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第四章:「新たなる大陸へ」
第49話 「新しい婿候補」
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あれから治療を受けた、俺とクラウスは医務室を後にした。
――でも、あの時良く庇えましたね
――えぇ…まぁ…
その様な事を治療中の時に、回復医から言われた。
あの時は、頭で判断するよりも身体が先に動いていた。
自分でも、驚いた。
それは庇っただけではなく、指を鳴らして起きた事も同じ程に。
俺はクラウスに礼を言われ、その様な事を思い返していた。
「でも…凄いですね…サモンさんは…」
「いや、クラウスも凄かったぞ」
「いえ、僕なんて…」
謙遜してはいるものの実際、クラウスも凄かった。
あの状況で、冷静に判断し召喚していたのだから。
クラウスは今回の大会の勝者と言う事で、俺も勝者である事と同時に、あの時王女に言われた話をする為に。
思い返しただけでも、胃が痛くなる思いだ。
それに伴い、足取りも重い。
どうか、何事も起きずに順調に事が進むのを祈るしかない。
かと言うバルバラはと言うと、何やら足取りが軽く。
その表情にも若干の笑みも垣間見える。
その姿に、逆に不安を感じてしまう。
「バルバラ…?何か良い事でもあったのか?」
「ふふっ、あの時は突然の事で言えなかったが、王女に面と向かって言える事が嬉しくてな?」
頼むから、事を荒立てるのは辞めて欲しい。
「その…ちなみになんていうつもりだ?」
「ふふっ、簡単だ」
――愛しの夫に近付くな。もし、近付き触れたら手首を切り落とす
バルバラは、そんな事を満面の笑みで答えた為に
俺とクラウスは思わず固まってしまった。
まさに開いた口が塞がらないとはこの事だろう。
固まっている俺達を尻目にバルバラは話を続けた。
「ふふっ、冗談だ」
クラウスはその言葉に安堵した表情を見せたが、俺としては
バルバラの冗談の基準が分からない…
俺は心に不安を残し、城に着いた。
すると警備にあたっている、王国兵が尋ねて来た。
「お待ちしておりました、サモンさんとクラウスさんですね?それと…」
「ふふっ、妻だ」
「左様でございましたか…ではこちらへ」
何の躊躇も無しはっきりと答えたバルバラに
俺の不安は膨らむばかりだ。
建国祭で通った場所を抜け、王女が挨拶をした場所を通り、大きな扉の前に、案内された。
「こちらです」
そう言われ、軋む音を立てながら扉を開かれた。
そこには、一糸乱れぬ王国兵が並んでおり。
その先には、国王と王女が居た。
――やはり王女様はとても美しい方だ…
クラウスはそう呟くように、そして惚れ惚れする様に言った。
国王は煌めく装飾品を身に纏い。
そして女王は艶やかなドレスを身に纏っていて、
美しさと気品が、一層増している。
「此度の大会での奮闘…とても素晴らしかったぞ」
「身に余るお言葉、光栄でございます」
俺達はお辞儀をした。
バルバラも合わせるようにお辞儀をしている。
「本当は此度の勝者に、晩餐会を開こうと思っていたのだが…その前にアメリアが是非言いたいと―――」
そう言って国王は王女の方を目くばせした。
すると、王女は俺の方へと駆け寄ってくると手を握った。
――私と結婚してくださいませんか?――
思っていた以上に、単刀直入に言われて驚いたが、自分から言い出すより少なくとも気が楽な感じもしたが…
いや、実際、そうでも無い…
握られている手を無表情で眺めているバルバラを見て、早く離して欲しい気持ちで一杯だ。
「王女様…残念ながら結婚は致しかねます」
「どうしてですか!何か私ではご不満ですか!?」
「ふふっ、すまないが、私が既に妻だからだ」
「まさかそんな…お付の人かと思っていた方が、奥様だなんて…」
その言葉を聞き、バルバラは目を殺気立たせている。
先程の冗談が、本当になりそうだ。
「でも…ならどうして私を救ったのですか!?」
今しか説明する機会は無いだろう。
俺は、救ったのは誤解で、一方的に下敷きになってしまった事を再度話した。
「……」
王女は俯き、握っていた手を離した。
微かに啜り泣く様な声も聞こえる。
その声に反応して、クラウスはハンカチを取り出すと王女に渡した。
彼は誰に対しても優しく接する。
その行動に邪な思いなど、微塵も感じられない。
「国王陛下!残念ながら私との結婚は出来かねますが、私としてはこの場にいる、クラウスを婿として推薦いたします!」
「サ、サモンさん!?一体何を!?」
「んー…」
王様は難しそうな表情を浮かべ、暫し考えているが、否定はしていない様に取れる。
俺は補う様に話を続けた。
「彼は、心優しく、そして勇敢です!強大な相手にも臆する事無く、戦いました!」
「……アメリアはどう思うのだ?」
そう聞かれた、王女は渡されたハンカチで目元を拭うと、クラウスの顔をじっくりと見てこう言った。
「あなたは私を守ってくれますか?」
その問いに、クラウスは顔を赤らめて返事をした。
「えっと…も、もちろんです」
その答えを聞き、王女はクラウスに抱きついた。
楽しそうに、そして少し戸惑っているクラウスの姿を見てバルバラが俺に話した。
「ふふっ、良かったな?」
「本当だな」
最初はどうなるかと思ったが、何とか無事に収まって良かった。
そうだ、王様にテオバルトの謀略の話も教えておかなければ。
俺は王様にテオバルトの事について全てを話した。
「信じられん…まさかテオバルトが…」
「……」
暫く難しい表情を浮かべた後、王様は俺の方を向き直し。
「教えてくれてありがとう」
「いえ、礼を言われる程ではありません」
そう言ってお辞儀をした。
「クラウス!」
「はい!どうしたんですか?」
良かれと思ってクラウスを推薦したが、形としては売った様に、そしてクラウスの気持ちもあった筈なのに……
俺は先にそれを謝った。
「気にしないで下さい。これほど素敵なお嫁さんを貰えて、むしろ感謝しています」
そう言って俺に微笑んだ。
その微笑みを見て、俺は安心した。
「そうか、それなら良かった。そうだ、俺はそろそろ首都を立つ」
「そう…ですか…せめて晩餐会だけでも出ませんか?」
俺は、その誘いに首を振り、バルバラの方を見た。
「お誘い有難いが、これから行かなければならない場所があるからな…」
そう言う俺の顔も、またバルバラも見つめ返している。
その表情は嬉しそうだ。
「分かりました…また、首都に来た時には是非会いに来てください!次はサモンさんに並ぶ程の召喚士になってますから!」
「ありがとう、楽しみにしておくよ」
俺はそんな挨拶を交わし、城を後にした。
「ふふっ」
突然、バルバラが微笑んだ。
「どうしたんだ?」
「ふふっ、何も無い」
だが、バルバラが人を殺めなくて良かった。
あの王女様が言った時は一時はどうなるかと思った。
「だが、お付の人と聞いた時は流石の私も我慢するのに必死だったぞ?」
そんなにだったのか……
いや、顔を見て薄々気付いてはいたが…
「良く我慢してくれたな、ありがとう」
「ふふっ、夫の為だからな?」
そう言って、バルバラは俺の手を繋いだ。
また、俺も答えるかの様に握り返した。
――でも、あの時良く庇えましたね
――えぇ…まぁ…
その様な事を治療中の時に、回復医から言われた。
あの時は、頭で判断するよりも身体が先に動いていた。
自分でも、驚いた。
それは庇っただけではなく、指を鳴らして起きた事も同じ程に。
俺はクラウスに礼を言われ、その様な事を思い返していた。
「でも…凄いですね…サモンさんは…」
「いや、クラウスも凄かったぞ」
「いえ、僕なんて…」
謙遜してはいるものの実際、クラウスも凄かった。
あの状況で、冷静に判断し召喚していたのだから。
クラウスは今回の大会の勝者と言う事で、俺も勝者である事と同時に、あの時王女に言われた話をする為に。
思い返しただけでも、胃が痛くなる思いだ。
それに伴い、足取りも重い。
どうか、何事も起きずに順調に事が進むのを祈るしかない。
かと言うバルバラはと言うと、何やら足取りが軽く。
その表情にも若干の笑みも垣間見える。
その姿に、逆に不安を感じてしまう。
「バルバラ…?何か良い事でもあったのか?」
「ふふっ、あの時は突然の事で言えなかったが、王女に面と向かって言える事が嬉しくてな?」
頼むから、事を荒立てるのは辞めて欲しい。
「その…ちなみになんていうつもりだ?」
「ふふっ、簡単だ」
――愛しの夫に近付くな。もし、近付き触れたら手首を切り落とす
バルバラは、そんな事を満面の笑みで答えた為に
俺とクラウスは思わず固まってしまった。
まさに開いた口が塞がらないとはこの事だろう。
固まっている俺達を尻目にバルバラは話を続けた。
「ふふっ、冗談だ」
クラウスはその言葉に安堵した表情を見せたが、俺としては
バルバラの冗談の基準が分からない…
俺は心に不安を残し、城に着いた。
すると警備にあたっている、王国兵が尋ねて来た。
「お待ちしておりました、サモンさんとクラウスさんですね?それと…」
「ふふっ、妻だ」
「左様でございましたか…ではこちらへ」
何の躊躇も無しはっきりと答えたバルバラに
俺の不安は膨らむばかりだ。
建国祭で通った場所を抜け、王女が挨拶をした場所を通り、大きな扉の前に、案内された。
「こちらです」
そう言われ、軋む音を立てながら扉を開かれた。
そこには、一糸乱れぬ王国兵が並んでおり。
その先には、国王と王女が居た。
――やはり王女様はとても美しい方だ…
クラウスはそう呟くように、そして惚れ惚れする様に言った。
国王は煌めく装飾品を身に纏い。
そして女王は艶やかなドレスを身に纏っていて、
美しさと気品が、一層増している。
「此度の大会での奮闘…とても素晴らしかったぞ」
「身に余るお言葉、光栄でございます」
俺達はお辞儀をした。
バルバラも合わせるようにお辞儀をしている。
「本当は此度の勝者に、晩餐会を開こうと思っていたのだが…その前にアメリアが是非言いたいと―――」
そう言って国王は王女の方を目くばせした。
すると、王女は俺の方へと駆け寄ってくると手を握った。
――私と結婚してくださいませんか?――
思っていた以上に、単刀直入に言われて驚いたが、自分から言い出すより少なくとも気が楽な感じもしたが…
いや、実際、そうでも無い…
握られている手を無表情で眺めているバルバラを見て、早く離して欲しい気持ちで一杯だ。
「王女様…残念ながら結婚は致しかねます」
「どうしてですか!何か私ではご不満ですか!?」
「ふふっ、すまないが、私が既に妻だからだ」
「まさかそんな…お付の人かと思っていた方が、奥様だなんて…」
その言葉を聞き、バルバラは目を殺気立たせている。
先程の冗談が、本当になりそうだ。
「でも…ならどうして私を救ったのですか!?」
今しか説明する機会は無いだろう。
俺は、救ったのは誤解で、一方的に下敷きになってしまった事を再度話した。
「……」
王女は俯き、握っていた手を離した。
微かに啜り泣く様な声も聞こえる。
その声に反応して、クラウスはハンカチを取り出すと王女に渡した。
彼は誰に対しても優しく接する。
その行動に邪な思いなど、微塵も感じられない。
「国王陛下!残念ながら私との結婚は出来かねますが、私としてはこの場にいる、クラウスを婿として推薦いたします!」
「サ、サモンさん!?一体何を!?」
「んー…」
王様は難しそうな表情を浮かべ、暫し考えているが、否定はしていない様に取れる。
俺は補う様に話を続けた。
「彼は、心優しく、そして勇敢です!強大な相手にも臆する事無く、戦いました!」
「……アメリアはどう思うのだ?」
そう聞かれた、王女は渡されたハンカチで目元を拭うと、クラウスの顔をじっくりと見てこう言った。
「あなたは私を守ってくれますか?」
その問いに、クラウスは顔を赤らめて返事をした。
「えっと…も、もちろんです」
その答えを聞き、王女はクラウスに抱きついた。
楽しそうに、そして少し戸惑っているクラウスの姿を見てバルバラが俺に話した。
「ふふっ、良かったな?」
「本当だな」
最初はどうなるかと思ったが、何とか無事に収まって良かった。
そうだ、王様にテオバルトの謀略の話も教えておかなければ。
俺は王様にテオバルトの事について全てを話した。
「信じられん…まさかテオバルトが…」
「……」
暫く難しい表情を浮かべた後、王様は俺の方を向き直し。
「教えてくれてありがとう」
「いえ、礼を言われる程ではありません」
そう言ってお辞儀をした。
「クラウス!」
「はい!どうしたんですか?」
良かれと思ってクラウスを推薦したが、形としては売った様に、そしてクラウスの気持ちもあった筈なのに……
俺は先にそれを謝った。
「気にしないで下さい。これほど素敵なお嫁さんを貰えて、むしろ感謝しています」
そう言って俺に微笑んだ。
その微笑みを見て、俺は安心した。
「そうか、それなら良かった。そうだ、俺はそろそろ首都を立つ」
「そう…ですか…せめて晩餐会だけでも出ませんか?」
俺は、その誘いに首を振り、バルバラの方を見た。
「お誘い有難いが、これから行かなければならない場所があるからな…」
そう言う俺の顔も、またバルバラも見つめ返している。
その表情は嬉しそうだ。
「分かりました…また、首都に来た時には是非会いに来てください!次はサモンさんに並ぶ程の召喚士になってますから!」
「ありがとう、楽しみにしておくよ」
俺はそんな挨拶を交わし、城を後にした。
「ふふっ」
突然、バルバラが微笑んだ。
「どうしたんだ?」
「ふふっ、何も無い」
だが、バルバラが人を殺めなくて良かった。
あの王女様が言った時は一時はどうなるかと思った。
「だが、お付の人と聞いた時は流石の私も我慢するのに必死だったぞ?」
そんなにだったのか……
いや、顔を見て薄々気付いてはいたが…
「良く我慢してくれたな、ありがとう」
「ふふっ、夫の為だからな?」
そう言って、バルバラは俺の手を繋いだ。
また、俺も答えるかの様に握り返した。
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