最弱召喚士:練習で召喚したら出て来たのは『魔王』でした

もかめ

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第五章:「大陸到着」

閑話その4 「食事中の出来事」

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 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 喧騒響き渡る店の中、これはバルバラと2人で食事を取っていた時だ。

 相も変わらず、美味しそうに、そして口に運び入れ、噛む度に幸せそうな表情を浮かべて、食べるバルバラを見て、少し疑問に思った。

 普段から好き嫌いの無いバルバラだが、一番好きな食べ物は何だろうか。

「バルバラ?」

「ふふっ、どうした?」

「バルバラが一番好きな食べ物はあるのか?」

 口に運び入れる前に、俺が話を始めた為、料理を載せたスプーンを持つ手が、バルバラの口の寸前で止まった。

「ふふっ、そうだな…今まで食べさせてくれた料理はどれも美味しかったが…これと言って1番は決め兼ねる」

 そう言って、俺に微笑むと、止めていた手を動かし、口の中に料理を運び入れた。

「そうなのか」

「ふふっ、一つだけ言える事があるぞ」

「一体なんだ?」

俺のに、 バルバラは微笑みながら口元を拭い、そのを教えてくれた。

「ふふっ、サモンと食べる料理ならどんなものでも美味しい…それだけだ」

 そう言って、飲みかけのグラスを手に取り、残っていた飲み物を全て飲み干していった。

「あっ、え?そ、そうなのか」

 思いも寄らないバルバラの言葉に、自分の頬が紅潮していくのが分かった。

 だが、ここで照れてしまっては、またバルバラにからかわれるのは容易に想像出来る。

 俺は顔に出さない様に、咄嗟に途中だった、料理を頬張った。

 ここはなるべく頬張った方が良いだろう。
顔に出なければ、どうと言う事は無い。

それに頬が膨らんでいては、流石のバルバラも表情を伺え無いだろう。

「ふふっ…サ、サモン…くっ…アッハハハハ!」

 飲み干したグラスを置くと共に、俺と視線が合ったバルバラからは、堪えきれずに漏れる様に出たのは、今まで聞いたことの無い大笑いだ。

一体どうしたんだ!?
何も笑われる様な事は…

俺は突然の出来事に驚き、大声で笑うバルバラをただ見つめる事しか出来ない。

「どうしたんだ!?」

「ふふっ、いや…ふっ、サ、サモンが余りにも口に頬張って居たから…凄く膨らんで…ふふっ、と、とてもをするんだな…ふふっ」

 余程、俺の表情が面白かったのだろう。会話の合間にも、堪えきれない笑い声が混じり、話すのに必死の様だ。

 そんなバルバラは、話終えると、笑い過ぎたせいでなみだが出たのだろう、目元を拭った。

「ふふっ、サモン…ふっ、突然その様な変顔は辞めてくれないか?い、今思い返しただけでも、また笑い出しそうだ。ふふっ」

俺の思っていた考えは、違う方向に逸れ、また、逸れた先でバルバラにからかわれた。

「いや…別に変顔をするつもりだった訳では…」

「ふふっ、そうだったのか?だが、とても面白かったぞ?ふふっ…良いのを見せてくれてありがとう。ふふっ」

「えっ?あ、いや…良いんだ…」

 微妙に違う様な気がするが…この感覚はなんだろうか…
あらぬ方向に進み、からかわれた挙句、そのままの状態で話が、進んで行ってしまってる…それにあれだけ笑われると流石に恥ずかしくなってきた。

そんなに俺は変な顔をしていたのか…

いや、俺はただ食べ物を頬張っただけでは…

「ふふっ、サモン?」

「どうした?」

「ふふっ、顔が?」

「え?そ、そうか?」

「ふふっ、相変わらず顔に出て、紅くなっている顔は何度見ても、とても愛おしく感じる」

「や、やめてくれ!恥ずかしいではないか!」

「ふふっ、可愛らしい奴め」

そう言ってバルバラは俺に微笑んだ。

 結果的には、こうしてからかわれるんだな…
寧ろ、逸れた先の事も含めたら、からかわれてしまっているのでは…?

でも、あれだけバルバラが笑ったのは初めて見たな…

「ふっ」

そんな事を思うと、自然と俺もバルバラに微笑んでいた。
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