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第三章:「新たなる歩み」

第23話 「感謝と宴」

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 俺がそんな風に手を眺めていると。

「出来れば、皆さんに村を救ってくれたお礼をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

そう提案したのは、案内してくれた男性だ。
だが、さっきファルシアの家で晩御飯を頂いていた所だ。

返事に悩んでいると、ファルシアが俺に言った。

「良いではないか、今日はサモンさんのお祝いとしよう」

「私も行っていいの?」

「あぁ、もちろんだよ」

「やったー!」

アルシアは満面の笑みを浮かべ飛び跳ねて喜んでいる。

お祝いか…確かに申し出をここで断るのも悪い気がする。

「では、お願いします」

「ありがとうございます!村の皆さんもきっと喜びますよ!村を挙げてのおもてなしをさせて頂きますね!」

この話を聞いていたバルバラが男性に質問した。

「その、と言うのはも出るのか?」

「勿論で御座います!」

男性の返事を聞き、バルバラは目を輝かせて俺に言った。

「良かったな!料理も出ると言っているぞ!」

あれだけ晩御飯を物凄い勢いでかき込んでいたのに、まだ食べれるのか…
だが、バルバラの嬉しそうな顔を見ると、そんな思いも消えてしまう。

「そうだな」

その表情に俺も思わず笑みを浮かべ、返事をした。

「では、案内致しますね」

そう言われ、俺達は見張り小屋を後にした。

向かう途中に、不意に先程戦った場所を見てみると。
まだ、戦いがあった場所には残り火が燻っていた。


村に戻り、着いた先は入口に建ってあった「冒険者ギルド」だ。

まさか、この様な形で訪れるとは思っても見なかった。

俺達は案内されるまま中に入った。

その瞬間、色々な人達から感謝の言葉が降り注ぐ。

今までこれ程まで、感謝をされた事が無いせいか、俺は逆に気恥ずかしくてなってしまった。

「ふふっ、良かったな」

バルバラがそう言って微笑む。

そうだ、村を救う事が出来て本当に良かった。

すると突然、話し掛けられた。

「あなた方ですか…」

声のする方を見ると、一人の老人が立っていた。
口元には、蓄えた長い髭が垂れ、髪はほとんどが白髪だ。

「初めまして。わたくし、この村のをしている『アラヌス』と言います」

アラヌスが話しかけた時、騒がしかった、ギルド内は静かになった。

「初めまして、『サモン』と言います」

「『バルバラ』だ」


「村を代表して……この度、村を救って頂き誠にありがとうございます」

そう言って、村長は俺達一人一人に丁寧に頭を下げてゆく。

そんな中、頭を下げられたファルシアは遠慮しつつ、こう言った。

「いえ、私は何もしていません。この度の戦いはこちらに居る、1人で…」

村長は俺の方を見ると再びファルシアの方に視線を戻した。

「そうなのか!?」

「えぇ、実はこの方、あの名門『オラクロ家』のご子息です」

「なんと!それは……」

村長は俺の方を見つめ近寄ってきた。

「いやはや、お目にかかれ大変光栄でございます」

「い、いえいえ」

村長は先程案内してくれた男性の方を見ると。

「では、そろそろこの方達に宴の準備を」

「分かりました」


そう言って村長に言われた男性は、恐らく従業員だろうか?
周りの人達に料理の準備を指示した。

そう言えばあの男性の名前を聞いていないな。

「すみません村長、あの方は?」

「あぁ!あの方はの店主をしております。『ラルス』と言います」

まさか、案内してくれた方がここの冒険者ギルド店主だったとは。

そんな話を聞いたのか、ラルスは俺の方を向き、改めて自己紹介をした。

「申し遅れましてすみません、私はここの店主をしている『ラルス』と言います」

「『サモン』です」

「『バルバラ』だ」

「先程の戦い、素晴らしかったです。流石は「オラクロ家」のご子息ですね。あっ!少し失礼します!あ!すみません!この席に!」

なにか準備をしに行ったのだろうか?
そう言い残して、店の奥に去っていった。

俺達はそう言われ、席に座った。
バルバラは隣だ。

話を聞いていた、バルバラは俺の方を見つめるとこう言った。

「ふふっ、の婿殿だな?」

そう言ってバルバラは俺の手にそっと握った。

折角のお祝いの席だし、これぐらいは……

そう思い、俺は顔を紅潮させつも、バルバラの手を握り返した。
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