23 / 60
二章
セカの街の下級冒険者6
しおりを挟む
「今日は寝坊かゴート?」
「今日は依頼はお休み。色々買い出しとかする日なんだ。あ、おまかせで」
普段より二時間ほど遅いから寝坊と思われたみたいだ。まあ確かにゆっくり寝てたけども。財布からおやっさんに五百エル渡す。最近バーガーはおまかせで頼んでいる。おっちゃんが五百エルの範囲でその日仕入れた具材に合わせて作ってくれるのだ。これが毎朝の楽しみになっている。
今日のバーガーは豚肉と葉野菜がたっぷりだ。うまい。
朝食もそこそこに魔道具店シーラへと向かう。グスタフさんの紹介状もあるし特に問題は無いはずだけど、初めて行くお店はやっぱり少し緊張する。
魔道具店シーラはそこそこ大きい二階建てのお店だった。少なくともこの前行った戦闘用魔道具の店よりは確実に大きい。
いつまでも入り口に居ても仕方がない、店へとはいる。
「いらっしゃいませー」
中にはいると店員の挨拶が聞こえる。
売り場には二人店員がいて、奥に会計だろうかもう一人座っていた。
何はともあれ紹介状を渡さなければと思い、近くの店員に声をかけ、紹介状を渡す。すると奥の会計に居る者に渡していただけますとと、促され言われた通りその店員に渡す。店員は紹介状を読み終えこちらを向いた。
「ゴート様。当店を選んで頂きありがとうございます。本日担当のキストと申します。よろしくお願いします」
「キストさん、こちらこそよろしくお願いします。魔道具については素人なので色々教えてください。あ、あともう少し気軽な感じになりませんかね?少し緊張してしまって。あと様付けはやめて貰えると助かります」
グスタフさんの時もそうだったが畏まられるとこっちも緊張してしまう。あと様付けは何だか背中がぞわぞわする。
「かしこまりました。ゴートさんとお呼びしますね。確認ですが本日は水の魔道具を購入したいということで間違い無いですか?」
「はい。値段にもよりますけど」
「では早速ですが、紹介状にある条件を満たすような魔道具を持ってきますね」
そういうとキストさんは店の奥から何個かの魔道具を持ってきてくれた。
「まずこれが基本の水筒型です。形も普通の水筒とほぼ同じですし、値段も二万からで一番お手頃なものですね。次が深皿型とでもいいましょうか水筒型と比べ横に大きく縦に短いのが特徴です。最後が細筒型で前二種類と比べ値段が高いです、細長く場所も余り取りませんが出力が低めですね。そして三種類共通で出力を上げたものと、より頑丈にしているものがありますね。また値段が上がれば上がるほど性能は良くなっていきます」
「凄いですね…。正直こんなに沢山種類が有るとは思いませんでした」
想像以上の充実具合に正直驚いているし、どれにしようか迷う。
「ありがとうございます。当店の場合基礎となる魔道具が値段毎に有り、そこにお客様の要望に沿いながら出力向上、強度向上の加工を施す仕組みとなっております。なので最初は沢山種類があるように思うかもしれませんが、実際はそうでもないのですよ。現に私達の店舗では小型化は出来ませんしね。ある程度高級な店や凄腕の職人がいる店はそれこそオーダーメイドや小型化、極度の特化型等様々な加工が出来ますから。この分お値段の方もそれ相応になりますが」
凄い世界だ。今の自分には到底理解出来ない世界だ。この店の品揃えでも悩んでるのに、これ以上選択肢が増えても追い付かなそうだ。
さて、どの種類を選ぶかだが実はもう決まっている。
やはり三種類の中で一番場所が取らない細筒型だろう。多少値段が張っても持ち運びに便利なのが一番だ。強度向上の加工もしてもらった方が良いかな。
「細筒型で強度向上の加工をしたものにしようかと考えてます」
「細筒型ですと三万エルと四万五千エルの商品がありますね。強度向上加工は一律二千エル、装填用の魔石は初回は無料で次回から交換に五千エルかかります。といっても水の魔道具は毎日大量の水を使わない限り一ヶ月は確実に持ちますし、飲み水用なら二ヶ月以上持つことも多いですよ。魔石の交換は水の出が悪くなってきたら交換して頂ければよろしいかと」
「四万五千エルの方で強度向上加工もお願いします」
五万エル以下なら買うと決めていたので購入を決めた。
冒険者になって一番大きな買い物に緊張したのか心臓がうるさい。
「ご購入ありがとうございます。それでしたら在庫に有りますので直ぐにお渡し出来ます。少々お待ち下さい」
キストさんが持ってきた魔道具は普段使っている水筒と同じくらいの長さで二回り細い。これなら荷物にもなりにくいし、泊まりの依頼も大丈夫だ。
キストさんに四万七千エル支払う。そういえば整備について聞いていなかった。
「そういえばどのくらいの頻度で整備すればいいんですかね?」
「一応三ヶ月に一回が目安ですが、冒険者の皆様には二ヶ月に一回をお勧めしています。職業柄どうしても負荷がかかりやすいですから」
「わかりました。二ヶ月を目処に整備に出したいと思います。キストさん、今日はありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそお買い上げありがとうございました。またのご来店をお待ちしておりますよ」
キストさんに見送られながら店を出る。
これで遠くの採取依頼や夜通しの警備依頼も安心だ。
午後時間が余っていたのでヨギ草の採取依頼を受けた。時間的に二袋が限界だったけど半日の成果としては十分だ。また森のなかで魔道具を試してみた。魔道具を持ちやや固いフックを引っ張ると筒の空洞になっている部分に水が貯まっていく。数秒でコップ一杯分位かな。今までのことを考えると凄まじい進化だ。何より周りを警戒したまま出来るのが良い。満足のいく魔道具だ。
部屋に戻って財布をみる。手持ちは一万六千エル。
家賃の支払いはまだかなり先とはいえ如何せん心許ない。
明日からは稼がないと。余裕はあんまり無いんだけど魔道具を見るとついつい笑顔になってしまう。自分の魔道具を持つっていう夢の一つがかなったのだ。
魔道具を枕元に置いて床にはいる。今日は良い夢が見れそうだ。
「今日は依頼はお休み。色々買い出しとかする日なんだ。あ、おまかせで」
普段より二時間ほど遅いから寝坊と思われたみたいだ。まあ確かにゆっくり寝てたけども。財布からおやっさんに五百エル渡す。最近バーガーはおまかせで頼んでいる。おっちゃんが五百エルの範囲でその日仕入れた具材に合わせて作ってくれるのだ。これが毎朝の楽しみになっている。
今日のバーガーは豚肉と葉野菜がたっぷりだ。うまい。
朝食もそこそこに魔道具店シーラへと向かう。グスタフさんの紹介状もあるし特に問題は無いはずだけど、初めて行くお店はやっぱり少し緊張する。
魔道具店シーラはそこそこ大きい二階建てのお店だった。少なくともこの前行った戦闘用魔道具の店よりは確実に大きい。
いつまでも入り口に居ても仕方がない、店へとはいる。
「いらっしゃいませー」
中にはいると店員の挨拶が聞こえる。
売り場には二人店員がいて、奥に会計だろうかもう一人座っていた。
何はともあれ紹介状を渡さなければと思い、近くの店員に声をかけ、紹介状を渡す。すると奥の会計に居る者に渡していただけますとと、促され言われた通りその店員に渡す。店員は紹介状を読み終えこちらを向いた。
「ゴート様。当店を選んで頂きありがとうございます。本日担当のキストと申します。よろしくお願いします」
「キストさん、こちらこそよろしくお願いします。魔道具については素人なので色々教えてください。あ、あともう少し気軽な感じになりませんかね?少し緊張してしまって。あと様付けはやめて貰えると助かります」
グスタフさんの時もそうだったが畏まられるとこっちも緊張してしまう。あと様付けは何だか背中がぞわぞわする。
「かしこまりました。ゴートさんとお呼びしますね。確認ですが本日は水の魔道具を購入したいということで間違い無いですか?」
「はい。値段にもよりますけど」
「では早速ですが、紹介状にある条件を満たすような魔道具を持ってきますね」
そういうとキストさんは店の奥から何個かの魔道具を持ってきてくれた。
「まずこれが基本の水筒型です。形も普通の水筒とほぼ同じですし、値段も二万からで一番お手頃なものですね。次が深皿型とでもいいましょうか水筒型と比べ横に大きく縦に短いのが特徴です。最後が細筒型で前二種類と比べ値段が高いです、細長く場所も余り取りませんが出力が低めですね。そして三種類共通で出力を上げたものと、より頑丈にしているものがありますね。また値段が上がれば上がるほど性能は良くなっていきます」
「凄いですね…。正直こんなに沢山種類が有るとは思いませんでした」
想像以上の充実具合に正直驚いているし、どれにしようか迷う。
「ありがとうございます。当店の場合基礎となる魔道具が値段毎に有り、そこにお客様の要望に沿いながら出力向上、強度向上の加工を施す仕組みとなっております。なので最初は沢山種類があるように思うかもしれませんが、実際はそうでもないのですよ。現に私達の店舗では小型化は出来ませんしね。ある程度高級な店や凄腕の職人がいる店はそれこそオーダーメイドや小型化、極度の特化型等様々な加工が出来ますから。この分お値段の方もそれ相応になりますが」
凄い世界だ。今の自分には到底理解出来ない世界だ。この店の品揃えでも悩んでるのに、これ以上選択肢が増えても追い付かなそうだ。
さて、どの種類を選ぶかだが実はもう決まっている。
やはり三種類の中で一番場所が取らない細筒型だろう。多少値段が張っても持ち運びに便利なのが一番だ。強度向上の加工もしてもらった方が良いかな。
「細筒型で強度向上の加工をしたものにしようかと考えてます」
「細筒型ですと三万エルと四万五千エルの商品がありますね。強度向上加工は一律二千エル、装填用の魔石は初回は無料で次回から交換に五千エルかかります。といっても水の魔道具は毎日大量の水を使わない限り一ヶ月は確実に持ちますし、飲み水用なら二ヶ月以上持つことも多いですよ。魔石の交換は水の出が悪くなってきたら交換して頂ければよろしいかと」
「四万五千エルの方で強度向上加工もお願いします」
五万エル以下なら買うと決めていたので購入を決めた。
冒険者になって一番大きな買い物に緊張したのか心臓がうるさい。
「ご購入ありがとうございます。それでしたら在庫に有りますので直ぐにお渡し出来ます。少々お待ち下さい」
キストさんが持ってきた魔道具は普段使っている水筒と同じくらいの長さで二回り細い。これなら荷物にもなりにくいし、泊まりの依頼も大丈夫だ。
キストさんに四万七千エル支払う。そういえば整備について聞いていなかった。
「そういえばどのくらいの頻度で整備すればいいんですかね?」
「一応三ヶ月に一回が目安ですが、冒険者の皆様には二ヶ月に一回をお勧めしています。職業柄どうしても負荷がかかりやすいですから」
「わかりました。二ヶ月を目処に整備に出したいと思います。キストさん、今日はありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそお買い上げありがとうございました。またのご来店をお待ちしておりますよ」
キストさんに見送られながら店を出る。
これで遠くの採取依頼や夜通しの警備依頼も安心だ。
午後時間が余っていたのでヨギ草の採取依頼を受けた。時間的に二袋が限界だったけど半日の成果としては十分だ。また森のなかで魔道具を試してみた。魔道具を持ちやや固いフックを引っ張ると筒の空洞になっている部分に水が貯まっていく。数秒でコップ一杯分位かな。今までのことを考えると凄まじい進化だ。何より周りを警戒したまま出来るのが良い。満足のいく魔道具だ。
部屋に戻って財布をみる。手持ちは一万六千エル。
家賃の支払いはまだかなり先とはいえ如何せん心許ない。
明日からは稼がないと。余裕はあんまり無いんだけど魔道具を見るとついつい笑顔になってしまう。自分の魔道具を持つっていう夢の一つがかなったのだ。
魔道具を枕元に置いて床にはいる。今日は良い夢が見れそうだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる