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第五章:「大陸到着」
閑話その4 「食事中の出来事」
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喧騒響き渡る店の中、これはバルバラと2人で食事を取っていた時だ。
相も変わらず、美味しそうに、そして口に運び入れ、噛む度に幸せそうな表情を浮かべて、食べるバルバラを見て、少し疑問に思った。
普段から好き嫌いの無いバルバラだが、一番好きな食べ物は何だろうか。
「バルバラ?」
「ふふっ、どうした?」
「バルバラが一番好きな食べ物はあるのか?」
口に運び入れる前に、俺が話を始めた為、料理を載せたスプーンを持つ手が、バルバラの口の寸前で止まった。
「ふふっ、そうだな…今まで食べさせてくれた料理はどれも美味しかったが…これと言って1番は決め兼ねる」
そう言って、俺に微笑むと、止めていた手を動かし、口の中に料理を運び入れた。
「そうなのか」
「ふふっ、だが一つだけ言える事があるぞ」
「一体なんだ?」
俺の問いに、 バルバラは微笑みながら口元を拭い、その答えを教えてくれた。
「ふふっ、サモンと食べる料理ならどんなものでも美味しい…それだけだ」
そう言って、飲みかけのグラスを手に取り、残っていた飲み物を全て飲み干していった。
「あっ、え?そ、そうなのか」
思いも寄らないバルバラの言葉に、自分の頬が紅潮していくのが分かった。
だが、ここで照れてしまっては、またバルバラにからかわれるのは容易に想像出来る。
俺は顔に出さない様に、咄嗟に途中だった、料理を頬張った。
ここはなるべく頬張った方が良いだろう。
顔に出なければ、どうと言う事は無い。
それに頬が膨らんでいては、流石のバルバラも表情を伺え無いだろう。
「ふふっ…サ、サモン…くっ…アッハハハハ!」
飲み干したグラスを置くと共に、俺と視線が合ったバルバラからは、堪えきれずに漏れる様に出たのは、今まで聞いたことの無い大笑いだ。
一体どうしたんだ!?
何も笑われる様な事は…
俺は突然の出来事に驚き、大声で笑うバルバラをただ見つめる事しか出来ない。
「どうしたんだ!?」
「ふふっ、いや…ふっ、サ、サモンが余りにも口に頬張って居たから…凄く膨らんで…ふふっ、と、とても凄い表情をするんだな…ふふっ」
余程、俺の表情が面白かったのだろう。会話の合間にも、堪えきれない笑い声が混じり、話すのに必死の様だ。
そんなバルバラは、話終えると、笑い過ぎたせいで泪が出たのだろう、目元を拭った。
「ふふっ、サモン…ふっ、突然その様な変顔は辞めてくれないか?い、今思い返しただけでも、また笑い出しそうだ。ふふっ」
俺の思っていた考えは、違う方向に逸れ、また、逸れた先でバルバラにからかわれた。
「いや…別に変顔をするつもりだった訳では…」
「ふふっ、そうだったのか?だが、とても面白かったぞ?ふふっ…良いのを見せてくれてありがとう。ふふっ」
「えっ?あ、いや…良いんだ…」
微妙に違う様な気がするが…この感覚はなんだろうか…
あらぬ方向に進み、からかわれた挙句、そのままの状態で話が、進んで行ってしまってる…それにあれだけ笑われると流石に恥ずかしくなってきた。
そんなに俺は変な顔をしていたのか…
いや、俺はただ食べ物を頬張っただけでは…
「ふふっ、サモン?」
「どうした?」
「ふふっ、顔が紅いぞ?」
「え?そ、そうか?」
「ふふっ、相変わらず顔に出て、紅くなっている顔は何度見ても、とても愛おしく感じる」
「や、やめてくれ!恥ずかしいではないか!」
「ふふっ、可愛らしい奴め」
そう言ってバルバラは俺に微笑んだ。
結果的には、こうしてからかわれるんだな…
寧ろ、逸れた先の事も含めたら、倍からかわれてしまっているのでは…?
でも、あれだけバルバラが笑ったのは初めて見たな…
「ふっ」
そんな事を思うと、自然と俺もバルバラに微笑んでいた。
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