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第四章:「新たなる大陸へ」
第33話 「最弱と魔王の雑談」
しおりを挟むファルシア達に見送られる様にして、俺達は出発した。
そう言えば、俺はあまり「友人」は多くない方だったが、バルバラにも友人は居るのだろうか?
「バルバラは友達とかは居るのか?」
「ふふっ、もちろん居たさ。絶大な信用を置けるただ一人の友人がな」
そう言ってバルバラはどこか浮かない顔をした。
居た?
という事は、今は居ないのか?
「…その友人は…今はどうしているんだ?」
その話を知りたいと言う興味から、聞いてはいけないと思いつつ、思わず聞いてしまった。
「私が城に居た時、突然姿を消したんだ。元々私の家臣だったが、家臣という垣根を越えて彼女を信頼をしていた」
そうだったのか…
やはり聞いてはいけない事を聞いてしまった気がするな…
そんな俺の考えも知らずか、バルバラは話を続けた。
「私は、思い付く限りの場所を探し続けた。だが、彼女は見つからなかった」
どう言えば良いのだろうか、慰めればいいのだろうか?
「生きているか、死んでるか。そんな事すらも分からず。半ば諦めていた時、見付ける事が出来た」
み、見つけれたのか!?
「そうなのか!?」
「あぁ、彼女は幸せな家庭を築いていた。それを見た時、初めて思った。もしかしたら私に迷惑を掛けないように去ったのではないか…と」
俺はこの話を黙って聞き入った。
バルバラの気持ちに寄り添う様に。
「積もる話もあったが、事情で話をしたくても出来なかった。だが、彼女の事を思う気持ちでいっぱいだった為に、怒りより安心した気持ちの方が大きかった」
そうだったのか…
でも、見つける事が出来て本当に良かった。
「ふふっ、まぁこんな所だ」
「そうだったのか…」
「サモンは?」
「へっ?」
突然の事に抜けた返事をしてしまった。
「へ?じゃないぞ、まさか私だけ話してそれで終わりではないだろう?何か話や悩みでもあるのでは無いか?」
そうだな…
「じゃ、バルバラを召喚した経緯を…俺は毎年開かれている、召喚士の昇級試験に落ち続けていた、いつも通り練習の為に本を捲っていたら――」
「私を召喚士したのだな?」
「あぁ、だが落ちていくと共に自信まで無くして行った。いつしか『最弱』と呼ばれ、その嫌味すら納得していた、一族に恥じない様に頑張るが、結局は空回りし続けた」
「ふふっ、でもあれを見たら最弱とは思えないがな?」
確かにな…あの時の俺からしたら考えられない。
ファルシアと出会わなければ、今の俺は無かっただろうな。
「ふふっ、サモンの話が聞けて嬉しい。ありがとう」
バルバラはそう言うと、俺に微笑み掛けた。
「俺も話が聞けて良かったよ、その…深く聞き込んですまなかったな」
見つかって良かったが、バルバラからしたらあまり話したくは無かったはずだ。
「ふふっ、気にするな。それに、今は将来が楽しみだからな?婿殿?」
突然この様な事を言うのは一体なんなんだ。
バルバラの癖なのか?
「だ、だからそれはやめろと!」
「ふふっ、では婿は辞めておく、我が夫よ?」
そう言うとバルバラは俺の顔を覗き込んだ。
「それもやめてくれ!余計に恥ずかしいだろう!」
「ふふっ、そんな態度が実に可愛らしい」
俺はそんな言葉から、恥ずかしさのあまり顔を背けた。
召喚士としての実力は多少なりとも、上がったのは良いが、違う面でも、成長したいな…
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