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五章
リンの街と冒険者4
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突然の提案に少し戸惑っていると老人が慌てたように話し出す。
「すまんすまん、いきなりすぎたな。儂の名前はエッジ。この街で槍術の指南をして生活してるものでな。君の動きはあまり見たことがなかったものだからつい話しかけてしまってな」
「それなら良かった…てっきり何かしてしまったのかと…。あ、俺の名前はゴートと言います。一応七級冒険者です!槍については殆ど自己流なのであまり見れたものではないと思いますが…」
「ゴート君か、改めてよろしく」
「こちらこそこの町には来たばかりなのでよろしくお願いします、エッジさん」
「それにしても自己流か。確かに普通と槍よりも短い得物を使っているようだし、何か拘りでも有るのかね?」
「拘りという訳ではないんですけど、俺弓や魔法がかなり苦手で…。それで自分に合った遠距離攻撃の方法を模索していく内に投槍や投擲に行き着いてって感じです。それに職業柄森に入ることが多かったんですがこの長さが支障が少ないギリギリの長さというのもあったので」
「成る程。あくまでも槍は一手段という訳か。儂には未知の世界だがそれならあの動きも納得だ」
エッジさんに声をかけられた時は少し戸惑ったが、いざ話してみると槍術に関心を持った気の良い人で内心安心した。
「だがその槍を用いての対人戦の経験はあまり無いのではないか?」
急に図星を突かれた。
事実俺は冒険者になってからの対人戦の経験はあまり多くはない。時折先輩冒険者と模擬戦をする事はあってもお互い次の日に仕事が控えているため軽く打ち合う程度だったのだ。
「え…。た、確かにそうですけど、どうしてそんなことあっさりわかったんですか?」
動きを見られていたとはいえエッジさんは弟子に教えながらだし、そもそもそこまで長い間見られていた訳でもないはずだ。
エッジさんはまるでいたずら小僧のようなニシシという言葉が似合うような笑顔を見せて語る。
「なに、儂も伊達に長年対人槍術を教えている訳ではないのでな。ゴート君の動きに対人想定の動きがあまり無いことはすぐ分かったし、距離の取り方や振りが完全に人のそれでは無かったから直ぐに分かったさ」
ほんの数分動きを見ただけでここまで見抜かれるとは。老練な使い手というものは独特の怖さがあるものだ。
「仰る通りです。何分人と闘う機会も無かったもので…」
何故だろうか言い訳してる自分が少し恥ずかしいな。
「その若さで七級冒険者ならば日々依頼をこなしていたということだろうし、恥ずべき事ではないさ」
恥ずかしがっていた事までバレている。
老人恐るべし。
「それなら寧ろ良い機会じゃないか、どうだい手合せ?」
これは対人戦の経験を積むまたとない機会だ。さっきはいきなり声をかけられたから驚いてしまったが、ここは是非ともお願いするべきだろう。
「エッジさん、未熟者ですが手合せお願いします!」
「よしきた!あっちの棚に色んな長さの模擬戦用の槍が有るから好きなのを取ってきてくれ。取り敢えず最初は投槍は無しで純粋に打ち合おうか」
エッジさんは説明をするや否や訓練場の中央へ向かって行った。本当に鍛練が好きなのだろう。俺も負けてられない。
「わかりました!取ってきます」
「よろしくお願いします!」
「何処からでもかかって来なさい」
先程までの朗らかな雰囲気が一変する。
エッジさんから強烈なプレッシャーがひしひしと伝わってくる。
呑まれないよう腹に力を込め深呼吸をしエッジさんと相対する。
エッジさんの槍はオーソドックスな物とはいえこっちの槍よりはリーチが長い。
手合せで見合っていても意味がない。距離を詰めなければ。
突きを警戒し半身になりジリジリと間合いを詰め、槍同士をぶつけながら接近するために踏み込もうとしたその一瞬。
腕への衝撃と同時に飛び退く。
「武器を落とさないとはゴート君も中々やるじゃないか!」
嬉々とした顔で仕切り直そうとするエッジさん。
「さあ、どんどんいこう!」
自分でも頬がひきつるのがわかった。
「すまんすまん、いきなりすぎたな。儂の名前はエッジ。この街で槍術の指南をして生活してるものでな。君の動きはあまり見たことがなかったものだからつい話しかけてしまってな」
「それなら良かった…てっきり何かしてしまったのかと…。あ、俺の名前はゴートと言います。一応七級冒険者です!槍については殆ど自己流なのであまり見れたものではないと思いますが…」
「ゴート君か、改めてよろしく」
「こちらこそこの町には来たばかりなのでよろしくお願いします、エッジさん」
「それにしても自己流か。確かに普通と槍よりも短い得物を使っているようだし、何か拘りでも有るのかね?」
「拘りという訳ではないんですけど、俺弓や魔法がかなり苦手で…。それで自分に合った遠距離攻撃の方法を模索していく内に投槍や投擲に行き着いてって感じです。それに職業柄森に入ることが多かったんですがこの長さが支障が少ないギリギリの長さというのもあったので」
「成る程。あくまでも槍は一手段という訳か。儂には未知の世界だがそれならあの動きも納得だ」
エッジさんに声をかけられた時は少し戸惑ったが、いざ話してみると槍術に関心を持った気の良い人で内心安心した。
「だがその槍を用いての対人戦の経験はあまり無いのではないか?」
急に図星を突かれた。
事実俺は冒険者になってからの対人戦の経験はあまり多くはない。時折先輩冒険者と模擬戦をする事はあってもお互い次の日に仕事が控えているため軽く打ち合う程度だったのだ。
「え…。た、確かにそうですけど、どうしてそんなことあっさりわかったんですか?」
動きを見られていたとはいえエッジさんは弟子に教えながらだし、そもそもそこまで長い間見られていた訳でもないはずだ。
エッジさんはまるでいたずら小僧のようなニシシという言葉が似合うような笑顔を見せて語る。
「なに、儂も伊達に長年対人槍術を教えている訳ではないのでな。ゴート君の動きに対人想定の動きがあまり無いことはすぐ分かったし、距離の取り方や振りが完全に人のそれでは無かったから直ぐに分かったさ」
ほんの数分動きを見ただけでここまで見抜かれるとは。老練な使い手というものは独特の怖さがあるものだ。
「仰る通りです。何分人と闘う機会も無かったもので…」
何故だろうか言い訳してる自分が少し恥ずかしいな。
「その若さで七級冒険者ならば日々依頼をこなしていたということだろうし、恥ずべき事ではないさ」
恥ずかしがっていた事までバレている。
老人恐るべし。
「それなら寧ろ良い機会じゃないか、どうだい手合せ?」
これは対人戦の経験を積むまたとない機会だ。さっきはいきなり声をかけられたから驚いてしまったが、ここは是非ともお願いするべきだろう。
「エッジさん、未熟者ですが手合せお願いします!」
「よしきた!あっちの棚に色んな長さの模擬戦用の槍が有るから好きなのを取ってきてくれ。取り敢えず最初は投槍は無しで純粋に打ち合おうか」
エッジさんは説明をするや否や訓練場の中央へ向かって行った。本当に鍛練が好きなのだろう。俺も負けてられない。
「わかりました!取ってきます」
「よろしくお願いします!」
「何処からでもかかって来なさい」
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エッジさんから強烈なプレッシャーがひしひしと伝わってくる。
呑まれないよう腹に力を込め深呼吸をしエッジさんと相対する。
エッジさんの槍はオーソドックスな物とはいえこっちの槍よりはリーチが長い。
手合せで見合っていても意味がない。距離を詰めなければ。
突きを警戒し半身になりジリジリと間合いを詰め、槍同士をぶつけながら接近するために踏み込もうとしたその一瞬。
腕への衝撃と同時に飛び退く。
「武器を落とさないとはゴート君も中々やるじゃないか!」
嬉々とした顔で仕切り直そうとするエッジさん。
「さあ、どんどんいこう!」
自分でも頬がひきつるのがわかった。
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