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戦時の中(ガイドとリッターの出会い)

4,戦時の中 アタッカーの誇りを思い出せ! 終わり

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リッターの、ポストアタッカー修行が始まった。
ひょろっとして、見た目心許ないのは強盗に狙われやすい。
リードと相談して、2,3週間はガイドに同行させて様子見ようとなっている。

そして、何度目かの荒野渡り、帰りの途中でゲリラと政府軍の戦闘が始まった。
郵便局は、ひと目でわかるように荷物も馬着もジャケットも郵便のマークが入っている。
それでも、撃ってる奴らはお構いなしだ。

ガイドがしばし、スピードを落として様子を見る。
リッターが、その後に続く。
ガイドはリッターを庇うように戦場側に並び、リッターに声を上げた。

「戦況を見ろ!ゲリラの近くは通るな!政府軍の後ろだ!装甲車は機銃積んでる。機銃の向きを見ろ!後ろを通れ、装甲車盾にしろ!」

「えっと、えっと、向こうからあっち、撃って……違う、敵は向こうの窪地に隠れてる。」

装甲車から、兵が一人腕を出して後ろを通れと指示する。
ガイドが、小さく手を上げて走り出した。

「遠回りでもいいから、少し離れた場所を行くぞ。こっちだ!付いてこい!
敵は窪地から撃ってるだろ?弾道は離れるほど上へ行く。ただ、100%安全じゃ無い、覚悟決めろ!行くぞ!」

「はい!」

「頭を低く、早馬で突っ切る!」

ピュン!ピュン!

それでも、低い弾は飛んでくる。


「クソッたれ!当たるなーーっ!!」


パシッパシッ


荷物に2発当たったが、立ち止まらず走る!

振り返ると、リッターは焦る様子もなく追いかけてくる。
ゲリラ育ちか、度胸がある!負けてられない!

そうしてようやく銃撃戦を抜けて走っていると、脇の岩場から3人の男達が馬の疲れを期待してか追ってきた。
今度は強盗か!

「強盗だ、リッター!右に走れ、左右に分かれる!」

「了解!」

タタタンッ!タタタンッ!

撃ってくる奴らの分散を狙い二手に分かれた。
ガイドに一人、リッターに二人追って行く。

「チッ!てめえらガキ狙ってんじゃねえよ!」

M590、ショットガンを取り、フォアエンド引いて片手で狙う。
と、撃ってきた。
馬を右に流し、荷物を盾に撃つ。

バンッ!

「ぎゃっ!」

散弾が何発か当たったのか、男が落馬した。

リッターは馬を左右に振って、そしてハンドガンで応戦している。
が、当たらない。

ガイドは彼らを追って、左から強盗に銃を向けた。

バンッ!バンッ!

後ろの一人が馬ごと倒れ、もう一人に狙いを向けたとき、リッターが手綱を放して両手でショットガンを構え、そして、撃った。

バンッ!

「ギャッ!」

強盗に命中して、馬ごとその場に倒れていく。

「あれ?!落ちたか?!リッター!」

気がつくと、リッターが馬上から消えた。
いや、良く見ると、彼は馬の右側に落ちそうになっている。
身体をねじっての射撃で、銃の反動を上手く吸収出来ず、銃に跳ね飛ばされたのだろう。
馬具の片側を引っ張られ、馬は興奮して走り続けていた。

「マズい!落ちたら死ぬ!」

ガイドはリッターの馬を追いかけ、併走すると手綱に手を伸ばす。

「たっ、助けてガイド!落ちる!!」

「落ち着け!落ちるなよ!リッター!」

「くそ!くっそーーー!!鼻痛え!足痛え!手も痛え!くっそーーー!!」

リッターは必死で片足を馬具に引っかけたまま、しがみついてぶら下がっている。
見上げたことに、銃は死んでも離さないらしい。

「どう!どう!止まれ!」

ようやく手綱に手が届き、引いて落ち着かせた。
ガイドが馬を下りて、彼に手を貸し、馬から下ろす。
片足、アブミに引っかかったまま、ぶら下がっていた。よく落ちなかったと思う。

「どうだ?ケガは?無事か?」

彼はしばらく呆然として、銃をその場にガチャンと落としてガイドに顔を上げた。

「助かった……ああ……すげえ……すげえ!ビックリした!死ぬかと思った!でも、死ななかった!良かった!!」

髪振り乱して、真っ赤な顔して叫ぶと、後ろにバタンと倒れた。
大の字になって、手足をばたつかせる。

「くっそおおおおーーー!!こわかったあああああ!!!」

なんだか仕草が子供らしくて可愛い。
これが素のリッターかと、おかしくなった。

「ぷっ、あははははは!!」

ガイドが大笑いすると、リッターが飛び起きる。

「俺も片手で撃てるようにならなきゃ!
ガイド!教えてくれよ!」

おや?よそよそしかった言葉が、弾けたようにリッターらしくなった。

「さあなー、お前もっと腕力鍛えないとな。
銃に負けてちゃ仕事にならねえ。」

「クソ!全くだ!俺は鍛えるぞ!セシリー!」

空に向かって、大声で宣言する。

ガイドが、笑った自分にハッとした。

あれ?足が、足の痛みが、そう言えば消えている。
あんなに痛かったのに、こいつ見てたらいつの間にか消えていた。

リッターの目が、イキイキしている。
自分も釣られて、生き返った気がした。

「フフ・・・お前、盗賊相手が初めてにしちゃ上出来だ。落ち着いて対応出来たのは100点だな。
まあ、ぶら下がったのは今夜の酒のつまみだ。」

「ひでえ!リナと話のネタにするんだな!ひでえ!」

「話のネタにされたくなければ、もっとがんばれ!」

「おう!でも俺、ちゃんと荷物守れた!くそー、今度はもっと上手くやるぞ!」

ピョンと元気に立ち上がり、馬を撫でてねぎらっている。
なんだろう、見てるととても元気になれる。

「よし、ロンドまでもう少しだ。帰ろう。そして、ポリスに連絡しなきゃな。」

「あいつら死んじゃったかな。」

「さあな、生きてても重症だろうよ。」

「殺さなくても済むように……早く平和になればいいのに。」

「いつの日かなるさ。」

「うん!」

馬も落ち着いて、早足でロンドへ向かう。
リッターが明るく笑って、そして、荷物を大事そうにポンポン叩く。
荷物を守った喜びと、これはなんだろう。

仕事に対する意気、情熱。

俺は、死んでいたようになっていた。
仕事が、その意味も忘れて、ただ苦痛になっていたんだ。

そうだ…………リナに昔言った言葉を思い出した。

『俺は、死ぬためにポストアタッカーやってるんじゃない。
みんなの、生きる糧を届けるんだ。自分が生きるために。』

ほんとに、キザなこと言ったよなあ!リナにいいとこ見せようってさ!
リナ、あれを覚えてたのか、早く忘れてくれよ!

青い空を仰いで笑った。
リッターが、俺に沢山のことを教えてくれる。思い出させてくれる。

「ありがとうな!」

リッターに声を上げると、笑って親指を立てた。

やがて独り立ちしたリッターは…………
その後、個人的な怨みもあってか盗賊達に容赦ない事から、彼らからはたいそう嫌われ者のポストアタッカーとして恐れられた。

戦争は、結局いつまでもその座にすがりつくこの国の大統領が、翌年側近に暗殺され、ようやく終わりを告げる。
軍上層部は暗殺と粛清の嵐の中、保守穏健派が政権を握ることとなり、ゲリラも一掃されてこの国は発展に一歩を踏み出して行く。

その裏で、サトミ達のような軍の掃除屋が暗躍していたことは、国民が知るよしはなかった。
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