最弱召喚士:練習で召喚したら出て来たのは『魔王』でした

もかめ

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第四章:「新たなる大陸へ」

第47話「龍の魔導士と幼馴染、そして”魔王と並ぶ最弱”」

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 どれ程待っただろうか、会場では轟音と歓声が響き渡るのを耳にしながら。
俺達は控室で待っている。
待っている時は、とても長く。
永遠に感じられるほどだ。

それは緊張からか?
それともやはり恐怖なのか?

クラウスの方を見るとどうやら彼も同じようだ。

気付けば彼も口数が減り、明るい表情が消え神妙な面持ちになっている。

俺はそんな彼を見て、ネックレスを握り締めた。
 
そしてとうとう、会場の方から名を呼ぶ声が聞こえた。

――いよいよ最終戦!「サモン・オラクロ」と「クラウス・モデスト」の共闘です!

「行きましょうか…」

「そうだな」

また、案内されるまま会場に出る。

目の前に佇むの"テオバルト"だ
ローブには龍の紋章が描かれている。

「先ほどは驚いたよ。まさかサモンがあんな実力を持っているとは…」

そう言って笑っている。
その笑いは、不敵で尚且つだ。

敵として認めたくすらないが、さっき戦った奴と雰囲気が違う…!

「どうしてそんな性格になったんだ!召喚士や魔導士の職業にそれだけ違いなんてあるのか!?」

「黙れ、三下職業の召喚士が…魔導士がだと言う事を思い知らせてやる…」

腸が煮えくり返りそうな思いだが、冷静を保たないと。

「テオバルト…召喚士と言う職業を侮辱した事…後悔するぞ?」

「ふん、みろ」

そう言ってテオバルトは構えた。

クラウスは地に手を付き召喚体勢を取った。
俺もクラウスと共に手をかざし構えた。

――――はじめ!!―――

その掛け声と共に、テオバルトは手を紅く染め火球を俺に放った。

先程の魔導士と同じ攻撃…だがとても速い!

俺が避けたのも刹那。

クラウスが手を付けている地面に白い線が分かれる様にして走る。
枝分かれした先に図形が形成され、現れたのは二体のゴーレムだ。

ゴーレムは召喚されるや否や、足音を響かせテオバルトに駆け寄る。

「ふん、甘いな!」

そう言うと火球をゴーレムに放った。
受けたゴーレムは、体が溶けるも、歩みを進める。

一撃、二撃と攻撃を受け続け、二体は倒れ込む様に地響きと砂埃と共にその姿を消した。

このままではいくら召喚したところで消されてしまう…

そうだ!

「同時にしよう!」

「はい!」

俺が手をかざした瞬間、テオバルトは構えを変え、今度はクラウスに腕を伸ばした。

あの体勢だと避ける事が出来ない!

「危ない!!」

「!!」

咄嗟に庇う様にして、覆いかぶさった。

爆音と共に会場の端まで吹き飛ばされ
地を転がり壁に叩き付けられた。

「カハッ!!」

「ッ!!」

痛む身体に鞭を打ち、無事かどうかを確認した。

「だ…大丈夫か…」

俺のすぐ側に横たわっている、クラウスの口元からは鮮血が垂れ、動く気配すら見せない。

そんな俺も額に生温い物が伝うのを感じ。
それと共に口の中にも”鉄の味”が広がった。

「魔導師はこの様な衝撃を与える術も使える…だから上なのだよ…」

なんて奴だ…何かしらの軋轢があったとは言え幼馴染にここまでするとは…

「貴様…」

「ほう?なんだ?また『焔蛇』か」

全身に激痛が走り、生きる為の呼吸すら、気を抜けば痛みのあまり、直ぐに気を失いそうだ。

立ち上がる事すらままならない状態で

俺は気力を振り絞り、手をかざし召喚した。

地に広がり、混じり合う紋章にテオバルトも分かってはいるものの警戒をした。

そして紋章から現れし、焔蛇を目の当たりにしたテオバルトは微笑んだ。

「相当強いのは分かっているが、これはどうかな?」

そう言って焔蛇に対し、腕を伸ばした。

テオバルトの手は、蜘蛛の巣の様に光を纏ったのも束の間。

閃光を放ち、焔蛇に直撃した。
巨体には穴が空き、崩れ落ち、砂埃と共に焔蛇はその姿を消した。

…まさか…そんな…


「召喚士とは言うが、魔導士には敵わない。君は名門らしいが、それは召喚士のだけであろう?何度召喚しても消してやろう」


こいつは絶対に許さない…
だが、どうしたものか…
痛みのせいで、冷静に考えられない……

召喚をしてもまた、消されるだろう…

遠ざかる意識の中、一閃の光が差し込んだ。

そうだ…!

身体に無理を言わせて立ち上がった。


膝にすら力が僅かに入らない状態で
ふらつきつつ、腕をテオバルトに伸ばした。



「ん?また、懲りずに召喚する気か?」

「いいや…これはある人バルバラの真似だ……」

そう言って俺は指を鳴らした。

鼓膜を破くかの様な爆音と共に
全てを薙ぎ倒すかの様な風。

奴が使った
の比にもならない。

テオバルトは吹き飛ばされたが、あまりにも飛ばされたのが速かったのだろう。

辛うじて確認出来たのは、既に壁にめり込んでいるテオバルトの姿だ。

それを見たのも刹那、俺に激しい痛みが、襲い掛かってきた。
もはや、意識を保つ事も出来ない…
全身の力が抜け、膝から崩れ落ちる様に倒れた。

――しょ、勝者!「サモン・オラクロ」と「クラウス・モデスト」!――

遠のく意識の中、耳に届いたのは、『勝者』を知らせる声だった。
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