冒険者ゴートの一生

ケバブ

文字の大きさ
上 下
27 / 60
二章

セカの街の下級冒険者10

しおりを挟む
鍛冶屋黒鉄で武器について相談してから一週間。俺は武器を買うべく、リーフさんの農園の警備やネルさんの所の荷運び、再び依頼が出ていた薬草採取等毎日依頼をこなしていた。幸い武器を使うような場面はなかった。

朝食にバーガーを食べ黒鉄へ。ようやく武器を買える。足取りも自然と軽くなる。

「おはようございます。ケニーさん武器を買いに来ました!」

「ゴート君いらっしゃい。この前言っていたように、投げ槍にも使えるような短槍が欲しいのかい?」

「はい。穂と接続部分だけ金属でお願いします。全体が金属製の武器は俺には色んな意味で早いと思うので」

「体つきを見ると使えなくは無さそうだけど、確かに安い買い物ではないし重い槍は扱いが難しいから技術が無いと動きも単調になっちゃうしね。そこに柄に使う木がたくさん有るから使いやすい太さを選んで。長さは後で調節するから。代金は二万エルになるけど大丈夫かい?」

ケニーさんに代金について大丈夫と伝えるた後、何本かの中から丁度良い太さの木を選び渡す。

「それじゃあ穂を付けるんだけど、長さとか形状とか望みはあるかい?」

「わからないことも多いので一番標準的なものでお願いします」

「了解。問題がないようなら早速作業にはいるよ。そうだ、少し時間もかかるしそこに全体が金属製の槍の見本品があるから庭で振ってみるかい?」

「良いんですか!?」

「今の自分にどのくらい使えるのか知るのも大事だし、俺にとっても商品の宣伝チャンスだしね」

ケニーさんの笑顔が眩しい。金髪に整った顔、人当たりも良いときた。凄く魅力的な人だ。

「是非!よろしくお願いします!」

庭は店の入り口を出てすぐそこにあり、その場で武器を振るうには十分な広さがあった。
改めて手元の槍を見る。全体が金属製ではあるものの柄の部分には薄い布のようなものが巻いてある。普段使っている短槍とは違い自分の身長ほどの長さだ。
まずは片手で持ってみる。かなりの重量感だ。真ん中付近を持てば片手でも振れるかなといった程度か。続き両手で確りとした構え、振っていく。真上からの振り落ろしから始まり十字とその間を割くように振り、最後に突き。講習で習った武器の基本的振り方だ。何度か一通りの振り方をした後に少しだけ実践を意識した動きに移行する。武器は振らずに飛んだり跳ねたり、思い切り伏せての回避等色々な動きを試した。

「良く動けてるじゃないか」

気がついたらそれなりに時間が経っていたのかケニーさんが庭に来ていた。

「すいません夢中になってしまって」

「冒険者のお客さんなら良くあることさ。それよりもゴート君、動きを見ると金属製の槍でも大丈夫そうだと思うけど、そっちは考えていないのかい」

「基本的な動きは大丈夫そうなんですけどね。俺は槍を片手で持ちながら何かを投擲したり、木に登ったりと色んな動きをするんで少なくともこの長さの槍は厳しそうです。それどころか明確に武器が決まってないんですよね。短槍はいずれ金属製にするとは思いますが」

「なるほどね。でも七級になったら魔獣討伐も依頼に入ってくるし、そういう武器も揃えないと厳しと思うよ」

「そうですよねえ。今度組合で相談してみようかと思います」

「それが良いかも知れないね。じゃあ槍も出来てるし行こうか」


ケニーさんと一緒に店内に戻り槍を受けとる。穂が金属で出来ている上、柄も丈夫だ。

「ケニーさん良い感じです!」

感謝を伝えつつ二万エルを支払う。

「こちらこそお買い上げありがとうざいます。またなにか武器が欲しいときはよろしくね。武器の相談とかでも良いからさ」

「その時はよろしくお願いします。ありがとうございました」


黒鉄を出て直ぐ様南の森へ向かい、新しい槍での投擲の練習や動作確認を行ったあと、改めて自分の格好を確認する。一見作業着に見えるがしっかりとした防具。今日手に入れた短槍に水の魔道具。

まだまだ足りないものも多いけど、ようやく冒険者らしくなったかな。
少しずつではあるけど、冒険者として確実に一歩一歩進んでいることが実感できる日となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

食の使徒 素人だけど使徒に選ばれちゃいました。癒しの食事を貴方に 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝
ファンタジー
八戸 樹 は平凡な人生に幕を閉じた。    だが樹には強い一つの願望があった。    誰かの為になりたい、人の為に生きたい、日本人として日本人の為に、そう思って生きていても人生とは、そうそううまくいく事もなく、死ぬ最後の時まで自分は誰かの?国の?国民の?為に生きれたのだろうか?と疑問が残る様な人生だった。    そのまま魂が消え終わるかと思われた時に、女神様が現れ、異世界に使徒として転生してほしいと言われる。    使徒として転生してほしい世界では、地球の様に食事や調理法が豊かではなく、また今一進化の兆しも見えない為、樹を使徒として異世界に送り込みたいと、樹は自分は料理人じゃないし、食事も自分で自炊する程度の能力しかないと伝えるが、異世界に送り込めるほど清い魂は樹しかいないので他に選択肢がないと、樹が素人なのも考慮して様々なチートを授け、加護などによるバックアップもするので、お願いだから異世界にいってほしいと女神様は言う。    こんな自分が誰かの為になれるのならと、今度こそ人の役に立つ人間、人生を歩めるように、素人神の使徒、樹は異世界の大地に立つ

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

処理中です...