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第二章:新たなる動き
第10話 「ある意味での『危機』」
しおりを挟む部屋はとても綺麗だ。
床には埃1つ落ちて無いほど、掃除され磨かれている、それにより、木目本来の美しさが出ている。
部屋に入り、息を吸い込む。
微かな木の香りがとても心地が良い。
だが、俺はそんな素晴らしい木の香りも頭に入らない。
原因は先程のバルバラの一言だ。
俺はあれから必死に考えた、
それも、2人部屋しか空いていないと知った時からだ。
何とか逃げれる状態、いや。
――言い訳
を作れないかと。
だが、既にもう部屋の中に入ってしまっている。
この部屋の空間に居るのは、バルバラと俺だけだ。
「サモン?」
「えっ!?ど、どうしたんだ?」
考えを巡らせていた為に普通の呼び声に、過剰反応してしまった。
「ふふっ、私は宿にも来るのが初めてなんだ」
「そ、そうなの……か……」
バルバラは俺に微笑み、そして舌舐めずりをする。
その姿に思わず、後ずさった。
その俺の動きに合わせる様に、バルバラも又、歩みを進める。
「ふふっ、サモンは本当に可愛らしい…」
酒場の時はバルバラの笑顔も、不意に見せる笑顔も可愛らしいとも思っていたが、実際にこの様に迫ってこられると、どうしていいか分からない。
それは、俺の恋愛経験の無さから来るものだろうか?
そんな事を考えていたら背中が壁に当たった。
相も変わらず、徐々にバルバラは近寄って来ている。
とうとう俺とバルバラの距離は僅かしか無くなった。
気にした事は無かったが、間近で見たらバルバラの方が背が高い。
俺の顔を覗き込んだ瞬間、俺は咄嗟にドアに向かい走った。
背中越しにバルバラの笑い声が聴こえる。
そんな事、お構い無しにドアノブに手を掛けた瞬間。
「ふふっ、甘いな」
木製のドアとは思えない程、重くなっている。
どう足掻いてもドアはびくともしない。
俺はドアに体当たりをさせるが、2~3回程やった所で悟った。
(諦めるしか無いのか…)
「サモンは本当に楽しませてくれるな」
また、俺の方へ近付き、そして今度は顔を近付けてきた。
その時、後ろのドアからノックの音がした。
「チッ、いい所だと言うのに……」
俺は初めて、バルバラの舌打ちを聞いた。
この機会を逃してはいけない。
そんな予感がした。
俺は急いで扉を開けた。
「はい!」
「あぁ、すみません。先程凄い音が聞こえたので…」
心配して訪れたのは小柄な少女だった。
髪は水色で、とても澄んだ色だ。
恐らく俺が、扉に体当たりをする音が、聞こえていた様だ
「あぁ、大丈夫ですよ。わざわざ心配して頂きありがとうございます」
「いえいえ…」
そう言うと少女は会釈をした。
俺も会釈をして扉を閉める。
「おい……」
先程とは違う声色で、バルバラが話しかけて来た。
その声色、若干怒っているような気もする。
「続きは?」
「え!?あ、その…!」
一体バルバラは何を言っているんだ。
すると突然バルバラは微笑んだ。
「まぁ、良い。お前の可愛らしい顔に免じて、キスだけで許してやる」
そう言うと、バルバラは俺の額に顔を近付け口ずけをした。
「まぁ、順番に冒険していけばいずれ、4つ目も行くだろうからな…その時がとても楽しみだ」
どうやら、今晩は大丈夫そうだが、将来が不安だ。
4つ目に行くまでの旅路の間に、俺は回避する事が出来るのだろうか。
不安で仕方がない。
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