最弱召喚士：練習で召喚したら出て来たのは『魔王』でした

第三章：「新たなる歩み」

第２０話 「開花した才能と迎撃戦」

　晩御飯と言うアルシアの呼び掛けに
バルバラはとても喜んだ様子で返事をした。
まるで先程の会話が無かったかの様だ。

「本当か！？今行く！」

バルバラはそう言って、家の中に入って行った。
かと言う俺は、バルバラの変わり様にそのまま立ち尽くしてしまった。

――――――――

バルバラはどうして結婚前提で話しているんだ…
それよりもどうして俺なんだ？

ファルシアの家の中に入っても俺はそんな考えばかり巡らせている。

「料理…食べないんですか？」

「そうだぞ！サモン！食べないのか！？」

バルバラは物凄い勢いでかき込んでいる。

「あぁ！食べるよ！頂きます」

気付いたら食卓に料理が並べられていた。
その様子を見て、バルバラは微笑んでいる。

だが、どうして俺にここまで親身に教えてくれたんだろうか？
それに当初の目的である、『大陸に聳え立つ』塔の事も訊かなければ。

「あの…どうして俺なんかにあれだけ親身になって教えてくれたんでしょうか？」

「そんなの簡単ですよ、実はですね。私がここまでこれたのもあなたサモンの祖父様が私の師匠…とでも言いましょうか…親身になって教えて下さったのですよ」

初めて知った、そうだったのか。
だから、あれ程親身になって教えてくれたのか。

「そうだったんですね…」

「えぇ、私のこの『✖線』も…あなたの祖父のおかげで取れた…と言っても過言ではありません」

そう言うとファルシアは『✖線』を撫でる。

「私も…あなたと似たような境遇ですから」

俺と同じ境遇？
それは落ちこぼれって言う事か？
これほどまでの実力を持っているのに。

「つかぬ事を伺いますが…『似たような境遇』とは…？」

「実は、私は元々召喚どころか術が使えなかったんです」

俺は思わず食べている手が止まってしまった。
これほどまでに使いこなしている人がか？
俺は半分冗談だとさえ思ってしまった。

「私の父は「剣士」で、母が「魔導士」…どうやら父の遺伝の方が強かったみたいで」

そう言うとファルシアは笑った。
だが、端的に言えば眠っている遺伝を掘り起こしたと言う事か？

「でもどうやってその才能…いや、遺伝を開花させたんですか？いくら俺の祖父でもそんな事」

「それが実際の所、私もよく分からないんですよ。でも他に出来ない事を成すというのは恐らくどの大陸を見ても、あなたの家系の『オラクロ家』だけだと思いますよ。ですが、私はあなたの祖父に教わった事をあなたに教えただけです」

そう言うとファルシアは料理を口に運んだ。

だが、ただ教えて貰っただけで眠っている遺伝子を開花させれるものなんだろうか…
それか先ほどの動作に何か仕組みが？

その時、家の玄関を激しくノックする音が聞こえた。
ファルシアは食事を辞め、すぐに玄関に向かった。

「どうした！？」

「すみません！ファルシアさん！」

そう言う男性は、何やらとても動揺している様子だ。

「落ち着け！何があったか話すんだ！」

「はい…実はオークの集団が…村に近付いて…」

「なんだと！？」

それを聞いたファルシアは俺の方を向きこう言った。


――――サモンさん！行きましょう！！――――