上 下
8 / 91
第一章:最弱伝説:始動

第7話 「街に到着、初めての料理」

しおりを挟む

 俺達は街に着いた。
遠目で見た時より、街の規模が大きい。
街中は喧騒が響き渡り。
隣りに居るバルバラの声さえ、耳元で言ってくれなければ聴き取りにくい。

「で、どこにいくんだ?」
「酒場を探そう、色々な情報もあるだろう」
「ふっ、そうだな」

取り敢えず、酒場を探した。
やはり情報と言えば、酒場の方が比較的情報も集まりやすいだろう。
同時に他の冒険者も集まる所でもある。

すると、おもむきのあるお店を見付けた。
看板を見る限り、どうやら酒場の様だ。

俺達は扉を開けて中に入った。

テーブル席が空いていたので、迎え合わせに向かって座った。

暫くすると店員が注文を伺いに来た。
黒のショートヘアが似合う美少女だ。

「ご注文は?」

「そうだな、取り敢えず食事の方を頼む」

「はーい」

そう言うと店員は、注文を伝えに店の奥へ行った。

「これが、と言うものか」

「来たこと無いのか?」

「あぁ、色々な冒険者が集まる所だとは聞いていたが、実際に訪れるのは初めてだ」

確かに、魔王と言うのは常に城にいて、
その城には何もかもが揃っており、配下の魔物や眷属が共に住んでいるイメージだ。
いや、誰もがそう思うだろう。
それ故「魔王バルバラ」は普段から、この様な場所に来る機会も無いのだろう。

そんな事を考えていたら、店員が食事を運んできた。
それぞれの前に料理を置くと。

「ごゆっくりどうぞ」

そう言うと店員は、俺達に微笑み。
そして、また店の奥に戻って行った。
運んできた料理は如何にも美味しそうな物だ。

バルバラは初めて見る料理なのか、興味深そうに眺めて、そして匂いを嗅ぎ、料理を恐る恐る口の中に入れる。
ひと噛み、ひと噛みを確かめるかのように噛み締め。
そして、喉を鳴らして飲み込む。

「おい!美味しいな!初めて食べたぞ!」
とても幸せそうな表情を浮かべて、俺に笑い掛ける。
すると今度は、先程の警戒は何だったのか?
と思う程、口の中にかき込む。

俺もバルバラの表情と、そして食べっぷりに思わず笑みを零し、自分の料理を食べ始める。

食事を食べ終えた、バルバラは俺に話し掛ける。

「ふふっ、お前…口元に着いているぞ」

そう言って、俺の口元に着いている料理を手で取ると、バルバラはそれを食べてしまった。
俺は初めてされ、恥ずかしさのあまり目を合わせる事すら出来なくなってしまった。
俺の視界に入るのは、既に料理だけだ。
俺の行動が面白かったのか、バルバラの笑い声が、耳に入ってくる。

「ふふっ、お前は本当に可愛くて愛おしい奴だ」

俺はそんな事を言われて咳き込みつつも、料理を頬張る。
残った2人の皿は料理が乗っていた物なのかさえ、分からない程、綺麗になっている。
俺は口に残っていた食べ物を飲み込むと、バルバラの方を見た。

両手で頬杖をつき、そして俺の方を見ている。

そして突然こんな事を言った。

「召喚してくれたのが、で私は嬉しいよ」

俺はそんなバルバラの言葉に、またも視線を合わせる事が出来なかったが、俺も全く同じ思いだった。

(召喚して出てきてくれたのがで良かった)
しおりを挟む

処理中です...