その香り。その瞳。

京 みやこ

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(194)SIDE:奏太

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 寝室内が甘い空気に包まれる。

 とはいえ、僕が発情期になった時ほど濃厚な香りではない。

 だからこそ、過剰な快楽に溺れることなく、自分の意思を持って斗輝を求めることができるだろう。

 そして、斗輝に抱かれていることを、より実感できるだろう。

 僕たちはしばらく見つめ合って、微笑みを交わし合って、またキスをした。

 今度のキスは、斗輝が遠慮を取っ払ったもので、深くて激しい。

 まともに息ができないくらい容赦のないキスだったけれど、今はその苦しささえも嬉しく感じていた。



 斗輝はキスを繰り返しながら、僕が纏っていたバスローブをはだけさせた。

 いつもならお風呂上りはパジャマか、あるいはTシャツとスウェットのズボンといった格好をするけれど、今夜は僕も斗輝もフワフワのタオル地でできたバスローブ姿だった。

 きっと、すぐ脱がすためなのだろう。



――でも、それなら裸でよかったんじゃないかな?



 お風呂場でさんざん愛撫を仕掛けられ、腰が立たない状態にされたのだ。

 そのあとの展開は鈍感な僕だって予想が付いていたし、彼に抱かれることを僕自身も望んでいた。

 それなのに、二人ともバスローブ姿なのはどうしてなのだろうか。

 気になったので、僕の首筋に唇を這わせている彼の名前を呼んだ。

「斗輝……」

 呼ばれた彼は、すぐに顔を上げる。

「どうした?具合が悪くなったのか?」

 心配そうにこちらを窺っている彼に、僕はフニャリと頬を緩める。

「いいえ、体調には問題ありません。どうしてバスローブ姿なのかって、気になったんですよ」

「どうしてって……」

 一瞬言葉に詰まった彼に、僕は続けて話しかけた。

「だって、斗輝は僕を抱くつもりだったんでしょう?僕だって、もちろん抱かれるつもりでした。だから、わざわざバスローブを着なくてもよかったんじゃないかと」

 僕が恥ずかしがり屋だから、いくら脱衣所から寝室までの短い距離とはいえ裸で移動するのは困る……と、彼が判断した可能性がないとは言えない。

 でも、それとは違う気がする。

「斗輝」

 黙ってしまった彼の名前をもう一度読んだら、キリッとした形のいい眉がほんの少し下がった。

「それは……、一応、牽制として……」

 ボソリと呟く彼に、僕はクスッと小さく笑いかける。

「僕のためということですよね?」

「そうだ。少しでも奏太の様子がおかしかったら踏み留まれるように、あえてバスローブを着させて、俺も着たんだよ。二人とも全裸だと、自制できる自信がなくてな」

 困り顔で告げる彼の黒髪を、僕は両手でクシャクシャと掻き混ぜた。

「相変わらず、斗輝は優しいですね。……さてと、疑問が解けたことですし」

 彼の髪から手を外し、僕は自分が着ているバスローブの襟を大きく引っ張ってさらにはだけさせる。

 中にTシャツを着ていなかったので、斗輝の眼前には僕の胸元が披露された。

 平坦で面白みのない上半身だと僕は思っているけれど、彼の目には違って映るはずである。

「斗輝」

 甘えるような声で彼の名前を呼ぶと、斗輝がコクリと喉を鳴らす。

「俺がするよりも、奏太自身がはだけさせると、何倍も色っぽい……」

 惚れた欲目。痘痕あばたも靨えくぼ。相変わらず、斗輝の瞳には不思議なフィルターがかかっているようだ。

 彼の言葉に気恥ずかしさを感じながら、僕は斗輝が纏っているバスローブへと手を伸ばした。

 そして、同様のタオル地でできているベルトを解く。

 ハラリと身ごろがはだけ、逞しい上半身が現れる。



 すでに半分ほど勃ち上がっている彼のペニスも現れた。

 僕もバスローブの下は全裸だ。予想は付いていたから、それほどビックリしなかった。

 広い肩にバスローブを緩く引っかけただけの姿は、ものすごく色気に溢れている。

 僕のお腹の奥が、改めてキュンキュンと疼く。



――早く、斗輝に抱かれたい……。一つになりたい……。



 僕はそんなことを心の中で呟きながら、自分の腰に巻かれているバスローブのベルトを解いた。





 

 二人とも全裸になると、仰向けになっている僕に斗輝が覆い被さるようにして僕をすっぽりと腕の中に抱き込んだ。

 僕はジッと大人しくしているけれど、彼の首元に顔を埋めてスンスンと甘い香りを吸い込んでいる。

 お腹の奥で感じる疼きが強くなった気がする。

 だけど、まだ意識が飛ぶほど溺れてはいない。

 彼の香りを堪能していると、斗輝の右手がゆっくりと僕の背骨を伝って下がっていく。

 そして、彼の手は双丘の間を割り、僕の後孔に到達した。

 いつもの彼だったらキスのあとに僕の乳首をたっぷり弄り、上半身のあちこちにキスマークを散らし、僕のペニスを口と手で愛撫するというのが定番のパターンだ。

 キスはしたものの、いきなり後孔に触れてきたことは、今までになかった。

 発情期ではないけれど、後孔は分泌液でうっすらと濡れている。

 滲んだ分泌液をなじませるように、クルクルと指先で小さな円を描きながら、斗輝が口を開く。



「早く、奏太と繋がりたい」



 初めて、そんなことを言われた。

 僕を気持ちよくさせることが使命だと言わんばかりにじっくり愛撫を仕掛けてくる彼にしては、かなり珍しい。

 でも、それが僕には嬉しかった。

 コクンと頷き返し、フニャリと頬を緩める。

「さっき、僕も早く抱かれたいって思いました。僕たち、気が合いますね」



 僕だけではなく、斗輝だけでもない。

 二人ともがお互いに相手を求めている。

 それはすごく幸せなことだと、胸の奥がフワリと温かいもので満たされる。



 そのあとは斗輝の指が僕の後孔に挿入され、手早く解されていく。

 どうにか彼の指を三本呑み込むことができるようになると、斗輝は僕の脚を左右に大きく広げ、いつの間にか完全に勃っていたペニスの先端を後孔に宛がった。

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