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クリスマス、郵便局は戦場だった(ロンド郵便局の話)4の後の話

3、クリスマス、郵便局は戦場だった(連行編)

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「何だあ?ヘリか?」

「近くに降りたの?何でー??」

なんだろ?あれ軍用ヘリだな。近くで作戦かな?まあ、俺には関係ねーし。

ケーキを1個食べて、もう一個に手を伸ばす。
今度はチョコだ。
パクッと食べると、口の中で外掛けのチョコがトロ~ンと溶けて

「うっ、美味~い。

やっぱ、チョコのケーキが最高だろ。
残りあとで食うか、先に食うか。いや、やっぱ食いっぱぐれねえように先に食うぜ!」

「それが~正解だと思いますぜ~総隊~」

ハッと、ケーキ頬張った顔を上げた。
デッドとジャッジが、ドアからドカドカ歩いて来る。

「うっ!」

「ほら、やっぱり忘れてたーーーーー!!」

ペコペコ局長に頭下げるジャッジを置いて、ズカズカ歩み寄るデッドに、俺は慌ててチョコのケーキを口に押し込み、チョコケーキとホワイトスノーのケーキの皿を持ってダッと奥の事務所に逃げ込んだ。

「逃げた!」「総隊が逃げた!追え!」

ドアをどんどん叩かれながら、俺はケーキを口に押し込み記憶を遡(たど)り探(さぐ)ってゆく。

あれ?何か約束してたっけ?
めちゃクソ忙しくて綺麗に忘れてるぞ。


『  あさってヘリで迎えに行きますからね! 』


「むぐううーーーーー!!」(思い出したああああ)

クソッ、クソッ!
あいつ夜かけ直すって言ったじゃないか!
かけてこなかったから、ナシだと思ってた!

ドンドンドンドン!!

「サトミー、出てこないとショットガンでぶち破りますぜー!」

何でこんな薄っぺらのパーティションのドアにショットガンなんだよ!馬鹿かっ!

「むぐむぐむぐー!」(食い終わるまで待て!)

「あー、じゃあ何分待てばいいんですかー」

「んー、むぐむぐ、むぐー!」(そうだな、5分、いや10分!)

「わかりました、ケーキ食い終わったら出てきてくださいよ!
もう、こっち話付けておきますから!」

「むぐむぐー」(よし、頼む)

クルリと、デッドが振り返る。
ジャッジが怪訝な顔でデッドに聞いた。

「お前なんで何言ってるかわかるわけ?」

「そりゃ、もちろん。  愛  だなっ!!」


「 ぶふうっ!! 」


サトミが薄いドア向こうで、思いきりケーキ吹きだした。
勿体ないので、拾って食う。

結局逃げられるはずも無く、俺は妹とベンをみんなに頼んで、ヘリまで強制的に連行されて第一師団へと向かうことになってしまった。

あああああああ!!俺はっ!俺のクリスマスはっ!


「あーあ、ほら口拭いて、ケーキのカスいっぱい付いてますぜ」

ヘリに乗ろうとすると、デッドが気持ち悪いほどかいがいしく俺の口を拭くので、ハンカチ奪い取って自分で拭いた。
そのハンカチ返そうとして、奴のニヤけた顔にポケットに入れる。

「ハンカチ返してくださいよー」

「これは燃やして捨てる」

「ちぇっ、間接キッスしようと思ったのに」

「やっぱり下心満載じゃねえか。そうは行くか!気持ち悪ィ奴!
そう言うことはミサトに言え!」

「あっ!そ、それはデスね、ミサトちゃんには、どうかご内密に。
あー、終わったらチョコ送ります。チョコレート!」

デッドが揉み手で焦り出す。

「チョコかー、さっき食ったなー」

「えっ、あっ!そう言えば、1区のギリーに新しく菓子屋が出来たんすよ。
そこの砂糖がけのクッキーがクソ甘くて食えたもんじゃないって話し聞いたんですけど~
送ります」

「よし、俺の口は鉄のように硬い、安心しろ」

はあ~ッと、デッドがそっぽ向いてため息漏らす。
まあ、こいつもミサトに本当に惚れてるのかは不明だ。
俺の気を引きたいだけかも知れねえ。
まあ、それでもこいつの心が満たされてるなら、それでいいや。

「戦闘服持ってきました。中で着替えますか?」

「ちぇっ、仕方ねえ。お前見るなよ!」

「あーハイハイ、どこのお嬢様ですか」

ジャッジが気を利かせて機内の後部にシートでカーテン作ってくれる。
デッドは変態だから、マジで怖い。

あーこれで年明けまでミッションかよ。
まあ、ケーキ食ったからいいや。

だいたいクリスマスってガラじゃねえし。
聖歌歌うのもかったるい。

つか、郵便局にとって、クリスマスは戦場だろ。
楽しいクリスマスは老後の楽しみに取っとくさ。

「機内で到着まで概要説明します!」

「よし、話せ!」

サトミの顔が軍人に切り替わり、ジャケットを着るとヘッドセットを付ける。
デッドがニイッと笑う。

俺は、その瞬間タナトスの総隊長に切り替わった。

ヘリが暗闇の中で、闇に溶け込むように飛んで行く。
窓から見るメレテはどこもかしこも暗くって、暗闇の中、上か下かがわからなくなる。
この国は相変わらず貧しくて、戦後の貧しさをただただ引きずりながら、それでも独裁者の消えたこの国で、みんな自由だけが宝石のような財産だった。
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