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第三章:「新たなる歩み」
第25話 「豪華な料理と魔王」
しおりを挟む席に座り暫く待っていると、店の奥からラルスと店員達が、何やら凄く豪華な料理を運んで来た。
運んで来る時にも驚いたが、実際に目の前に並べられると、その豪華が際立って見える。
俺は豪華な料理を見て、食べ切れるか不安になってきた。
並べ終わると、村長が宴の挨拶をした。
「この度、オークの群れからこの村を救ってくれた者達!並びにその中でも目覚しい活躍をしてくれた。名門『オラクロ家』のご子息、『サモン』さんに拍手を!!」
周りに居た人達は、みな割れんばかりの拍手をした。
ファルシアやバルバラ、アルシアも同じ様に拍手をしている。
「良かったな、サモンさん」
「ふふっ、流石は私の婿殿だな?」
「おめでとー!サモンさん!」
入った時にも拍手されて恥ずかしかったのに、また改めて皆から拍手されると一層恥ずかしくなってしまう。
そんな恥ずかしさから俺は照れ笑いをして俯いてしまった。
そんな様子を見て村長が話した。
「では、そろそろ宴を始めましょう。皆さん、今宵はぜひ楽しんで下さい」
そう言って、みな出されている料理を食べ始めた。
今気付いたが、この宴に来ている方達にも凄く豪華な料理が出されている。
そんな事を思っていたら、バルバラに呼ばれた。
「ふふっ、サモン?」
振り向いてみると、自分の食べ物を俺の方に向けている。
「ふふっ、キスはしても料理を食べさせた事が無かったからな?ほら、口を開けてみろ」
な、何をするんだ!?
大勢が見ている前だぞ!
それにアルシアもいるじゃないか。
俺はこの状況に助けを求める視線をファルシアに送ったが、思っていたのとは違う返事が帰ってきた。
「いや、こ、ここはバルバラさんもこうしていますし、サモンさんも受け入れては?」
こう言ったファルシアは戸惑いつつも若干楽しそうだ。
先程俺が、にじり寄られた時引いていたのは、一体何だったのか。
「ほら、ファルシアもこう言っているでは無いか?サモンも諦めて私の料理を受け入れるんだな?」
こ、今回だけだ……ぞ?
俺はそう思って目を閉じて仕方なく口を開けた。
バルバラの料理がゆっくりと俺の口の中に入り、舌の上に乗る。
全部口に入ったのを確認すると、今度はゆっくりと口から。
それと共に料理が零れない様に、俺は口を閉じ。
舌の上に乗っている料理を味わった。
俺は目を開けると、真っ直ぐ俺を見つめるバルバラと目が合った。
俺は咄嗟に顔を逸らして口に入っている料理に集中する。
「ふふっ、どうだ?美味しいか?」
「お、美味しい…」
どうして料理を食べるだけで、これ程恥ずかしい思いをしなければいけない。
「ふふっ、顔が赤いぞ?」
言われなくても分かっている。
「ふふっ、では私も食べるとするか…」
そう言って、バルバラはファルシアの家で食べた様な凄まじい速さで食べ始めた。
「うん!美味しいな!」
バルバラは相変わらず、とても幸せそうな表情を浮かべ料理を食べている。
だが、そんなに食べて大丈夫なんだろうか?
心配になり、俺はバルバラに質問してみた。
「そ、そんなに食べて大丈夫なのか?」
「ふふっ、私を心配してくれているのか?」
いや、心配もするだろう。
さっきまであれ程食べていたのに、もし、これ以上食べて体調を崩してしまっては…
「ふふっ、心配するな、私は魔王だぞ?」
そんな返事を聞き、俺は妙に納得したが、心の中で僅かだが。
(魔王は関係あるのか?)
と思ってしまった。
だが、食べている時のバルバラの幸せそな表情を見るとそんな思いも、無用な心配だったのかもしれないな。
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