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第一章:最弱伝説:始動
第3話 「冒険の予兆」
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よし、「着替え」という第1段階は済んだな。
後は、俺の部屋に連れて行き、世界の謎に関しての本を読む、そしてその土地を訪れる、恐らく冒険とはこんなもんだろう。
「バルバラ?」
「どうした?」
「俺の部屋にある本を見て、これから先、何処に向かうか決めないか?」
「面白そうだな。だが、本当は本は口実に過ぎず、本当は営みをしたいだけでは無いか?」
そんな事など、微塵も思っていなかったが、突然その様な事を言われれば、無意識に想像はしてしまう。
それに恥ずかしい。
「そ!そんな事は一切考えていない!」
「ふふっ、冗談だ、そうムキになるな」
バルバラは俺に微笑み掛けてくるが、どうにも俺は、弄られている気がしてならない。
もう既に、俺の中では「バルバラ」が「魔王」と言う認識が大分薄れてきていた。
俺はバルバラを連れて訓練室を出た。
そして渡り廊下を歩く。
「おや、サモン。どうだったの?今年の昇級試…験は…」
俺は『母』と出くわしてしまった。
今、この状況を見たら、母はどう思うんだろうか。
俺が知らない女性を家に招き、尚且つ女性が着ている服は母のだ。
誰でもこう思うだろう。
―――どういうこと?
そう思うのは、至極当然であり、仮に俺が逆の立場でも思うだろう。
だが、正直に話す事は到底出来ない。
まず、信じて貰えるかどうかさえ分からない一方で、母が俺の言う事を信じた場合。
「魔王」を召喚した俺は確実に、この家庭には居られないだろう。
むしろ俺はこの一族の面汚しになってしまう。
色々な考えが頭の中を駆け巡る中、バルバラが話し始めた。
「初めまして、お母様。私はサモンさんと御付き合いをさせて頂いている。『バルバラ』と申します」
上手い言い訳だが、俺はどうも「御付き合い」と言う言い回しが腑に落ちない。
他に何か良い、言い訳は無かったものだろうか。
「あらー、そうだったの?」
「え!?あ、う、うん。そうだ」
「はい、それに私が着ていた服が汚れてしまいそれ故、お母様のお洋服を致し方なくサモンさんからお貸しして貰いました。」
「あら、そうだったの?別に良いのよ、気にしなくて」
そう言って母は笑っている。
「でも、紹介ぐらいはもう少し、早くして欲しかったわねぇ…」
「え、いや、うん、ごめん」
突き刺さる様な母の視線に俺は思わず謝ってしまった。
「と、とにかく、バルバラを連れて部屋に行ってくるから」
「そうなの?もっとゆっくりとこちらのお嬢さんとお話したかったわ」
母はバルバラに微笑みかけ、また、バルバラも母に微笑んでいる。
いつの間に、意気投合している姿を見て、流石「魔王」と褒めるべきか、むしろ女性ならではの協調性の高さを褒めるべきか、俺は悩んだ。
だが、ここはバルバラを部屋に連れていかないと。
いつか、綻びが出そうで危なくて仕方ない。
俺はバルバラの手を取り、急いで部屋に走っていった。
―――――――
「ここが、お前の部屋か」
「うん、だが、どうして『付き合ってる』なんて嘘を言ったんだ…」
「ふふっ、お前も満更でもない様だったがな?」
「いや!そんな事は…ない!」
どうしてバルバラは痛い所をつくような事ばかり言うんだ。
確かに、満更では無かったが…いや、違う。
俺は咄嗟の嘘に驚いたまでだ。
「お前は直ぐに顔に出るな、可愛い奴め…それで、お前が言っていた『本』はどこにある?」
顔に出ると指摘する癖に、どうして顔に出させるような事ばかり言うんだ。
いくら男でも可愛いと、美人から言われれば照れざるを得ないであろう。
そうだ、一々真面目に聞いてしまうから顔に出てしまうのだ。
これからは意に介さ無いよう様にしなければ。
俺はそう心に誓い、自室の本棚から本を取った。
後は、俺の部屋に連れて行き、世界の謎に関しての本を読む、そしてその土地を訪れる、恐らく冒険とはこんなもんだろう。
「バルバラ?」
「どうした?」
「俺の部屋にある本を見て、これから先、何処に向かうか決めないか?」
「面白そうだな。だが、本当は本は口実に過ぎず、本当は営みをしたいだけでは無いか?」
そんな事など、微塵も思っていなかったが、突然その様な事を言われれば、無意識に想像はしてしまう。
それに恥ずかしい。
「そ!そんな事は一切考えていない!」
「ふふっ、冗談だ、そうムキになるな」
バルバラは俺に微笑み掛けてくるが、どうにも俺は、弄られている気がしてならない。
もう既に、俺の中では「バルバラ」が「魔王」と言う認識が大分薄れてきていた。
俺はバルバラを連れて訓練室を出た。
そして渡り廊下を歩く。
「おや、サモン。どうだったの?今年の昇級試…験は…」
俺は『母』と出くわしてしまった。
今、この状況を見たら、母はどう思うんだろうか。
俺が知らない女性を家に招き、尚且つ女性が着ている服は母のだ。
誰でもこう思うだろう。
―――どういうこと?
そう思うのは、至極当然であり、仮に俺が逆の立場でも思うだろう。
だが、正直に話す事は到底出来ない。
まず、信じて貰えるかどうかさえ分からない一方で、母が俺の言う事を信じた場合。
「魔王」を召喚した俺は確実に、この家庭には居られないだろう。
むしろ俺はこの一族の面汚しになってしまう。
色々な考えが頭の中を駆け巡る中、バルバラが話し始めた。
「初めまして、お母様。私はサモンさんと御付き合いをさせて頂いている。『バルバラ』と申します」
上手い言い訳だが、俺はどうも「御付き合い」と言う言い回しが腑に落ちない。
他に何か良い、言い訳は無かったものだろうか。
「あらー、そうだったの?」
「え!?あ、う、うん。そうだ」
「はい、それに私が着ていた服が汚れてしまいそれ故、お母様のお洋服を致し方なくサモンさんからお貸しして貰いました。」
「あら、そうだったの?別に良いのよ、気にしなくて」
そう言って母は笑っている。
「でも、紹介ぐらいはもう少し、早くして欲しかったわねぇ…」
「え、いや、うん、ごめん」
突き刺さる様な母の視線に俺は思わず謝ってしまった。
「と、とにかく、バルバラを連れて部屋に行ってくるから」
「そうなの?もっとゆっくりとこちらのお嬢さんとお話したかったわ」
母はバルバラに微笑みかけ、また、バルバラも母に微笑んでいる。
いつの間に、意気投合している姿を見て、流石「魔王」と褒めるべきか、むしろ女性ならではの協調性の高さを褒めるべきか、俺は悩んだ。
だが、ここはバルバラを部屋に連れていかないと。
いつか、綻びが出そうで危なくて仕方ない。
俺はバルバラの手を取り、急いで部屋に走っていった。
―――――――
「ここが、お前の部屋か」
「うん、だが、どうして『付き合ってる』なんて嘘を言ったんだ…」
「ふふっ、お前も満更でもない様だったがな?」
「いや!そんな事は…ない!」
どうしてバルバラは痛い所をつくような事ばかり言うんだ。
確かに、満更では無かったが…いや、違う。
俺は咄嗟の嘘に驚いたまでだ。
「お前は直ぐに顔に出るな、可愛い奴め…それで、お前が言っていた『本』はどこにある?」
顔に出ると指摘する癖に、どうして顔に出させるような事ばかり言うんだ。
いくら男でも可愛いと、美人から言われれば照れざるを得ないであろう。
そうだ、一々真面目に聞いてしまうから顔に出てしまうのだ。
これからは意に介さ無いよう様にしなければ。
俺はそう心に誓い、自室の本棚から本を取った。
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