誕生日にほしいものは

京 みやこ

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(10)諦めないでよかった……

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 シリルが呼吸を止めないように頑張ったおかげで、いつしかエディフェルドの指が三本入るまでに後孔が柔らかくなった。

 指の動きは滑らかであり、シリルのナカを掻き混ぜるたび、グチュッ、ヌチュッと潤滑油が湿った音を立てている。

 その淫靡な音がシリルの羞恥心を煽るものの、一度たりともやめてほしいとは思わなかった。

「は、あ……ん、ルド、ルド……」

 嬌声の合間に呼ばれる己の名前は、なんと甘美なものだろうか。それだけで果ててしまいそうだと、エディフェルドは苦笑を零す。

 実際、彼に余裕はなかった。

 シリルの表情が、声が、しぐさが、とにかく可愛くて、色っぽくて、エディフェルドの性器も陰嚢もパンパンに張り詰めている。

 

――できれば、前立腺も弄ってあげたかったんだけどな。



 エディフェルドは苦く笑う。

 性器で得られる快感以上のものが味わえるという話だが、今のエディフェルドでは、下手をすると、シリルのナカに挿入するよりも早く果ててしまいそうな状況だ。

 

――それは、次でいいか。僕たちは、この先、一生、共に過ごすからね。時間はたっぷりある。



 短く息を吐いたエディフェルドは、ソロリと指を引き抜いた。

 そして腹筋に付きそうなほどそそり立っている己の性器に潤滑油を垂らすと、その先端をヒクヒクと収縮している後孔に宛がう。

「シリル」

 呼びかければ、シリルはさまよわせていた視線をエディフェルドに向けた。

「ルド……」 

 喘ぎ過ぎによる少し枯れた声で恋人の名前を呼ぶシリルは、嬉しそうに笑っている。

 その顔を見て、エディフェルドの胸に熱いものがこみ上げてきた。



――諦めないでよかった……。



 泣きそうになりながらもどうにか微笑みを浮かべたエディフェルドは、「入れるね」という囁きと共に、腰をグッと突き出した。







 体格と身長に見合ってのものなのか、エディフェルドの性器はかなり立派だ。 

 そのため、受け入れる側のシリルの眉間には深いシワが刻まれている。

「う、く……」

 彼の口からは呻き声のようなものが零れた。

 それでも、シリルは必死に呼吸を繰り返す。少しでも体の力が抜けるように、と。

 シリルの健気な様子が、エディフェルドの胸を幸福感で満たす。

 頬が緩みっぱなしであることを自覚しながら、エディフェルドは小刻みに腰を前後させる。

 ヌプッ、ヌプッと小さな水音が繰り返されるうちに、エディフェルドの性器は半分ほど埋まった。

 ここでいったん動きを止め、エディフェルドはシリルの様子を窺う。

 眉間のシワはいくぶん浅くなり、シリルの口からは呻き声ではなく吐息交じりの嬌声が零れていた。

 エディフェルドが小さく笑うと、シリルがオズオズと視線を向けてくる。

「ルド……、ぜんぶ、はいった?」

 まるで八年前のように、シリルの口調がたどたどしい。初めて味わう快感に思考が追い付いていないのだろう。

 もしくは、エディフェルドにすっかり心を開いたからかもしれない。意地を張ることも、無理に男らしく振舞うこともしなくていいのだと。

 そんなシリルの様子がエディフェルドの庇護欲をそそり、愛情が爆発する。

「シリル、可愛い……、本当に可愛い。シリル、愛してる」

 想いのままに告げるエディフェルドに、シリルがコクンと頷き返す。

「ルド、だいすき……」

 同じように「愛してる」とは言ってもらえなかったが、むしろこのほうがシリルらしいし、猛烈に可愛い。

 これ以上は大きくならないと思われたエディフェルドの性器が、シリルの愛らしさに刺激されてググッと肥大した。

 それに気付いたシリルが、ハッと目を開く。

「ルド……、おおきく、なった……。まだ、ぜんぶ、はいってない?」

 彼の言葉に、エディフェルドは眉尻を下げて笑う。

「うん、今は半分くらいかな」

「はんぶん……」

 シリルの目がさらに大きく開かれる。

「怖い? だったら、慣れるまでもう少しこのままでいようか」

 正直、爆発寸前まで追い詰められているエディフェルドの性器だが、そこは愛情と根性で耐える所存だ。 

 努めて優しい声をかけると、シリルは首を横に振った。

「こわくない……。はやく、ルドのぜんぶをかんじたい……」

 こちらを熱っぽく見つめてくる視線に、エディフェルドは先に進むことが正解だと悟る。

 同じくらい熱のこもった視線を返したエディフェルドの腰が、ふたたび動き始めた。







「あ、あぅ……、ルドが……、おくに、いる……、んんっ」

 無事にエディフェルドの性器の太さに慣れたことで、シリルの最奥が何度も何度も突き上げられていた。

 時折眉根が寄せられるものの、シリルの口からは苦し気な呻き声が零れることはない。

 代わりに、甘くて可愛らしい喘ぎ声が、ひっきりなしに響いている。

 エディフェルドは愛しくてたまらない恋人の恥態を笑顔で眺めながら、なおも激しく腰を振った。

 エディフェルドの性器がシリルのナカを前後することで、二人が繋がっている部分からはグチュッ、グチュッといういやらしい水音が聞こえてくる。

 その音にシリルの嬌声が重なると、室内に漂う淫靡な空気が濃度を増した。



――これは、やめ時が分からないな。



 性欲旺盛な十八歳であること。

 長年、想いを寄せていた相手と恋人になれたこと。

 その恋人が舌っ足らずな声で「もっと……」とねだってくること。

 どれもがエディフェルドの欲情を煽り続け、長大な性器はいっこうに萎えそうにない。

 また、射精したところで、すぐさま復活することが容易に想像できる。

 エディフェルドはシリル同様に性的な経験がなく――知識だけは、やたら豊富だが――、己の性器の限界が分からないものの、あと三回は射精できる気がしていた。



――そんなに、シリルは付き合ってくれるかな?



 受け手側の負担は攻め手側よりもはるかに大きいのだと本で知識を得たエディフェルドは、シリルの体が心配になる。

 幼い頃から騎士を目指していたシリルはそれなりに鍛えているらしいが、母親に似た華奢な体格だ。長時間エディフェルドに抱かれることは、正直、厳しいだろう。



――でも、ヘタに手加減したら、「馬鹿にするな!」って言われるかもしれないしね。



 唇を尖らせてふてくされるシリルの姿を思い浮かべ、エディフェルドは僅かに苦笑する。

 翌朝、シリルが動けないのであれば、自分がとことん世話を焼いてやろうと、エディフェルドは考えた。

 もとより、シリルにかまいたくて仕方がないエディフェルドだ。恋人という立ち位置を手に入れた今、正々堂々と世話を焼くことができるのだ。



――動けないシリルを抱っこしてお風呂に入れたり、スプーンが持てないくらい疲れているシリルにご飯を食べさせたり……。うん、楽しいことばかりだ。



 ニンマリと口角を上げたエディフェルドは、自分の欲情がある程度収まるまで、シリルを抱き続けることを決めた。



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