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第四章:「新たなる大陸へ」
第48話 「勝者:最弱と幼馴染そして恋敵?」
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目が覚め、俺の瞳に映りこんだのは、俺が良く知る人物、バルバラとファルシアだ。
「ふふっ、格好良かったぞ!まさか私と同じ様に出来るとはな?流石私の夫だ!」
そう言うと思い切り抱き締めてきた。
痛みのあまり、声が漏れてしまう。
「イテテッ!」
慌ててバルバラは俺を離した。
「す、すまない」
「いや、大丈夫だ」
普段はこの様な事をされると
辞めてくれ!
と離してしまうが。
何故だが、この時ばかりは
――とても嬉しかった――
それに、僅かな時間なのにバルバラの姿を見ると、まるで長い間会ってなかった様な感覚すら感じる。
それに前と違い、素直に離してくれたバルバラに笑みが零れた。
「大丈夫ですか?サモンさん?」
ファルシアだ。
顔を見ると、今まで以上に頼もしく、同時にとても安心してしまった。
俺にとって師匠の様な存在だからだろうか。
それとも、術者大会が終わった事を意味しているからだろうか。
いや、恐らく両方だろう。
「えぇ、何とか…でも、どうして此処が分かったんですか?」
「去年、『術者大会』を観戦する事が出来なかったので――」
どうやら、今年こそ、と思い、観戦しにきたものの。
俺の名を呼ぶ声が、会場に響き渡り驚いた様だ。
そういえば…ここはどこだろうか…?
疑問に思う表情を察したのか。
ファルシアが答えてくれた。
「ここは医務室ですよ」
そうか…俺はテオバルトを飛ばしてから…
そうだ!クラウスは!?
俺は慌てて、自分が寝ているベッドの周りを見渡した。
隣のベッドで、眠っているクラウスを見て、安心した。
「サモンさんが、庇って居なければ恐らくもっと酷い怪我をしていたでしょう…」
そうだった…俺はクラウスと一緒に吹き飛ばされたんだったな…
そういえば、アイツはどうしたんだ?
「テ…テオバルトは?」
その問いに、ファルシアは難しい表情を浮かべて、暫く考えると俺に教えてくれた。
「…幸い、命は助かりましたが、あの怪我では、今まで通りの活躍は出来ないでしょう…」
そうか…
また、以前の時の様にならなくて良かった。
絶対に許す事は、出来ないものの。
最初は懲らしめるつもりだったんだ。
殺してしまっては…
そういえば、どうしてあの時バルバラの真似をしただけで、あんな事が出来たのだろうか。
「ファルシアさん、どうしてバルバラの真似をしただけで、あの様な……」
「これは憶測でしかありませんが…以前、適応が高い…と言ったのを覚えて居ますか?」
あぁ、そういえば言っていたな…
「2人の能力が、食われずそして調和した事によって、普段出来ない様な事も可能になったんだと思います…」
なるほど、だから指を鳴らしただけで…
「若しかすると、今まで例を見ない程。サモンさんは強くなるかも知れません。到底、私の様な『✕線』を越え」
――サモンさんの御先祖様を越えて――
「そして…場合によってはバルバラさんすらを超える…それほどの可能性を秘めています。ですが、その強大な力を使いこなせるかは、また別の話です」
あまりの話に、驚愕し唖然としてしまった。
だが、確かにファルシアの言う通りだ、使いこなせるかは別問題だ。
そんな事を思っていたら、バルバラが話し掛けてきた。
「ふふっ、愛しのサモンよ?もうここで結婚しないか?」
そう言って、バルバラはとても嬉しそうに微笑みかけた。
いや、どさくさに紛れて、何を言っているんだ?
ここは冗談を言うべきでは…
「バルバラ…怪我人にその様な冗談を言うべきでは…」
「ふふっ、私が冗談を言っている様に見えるか?」
そう言うバルバラの紅い瞳は真っ直ぐと俺を見つめている。
そして、表情は真剣そのものだ。
なんて返したら良いんだろうか。
なるべく、当たり障りの無い返事をしなければ…
どうしたら、良いものか。
すると、何やら扉を乱暴に開ける音が聞こえた。
――大丈夫ですか!!?――
走る足音を響かせ、俺の方へと近付いてくる。
足音の持ち主は、立っていたバルバラを押し退け、俺のベッドに近寄った。
アメリア王女だ。
「え!?えっと、お気遣いありがとうございます」
「いえいえ!夫を心配するのは妻して当然の務めですから!」
……へっ?
今、王女はなんと言ったのだろうか…
聞き間違えで無ければ、「夫」と言ったような気がする。
これには、流石のファルシアも肩を揺らして笑っている。
そんな姿を見て、俺は聞き間違えでは無い事を確信した。
かと言う、バルバラはと言うと…突然の事で唖然としてはいるが、その表情の中には隠し切れない、「怒り」の様なものを感じる。
どうしようか、とても雰囲気が気まずくなっている。
「そうでした!父上が、お呼びですので回復したら是非城に来てくださいね!」
そう言ってまた、足音を響かさせながら医務室を去って行った。
相も変わらず、バルバラは去って行く後ろ姿に、怒りの視線を向けていた。
「バ、バルバラ…?大丈夫か?流石に押し退けられたら腹も立つな…?」
「ふふっ、そうだな…妻である私を押し退け、自分を妻だと言ったことに腹が立つ。些か殺意が湧く程にな?」
どうしようか、バルバラのその表情は、今までに見た事の無い程、殺意に満ちている。
ここは何とか、宥めなければ…
「さ、殺意なんて!俺はバルバラの夫だろ?」
「ふふっ、そうだな?」
先程のおぞましい表情は消え、満面の笑みを浮かべた。
とうとう言ってしまった。
これはいずれ先、本当にしなければ…
そんな俺をファルシアは先程より肩を揺らして、笑っている。
俺は怪我より、心労で倒れないか不安で堪らない思いだ。
「ふふっ、格好良かったぞ!まさか私と同じ様に出来るとはな?流石私の夫だ!」
そう言うと思い切り抱き締めてきた。
痛みのあまり、声が漏れてしまう。
「イテテッ!」
慌ててバルバラは俺を離した。
「す、すまない」
「いや、大丈夫だ」
普段はこの様な事をされると
辞めてくれ!
と離してしまうが。
何故だが、この時ばかりは
――とても嬉しかった――
それに、僅かな時間なのにバルバラの姿を見ると、まるで長い間会ってなかった様な感覚すら感じる。
それに前と違い、素直に離してくれたバルバラに笑みが零れた。
「大丈夫ですか?サモンさん?」
ファルシアだ。
顔を見ると、今まで以上に頼もしく、同時にとても安心してしまった。
俺にとって師匠の様な存在だからだろうか。
それとも、術者大会が終わった事を意味しているからだろうか。
いや、恐らく両方だろう。
「えぇ、何とか…でも、どうして此処が分かったんですか?」
「去年、『術者大会』を観戦する事が出来なかったので――」
どうやら、今年こそ、と思い、観戦しにきたものの。
俺の名を呼ぶ声が、会場に響き渡り驚いた様だ。
そういえば…ここはどこだろうか…?
疑問に思う表情を察したのか。
ファルシアが答えてくれた。
「ここは医務室ですよ」
そうか…俺はテオバルトを飛ばしてから…
そうだ!クラウスは!?
俺は慌てて、自分が寝ているベッドの周りを見渡した。
隣のベッドで、眠っているクラウスを見て、安心した。
「サモンさんが、庇って居なければ恐らくもっと酷い怪我をしていたでしょう…」
そうだった…俺はクラウスと一緒に吹き飛ばされたんだったな…
そういえば、アイツはどうしたんだ?
「テ…テオバルトは?」
その問いに、ファルシアは難しい表情を浮かべて、暫く考えると俺に教えてくれた。
「…幸い、命は助かりましたが、あの怪我では、今まで通りの活躍は出来ないでしょう…」
そうか…
また、以前の時の様にならなくて良かった。
絶対に許す事は、出来ないものの。
最初は懲らしめるつもりだったんだ。
殺してしまっては…
そういえば、どうしてあの時バルバラの真似をしただけで、あんな事が出来たのだろうか。
「ファルシアさん、どうしてバルバラの真似をしただけで、あの様な……」
「これは憶測でしかありませんが…以前、適応が高い…と言ったのを覚えて居ますか?」
あぁ、そういえば言っていたな…
「2人の能力が、食われずそして調和した事によって、普段出来ない様な事も可能になったんだと思います…」
なるほど、だから指を鳴らしただけで…
「若しかすると、今まで例を見ない程。サモンさんは強くなるかも知れません。到底、私の様な『✕線』を越え」
――サモンさんの御先祖様を越えて――
「そして…場合によってはバルバラさんすらを超える…それほどの可能性を秘めています。ですが、その強大な力を使いこなせるかは、また別の話です」
あまりの話に、驚愕し唖然としてしまった。
だが、確かにファルシアの言う通りだ、使いこなせるかは別問題だ。
そんな事を思っていたら、バルバラが話し掛けてきた。
「ふふっ、愛しのサモンよ?もうここで結婚しないか?」
そう言って、バルバラはとても嬉しそうに微笑みかけた。
いや、どさくさに紛れて、何を言っているんだ?
ここは冗談を言うべきでは…
「バルバラ…怪我人にその様な冗談を言うべきでは…」
「ふふっ、私が冗談を言っている様に見えるか?」
そう言うバルバラの紅い瞳は真っ直ぐと俺を見つめている。
そして、表情は真剣そのものだ。
なんて返したら良いんだろうか。
なるべく、当たり障りの無い返事をしなければ…
どうしたら、良いものか。
すると、何やら扉を乱暴に開ける音が聞こえた。
――大丈夫ですか!!?――
走る足音を響かせ、俺の方へと近付いてくる。
足音の持ち主は、立っていたバルバラを押し退け、俺のベッドに近寄った。
アメリア王女だ。
「え!?えっと、お気遣いありがとうございます」
「いえいえ!夫を心配するのは妻して当然の務めですから!」
……へっ?
今、王女はなんと言ったのだろうか…
聞き間違えで無ければ、「夫」と言ったような気がする。
これには、流石のファルシアも肩を揺らして笑っている。
そんな姿を見て、俺は聞き間違えでは無い事を確信した。
かと言う、バルバラはと言うと…突然の事で唖然としてはいるが、その表情の中には隠し切れない、「怒り」の様なものを感じる。
どうしようか、とても雰囲気が気まずくなっている。
「そうでした!父上が、お呼びですので回復したら是非城に来てくださいね!」
そう言ってまた、足音を響かさせながら医務室を去って行った。
相も変わらず、バルバラは去って行く後ろ姿に、怒りの視線を向けていた。
「バ、バルバラ…?大丈夫か?流石に押し退けられたら腹も立つな…?」
「ふふっ、そうだな…妻である私を押し退け、自分を妻だと言ったことに腹が立つ。些か殺意が湧く程にな?」
どうしようか、バルバラのその表情は、今までに見た事の無い程、殺意に満ちている。
ここは何とか、宥めなければ…
「さ、殺意なんて!俺はバルバラの夫だろ?」
「ふふっ、そうだな?」
先程のおぞましい表情は消え、満面の笑みを浮かべた。
とうとう言ってしまった。
これはいずれ先、本当にしなければ…
そんな俺をファルシアは先程より肩を揺らして、笑っている。
俺は怪我より、心労で倒れないか不安で堪らない思いだ。
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