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第一章:最弱伝説:始動

第1話 「魔王召喚」

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 この美女が「魔王」だと聞いて思わず、顔を見てしまった。
魔王の瞳がまるで引き込まれる様な、魅力を放ち。
今度は視線を逸らせなくなってしまった。

「魔王」も俺の瞳を逸らさず、真っすぐと見つめてくる。


「そんなに見つめられると恥ずかしいな」

しまった、ついつい見入ってしまった。
だが、俺は「魔王」を召喚してしまった、どの道このままにはしておけないだろう。
俺は、部屋にある本棚に走って行った。

「返召喚」を行う為だ。
文字通り、召喚した魔物を返還する。
召喚士が、一番最初に習う物だ。

俺は本を開き、先程のページをめくる。
あまりに焦っているのか上の部分が若干破れてしまった。

だが、今はそれどころではない、一刻も早く帰さなければ。

「おい、辞めておけ」

俺は魔王に呼び止められて、本をめくる手を止める。

「なぜだ?」

「お前が今見ているページ、それは召喚した魔物と契約を交わす本だ」

「どこにもそんなの書いていないじゃないか」

書いているのは「???」だけだ、どこにもそんなものは書いていない。

「なぜ『???』か分かるか?」

そんなもの分かるはずがない、ただ好奇心でこのページを開き。
俺は召喚した。

「契約する為の魔物は、人それぞれ違う。その人の能力でどんなものが出てくるか分からないから『???』なんだよ」

「そんな…ならお前を返す方法は無いのか?」

「お前が私は帰れる」

まだ昇級試験にも受かって無いのに死ぬ?そんなものは絶対嫌だ。
家族が俺の亡骸を見つけたらきっとこう思うだろう。

息子は試験に落ちて、絶望といら立ちから憤死したと。
そんなものはごめんだ。

「契約…すれば俺は生きれるのか?」

「そうだ」

どうすればいいんだ、「魔王」と契約した人間なんて今まで居ないだろう。
いずれ殺されたりとかは無いだろうか。
家族にはなんて説明したらいいんだ。

「諦めろ、断ればお前は死ぬしかない」

何なんだこの魔王は。
少しだけ落ち着いたのか、そんな考えが出来るまでになっていた。

「…今まで断って死んだ人間は居るのか?」

「あぁ、もちろんだ。だが死に様は…聞かない方がいいぞ」

魔王は笑みを浮かべながらそんな事を言う。

言っている事と態度、そして断った人間のを想像して俺は思わず固唾を飲んでしまった。
だが、死にたくはない。
背に腹は代えられない、命が大切だ。

「契約…どうすればいいんだ?」

「ふふっ、簡単だ。お前の舐めるだけだ」

魔王は人差し指を唇に当てて舌なめずりをした。
俺はその姿を、呆然と見入る事しか出来ない。
やはり他の選択も考えたが、契約を交わす以外に、もう死を免れる事は出来なさそうだ。

「…わかった」
「よろしい、では手を」

俺は言われるままに腕を差し出した。
優しく腕を持つ感触は、到底「魔王」には思えない。
唇に当てていた指を、俺の手首の上へとゆっくり動かす、指先は手首の方へ向けている。

触れずに空中で絵を描くかの様にして。
横方向にスーっと動かした。
手首には一寸のブレの無い、綺麗な筋が入り、そこから赤い血が出て来た。

魔王はその指で俺の血を指で掬うと、口にへと運んでいく。
指まで口に含むと、美味しそうな表情を浮かべて、俺に微笑み掛けた。


「美味しかったぞ、これでだ」

そして「魔王」は腰に手を当てて、数歩下がった。
俺は今だに切られた手首を眺めている。
これで俺は契約をしてしまったが、本当に死なないか未だに信じられない。
そう言えば、まだ彼女の名前を聞いていないな。

「名前はなんていうんだ」

「私の名はない、好きに呼ぶがいい」


なら俺が付けてあげないとな…
何がいいだろうか。

「なら『バルバラ』はどうだ?」

「ふっ、気に入った」

俺は『バルバラ』の純粋な笑顔になぜだか目を離せなかった。









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