最弱召喚士:練習で召喚したら出て来たのは『魔王』でした

もかめ

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第五章:「大陸到着」

第77話 「銀髪の姉妹」

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◇◆◇◆◇◆◇


 とある豪華な屋敷の部屋の中、椅子に腰を掛けた女性に話し掛けている数人の男性達が居る。

「貴方しか頼める方は居ません…あの者共を放っていたら、甚大な被害が…」

「……」

「どうかお願いします…」

「……あまり気乗りはしないが…一応問うておこう…何か情報などは?」

「…そ、それは…ですが魔王と共に『銀髪』の青年が居たと言うのは分かっています!」

「…ふむ、その特徴は私が耳にした話と、何ら相違ない…それに…本音を言えば、君達の争い事戦争に巻き込まないで欲しい。もし、仮に君達の為に介在をすれば、沼に沈むかの様にズルズルと嵌ってゆくものだ…」

「…で、ですがお願いします!そこをどうか!これは平和の為の戦いです!魔王などをそのままにしておけば、人類にも危機が!」

 緊張の為か、懇願する男性は額に汗を浮かべ、頭を深く下げた。
 それに合わせるように、残りの男性達も咄嗟に頭を下げた。

「ふっ…平和の為の戦い…ね?」

「はい!それに私達が討伐をしようとしても、不可能なのです…あの者共の力は強く、到底私達だけでは…なのでこうして貴方様…『エヒト家』のお力を借りるしか無いのです!」

「……済まないが考えさせてくれ」

 明眸皓歯めいぼうこうしの銀髪の女性は、終始表情を変えず、耳に髪を掛け、少し首を傾げると、男性達にそう伝えた。

「はい…分かりました」

 女性の返事を聞き、男性達はお辞儀をすると、重厚な扉を開け、部屋を後にした。

 男性達が去ったのを確認すると、グラスに入った液体を口に含み、味わう様にして飲み込む。

「…居るのは分かっている。今の会話、『ロサ』はどう思う?」

 扉を開け、僅かな隙間から覗いていたもう一人の女性は、少し驚いた表情を浮かべたのも刹那、部屋に入って来た。

「バレてしまいましたか…んー、私はリサお姉様のお考えにお任せ致します…ですが、私達が首を突っ込んで何の得があるのでしょうか?」

 そう言って、妹は銀髪をなびかせながら、姉である向かい側に腰を掛けた。

「ふっ、そうだな…何の得など得る事など出来まい…だが、のもまた、事実…」

「…確かにそうですが…」

「…恐らく銀髪の青年と言うのは、オラクロ家では無いか?」

「…私もそう思います…で名を馳せて居る…」

「ふっ、この国の方に手を貸すつもりは無いが…には――」

「「一戦を交えたい一戦を交えたい?」」

 姉妹故か、まるで見透かした様に、そして息の合った妹の言葉に、姉は薄い笑みを浮かべた。

また妹も、姉の表情を見て、微かに微笑んだ。

「ふっ…流石、私の妹だな…」

「えぇ、お姉様の言葉など手に取る様に分かります…」

「…だが、少し疑問に思う点もある…何故オラクロ家の人間が、大陸を越えてまで来たのだろうか…それも魔王を引き連れ…」

姉である彼女はそう言うと、足を組み替えた。

「…確かに気にはなりますね…何か目的があるのでは?」

 妹も何か考えを出そうとしているのだろう。
顎に手を添え、難しい表情を浮かべた。

「ふむ…オラクロ家の人間…魔王…まぁ、良い…そろそろが来る頃だろう…」

「流石お姉様です!もう既に先手を打っておいた訳ですね!」

「ふっ…あぁ、『噂』の段階でな」

すると、ドアの叩く音が部屋に木霊した。
2人とも同じ様に返事をし、来客者を部屋に招き入れる。

「開いている…入っても良いぞ…」

「失礼致します…」

 姉妹は、部屋に入って来た一人の男性に視線を向けた。
 男性は、扉の前に立ったまま、微動だにせず、真っ直ぐと姉妹を見据えている。

「……それで、アーベル…何か掴んだのか?」

「…はい、どうやらリサ様の推測通り、名門のオラクロ家の様です…」

「そうか…オラクロ家の者は、何か目的があって来ているのか?」

「どうやら『塔』が目的の様です…その為、色々と詮索をしている様ですが、私達が思って居る程、情報を掴んでいなく、私に塔について聞いて来ました…」

「ほう…それで、教えたのか?」

「えぇ…塔の噂…それに幻の『101階』の事も…」

「相手はなんと?」

「いえ…こちら側まで、深く詮索されては困りますので、先に姿を消させて頂きました…ですが、リサ様の通り、相手方には忠告をさせて頂きました…として…それに…魔王につきましては、相手方は契約召喚までしております…」

「ふっ…そうか…」

 姉は納得したかの様な笑みを浮かべると、手に持っていたグラスを置き、呟くように囁いた。

「ふっ、流石はオラクロ家だな…」

「お姉様…少し愚問になるかと思われますが宜しいでしょうか?」

「ん?何だ?」

「名を馳せる名門のオラクロ家…お姉様から見ればどれ程の実力なのでしょうか…?」

「ふっ、そうだな…召喚士と言う職種を切り開いた…とでも言おうか…実際、オラクロ家の人間は、想像も出来ぬ程強かった…あらゆる魔物を召喚し、その数は、数え切れない…それと共に、妹であるお前が本を読み、暗記し、召喚する…そのやり方を普及させた…とでも言おうか…」

「それ程の実力なら…なぜ故、隣の大陸に?」

「……ロサ様、それは大昔の大戦にまで遡ります…彼らオラクロ家を含む人達は、戦火を免れる様に移り住みました。こちら側の大陸では、普及はしておりましたが、隣の大陸は、今ほど召喚士は普及しておりませんでした…」

「そうだったのですね…」

「えぇ…逃れる人達も居れば、留まる人達も居る…私達『エヒト家』の様に…そうだ、アーベル。魔王の実力はどれ程だ?」

「はい、魔王につきましては、かなりの実力をお持ちかと…実際、国境沿いの時の小競り合いも、両軍かなりの軍勢を追い払いました…共にしている青年も、信じられぬ程の実力を持っております…」

「…そうか…この国が危険視するのも分からんでも無いな…アーベル、ありがとう」

 礼を言われたアーベルは、深々と頭を下げ、姉妹に挨拶をした。

「いえ…身に余るお言葉、光栄の至りです…」

 そう言うと、彼は部屋を後にした。
暫くの沈黙の後、姉は窓の外を眺め、小さく呟いた。

(ふっ、彼等の動き…まるで自ら『戦争』を受け止めるかの様だな…)

「お姉様、何かおっしゃいましたか?」

「いや、何でもない…」

姉は妹に微笑み、首を横に振った。

「お姉様は…どうするおつもりでしょうか…」

「ふっ、そうだな…」

「アーベルの報告通り、それ程の実力ならば一戦を交えなくても…ここは…」

「ふっ、案ずるでない…大丈夫だ…それに先程言った様に、個人的に気になるのだよ…名門『エヒト家』の召喚士として…」

「ですが、お姉様に何かあれば!」

「ふっ、ありがとう…ロサは優しいな…だが、何れお前もこの家を背負う時が来れば、私の気持ちも分かるだろう…」

「……何かあれば、私が駆け付けます…」

「ふっ…あぁ、頼りにしているぞ…」

 そして姉妹は窓から見える、澄み渡る蒼空を見上げた。
 そんな姉妹達の髪は、窓から差し入る陽の光が当たり、僅かに蒼みがかっていた。
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