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第四章:「新たなる大陸へ」

第36話 「魔王様、ある本に夢中?」

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 さて、記念祭の時刻まで時間があるから、バルバラが行きたいと言っていた
王国図書館に向かおうか。

「バルバラ?言っていた図書館に向かおうか」

「ふふっ、そうだな?」

そう言って俺達は図書館に向かった。
図書館は城の目の前に建てられており。

建物自体、白で色を統一している為にかなり上品に感じる。

「ここが図書館だよ」

「おお!かなり大きいな」

バルバラは建物を見上げて驚いている。
それは驚くだろう、図書館という範疇に収まらない程の大きさだ。

「そうだろう、中を見たらもっと驚くよ」

俺も初めて見た時は、その大きさに驚いた。
そんな驚くバルバラを連れて中に案内した。

中の広さも、かなりのものだ。
端まで行くのすら大変だ。
まず、入るとすぐ目につくのは大きな円形の受付テーブルだ。

その後ろに、巨大な本棚が種類別に並んでいる。

「ちなみに好きなだけ借りて読む事が出来る」

「なに?それは本当か!?」

「本当だ」

「そこに座っててくれ、興味を惹きそうな本を何冊か取ってくる」

「ふふっ、分かった」

バルバラを近くの椅子に座らせた。

バルバラが言ってた人間の歴史…たぶんここの本棚にあるはずだな。
俺はそう思い、本棚に備え付けられている梯子を移動させ、登った。

相変わらず高いな…

幸い、梯子に登って取らなければいけない本は一冊だ。
後は梯子を使わなくても背伸びをしたら辛うじて取れる高さの本だ。

俺は何冊か興味を惹きそうな本を取り、バルバラが座っていたテーブルに置いた。

「ありがとう。だが、思っていた以上の本の厚さと数だな…」

「そうか?」


俺からしたら普通の数なんだが…

バルバラは普段あまり本を読まないのだろうか?
確かにあまり読まない人からしたら、少し戸惑うかも知れないな。

そう言えば、俺も折角来たんだ。
最近、本自体読めていなかったから、久しぶりに何か新しい本でも探して読もうか。

そう思い俺は本棚を当てもなく歩きみ興味を惹きそうな本を探した。

ここなら、何かあるかな…

そう思い、俺が入った通路のジャンルは相変わらずの「世界の謎」のジャンルだ。
やはりバルバラから真実を知ってしまっているが、書いてある内容が、面白い。
俺からしたら外せないジャンルだ、それに俺達が冒険を始めるきっかけでもある。

もし、この本を読んでいなかったらあの時、一緒に冒険をする発想にも至らなかっただろう。

俺はそんな事を、並べられている本を見ながら、ふと思っていた。

その時、頭の上から何か声が聞こえた。

――――きゃっ!!――――

声が聞こえて見上げた瞬間。

俺の上に誰かが落ちてきた。

「ごめんなさい。大丈夫でしたか?」

謝るのは構わないが、俺を下敷きにした状態で言われても返事が出来ない。

「あ!すみません!」

そういうと降ってきた人は立ち上がった。

「貴方のおかげで無傷ですみました。頂きありがとうございます」

いや、救うも何も、俺は一方的に下敷きになっただけなんだがな…

頭を打ったせいで痛む。

「イテテ…いや、救うも何も俺は何もしていない、まぁ…怪我がなくて良かった」

そう言って痛む頭を押さえつつ、俺は顔を上げた。

そこに立っていたのは容姿端麗な美女だ。
バルバラと比べて少し背は低いが、その端正な顔立ちは引けを取らないだろう。

髪はブロンドで、ポニーテールだ。


「あ!もうこんな時間!すみません!お先に失礼しますね!」

彼女は腕時計を見ると、俺に微笑み、足早に去っていった。

何か落ち着きのない人だったな。

そうだ、本を探している最中だったな。
突然の出来事で思わず忘れていた。

まさか人が降ってくるとは思わなかった。

その後、俺は面白そうな本を見つけてバルバラの居る席へと戻った。

「戻ったか、それにしてもこの『神話』と言うのは面白いな」

「え?あぁ、面白かったのなら良かったが…」

魔王バルバラ』が『神話』を読んでいる…?
いや、面白いのならそれはそれで、良いんだが…
なんだろう、この少し例えようのない感情は…

ちなみにどこが面白かったんだろうか…
聞きたいが、聞いてはいけない様な気もする…

「その…どこが面白かったんだ?」

「そうだな、『神』と『魔王』が戦うところかな?」

「そ、そうか…」

人間の歴史と言えば、歴史書、それ関連で良かれと思って持って来たのにまさか
予想外の本に面白さを感じてしまったようだ。

それも『神』と『魔王』の戦いなんて……

「ち、ちなみに歴史書はどうだった?」

「ふふっ、最初に目を通して見たが、難しくてな…代わりと言っては何だが、こっちの本を何気なしに捲ってみたら、思いのほか面白くつい、夢中になってしまった」

そうだったのか。
いや、確かに歴史書は難しい面もあるが…

「それに…人間が歴史を知る上でおのずと、神話も付いてくる。あながちこれを学ぶ事も間違ってはいないだろう?」

そう言って、俺に微笑みかけた。

「ふふっ、それにこの話、良く出来ている」

俺はその言葉に、バルバラはやはり魔王なんだという事を実感した。

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