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第二章:新たなる動き
第15話 「最弱召喚士の本当の才能」
しおりを挟む俺は突然食いつくような質問を受けて、困惑してしまった。
「は、はい…そうですが…」
「何と言う事だ…お目に掛かれて光栄です」
そう言ってファルシアは、跪いて挨拶をし直す。
ローブの左袖にはアルシアが言っていた通りの『✖線』が書いている。
「ちょ、顔を上げてください!」
「いやはや、失礼しました。まさか『オラクロ家』のご子息に出会えるとは」
全然話が見えてこない、どういう事だ?
確かに俺の家系は有名だが、俺自身はまったくもって有名ではない。
むしろ落ちこぼれだ、それを知っているのだろうか?
「あの…俺自身は全然有名では無いのですが…」
「そうですかな?実際にこちらの女性…それも『魔王』を契約召喚しているではないですか?」
何故バレた…もしかして俺の手の紋章を見たのか?
バルバラも今回ばかりは、普段とは違う表情を浮かべている。
「大丈夫ですよ、私は『魔王』を倒すまでの実力はありません、それに普通の関係性では無い雰囲気を感じていますので」
「関係性」という言葉に嬉しかったのかバルバラは少し微笑んでいる。
「家系は実力があっても、俺はスライムしか召喚出来ませんよ…」
言ってしまった。
本当は自分自身言いたくは無かったが、ここは言うしかない。
「スライム!?な、なるほど…スライム…ですか…」
既に最初に驚いた時点で、俺は恥ずかしい。
そうだ、家系が良くても俺は実力が伴っていない。
「一度召喚動作を見せていただけますか?」
「構いませんが…」
そう言って、家の裏手に案内された。
俺の家と比べて簡素な木の柵で囲われている。
「では、始めます」
俺はいつも通り袖を捲り、地面に手を付くと集中した。
手が青白い光を放ち、図形が現れ急速に広がる。
「そこまでで大丈夫です」
そう言われて俺は手を離した。
それと共に、急速に縮小して消滅した。
「やはり…あなたの動作…どうやら合ってないですね…」
ん?合ってないとはどういう事だ?
この動き自体は習った通りの基礎動作だ。
「あなた程の才能なら、手を地面に付けなくても、遠距離から発動した方が能力に合っている気がします」
実際そんなものどうするんだ?
何かに触れていないと、召喚出来ないであろう。
「今までスライムしか出せなかったのはあなたに合う方法ではなかった為、とでも言いましょうか…」
なるほど、そういう事なのか。
いや、待てよ。
「しかし、離れた所に召喚した時もスライムしか…」
「その時も地面に触れてませんでしたか?」
確かにあの時、地面に手を着いていた…
「着いていました」
「やはりそうですか…どうやらあなたの召喚に対する体質はこの上なく優秀なんですが、少しやり方を間違えると威力が激減してしまうようですね」
じゃあどうして、俺はバルバラを召喚出来たんだ?
おかしく無いか?
「じゃあ俺は、実力も無いのにどうしてバルバラを召喚出来たのでしょう?」
「おや、名前で呼び合う程の仲何ですね」
変な所を突かれてしまった。
恥ずかし過ぎる。
俺の反応を見てファルシアは笑いつつ、話を続けた。
「冗談はこれぐらいにしておきましょう、何故あなたが召喚できたか…あなたが召喚をする時に使った物とか何かありましたか?」
「そう言えば、本を…御先祖様が書いてくれた本がとても分かりやすくて…」
「それです、頭の良い人は、人に伝えるのが上手だと聞きます。それに召喚術にかけては名門の『オラクロ家』……恐らくかなりの手間暇をかけて、子孫に遺していきたかったのでしょう」
なるほど、そういう事だったのか。
全て、俺の御先祖のお陰だな…
だからこうしてバルバラとも出会えたし、夢だった冒険も出来ている。
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