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第四章:「新たなる大陸へ」
第50話 「首都出発」
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「ふふっ、幸せだ」
城を出て歩いているとバルバラから唐突に言われた。
何が幸せなんだろうか。
俺は気になり聞いてみた。
「突然どうしたんだ?」
「ふふっ、好きな人の為に、尽くす喜びを噛み締めている」
そう言ってバルバラの手に力が入った。
今まで好きな人など居なかったんだのだろうか。
もしかするとそれは、 バルバラが魔王だから今まで巡り合える
機会が無かったのだろうか。
実際は「魔王」と言う事も忘れる程に、思いやりがあり
笑顔も多い。
「サモンさん」
そんな事を考えていたら、話掛けられた。
ファルシアだ。
「最初と比べて親密度が上がっていますね」
手をつないでいる姿を見てファルシアは微笑んだ。
俺は恥ずかしさのあまり、手を離そうとしたがバルバラがそれを許さない。
先程よりつないでいる手に力が入る。
俺はファルシアから顔を逸らすしか出来ない。
「ふふっ、羨ましいだろう?」
そんな俺の行動を尻目にバルバラは答えた。
「えぇ、とても」
この恥ずかしさから逃げるには、話を変えるしかない。
「そろそろ首都を立とうかと思っています。ファルシアさんは?」
「私はまだ少し、首都に残ってから家へ」
そんな会話を交わし、俺達は歩き始めた時。
背中から声が、聞こえた。
「気を付けてくださいね」
ファルシアの気遣う声だ。
声色から相当心配しているのが伺え知れた。
「大丈夫ですよ。ファルシアさんも道中お気をつけて」
俺達ならきっとどんな困難が待ち受けていようが大丈夫だ。
その思いは最初と比べ一層強く、そして固くなっていた。
「ありがとう」
その様な挨拶をして、ファルシアとはここで別れた。
首都を出る直前、バルバラがこんな事を言った。
「次の目的地、楽しみだな?」
俺はそんな言葉に身の危険を感じざるを得ない。
すっかり忘れていたが、襲われる危険を思い出した。
「え?そ、そうだな?」
どの様に返すのが、最善なのか分からず、こんな返事になってしまった。
するとバルバラは掌に透き通る水晶を出すと、また片方色の違う瞳で覗き込む。
「ふふっ、サモンは本当に色々と巻き込まれる」
俺はその言葉に憂鬱になった、もう術者大会の様な出来事は起きなければいいのだが。
だが、バルバラの言う色々とは、どんな事なのだろうか。
聞きたくは無いが、聞いていた方が良いだろう。
「その巻き込まれるとは、一体どの様な事が起こるんだ?」
「ふふっ、漁村に着いてから分かる」
そう言って微笑んだが、やはり不安は拭えない。
――――――――――――――
暫く歩き、潮の香りと共に海が見えてきた。
歩き過ぎたせいか、足にも疲労が出ている。
バルバラもどうやら同じ様だ。
表情にも疲れが出ており、少し腰を曲げ、いかにも疲れているような雰囲気だ。
「大丈夫か?」
「ふふっ、だ、大丈夫だ…私は魔王だぞ……」
とは言っているものの、言葉の中に疲れが滲み出ている。
海沿いの道をまだ、暫く歩くとファルシアの言っていた。
漁村が見えて来た。
「バルバラ!目的の漁村だぞ!」
「ふふっ、ほ、ほんとだな…」
もはやバルバラは先程より、疲れが出ている。
俺はそんなバルバラを見かねて、道の脇にあった、岩に座らせた。
「ふふっ、ありがとう」
「良いんだ、俺も疲れていたからな」
漁村自体見えては居るものの、流石にバルバラの疲れを見れば、このまま歩かせるのは可哀想だ。
すると、漁村の方から誰かが歩いて来た。
男性だ、背中には大きな籠を背負っている。
「こんな所で、一体どうされました?」
「いえ、少し休憩を…」
「そうですか…」
すると男性はバルバラの方を暫し見ると、呟く様にそう言うと、去って行った。
「不思議な人だったな」
「ふふっ、そうだな?」
若しかすると、バルバラが言っていた”色々と巻き込まれる”と言うのは、あの男性にも関係があるのだろうか…
「バルバラの言っていた巻き込まれるって…」
「ふふっ、どうだろうな?」
そう言って、バルバラは微笑んだ。
俺は不安を落ち着かせる為か、気付けばネックレスを握っていた。
城を出て歩いているとバルバラから唐突に言われた。
何が幸せなんだろうか。
俺は気になり聞いてみた。
「突然どうしたんだ?」
「ふふっ、好きな人の為に、尽くす喜びを噛み締めている」
そう言ってバルバラの手に力が入った。
今まで好きな人など居なかったんだのだろうか。
もしかするとそれは、 バルバラが魔王だから今まで巡り合える
機会が無かったのだろうか。
実際は「魔王」と言う事も忘れる程に、思いやりがあり
笑顔も多い。
「サモンさん」
そんな事を考えていたら、話掛けられた。
ファルシアだ。
「最初と比べて親密度が上がっていますね」
手をつないでいる姿を見てファルシアは微笑んだ。
俺は恥ずかしさのあまり、手を離そうとしたがバルバラがそれを許さない。
先程よりつないでいる手に力が入る。
俺はファルシアから顔を逸らすしか出来ない。
「ふふっ、羨ましいだろう?」
そんな俺の行動を尻目にバルバラは答えた。
「えぇ、とても」
この恥ずかしさから逃げるには、話を変えるしかない。
「そろそろ首都を立とうかと思っています。ファルシアさんは?」
「私はまだ少し、首都に残ってから家へ」
そんな会話を交わし、俺達は歩き始めた時。
背中から声が、聞こえた。
「気を付けてくださいね」
ファルシアの気遣う声だ。
声色から相当心配しているのが伺え知れた。
「大丈夫ですよ。ファルシアさんも道中お気をつけて」
俺達ならきっとどんな困難が待ち受けていようが大丈夫だ。
その思いは最初と比べ一層強く、そして固くなっていた。
「ありがとう」
その様な挨拶をして、ファルシアとはここで別れた。
首都を出る直前、バルバラがこんな事を言った。
「次の目的地、楽しみだな?」
俺はそんな言葉に身の危険を感じざるを得ない。
すっかり忘れていたが、襲われる危険を思い出した。
「え?そ、そうだな?」
どの様に返すのが、最善なのか分からず、こんな返事になってしまった。
するとバルバラは掌に透き通る水晶を出すと、また片方色の違う瞳で覗き込む。
「ふふっ、サモンは本当に色々と巻き込まれる」
俺はその言葉に憂鬱になった、もう術者大会の様な出来事は起きなければいいのだが。
だが、バルバラの言う色々とは、どんな事なのだろうか。
聞きたくは無いが、聞いていた方が良いだろう。
「その巻き込まれるとは、一体どの様な事が起こるんだ?」
「ふふっ、漁村に着いてから分かる」
そう言って微笑んだが、やはり不安は拭えない。
――――――――――――――
暫く歩き、潮の香りと共に海が見えてきた。
歩き過ぎたせいか、足にも疲労が出ている。
バルバラもどうやら同じ様だ。
表情にも疲れが出ており、少し腰を曲げ、いかにも疲れているような雰囲気だ。
「大丈夫か?」
「ふふっ、だ、大丈夫だ…私は魔王だぞ……」
とは言っているものの、言葉の中に疲れが滲み出ている。
海沿いの道をまだ、暫く歩くとファルシアの言っていた。
漁村が見えて来た。
「バルバラ!目的の漁村だぞ!」
「ふふっ、ほ、ほんとだな…」
もはやバルバラは先程より、疲れが出ている。
俺はそんなバルバラを見かねて、道の脇にあった、岩に座らせた。
「ふふっ、ありがとう」
「良いんだ、俺も疲れていたからな」
漁村自体見えては居るものの、流石にバルバラの疲れを見れば、このまま歩かせるのは可哀想だ。
すると、漁村の方から誰かが歩いて来た。
男性だ、背中には大きな籠を背負っている。
「こんな所で、一体どうされました?」
「いえ、少し休憩を…」
「そうですか…」
すると男性はバルバラの方を暫し見ると、呟く様にそう言うと、去って行った。
「不思議な人だったな」
「ふふっ、そうだな?」
若しかすると、バルバラが言っていた”色々と巻き込まれる”と言うのは、あの男性にも関係があるのだろうか…
「バルバラの言っていた巻き込まれるって…」
「ふふっ、どうだろうな?」
そう言って、バルバラは微笑んだ。
俺は不安を落ち着かせる為か、気付けばネックレスを握っていた。
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