最弱召喚士:練習で召喚したら出て来たのは『魔王』でした

もかめ

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第四章:「新たなる大陸へ」

第37話 「魔王様と嫌な予感」

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 ある程度本を読み進め、一息付いた。
やはり、世界の謎やそれに関連する本は面白い。
何度読み返しても、夢中になってしまう。

不意にバルバラの方を見てみた。
相変わらず、神話の本を熱心に読んでいる。

「ふふっ」

相当面白いのだろうか?
本を読んでいると、時折見せる笑顔でそう思ってしまう。

「サモン?」

「え?どうした?」

バルバラは、本から視線を逸らすこと無く、俺に話しかけて来た。

「ふふっ、私の顔に何か付いているか?」

咄嗟に言われた為に、俺は思わず読んでいた本に視線を戻した。
言われるまで気付かなかったが、俺はバルバラの顔を暫しの間、見つめていた様だ。

「いや、熱心に読んでいるから、そんなに面白いのかなっと思っただけだ」

「ふふっ、そうか」

そう言うとバルバラは本を閉じ、背伸びをした。

「久しぶりに、じっくり本を読んだよ」

そう言って、本を持ってバルバラは席を立ち、俺に近付いてくる。
一体なにをする気だ?

まさか、キスをするのか?

いや、それ以前にここは図書館だぞ?
周りの目もあるではないか。
俺はそんなバルバラの行動に一抹の不安を感じた。

俺の不安など、知る由もないバルバラは、側に来て、話し掛けた。

「この本…貸し出し出来るのだろう?」

そう言って読んでいた本を俺に見せてきた。

予想とは違う言葉だ。
そんな言葉に、安心したが、同時に何かモヤッとした気持ちもある。

なんだ、この気持ちは…

「あぁ、出来るよ」

「なら借りよう。流石に続けて読むのは疲れてくる」

「そうだな…では、俺も借りるとするか」

そう言って、俺も本を閉じると席を立った。
本自体は持っては来ているが、違う本も読みたい。

「借りるのはその本だけで良いのか?」

「あぁ、落ち着いてまた、続きをじっくり読みたくてな」

「そうか、歴史書は良いのか?」

「れ、歴史書は…今度で良い」

そういうバルバラは難しそうな顔を浮かべ、首を振る。

相当難しかったのだろうか。

俺はバルバラに持ってきていた残りの本を本棚に片付けて。

入り口にあった、受付カウンターに向かった。
するとバルバラが、耳元で囁いてきた。

「ふふっ、そう言えば、さっき近付いた時、私が『する』とでも思ったか?」

「え!?いや、そんな事は…思っていない…」

「ふふっ、顔に出ていたぞ?まぁ、心配しなくても大丈夫だ。今晩の記念祭の為に

また顔に出ていたのか…
気を付けないといけないな。

ん?待て、取っておくとは何だ?
まさか俺の不安は、さっきでは無く、今晩に当たるのか?

ここは聞きたいが…聞くのが怖いな。

「その…取っておくとは一体…」

「ふふっ、それは、その時のだ」

お楽しみ…
バルバラのそんな返事が不安で仕方がない。
お楽しみは俺にしたら恐怖だ。

一度襲われかけたんだ。
それぐらいの気持ちを抱いてもおかしくはない。

だが、あのモヤッとした気持ち…
もしかしたら俺の中で少なからず、をしていた自分が居るのか?

「ふふっ」

そんな事を考えていたら、突然バルバラの笑い声が聞こえ、思わずバルバラを見た。
バルバラは真っ直ぐと俺の目を見つめると舌舐めずりをした。

俺は咄嗟に前を向き直し考え直した。

やはりそんな期待は、気の所為だ。

そんな事を色々と考えていたら、受付カウンターに着いた。

「ご利用ありがとうございます、貸し出しですね」

「はい」

そう言って、俺とバルバラの本を受付カウンターの上に置いた。

「お手数ですが、ここにお名前を記入してください」

俺は案内されるがままに紙に署名した。
そして俺の後にバルバラが署名をする。

書く前に一言、俺に言った。

「ふふっ、少し面白いのを見せてあげようか?」

面白いもの?

このわずかな間だけで色々と見てきたんだ。
これ以上驚くことなんて無いと思うぞ。

「ふふっ」

笑みを浮かべると紙に名前を書き始めた。
だが、バルバラの書く文字は見た事の無い記号の様なものだ。

そして書き終えた紙の上に手をかざした。

なぞる様に手を動かす。

記号の様な文字は、淡い赤色に光るとそれぞれの文字が変化していく。
文字が変化すると共に、順番も変わっている。

一体どういうことだ?

驚いたのも束の間、バルバラが書いた文字は見慣れた物になっていた。

「ふふっ、驚いただろう?」

そう言うバルバラの顔はとても自慢げな表情だ。

「あぁ…そんな事も出来るんだな」

「ふふっ、もちろんだ。私は魔王バルバラだぞ?」

確かにな、今は黒いドレスを着ている美人が…実際は『魔王』なんだな…

そんな事を考えつつ、俺達は図書館を後にした。

だが、どうしてわざわざ見せてくれたのだろう?

「どうして俺に見せてくれたんだ?」

「ふふっ、それは簡単だ。サモンに『見せたかった』」

何か深い意味でもあったのかと思ったが、極めて単純な理由だったようだ。

「なるほどね…わざわざ見せてくれてありがとう」

「ふふっ、良いんだ。サモンの為ならいくらでも見せてあげるからな?」

そう言ってバルバラは満面の笑みを浮かべた。

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