤を掃ってにっこりと笑う。
「‥‥満月」
しかし、気を許した無月をたしなめるようにその笑顔とは裏腹に、容赦なく無月にビンタした。無月の顔が大きく左に振れる。顔に似合わぬ強力さだった。
「日向の兄様の言う通りです無月。本来ならここで生きることを許されない双子の私達を当主として認めて、生かしてくれたのは志摩でしょう?‥‥異端児は私達です」
満月の諭すような言葉に無月は何も言わず、縁側から家に入り奥へと消えた。満月も俺と日向に頭を下げてその後を追った。
「‥‥異端児か」
「志摩殿」
自嘲するように笑うと、日向はそれを悟ったようにそっと右手を俺の頭に乗せた。
「大丈夫。気にしてへんよ。無月は間違ってない。俺が異端なのはな事実や」
「‥‥‥‥。」
俺はまだ正式に《うたかた》と認められていない。
それにはいくつかの条件があるのだが、最も重要である《守護神》の証明。村の皆に守護神の姿を見せてはいないのだ。力に目覚めたあの日《守護神》は俺の名を呼んだ『あの日』以来、一度も俺の前に姿を現してくれてはいないのだ。
「な、なにするんじゃ。俺はなにもしとらへん!は、な、せぇぇっ!」
突然玄関先で無月の声とこちらに迫る足音が響いた。驚いて振り替えれば、スリットがそれはもうギリギリまで入った漆黒にてらてらと光る同色の龍が浮かぶチャイナドレスを身に纏った妖艶という言葉を具現化したような美しくも妖しい美女の姿があった。そして、それに首根っこを捕まれ無月は再び俺たちの前に現れた。後ろから満月もパタパタと小走りでやってくる。
「何もしてない、だ?おい、どの口がほざいている。お前みたいな下等な男が私の可愛い満月を泣かしやがったのに何もしてないとはよく言えたものだな」
「い、出雲の姉様違うんです。私が勝手に‥‥」
「満月。こんな奴を庇う必要なんてないよ。ああ、手が腫れているじゃないか。こんな馬鹿殴ったら馬鹿が伝染るだろう。ささ、今すぐ手を洗っておいで」
満月が彼女、出雲聖斗を制止すると、彼女はまるで野良猫を放るように無月を突き飛ばし、満月に寄り添い顎に手をかける。
「姉様‥‥」
「おい、このオカマ野郎!俺を黴菌みたいに言いやがって。満月をそっちの世界に引き込むなって何度言えばわかるんじゃ‥‥でっっっ!」
出雲の強力なデコピンに無月はのけ反り一発ノックアウト。うわ、と思わず俺も額を撫でた。
「阿呆。私はれっきとした女だっつってんだろ。以前この洗礼された私の身体を見て鼻血出して卒倒したのはどこの童貞君だったかな?無月君」
無月が額を抑えしゃがみこんだまま怯んだ。
出雲は以前無月と今日のように満月をめぐって言い合いをしていたとき突然チャイナドレスを脱ぎ出し、無月にその妖艶な身体を露わにしたのだ。それも全裸。服の上からでもわかる放漫な胸部に健康的な身体。そんなものを生で見せられたら俺だって卒倒ものだ。残念ながら俺は後ろ姿しか見ることは出来なかった。それでも破壊力は十分だったと言えるが。
「出雲。無月もさっさと卒業したいお年頃なんやからあんまり傷をえぐったるな」
出雲は呆れたようにため息をつくと、再び無月を不安そうに覗きこむ満月に振り返り、推定Fはあるであろう胸で挟み込むように抱き締めた。くそ、うらやましいな満月のやつ。
しかし、彼女はその美貌の無駄遣いと言わんばかりの大の男嫌いで、いわば『そっちの気』がある女性なのだ。
出雲家は初代当主から女性が当主を務める女系一族。
俺はかろうじて先々代である出雲家当主、聖斗の祖母の代から彼女らを知っているが皆が皆、男であるなら誰をも魅了する美貌を持っている女性ばかりだ。
しかし、その外見虚しく、男顔負けの勇ましい女性達なのだ。まったく家系とはおそろしい。
「で、何で出雲が本家に?」
俺の問いに不貞腐れていた無月も、出雲に埋もれていた満月はぎょっとした顔でこちらを見つめ、日向もはっと、頭を上げた。
「こんっっの、ど阿呆が!手前今日が何の日か忘れたとは言わせないぞ」
出雲の怒声が俺の鼓膜を貫いた。今日?今日は‥‥。
「――あ‥‥」
数分考え、今日の日付を思い出す。それだけで、俺の頭の引き出しを開くのには十分だった。
「親父の命日、か」
今日は、親父。俺を言霊師として育ててくれたもう一人の父、陸奥隆信の命日なのだ。
親父は力を持ってはいなかったが、力の根源たる『言葉』の大切さを《倭家》の子供たちに教えてやりたいと早々に家を出て、《倭家》の外れに構えた道場で書道の教室を開いていた。初めはだの書道教室だったそこはやがて《倭家》にとって唯一の中立地となり、俺のような子供達を匿う場としても利用されていた。力を持つ者、持たざる者。わけ隔てなく優しかった親父は様々な人から愛された人望厚い存在だったのだ。
「ああ。だからお前ら制服なのか」
そんな大事な日を忘れていたのかと若干の軽蔑の眼差しを誤魔化すように伊勢谷兄妹を見る。
無月は制服といっても派手に気崩しているし、満月は普段着を制服とするほどにをあまり着飾るタイプではないので気にもとめていなかった。よく見れば日向のネクタイも黒いし、出雲だってチャイナドレスとはいえ黒を身に纏っているじゃないか。
なんで、忘れていたのだろう。
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