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第一章:最弱伝説:始動

第2話 「魔王様と今後」

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 「そう言えば貴様の名はなんて言うのだ?」

「俺の名は『サモン』だ」

「ふっ、人間の分際で良い名だな」

それはいい名だろう、俺の名は代々召喚士に関係した名を付けられる。
古い辞書から調べ、引用する。

「そうだろう?」

「あぁ、それに名前だけではなくて顔も良い」

「はっ!?か、顔?」

俺は初めて言われた言葉に思わず聞き直してしまった。
産まれてこの方、「顔も良い」なんて家族にしか言われた事がない。
自分自身、朝起きて鏡で顔を毎日見ているが、微塵も思った事はない。
ただの「親バカ」だと思っていた。
だが、実際この様に第三者から言われれば照れるだろう。

「なんだ、案外初心うぶなんだな」

そう言ってバルバラは微笑み掛ける。
そうだ、俺は恋愛経験もない、ずっと召喚の勉強や、それに伴っての昇級試験の勉強ばかりだったからな。

「勉強ばかりしていたら、仕方ない…だろ…」

駄目だ、最初は目を見て話していたのに、次第に逸らしてしまった。

「ふふっ…それで、これからどうするんだ?よ?」

相棒か、初めて言われたが悪い気はしないな、だが確かにこれからどうしようか。
確か…この国の謎、いや世界の謎が書いてある本が俺の部屋にあったな。
それに冒険と言う俺の「夢」も叶う。

「そうだな、バルバラは冒険に興味はあるか?」

「冒険か、興味が無い…と言えば嘘になる。人間がどの様にして、歴史を築いて行ったのか…」

「そうか」

良かった、バルバラの力を借りれば、俺が思い描く冒険も案外叶うだろう。
だが、この訓練室を出る前に服は着替えた方がいいな。

「バルバラ?」

「なんだ?」

「その…服は着替えた方が良いかと思うぞ」

バルバラが着ている服は、黒のブーツ、そして黒の鎧、その鎧の中心部は開き、胸の谷間が伺える。
肩からは、長い漆黒のマントが先に掛けて、グラデーションの様に真紅色に変わって地面にまで垂れている。

さすがにこんな服装は、街中であまりにも目立つ、いや。
悪目立ちする。

「そうか?気に入っているのにな」

「少し待っててくれ、着替えを取ってくる」

俺は訓練室から出たが、取ってくると言ったものの実際、男の部屋に女性物があるはずがない。
だが、身近なと言えば「母」しかいないだろう。
たぶん、両親の寝室にあるクローゼットには着替えが置いてあるはずだ。

俺は両親の寝室に向かった。

(どこだろう…この段かな? )

そしてクローゼットの中にある、引き出しを順番に開けていく。
何段か開けていくと母の服があった。

(よし、とりあえずこれで)

俺は引き出しに入っている中で一番彼女バルバラに似合う服装を選んだ。

――――似合わない

と言って駄々をこねられても困る。

俺は探すのに散らかした、服を元に戻して訓練室に戻った。
扉を開けてバルバラに着替えを渡す。

「こんな物を私に着せるのか?」

「そんな服装では、到底街中では歩けない」

そう言うとふくれっ面をしつつ、バルバラは素直に従った。
マントを外して鎧の留め具を外していく。

「それで…サモンはいつまでんだ?私は別に見せても構わないが…」

指摘された俺は咄嗟に訓練室を出た。
そして扉に寄りかかり考えた。

(これからどうなるんだろうか…)

しばらくすると中から呼ぶ声が聞こえた。

「おーい、入っていいぞ」

俺はその声に従う様に扉を開ける。

中に居たのは純白のワンピースに着替えた後のバルバラだ。
到底母が着ていたものとは思えない。

純白のワンピースが、艶のある黒髪を引き立て、その髪から覗かせる赤い瞳。
俺はあまりの美しさに目を奪われた。

「そんなに見つめるな」

「ご、ごめん」

俺は何故か咄嗟に謝ってしまった。

「謝るな、似合っているか?」

俺はその問いにはっきりと微笑み、答えた。

「もちろん、似合っているよ」


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