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妖怪正月 中
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「いやぁ。やっぱり昼間っから人の家で飲む酒は味が違うなあ。そう思わねえか?五徳猫よぉ?」
「はぁ。さいですニャ」
猫又の一種、妖怪五徳猫はセーラー服姿の少女にぐうの音も出なかった。何しろ本人は自分は日本に数人しかいない特級の退魔師であると公言し並々ならぬ気迫を放っている。例え方便だとしても敵いそうな相手ではない事を五徳猫は本能で悟っていた。
「なんだよ、つれねえ返事じゃねえか。おうおとろし。おめえもそんなところで不景気な顔してないで、こっち来てオレの肘掛けになってくれよ」
「ぬーうー」
おとろしは部屋の隅で縮こまりカタカタと震えながら怯えている。
「顔は生まれつきだと申しておりますニャ」
「ちげえねえ!ガッハッハッハ!」
「あのぅ……」
豪快に笑う少女の傍らで、なんともやり切れないという表情をした妖怪「あか舐め」が酒を注がされている。彼の名は舐め太郎といった。
「姉さん、おいらもう帰って良いですか?親方も心配してるだろうし」
あか舐めは風呂場に出る妖怪で髪の長い少年の様な見た目をしてる。舐め太郎はかつてこの家の主人、御手洗十三に救ってもらって以来、義理堅く何かにつけて挨拶に来ているのだった。
「仕事も残ってるんで……」
舐め太郎は「寿湯」と書かれた紺色の半纏を着ていた。彼はこの御手洗家と同じ町内にある銭湯に下働きをしながら居候していた。
「なんだぁ?酒持って挨拶に来たのはお前だろうが。いいからもちっとホラ、注げ」
少女はぐい呑みを舐め太郎に向かって差し出す。舐め太郎は気落ちした顔で徳利を傾ける。
「舐めよ、お前も災ニャんですニャ」
「五徳さん、落語じゃないんだから」
話は一時間ほど前に遡る。
高級玉露とカステラをがぶがぶやりながら我がもの顔で振る舞っていた少女だったが、夕暮れになっても十三が帰らないので、そろそろ暇をしようかと腰を上げた時だった。
「こんちゃー!あけましておめでとうございます!」
威勢の良い少年のような声が玄関から聞こえた。少女から解放されるとぬか喜びしていた面々はこれでまた頭を抱えた。
声の主は先述した通り「あか舐め」の舐め太郎。寿湯の主人に言われて年賀の挨拶に特級酒を持って来たのが彼の運の尽きだった。帰ろうとした少女は一升瓶を見てやおら表情を変えた。
「そういう事ならもう少しだけ待つとするか」
ということになり現在に至る。果たして飲んでいい年齢なのか?ということはさておき、少女は五徳猫に寿司の出前を取らせ、再び炬燵に陣取り酒を煽り始めた。
「おいら、十三さんにお酒を持ってきたのにコレじゃ親方に叱られますぅ」
涙目の舐め太郎に少女は豪快に笑って応える。
「アイツは下戸だよ。こんないい酒だって料理に使いかねない。無駄無駄。こうしてオレが飲んでやる方が酒も浮かばれるってもんよ」
こうなっては八方塞がりだと言わんばかりに五徳猫たちは天を仰いでいた。
「しかしお前らは無芸だな。せっかくの良い酒が味気なくなるぜ。おい五徳猫、テレビをつけろ」
「はあ」
五徳猫がリモコンでテレビを着けると、先ほど彼が見ようとしていた白黒の映画が静止画面のまま映し出された。
「おぉ、小津安二郎じゃねえか。これは東京物語だな」
「おや!姉さん!もしかして小津ファンですかニャ?」
五徳猫はこれは好機とばかりに少女に詰め寄る。少女が映画に釘付けになれば、その隙に外へ抜け出して十三の帰りを何処かで待てばいい。そう考えた。
「まあな。しかしなあ。オレは東京物語より『お茶漬けの味』が好きなんだよ。おい、コレ変えられねえのか?」
「ニャんですと?」
少女の発言に五徳猫が表情を変えた。
「『東京物語』は爺さん婆さんの話だろ?なんか線香臭くてなあ。オレは断然、『お茶漬けの味』なんだよ」
「線香臭い、ですとニャ?」
五徳猫は肩を震わせて立ち上がり、持っていた煙管を構えた。
「なんのつもりだ五徳?」
少女は眉ひとつ動かさずに言った。
「訂正を要求しますニャ。『東京物語』こそ小津映画の最高傑作。異論は受け付けませんニャ」
「お前に許可してもらう必要はないぜ。オレが『お茶漬けの味』が一番だと言ったら一番なんだよ」
「ここは譲れませんニャ」
「妖怪ごときが人間様の映画を語るんじゃねえよ」
少女も言葉に五徳猫は毛を逆立てた。
「芸術に感動する心に、種族は関係ありませんニャ」
「あんまり盾突くなよ。消すぞ?」
少女は肩に担いでいた棒状の包みを解こうとあうる。彼女の指が真っ赤な紐に触れた途端、凶々しい気配は部屋中に立ち込める。
「うへえ、なんだいコリャ。おいら気持ち悪いよ」
「ぬうぅぅぅ」
おとろしと舐め太郎は肩を寄せ合って隅で震えてしまっていた。五徳猫は目を真っ赤に充血させながらなんとかその場に立っているという状態であった。
「なんという…重圧」
「おいおい。まだ封印を解いてないのにその有り様かよ。悪いことは言わねえ。この黄金丸をオレに抜かせるなよ」
正に一触即発という状況であった。このまま時間が経てば明らかに自分に不利であると五徳猫は悟っていた。しかし彼にはどうしても譲れぬ想いがあり、今ここでひいてしまうことでその気持ちを裏切ってしまう様な気がしていた。
少女の指はゆっくりと紐を解き、それがハラリと地面に落ちる。その瞬間にまた重圧が増した。もう立っていられない。危うく意識を失いそうになったその時であった。
「何やってだ?お前ら」
怪訝な顔で襖を開けて現れたのはこの家の主人、御手洗十三であった。
「ぬーっ!」
「十三さーん!」
おとろしと舐め太郎が十三に駆け寄る。いつの間にか重圧は消え失せ、少女は再び炬燵で猪口を傾けていた。
「た、助かったですニャ」
五徳猫はへなへなとその場にへたり込んでしまった。
「おいおい。なんで俺の留守に寿司なんかとってんだよ。うわ、酒臭っ」
「十三さん!大変だったんですよ!五徳さんとこの子が喧嘩を!」
「舐め太郎、なんでウチにいるんだ?寿湯はいいのか?今日は正月営業で忙しいんだろ?」
「あ!そうでした!」
今年もよろしく!とだけ言い捨て舐め太郎は帰って行った。
「何だったんだアイツ?おい!お前ら、ちゃんと片付けろ。酷い散らかりようじゃないか。うわ、来客用のカステラまで食いやがって。おいドラ猫!」
「十三さん、申し訳ないですニャ」
張り合いのない五徳猫に呆れた十三はため息をつき、そしてようやく少女の方に向き直った。
「で?こんなとこで正月早々何してんだ?」
この時、五徳猫とおとろしは今更ながらこの少女と十三がどんな関係か知らなかったことを思い出した。
「納得いく説明をしろ。姉貴」
「ぬー!?」
「姉貴とニャ!?」
十三の言葉に少女はただニヤリと微笑んだ。
続く
「はぁ。さいですニャ」
猫又の一種、妖怪五徳猫はセーラー服姿の少女にぐうの音も出なかった。何しろ本人は自分は日本に数人しかいない特級の退魔師であると公言し並々ならぬ気迫を放っている。例え方便だとしても敵いそうな相手ではない事を五徳猫は本能で悟っていた。
「なんだよ、つれねえ返事じゃねえか。おうおとろし。おめえもそんなところで不景気な顔してないで、こっち来てオレの肘掛けになってくれよ」
「ぬーうー」
おとろしは部屋の隅で縮こまりカタカタと震えながら怯えている。
「顔は生まれつきだと申しておりますニャ」
「ちげえねえ!ガッハッハッハ!」
「あのぅ……」
豪快に笑う少女の傍らで、なんともやり切れないという表情をした妖怪「あか舐め」が酒を注がされている。彼の名は舐め太郎といった。
「姉さん、おいらもう帰って良いですか?親方も心配してるだろうし」
あか舐めは風呂場に出る妖怪で髪の長い少年の様な見た目をしてる。舐め太郎はかつてこの家の主人、御手洗十三に救ってもらって以来、義理堅く何かにつけて挨拶に来ているのだった。
「仕事も残ってるんで……」
舐め太郎は「寿湯」と書かれた紺色の半纏を着ていた。彼はこの御手洗家と同じ町内にある銭湯に下働きをしながら居候していた。
「なんだぁ?酒持って挨拶に来たのはお前だろうが。いいからもちっとホラ、注げ」
少女はぐい呑みを舐め太郎に向かって差し出す。舐め太郎は気落ちした顔で徳利を傾ける。
「舐めよ、お前も災ニャんですニャ」
「五徳さん、落語じゃないんだから」
話は一時間ほど前に遡る。
高級玉露とカステラをがぶがぶやりながら我がもの顔で振る舞っていた少女だったが、夕暮れになっても十三が帰らないので、そろそろ暇をしようかと腰を上げた時だった。
「こんちゃー!あけましておめでとうございます!」
威勢の良い少年のような声が玄関から聞こえた。少女から解放されるとぬか喜びしていた面々はこれでまた頭を抱えた。
声の主は先述した通り「あか舐め」の舐め太郎。寿湯の主人に言われて年賀の挨拶に特級酒を持って来たのが彼の運の尽きだった。帰ろうとした少女は一升瓶を見てやおら表情を変えた。
「そういう事ならもう少しだけ待つとするか」
ということになり現在に至る。果たして飲んでいい年齢なのか?ということはさておき、少女は五徳猫に寿司の出前を取らせ、再び炬燵に陣取り酒を煽り始めた。
「おいら、十三さんにお酒を持ってきたのにコレじゃ親方に叱られますぅ」
涙目の舐め太郎に少女は豪快に笑って応える。
「アイツは下戸だよ。こんないい酒だって料理に使いかねない。無駄無駄。こうしてオレが飲んでやる方が酒も浮かばれるってもんよ」
こうなっては八方塞がりだと言わんばかりに五徳猫たちは天を仰いでいた。
「しかしお前らは無芸だな。せっかくの良い酒が味気なくなるぜ。おい五徳猫、テレビをつけろ」
「はあ」
五徳猫がリモコンでテレビを着けると、先ほど彼が見ようとしていた白黒の映画が静止画面のまま映し出された。
「おぉ、小津安二郎じゃねえか。これは東京物語だな」
「おや!姉さん!もしかして小津ファンですかニャ?」
五徳猫はこれは好機とばかりに少女に詰め寄る。少女が映画に釘付けになれば、その隙に外へ抜け出して十三の帰りを何処かで待てばいい。そう考えた。
「まあな。しかしなあ。オレは東京物語より『お茶漬けの味』が好きなんだよ。おい、コレ変えられねえのか?」
「ニャんですと?」
少女の発言に五徳猫が表情を変えた。
「『東京物語』は爺さん婆さんの話だろ?なんか線香臭くてなあ。オレは断然、『お茶漬けの味』なんだよ」
「線香臭い、ですとニャ?」
五徳猫は肩を震わせて立ち上がり、持っていた煙管を構えた。
「なんのつもりだ五徳?」
少女は眉ひとつ動かさずに言った。
「訂正を要求しますニャ。『東京物語』こそ小津映画の最高傑作。異論は受け付けませんニャ」
「お前に許可してもらう必要はないぜ。オレが『お茶漬けの味』が一番だと言ったら一番なんだよ」
「ここは譲れませんニャ」
「妖怪ごときが人間様の映画を語るんじゃねえよ」
少女も言葉に五徳猫は毛を逆立てた。
「芸術に感動する心に、種族は関係ありませんニャ」
「あんまり盾突くなよ。消すぞ?」
少女は肩に担いでいた棒状の包みを解こうとあうる。彼女の指が真っ赤な紐に触れた途端、凶々しい気配は部屋中に立ち込める。
「うへえ、なんだいコリャ。おいら気持ち悪いよ」
「ぬうぅぅぅ」
おとろしと舐め太郎は肩を寄せ合って隅で震えてしまっていた。五徳猫は目を真っ赤に充血させながらなんとかその場に立っているという状態であった。
「なんという…重圧」
「おいおい。まだ封印を解いてないのにその有り様かよ。悪いことは言わねえ。この黄金丸をオレに抜かせるなよ」
正に一触即発という状況であった。このまま時間が経てば明らかに自分に不利であると五徳猫は悟っていた。しかし彼にはどうしても譲れぬ想いがあり、今ここでひいてしまうことでその気持ちを裏切ってしまう様な気がしていた。
少女の指はゆっくりと紐を解き、それがハラリと地面に落ちる。その瞬間にまた重圧が増した。もう立っていられない。危うく意識を失いそうになったその時であった。
「何やってだ?お前ら」
怪訝な顔で襖を開けて現れたのはこの家の主人、御手洗十三であった。
「ぬーっ!」
「十三さーん!」
おとろしと舐め太郎が十三に駆け寄る。いつの間にか重圧は消え失せ、少女は再び炬燵で猪口を傾けていた。
「た、助かったですニャ」
五徳猫はへなへなとその場にへたり込んでしまった。
「おいおい。なんで俺の留守に寿司なんかとってんだよ。うわ、酒臭っ」
「十三さん!大変だったんですよ!五徳さんとこの子が喧嘩を!」
「舐め太郎、なんでウチにいるんだ?寿湯はいいのか?今日は正月営業で忙しいんだろ?」
「あ!そうでした!」
今年もよろしく!とだけ言い捨て舐め太郎は帰って行った。
「何だったんだアイツ?おい!お前ら、ちゃんと片付けろ。酷い散らかりようじゃないか。うわ、来客用のカステラまで食いやがって。おいドラ猫!」
「十三さん、申し訳ないですニャ」
張り合いのない五徳猫に呆れた十三はため息をつき、そしてようやく少女の方に向き直った。
「で?こんなとこで正月早々何してんだ?」
この時、五徳猫とおとろしは今更ながらこの少女と十三がどんな関係か知らなかったことを思い出した。
「納得いく説明をしろ。姉貴」
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続く
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